復讐(グロ注意)
by福岡県
学校から帰る途中、私は今日どんなことをされたか思い出していた。
まず朝。教室に入ったとたん、全員が私を睨みつける。これはいつものこと。うつむきながら自分の席に行ったら、机がなかった。これで四度目。
HRではいきなり、先生が私に「泉!何でまた学校にきとるんか!」と叫んだ。無視したら、黒板消しを思いっきり投げられた。
一時限目は、号令のあと着席するときにつかさに椅子を引かれて、尻餅をついた。痛かった。痛かったのに先生はまた私を怒鳴った。
授業中も、死ねと書かれた手紙がまわってきたり、誰かが私の筆箱にムカデを入れてたりした。犯人はたぶん、ニヤニヤしていたみゆきさんだろう。
そんなことをされ続けたこと二週間。今まで必死に耐えてきたけど、もうそろそろ限界だ。
そうだ。しばらく学校を休めばみんな私のことなんて忘れるかもしれない。
今日からしばらく風邪で休むことにしよう。本当の理由はお父さんには言わない。だって、仲の良い…いや、良かった友達にいじめられたなんて言ったら、お父さんきっと余計なことをしそうだから。
とりあえず、今日からゆっくり休もう。
「クソこなたが学校来なくなって三日かぁ…いじめる相手がいないのも困りものよね」
「誰かうざい人いるかな?」
「そうですね……柊つかささんという方はどうでしょうか?」
「え?ゆ、ゆきちゃん何を言って…」
「そうよね~あいついい加減うざいわね。調子乗ってるって言うか。つかさもそう思うわよね?」
「ふ、二人ともどうしたの?」
「ほら、こうやって空気読めないところもうざいわよね~」
「つかささんは頭の弱い方ですから、仕方ありませんよ」
ゾロゾロ……
二人が何故か席を立つ。
「え?え?二人ともどこ行くの!?」
「ここで食べたらご飯がおいしくないわね。」
「そうですね。席をかえましょうか。」
「ま、待ってよぉ」
「つかさあんたこんな状況でも空気読めないの?いい加減きもいわよ。」
「分かったら、その汚い顔をこっちに向けないでくださいね」
「そんな……待ってよお姉ちゃん!」
ひとりぼっちになりたくなかった私は、思わずお姉ちゃんの肩を掴んでしまった。
「うわああぁぁぁ!!触んないでよ気持ち悪い!せっかくのセーラー服が……」
私は、その言葉でひどくショックをうけてしまった。
その日の昼休み明けの授業から、地獄が始まった。今まで自分がこなちゃんにしてきたようないじめが、今度は自分にふりかかった。
消えろと書かれた手紙が飛んできたし、筆箱にはなんと毛虫が入っていた。仲間だったはずの先生にも怒鳴られた。
家に帰れば、お姉ちゃんたちからひどい嫌がらせをうける。
初めは、いじめられると悲しい気持ちが強かったが、日に日にその悲しみが憎悪になっていくのが自分でもよく分かった。
大好きだったお姉ちゃんは、今ではいなければ良かったと思う。
高良に至っては、殺してやりたいと思うほどだ。
そんないじめられてから三日たったある日、
私はある計画を思いついた。
ピンポーン
「もう7時だっていうのに誰だろ?」
郵便かな?と思いながら玄関を開けた私は、とても驚いた。
「こなちゃんこんばんは!」
……悪い意味でだったが。
「つかさ…こんな暗い時間に何のよう?」
私は周りに警戒しながら返事をした。
「実はね、こなちゃんにどうしても言いたいことがあって…」
「………」
「その………」
がばっ!
「こなちゃん!今まで意地悪してごめんね!」
急につかさが抱きついてきた。しかも、私が一番いって欲しかった言葉をいいながら。
「つ、つかさ…」
「私、やっと気づいたの。お姉ちゃんたちのひどさに。だから、こなちゃんきっと私にも怒ってると思って謝りに来たんだ。」
「怒ってないよ…ぐす…つかさがいるから…もうひとりぼっちじゃないから……ぐす…」
「ふふふ!それじゃあ私たち親友だね!」
「うんっ!! …あ、そうだ。とりあえず上がりなよ。」
「そだね ……ところでこなちゃん…」
つかさの声のトーンが変わった……?
