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『涼宮ハルヒシリーズ』(すずみやハルヒシリーズ、Haruhi Suzumiya Series)は、
『
涼宮ハルヒの憂鬱』(すずみやハルヒのゆううつ、英語:The Melancholy of Haruhi Suzumiya)をはじめとする、谷川流による日本のライトノベルシリーズ。イラストはいとうのいぢ。角川スニーカー文庫(角川書店)より2003年6月から刊行。
概要
エキセントリックな女子高校生のヒロイン、涼宮ハルヒが設立した学校非公式クラブSOS団のメンバーを中心に展開する、「ビミョーに非日常系学園ストーリー」。
物語は、主人公である男子高校生キョンの視点から一人称形式で進行する。既刊9巻(2010年8月現在)、累計650万部(2010年9月の時点)の売上げを記録した。第1作である『涼宮ハルヒの憂鬱』は第8回スニーカー大賞<大賞>を受賞[1]。他『このライトノベルがすごい!』2005年版で作品部門1位を獲得したのをはじめとし、2006年版で6位、2007年版、2008年版でそれぞれ2位と常に上位をキープしており、2005年版から4年連続でベスト10入りした唯一の作品であった。
2005年9月にはツガノガクによる漫画版が『月刊少年エース』にて連載開始。2006年4月よりテレビアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』が独立UHF局をはじめとする各局で放送された。2009年4月よりテレビアニメが2006年版の回に新作を加えて放送された。劇場版アニメーション映画『涼宮ハルヒの消失』は2010年2月6日より公開中。
長らく原作の発表がストップした状態だったが、2010年4月30日発売のザ・スニーカー2010年6月号にて、最新刊『涼宮ハルヒの驚愕』の一部が先行掲載され[注釈 2]、2010年12月発売のザ・スニーカー2011年2月号にて2011年5月25日に発売されることが発表された。
ストーリー
「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上。」
高校入学早々、この突飛な自己紹介をした涼宮ハルヒ。美少女なのだが、その性格・言動は変人そのものであり、クラスの中で孤立していた。しかし、そんなハルヒに好奇心で話しかけた「ただの人間」である、キョンとだけは会話をするようになる。
ゴールデンウィークも過ぎたある日、校内に自分が楽しめる部活がないことを嘆いていたハルヒは、キョンの発言をきっかけに自分で新しい部活を作ることを思いつく。キョンを引き連れて文芸部部室を占領し、また唯一の文芸部員であった長門有希を巻き込み、メイド兼マスコットとして上級生の朝比奈みくるを「任意同行」と称し拉致。さらに5月という中途半端な時期に転校してきた古泉一樹(ハルヒ曰く「謎の転校生」)を加入させ、「宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶこと」を目的とした新クラブ「SOS団」を発足させる。
ところが団員として集まったキョン以外の三人は、それぞれ本物の宇宙人、未来人、超能力者であり、キョンはSOS団の結成と前後して、三人からそれぞれ正体を打ち明けられる。彼らが言うには、ありふれた日常に退屈し非日常を渇望しているハルヒこそ、彼らにとって解析不可能な超常現象を引き起こす原因となっている未知の存在なのだが、ハルヒ本人にはその自覚がないのだといい、彼らはそのことを彼女自身に悟られずに観察するため派遣されてきたのだという。当初は半信半疑であったキョンも、間もなく実際に超常現象に巻き込まれて命の危険に晒されたことにより、彼らの言葉を信じざるを得なくなる。そしてキョンとSOS団の団員たちは、非日常を待ち望んでいるハルヒ本人に事実を悟られないように注意しつつ、ハルヒ自身が無自覚な発生源となっている超常現象を秘密裏に解決したり、宇宙人や未来人や超能力者たちの勢力の思惑に振り回されたり、ハルヒが気紛れで引き起こしたり持ち込んだりする日常的なトラブルに付き合ったりする日々を過ごすことになる。
用語
SOS団(エスオーエスだん)
正式名称は「世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団」。
ハルヒが結成した同好会未満の集団で、目的は「宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶこと」。団長はハルヒ。副団長は古泉で、みくるが副々団長と書記を兼任しているが、肩書きはハルヒ以外あまり意味がない。主な活動内容は、市内の不思議探索や非常識的な事件の相談などだが、ハルヒの思い付きで行動することが多く、学校行事の他に町内でのイベントの参加、アルバイトなど多岐に渡る。活動がない放課後やハルヒ不在時でも団員は集合することがあり、その際は各々の趣味などで時間を過ごしている。
