二人の夢物語



穏やかな午後の日が差す縁側に、一人の女性が座っている。
腰まである長い白髪、顔には色々な労苦を感じさせる深い皺。
一房の癖毛とふくよかな頬が、若かりし頃の面影を残している。
そう、泉こなたその人である。

「こなちゃーん、お茶と大福持ってきたよぉ~。」
肩より少し長めの白髪をバレッタで留めた女性が、お盆に湯飲みと大福をのせてやってきた。
元来ややたれ目であった目尻は齢を経て更に下方修正され、こなたと同じく顔に深い皺を刻んでいる。
もちろん、柊つかさである。

「ありがと~、今日の大福は自家製かなぁ~?」
目の前に置かれた大福に手を伸ばし一口食べる。
「そうだよ~、良い小豆が手に入ったから、餡から作ってみたの~。」
「ほぅほぅ。…むぅ、確かに美味しいねこりゃ、しかも皮がきちんと『うにょーん』ってなるし、相変わらず良い仕事するねぇ~、つかさは。」
こなたは「ほらほら」と言いながら『うにょーん』を実践している。
……年齢を重ねても、やる事は大して変わらないらしい。
「こなちゃんって、ホント変わらないよね~。」
「そう言うつかさだって、大して変わらないと思うけどぉ~?」
「…そう、かなぁ?」
「…そう、だよぉ。」
二人顔を見合わせ、同時に笑い出した。
「あはは、やっぱ変わらないや~。」
「うふふ、そうね~変わらないよね~。」
「そう言えばさ、ふと思ったんだけど、私とつかさが出会ってからどれくらいたったんだろ?」
お茶を飲みながら、こなたは感慨に耽った。
「え~っと・・・、もうすぐ55年・・・だねぇ~。」
つかさも「ふぅ」とため息を一つつき、感慨に耽る。

「ねぇ、つかさ。私達ってさ、色々大変な事もあったけど、結構楽しい人生を送ってきたよね。」
「そうだね~。でも、つらい事も、悲しい事もあったけど、こなちゃんが一緒にいてくれたから、何とか頑張ってやってこられたんだよ。」
そう言ってこなたの顔を見つめた。
「私もだよ、つかさ。つかさがいなければ、多分もうずっと前にダメになってた。だから、つかさにはとても感謝してる、ホントにありがとうね。」
笑顔でこなたは軽くお辞儀をした。
「そんなそんな、お礼なんかいらないよぉ~。むしろ私のほうがこなちゃんに感謝しているんだから~。お礼言うのは私だよぉ~。」
慌ててつかさもお辞儀を返した。
「いやいや、私の方がつかさにお世話になっているんだから。」
「違うよぉ~、私の方がこなちゃんにお世話になっているんだよぉ~。」
「いや、私が・・・」
「違うよぉ~、私の方が・・・」
「・・・」
「・・・」





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「・・・んぁ?あれ・・・」
こなたが目を覚まし体を起こすと、そこは見知らぬ部屋だった。
「・・・あ、そうか、卒業旅行に来てたんだっけ・・・」
ふと横を見ると、つかさとかがみとみゆきが寝ている。
「なんか、変な夢だったなぁ~・・・。まぁ良いか、明日も早いしちゃんと寝ないとね~。」
そう言ってもう一度布団に入った時、隣のつかさと目が合った。
「あ・・・ごめん、起こしちゃった?」
しかしつかさは頭を振った。
「ううん・・・、変な夢見て、目が覚めちゃったの。」
「変な夢?もしかして・・・私達がおばあちゃんになっていなかった?」
するとつかさははっとした顔をして、頭を縦に振った。
「そうなの、私とこなちゃんがおばあちゃんになっていて、縁側で大福食べてた。・・・もしかして、こなちゃんも?」
今度はこなたが頷いた。
「うん・・・、不思議だね~、なんで同じ夢見たんだろう?」
「・・・なんだろね~、でも、私はこなちゃんと一緒の夢が見られたから、嬉しいよ。」
「私も・・・もしかしたら、遠い未来にホントに起こる事なのかもね~、予知夢ってやつかな~。」
「・・・そうだったら・・・嬉しいな・・・。」
つかさがとても嬉しそうな声小さくつぶやいた。
「・・・私も、そうなって欲しいと思っているよ、つかさ。」
こなたも同じようにつぶやいた。
「・・・さて、朝早いかがみんにたたき起こされ無いように、もう一眠りしますか。」
「・・・そうだね、お休みこなちゃん。」
「・・・おやすみ、つかさ。・・・ん。」
こなたはつかさに口づけをし、布団に潜り込んだ。
「・・・又、つかさ「こなた」と一緒の夢が見られると良いな・・・」
そんな事を考えながら二人は眠りにつくのであった・・・。

<おしまい>








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最終更新:2010年05月14日 03:01