「……復讐、したくない?」
「え……?」
「お姉ちゃんや、高良みゆき。その他こなちゃんをいじめた奴等に仕返しをするんだよ…」
「し、仕返しって…どんな?」
「殺してあげるの。」
あまりにもさらっといったため、聞き流しそうになった。
「!?じょ、冗談だよね……?」
「冗談じゃないよ。」
「う、嘘だよ…」
「だから嘘じゃないってば。」
つかさの目は、本気そのものだった。
「で、でもさ!仮に殺したとしても何の解決にもならないっていうか……それにまだ仲直りもできるかもしれないし…」
「何?こなちゃんはいじめられたいの?」
「違うよ……ただ、またみんなでお弁当食べる生活に戻りたいだけで…」
「甘いよ、こなちゃん。人にひどいことをする奴なんて、死ぬべきなんだよ。」
「!?つかさ、それは言い過ぎじゃ…」
「こなちゃんはいじめられてむかつかないの?殺したいと思わないの?思うよね?」
「いや…私は、そこまで…」
「思うよね!?」
「(びくっ!)ま、まぁ…少しは…」
「じゃあお姉ちゃんたちをぶっ殺してやりなよ。計画は私が考えてきたからね…ふふふ」
「で、でも殺人なんて!!」
「わたしたち… 親 友 で し ょ ?」
「…うん…」
「ならやってくれるよね?」
つかさから聞かされた計画は、あまりにも単純だった。
まず、弁当をふろしきで包むときに、包丁も一緒に包んでおく。昼休みになったら、一緒にお弁当食べよう!とでも言って二人を屋上におびき出す。
きっと二人も屋上ならもっといじめやすいと考えて、ほいほいついてくると思うからそこは心配いらない。
あとは屋上でナイフを取り出し、二人を……
正直言って、私には無理だ。
第一、そんなにうまくいくわけがない。私の力じゃ殺せないかもしれないし、その前に昔あんなに仲良かった友達を刺せるわけがない…
だからと言ってこの計画を実行しなければ、私はつかさに見放されてまたひとりぼっちになってしまう…
それだけは嫌だ!でもそれじゃあかがみとみゆきさんを……
どうすればいい?どうすればいい?
この際かがみとみゆきさんを敵と割り切ってしまうか……でも私に殺しなんて…
「計画の内容は分かった?」
「(びくっ)あー…うん、一応……」
「それじゃあ明日早速決行するからね。」
「!?あ、明日?!そ、そんなの無理だよ!絶対!」
「親友の言うことが聞けないの?」
「う……わ、分かったよ。明日ね。」
「よしっ!じゃあ私そろそろ帰ろうかな?」
時計をみると、すでに九時をまわっていた。
「うん。見送るよ。」
「ありがと~! ………それとね、こなちゃん…」
つかさの声のトーンがまた豹変した。
「もし逃げたりしたら……"嫌 だ よ"?」
「(びくっ!!)あはは……そ、そんなことしないよ…」
「いつも見てるからね?こなちゃんのこと……ふふふ…」
見送ろうと部屋のドアを開けたとき、何故かドアの前の床が温もっているような気がしたが、
そんなことを冷静に考えていられる精神状態ではなかった。
「それじゃあ、明日がんばろうね!」
「ね、ねぇ…もし明日失敗したら…どうする?」
「親友のためなら失敗なんてしないよね~?」
「う、うん。ごめん、変なこと言って……ばいばーい!」
バタンっ!
ドアが閉まると同時に…
すとん…
私もその場に座り込んでしまった。
着ていた服はもう汗でびしょびしょになっていた。呼吸もはぁはぁいっている。それだけ極度の緊張状態にあったということだ。
私は冷たい麦茶を一気飲みし、心を落ち着かせた。
私は……私は一体どうしたら………
その夜、私は遅くまで寝付けなかった。というか、明日人を殺さなければならないというのに平気で寝られる方がどうかしてる。
でも、つかさならぐっすり寝そうだな…
とりあえず、私は重い足取りで下へおりた。
「遅いぞーこなた。もうゆーちゃん学校行っちゃったぞ?」
時計を見ると、もう学校に間にあうギリギリの時間だった。
私は重い足を引きずりながらなんとか準備(包丁とか)をすませ、家をでた。
通学途中、石を投げられたりしたが、いつものことだ。無視して学校まで歩いていくと、校門に見覚えのある影があった。
「ゆーちゃん!」
「お姉ちゃん!待ってたよ。
えっとね……その…実は、昨日の話を聞いちゃって……」
「え!?」
「ごめんなさい!ど、ドアの前にたってずっと聞いてたの…」
なるほど、ドアの前の床が妙に温もってたのはゆーちゃんがずっとそこに立ってたからか!
