夏が終わり、秋が来る。ここは日本。一年間の季節の流れを見事に魅せる国。
何気ない散歩のとき、二人で口数少なく歩いていた。
いつもなら私が何か話しかけるんだけれども、今日は何故かそんな気分にならなかったし、シンはこちらから話しかけないと基本的にあまり話しかけてこない。
でもそれは無口キャラなんじゃなくて人の輪に入るのが苦手だってことを、私はちゃんとわかっている。
「あ、もう枯れてる」
「ん、本当だ。まだ夏なのに」
それでも私の呟きにしっかり反応してくれる。というより、何か話したかったけれど話題がなかったって感じかな。
並木道を歩いていると、既に葉が枯れて落ち、山を作っていた。
まだまだ夏だというのに、ここら辺だけ季節を先取りしてしまったみたい。
こういう風景はなんかもの悲しいよね。
「枯れ葉……か」
そんなことを考えていると、隣で歩いているシンがふらふらとした足取りで道を外れていった。その歩き方は何処か危うくて、倒れてしまいそう。
私はそんなシンをよく知っていた。これは何か悲しいことを考えているときだと察する。それだけわかっても私には何も出来ない。そんな自分が少し悲しい。
シンは虚ろな瞳で枯れ木を撫でた。手のひらで愛でるようにゆっくりと這わせる。その瞳は何も映していない。
遠く、私の知らない風景を映しているのだろうか。
―――少し、嫉妬した。私が知らないでシンが知っている風景に、シンが撫でている木に、醜く嫉妬した。
でも、仕方ないことだと思う。シンは私のことを完全に忘れて木のほうを向いていたんだから。
幸い、シンはこちらに気付いていない。というより気付いていないからこんな行動に出る羽目になったのだが、面倒くさいので考えるのを止める。
私は地面に山と積もっている枯れ葉を両手でかき集め、そのままシンに思いっきり投げつけた。
「うわっ!」
いつものシンなら後ろから奇襲しようが何をしようが軽く受け流すか受け止めてしまう。
だが今のシンはそうではなく、枯れ葉をもろに受けてそのまま尻餅をついてしまった。私の見たことのないシンだった。
シンはそのまま枯れ葉を払うこともせずに埋もれ、地面に座っている。
その目は先ほどまでとはまた違う風に呆然としていた。先ほどとは違い、悲しそうな顔ではなく鳩が豆鉄砲を喰らったような顔。
私は少し焦った。こんなに無防備なシンは今まで見たことがなかったからだ。
最初は「私の影響でゆるくなったのかなぁ」なんて考えていたけれど、シンの顔を見ているとそれとは違うようだ。
いつまでも呆然としているシンを見て焦りは更に募っていく。これはまずいと判断。
私の知っているシンの知識を総動員して原因を追求。今まで一緒にいたときの記憶は役に立たない。こんなシンは知らないからだ。
となるとやはりテレビの中のシンを思い出すしかない。幸い、シンが来てから一気に見直したため種死の知識は新しい。
しかし解せない。不意打ちでアスランのパンチを顔面に受けても仰け反らないシンが枯れ葉程度で……。
「あ……っ!」
思い出した。テレビの中のシンが見せた僅かな家族との触れ合い。その時シンはマユちゃんに……。
そこまで考えて自分の浅はかさに後悔し、絶望しているとシンはいきなり笑い出した。
そんなシンに混乱したが、どうにか言葉を搾り出す。
「何がおかしいのさ~」
「気付いてないのか?
こなた、さっきから一人で百面相してるぞ」
「む~、シンだって枯れ葉に埋もれちゃってるじゃん」
何とか言い返すが、内心冷や冷やしている。シンのトラウマをつついてしまったのと同じなのに、シンは一切こちらに遠慮をしない。
こっちがいろいろ考えているのに、シンは待ってくれない。さっさと身体を叩いて立ち上がり、歩道に戻ってしまった。
「こなた、早く行こうぜ」
シンがあんなところに行くからでしょ。そう言おうと思ったが口を閉じる。また思い出させてしまっては悪いし、私のきっと後悔するだろうから。
「なぁこなた。今度
そうじろうさんや
ゆたかと一緒に山でバーベキューとかしないか? バイトの給料も溜まってきたし」
シンは律儀に居候代をお父さんに払っているのに、残った自分のお金も私たちのために使おうとする。
まったく、真面目だよね。他人行儀じゃなくてもっと家族扱いしてくれてもいいのに。
先ほどのことが尾を引き、内心焦っていたこなたは気付けなかった。
シンがマユに枯れ葉を落とされたその日、
アスカ家は家族全員でバーベキューをしていたということを。
また一歩、家族に向けて前進した。
最終更新:2007年11月24日 19:03