正式な部室はなく、文化部部室棟3階にある文芸部室を占拠している。備品のほとんどはハルヒがどこからか調達(強奪)してきた物や、団員の私物である。なお、キョンが同好会申請をした(その際の名称は「生徒社会を応援する世界造りのための奉仕団体」とした)が、学校の認可は下りていない。
団員は涼宮ハルヒを筆頭に、キョン、長門有希、朝比奈みくる、古泉一樹の5名。そのうちの後者3名はハルヒの能力に関心を持つ組織に所属し、ハルヒや「鍵」であるキョンの監視を目的にしている。なお、長門、みくる、古泉は「SOS団」としての仲間意識や信頼はあるものの、彼らが所属している三勢力はそれぞれ協力関係にある訳ではないらしく、組織の一員としては信用出来かねない部分はある。そのため三人はそれぞれの事情を知り、尚且つ一番中立的な立場であるキョンを最も信頼している。
SOS団のウェブサイトもある。トップページには、ハルヒが「SOS団」の文字を元にデザインしたエンブレムがあり、本作のマルチメディア展開でもよく使用されている。これに関しても非日常的な騒動が持ち上がり、事件解決後に長門が描き直して現在は「ZOZ団」となっている(第3巻『退屈』収録の「ミステリックサイン」より)。
「世界を - 」のくだりは、改変世界から3年前の七夕に脱出してきたキョンが、東中の校庭に謎の幾何学模様を描き終えて帰宅する中学生のハルヒに向かって遠くから叫んだ「世界を大いに盛り上げるためのジョン・スミスをよろしく!」という台詞から来ている模様(第4巻『消失』より)。
3年前の七夕
「笹の葉ラプソディ」収録。当時中学1年生だった涼宮ハルヒが、東中の校庭で地上絵を描いた出来事の日。キョンは未来から指令を受けた朝比奈みくるによってこの日に時間遡行し、キョンを待っていた朝比奈さん(大)の導きで当時中学1年生のハルヒに出会い、地上絵を描くのを手伝わされた。この時キョンはハルヒに対して、ジョン・スミスと名乗っている。この出来事はハルヒに大きな影響を与えており、ジョン・スミス(未来のキョン)との会話で宇宙人・未来人・超能力者の存在を信じ、後に北高に入学した理由に繋がっている。なお、ハルヒはジョンとの出会いを誰にも話していない。一方でキョンはみくるがTPDDを失った為に元の時代に帰れなくなるが、待機モードだった3年前の長門の助けを得て、時間凍結によって間接的に元の時代に戻ることに成功した。
『消失』でも、この出来事は非常に重要な位置づけとなっている。『消失』で世界は非日常的ではない世界に改変されてしまったが、改変されたのはキョンたちが中学3年生の12月~高校1年生の12月18日早朝の1年間で、3年前の七夕は改変を免れていた。キョンはそこから改変世界のハルヒとの共通点を得て、改変前の長門が残していた脱出プログラムを作動することに成功し、改変世界から3年前の七夕に脱出することが出来た。そしてその時代にいた朝比奈さん(大)と待機モードの長門の手助けを得て、世界を元に戻すチャンスを手に入れた。
ループ現象
「エンドレスエイト」、「涼宮ハルヒの約束」、「涼宮ハルヒの戸惑」、「涼宮ハルヒの並列」にてハルヒの願望によって起こった現象。
ハルヒが提案したイベント事に本人が「名残」を感じた際に起こることが多い。基本的に特定の月日や記憶や行動は全てリセットされるが、ハルヒの身近にいた団員のみにはループした記憶の欠損、「既視感」が存在する。しかし、長門ら対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースは例外であり、ループしても記憶はしっかり継続される。なお、ループが起こっている際にはループの終わり以降の未来がないため、未来人は未来と連絡が取れなくなり、帰れなくなってしまう。
ちなみに、記憶のリセットについてはその時によって影響力が違い、「涼宮ハルヒの戸惑」ではキョン、みくる、古泉の3人とも記憶をリセットされずにループを繰り返している。「涼宮ハルヒの並列」では三人の記憶は引き継がれなかったが、事態に気がついたキョンが、ループの度に長門に以前の記憶を思い出させるナノマシンを注入してもらい、後に古泉とみくるもその処置を受けることで、ループの記憶を引き継げるようになった。
コンピュータ研究部(コンピ研)
文芸部室の2つ隣にある文化系クラブ。部長以下4名が所属。SOS団にパソコンを奪われ、その返却を賭けたオンラインゲーム対戦を申し込むも、長門の活躍により惨敗。さらにその罰ゲームで、その他通信に必要な機器、各種サービスを提供させられた。その対戦後、部長の勧誘に応じ、長門がたまに掛け持ちで参加している。
情報統合思念体
全宇宙に広がる情報系の海から発生した、非常に高度な知性を持つ情報生命体。実体を持たないため、いかなる光学的手段でも観測することは不可能。言語を持たず、有機生命体と直接コミュニケーションできないため、長門をはじめとする対人間用インターフェースを派遣した。自律進化を遂げる手がかりとして、ハルヒを観察している。
時空間を超越している存在のため、情報統合思念体やインターフェースたちは、ハルヒが起こすループ現象の影響を受けることはない。作中において事実上最強の存在で、凄まじい情報操作能力を持つが、ハルヒが持っているような無から情報を創造する力はない。『消失』では世界が改変された時にその存在も消滅しているが、最終的に未来から来た長門とその長門と繋がっている情報統合思念体の力によって、改変された世界は本来の姿に戻った。