……って感心してる場合じゃない!どうしよう!ゆーちゃんに計画が……
「お姉ちゃん。」
ゆーちゃんが、感情ゆたかなゆーちゃんでも滅多にしないとても真剣な表情をしている。
「人を殺したりしたら、お姉ちゃんでもぜっっっっっったい許さないから!!!」
「ゆーちゃん……ありがとう」
そう言って私はゆーちゃんを抱きしめた。
「でもね、私は絶対にやらなきゃいけない理由があるの。」
「でも…私いやだよ!お姉ちゃんが……ひっく…ひとごろしなんて…ぐす…」
「ゆーちゃん……」
ゆーちゃんの涙を見ているのは、とても辛かった。正直こんな計画より、昔みたいな生活にもどる努力がしたかった。しかし……
『逃げたりしたら……"嫌 だ よ"?』
つかさの言葉が脳裏をよぎる。そうだ…この運命からは逃れられないんだ……これ以外に方法なんて………
あっ!
「あるじゃんか!!」
「(びくっ)ど、どうしたのお姉ちゃん。」
「つかさを説得すればいいんだよ!うまくいけば、二人で元の生活にもどる努力ができるし!人殺しなんかよりは絶対こっちの方がいい!」
「お姉ちゃん…!じゃあ、もうひとごろししないの…?」
「そうだよ、ゆーちゃん。心配かけて本当にごめんね……」
「お姉ちゃん…ぐす……ひっく……よかった……お姉ちゃん、だいすきだよ…」
「ゆーちゃん…ありがとう」
きーんこーんかーんこーん…
チャイムが空気を読まず無機質に鳴り響く。
「あ!チャイム鳴っちゃった!お姉ちゃん、またあとでね」
ゆーちゃんと別れたとき、私は希望に満ちあふれていた。私は自分でも気づかないうちに、スキップをしていた。
早く教室に行って、つかさを説得したい。そしてまたみんなでお昼ごはんを食べたい。
なにもかもがうまくいくような気がした。これもゆーちゃんのおかげかな……
私は教室に入って、つかさの姿を求める。しかし、それはどこにもなかった…
どうしたんだろうと考えていたとき、私はつかさのもう一つの言葉を思い出した。
『いつも見てるからね?こなちゃんのこと……ふふふ…』
なんだか急に怖くなった。さっきまではうまくいくことしか考えられなかったのに、今はとても嫌な予感がした……どうか自分の勘違いであって欲しい。
私は、いつものみんなの睨みつけを無視しながら、席に着こうとした。だが……
椅子には、画鋲がびっしりとおいてあった。あぁ、また最悪な一日のはじまりなんだな……
結局その日、私は一時限目で早退した。帰ろうとしたとき先生に嫌みを言われたが、無視した。
家に着いたと同時に、ベットに倒れこんだ。昨日はろくに寝れていない。
私はすやすやと寝息をたてた。
起きると、時計はもう七時をまわっていた。だいぶ寝不足だったようだ。
下に降りると、お父さんが原稿をかたずけていた。
「こなた、ゆーちゃんを知らないか?」
「え?部屋にいないの?」
「ああ。いつもならとっくに帰ってきてる時間なんだが……」
私はなんだか不安になってきた。そして、またつかさの言葉が脳裏をよぎる…
『逃げたりしたら……"嫌 だ よ"?』
「どうしたこなた?顔が真っ青だぞ…?」
「い、いや何でもないよ……あっ!」
すっかり忘れていた!つかさを説得することを……
携帯を手にとり、つかさに電話をかける。だが、通じなかった……
私はまた嫌な予感がしていた。胸のあたりがもぞもぞする。ゆーちゃん…どこに行ったんだろう……心配だ。
ふと、カレンダーを見ると、今日は燃えないゴミの日だった。
私は、暗い夜道をゴミ袋を引きずりながら歩いていた。なんだかいつもより量が多い気がする。
ビリッ!
