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 いきなりだが、オレが最近思っていること、感じていることを話そうと思う。
それと言うのも、オレもこの世界にきてから…もう結構経ったからだろうか。

 学年は3年となり、みんな…受験とやらで周りは慌しい。オレのクラスのヤツらもどこかそわそわしている感じだ。
そんな中で、オレだけがなにか…周りから弾き出されているといった、そう感じるヤツもいることだろう。
まぁ、それも当然。なにせ、俺には夢がない。やりたいことも…特にない。周りのヤツラはみんな、夢のために動いてるってのにな…。
こうして3年になっても、未だ目標とか目的が定まっていないように見えるオレは…周りからすれば異端な存在だろう。

 だが、元よりオレは…皆が持つようなありふれた夢を持つ気などなかった。進学だとか、就職だとか…そんなことはどうでもいいのだ。
オレはこの世界にきてからというもの、ずっと元の世界に帰ることだけを望んで生きてきたのだから…。


 始めは、この世界のことを好きになろうと思った。いや、好きになれると思っていた。
ここには、オレが前の世界で求めてやまなかった…平和があった。安らぎがあったから。

 だが、この世界で暮らしていく内にオレは気づく。なにか…なにかが足りないことに。
オレにもよくわからない、このどうしようもない心の渇きと欠落感。…オレは必死に埋めようとしたさ。
でも、ある日…この渇きの正体に気づいた。いや、思い出したといったほうが正しいかもしれない。
俺が、本当に求めているものが何だったかを…。

 今になって思えば、前にいた世界では…案外オレは活き活きしてたのかもしれない。
軍でオレがするべきことは、自身が手に入れた強大な力で…ただひたすらに定められた目の前の敵を討つ。早い話、それだけで良かった。
そして、オレの家族を奪った憎いヤツらに復讐することこそが生きがい。戦い、そして復讐…それは間違いなくオレの生きる目的だったのだ。

 けどさ…、今のこの世界はどうだ? この世界には復讐するべきヤツらが…どこにもいやしないだろう?
フリーダムや、アスハ。オレが憎いと感じた何もかもが、この世界には存在しないなんて…。実に、物足りないじゃないか。
これじゃあ、この世界では…オレは生きた屍も同然の存在だ。

…そうさ、物足りないと感じていたのは…オレが復讐するべきそのものを、生きがいを失っていたからだったんだ。
だから――――、オレはこの世界で生きることになんの価値も見出せなくなった。

 皮肉にも、戦いから離れたことによって自身の心のドス黒い波動を知った俺は、復讐という名の衝動を抑えきれない。
胸が…張り裂けそうになるほどの渇望。いつしかオレは復讐心ゆえに、元の世界に帰ることだけしか考えなくなっていたのだ。
『帰ること』…そう願うことだけが、オレのこの世界での生きる目的となっていたといっていい。

「おーい、シン。顔色悪いけど、大丈夫??」
 だが、突然かけられたその声に、オレの体が震えた。
実は…たったひとつ。たったひとつだけ、オレをこの世界に留まらせようとする要因があった。
それは、たった今…オレに話かけてきたコイツや、他の人々がそうだ。
こんな世界に未練などこれっぽっちもないのに、なぜかこの世界の人々の顔が…オレの頭から離れることはない。
「暗いねぇ…。そんなだと折角たてたフラグが壊れc」
「やめろ…!オレに話しかけるな!オレと…仲良くしようとするなッ!」
 彼女の言葉を遮るようにそう言って、俺は内心の戸惑いを静めるべく…逃げるように教室を立ち去った。

…そういえば、オレはいつもいつも、彼女らにこういう言葉しかかけることができていない。そんな気がする。


 そのままオレは学校の屋上へと出た。目を閉じて…大きく深呼吸する。
そしてオレは…ゆっくりと目を見開き、眼前に広がる大きくて青い空を見た。

 まただ。またオレは、迷った。『人との繋がり』…そんな弱さしか生み出さないものに俺は翻弄されている。
元の世界に帰ろうと思うと、いつも…いつもいつも…この世界で会った人々の顔が頭の中に浮かんでくるのだ。
それは未だ、心の奥底で人の温もりを求めようとする自分がいる証拠でしかない。なんだか、吐き気がしてきた。
復讐に、情や甘さなどいらない。ましてや、未練や迷いなんて…最も忌むべき感情。
そして許せないのは、そんな下らないものに振り回される…弱いオレ自身だ。

 …オレは思わず自分の頭を掻き毟り、そして喚きながら壁に何度も頭を叩きつけた。
とにかく、一週間に一回はこうやって頭から血を抜いとかないと、冷静な思考ができなくなる。これを怠ると、オレの心に妙な雑念が生まれてくるからな。
それにこうやって自身の頭から血が滴り落ちているのを見ると、なんだか生きているという実感が持てたから…オレはこうするのが好きだった。
――――ああ、だんだんスウッとしてきて…気持ちよくなってきた。

 そう、簡単なことだ。いらない…何もかも。捨ててしまえばいい。
ヤツらへの復讐。それこそがオレの生きる目的、存在理由。
なら、それだけを考えていればいい。もし心が…感情がそれを阻害すると言うのなら、そんなもの消してしまえばいいんだ。

 とにかく、行こう。何もかもを捨て去って、断ち切って…あの世界へ。死にに行くことに…なろうとも。

終わり


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最終更新:2009年04月24日 03:38
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