ゴミ袋が破れてしまった。
「あーやっちゃった……ん、何だろう?このはみ出してるの……
……何、これ……い、いやああああああああああああああああ!!」
そこには、ゆーちゃんがいた。
首だけの姿で。
「ぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ
ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!
………はあ…はぁ…ゆー…ちゃん…?どうして!?どうして!!?
ゆーちゃんは何もしてないのに……とってもいい子なのに……
ぐす…うぅ…うわああああああああああああああああああああん!!!」
「どうしたの~こなちゃん。ゴミ出し~?」
「!?」
気配も何もなく、いきなり声をかけられた。その声には、感情がいっさいこもっていない。
「……つかさだよね?ゆーちゃんをこんな姿にしたのは……」
「ゆーちゃん…?ああ、その燃えないゴミのことね。ただゴミを六つに分けただけだよ~♪」
「……つかさ…それ本気で言ってるの?」
「こなちゃん顔が怖いよー?親友にむかってそんな顔していいのかな~?」
「うるさいっ!!!このひとごろしぃぃぃぃ!!!」
気がつけば、私は大声をあげて"親友"の胸ぐらを掴んでいた。
「ひとごろし?はっ…今日の朝、人を殺そうとしてた奴は誰かな?」
「うるさいっ!!!!なんで…なんでゆーちゃんを殺したんだ!?答えろぉぉ!」
嗚咽と涙声で、ほとんど言葉になっていなかった。
「………こなちゃん…私の言葉覚えてるよね?"逃げたら嫌だよ?"って…」
「だから?」
「こなちゃんは二人を殺す気満々だったのに、それをそこにいる燃えないゴミが邪魔した……だから殺したの。」
「な、なんでつかさがゆーちゃんが私を止めてくれたことを知ってるの…?」
「クスクス…言ったでしょ?"い つ も み て る "って……」
「(びくっ!!)」
「…やっぱりこなちゃんには荷が重かったかな?もういいよ、用済み。ばいばい、こなちゃん♪」
そう言って、つかさは突然両手で私の首を締めた!
「……ッ!!…」
く、苦しい…つかさのどこに…こんな力が…
「あっはははははははははははははははははは!!!楽しい!楽しい~よ~!
あはははははははははははははははは!!」
「……うぅ…!うぅぅうぅ……!!」
だめだ……意識が…
「あっははははははははは!!楽しいなぁ!でもあのゴミを生きたままバラバラにした時はもっと楽しかったなぁ!!
葬式でゴミの友達どんな顔するんだろー?あっはは!楽しみー♪」
その言葉で、私の中に隠れていた鬼が目覚めた。
「あっはははははは!あっはははははは……ふがっ!!」
私は隙をついてつかさの顎に強烈なアッパーを繰り出した。舌を出して笑っていたつかさは、思いっきり舌を噛んだ。
「うえっ!おぉうぇぇ……ら、らりふるおろらひゃん!!(な、何するのこなちゃん!!)」
ぽたぽたとつかさの口から垂れた血が地面に染み込む。
汚らわしい。
「ぇぇええええいぃぃっ!!」
私はつかさの後頭部をつかみ、コンクリートの地面にむかって……
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!……
つかさが叫んでも、頭から汚物が出ようとも、私はつかさの頭を地面に叩きつけ続けた…。
ゆーちゃんを殺した絶対に許せない相手。それを殺せたんだから喜べるはずだった。なのに……
なのにどうしてこんなに涙が止まらないの?
翌日。
つかさとゆーちゃんが死んだことは、もうニュースで報道されていた。犯人は不明、と言っていたからとりあえずばれてはないらしい。
でもいきなり休んだら怪しまれると思った私は、しぶしぶ学校へ行くことにした。
お父さんと二人だけの暗い朝食。昨日のゆーちゃんの姿を思い出してしまい、泣きながらご飯を食べた。
お父さんも何度も目をこすって、泣いているのをごまかしていた…
学校につき廊下を歩くと、すれ違った人がわざとらしく鼻をつまんでいた。心なしか、みんな私をよけて歩いているようだった…
教室に入ると、またみんなが私を睨みつける。その中で、みゆきさんが私をよぶジェスチャーをしていた。
「どしたの?みゆきさん」
「ちょっと泉さんに見てもらいたいものがありまして……これです。」
みゆきさんは携帯電話を取り出して言った。
「この動画に見覚えはありませんか?……くすくす」
「え…?」
青い髪の女と、薄紫の髪の女が、何かしている。そして……
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!……
「ま、まさか……」
「昨日私がゴミ捨て場の近くで撮影しました。よく撮れているでしょう?顔までバッチリ……うふふ」
「お、お願いだから、警察だけには……」
「さて、どうしましょうか……」
「お願い!な、なんでもするから!」
「ふふふ…そう言うと思ってましたよ。」
と言ってみゆきさんはカッターを取り出した。
「今日一日、カッターの刃を刃の間に挟んで生活してください。」
「え……?」
「なんでもするんですよね?」
「で、でもこれはさすがに……」
「そうですね…こんなことやめた方がいいですね…」
「え?じゃ、じゃあ!」
「なーんて。ちょっとしたジョークですよ。お恥ずかしながら…」
「………」
「さあ、口をあけてください。私が一枚一枚挟んであげますから。」
私は怖かった…。助けを求めるようにあたりを見渡すと、入り口のところにかがみの姿があった。
でも、ニコニコしながらこっちを見ているだけだった……
「よそ見はいけませんよ、泉さん。それではまず一枚目。あーんしてください?」
「う………」
「……ちっ…白石!泉さんの口を開かせてください。」
「わ、わかりました!」
「や、やめて!やめて!」
「それでは改めて……まず一枚目。」
「いやぁ!いやあああああああ!」
ぐちゅっ……
「ひぃやぁぁああ!!」
「二枚目。…くすくす」
「あーっ!ああああ!」
口からよだれと血の混じった液体がこぼれる。
「汚いですね……これで拭いてください。」
私はボロ雑巾で口を無理矢理拭かれた。
「それでは三枚目。ふふふ」
カッターの刃を10枚全部歯に挟まれたまま放課後になった時には、もう口の中は血だらけだった。
私は血が口からあふれないように何度も血を飲み込んだ。鉄の味がして、気持ち悪かった…
カッターの刃をはずした今でも、鋭い痛みは続いている…
「痛い…痛い……これからこんなことを毎日……もう嫌だよ…」
誰もいない教室で、私は机にうずくまって泣いていた。
ゆーちゃんがいなくなって、ただえさえ精神がもたないのに、こんな今までより数段ひどいいじめをされて、私は壊れてしまいそうだった…
もう、死んでもいいかな……
なんて思っていたとき、緑のショートヘアーの女の子が教室に入ってきた。
「こなたさん…ゆたかの事件について詳しく教えてください…」
「え……?」
「ゆたかが誰に殺されたのか、つきとめたいんです。」
「い、岩崎さん…」
「お願いです!ゆたかみたいなあんないい子が、こんな理不尽に殺されたなんて、あまりにも不憫で…うっ…ぐす…」
「岩崎さん…でも、犯人がわかったらどうするんですか?」
「殺してやります」
「(びくっ!)ほ、本気?」
「本気です。」
岩崎さんの鷹のように鋭い眼光に、迷いはなかった。
ふと、私はあることを思いついてしまった。
とても残酷だけど、私にとっても岩崎さんにとってもこの上ない作戦。
岩崎さんはきっと本気だ。ならば、私がこの作戦を実行すれば、岩崎さんの思いは晴れ、且つ私の望みも果たされる……
やろう。これが成功すれば、すべてが終わる。
「ねえ…岩崎さん…」
「はい?」
「実はね……
私 が ゆ ー ち ゃ ん を 殺 し た の 。」
「えっ……?」
「倉庫にあったナタをつかって体をバラバラにしたんだよ。まず左腕を切って、右足を切って、それから…」
「もうそれ以上何も言わなくていい…」
岩崎さんは、恐ろしい形相で私の頭をつかみ、そして…
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!…
すべてが、終わった
糸冬
最終更新:2022年04月17日 12:12