「統合」思念体といってもその意志は一つではなく、様々な思惑が交錯している。そのため「主流派(中道派)」「急進派」「穏健派」「革新派」「折衷派」などの派閥が存在し、時に対立する。
対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース
人間などの有機生命体と言語を介して直接的にコミュニケートするために、情報統合思念体が創造した有機アンドロイド。古泉が所属する超能力者集団「機関」からは、TFEI端末(ティーエフイーアイたんまつ)と呼ばれる(TFEIが何の略称であるかは不明)。長門によれば、相当数のインターフェイスたちが一般人に成りすまして地球に潜入しているらしく、情報統合思念体と同じように派閥が存在する。周囲の環境をも変化させるほどの情報操作能力を持ち、作中屈指の戦闘能力を持つ。「同期」をすることで、過去や未来の自分自身と記憶を共有する事ができる。
広域帯宇宙存在
情報統合思念体とは起源を異にする存在。思考プロセスが完全に異なるため、情報統合思念体も人間も、通常手段での相互理解は不可能。そのため、第9巻『分裂』にて、人型イントルーダー(情報統合思念体における対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースと同様の存在)を遣わした。第5巻『暴走』収録の「雪山症候群」で、SOS団を閉じ込めた謎の洋館の建つ空間の主でもある。情報統合思念体は暫定的に、天蓋領域(てんがいりょういき)と名付けている。
情報爆発
「情報フレア」とも表現される。3年前、ハルヒを中心に起こった現象。その情報の奔流は情報統合思念体にも解析できず、情報統合思念体がハルヒを観察するきっかけとなった。
未来人関連 [編集]
未来人
「未来」から来た調査員。いくつにも分岐する未来のうち、自分達の属する未来へと向かうように歴史を調整することを目的としている。
禁則事項
単に「禁則」とも呼ばれる。未来に関する情報や現代では未到達な知識など、過去の人間には教えてはいけないことを指す(ただし、その情報を知っている人間には話せる)。未来人は時間移動の際に強力な精神操作を受け、禁則事項にあたる情報は口にできないようになっている。また未来人個人の権限とも関係しており、より権限が与えられていれば禁則事項の制限も緩和される。
既定事項
未来から見て、過去に歴史的に発生するとされる事柄。ただし単に過去に起こった出来事を指すのではなく、各未来人派閥にとって有益な結果に繋がる事項が「既定」事項とされる。
TPDD
「時間平面破壊装置」のことで、正式名称「タイム・プレーン・デストロイド・デバイス (Time Plane Destroyed Device) 」の略。平たく言えば、タイムマシン。「航時機」とも呼ばれ、未来人が時間移動の際に使用する。デバイスと言っても物理的な装置ではなく、概念的な存在であるという。第3巻『退屈』収録の「笹の葉ラプソディ」では、みくるが一度「紛失」している。みくるの権限では使用できず、未来からの許可が必要となる様子。
長門たちから見れば、これを使った時間移動はかなり原始的なものであるという。
時間平面理論
「時間」はその時間毎に区切られたデジタルな現象である、という未来の理論(デカルトの「連続的創造」という思想に似ている)。時間は「アニメーションを構成する静止画の集まり」であり、現代における未来人の存在はその中に描かれた「いたずら書き」のようなものである、未来人が過去に来ても未来を変えることはできないと説明されているが変わるのではなく未来人が介入した歴史が未来の姿である(作中では規定事項と表現されている)。大元の基礎概念は、ハルヒが第8巻『憤慨』において気まぐれに書き、文芸部会誌に掲載した論文に基づく。
時間震動
「時空震」とも呼ばれる。時間平面に力が加えられて変異する際に発生する、時空の揺れのような現象であると推測される。3年前にハルヒが大きな時間震動を発生させ、「時間断層」と呼ばれる大きな隔たりが時間平面に生じ、その影響で3年前より過去への時間遡行が不可能となった。1人の人間が時間平面に干渉するということは通常では考えられず、詳細は謎である。
STCデータ
感度時間制御(Sensitivity Time Control)のことで、対象のものとアンテナとの間の距離が変化することによって生じる受信信号の時間的変化を平滑化するために、受信機内部の利得を時間によって変化させるもの。 『消失』より、12月18日の早朝に何者かにより改変されてしまう。
閉鎖空間
ハルヒの精神状態が不安定になると出現する空間。出現する頻度も場所も不定で、生命体が存在しない以外は現実の空間と構成するものは同じだが、全体に灰色がかっていて薄暗く、太陽の光は見えない。電気は通っているらしく、スイッチを入れれば電灯はつく(ただし電話やテレビ、ラジオなどの通信手段は機能していない[注釈 3])。通常、物理的な手段では侵入できず、古泉のような超能力者の力を用いて入る。閉鎖空間での物理的被害が現実世界に影響を及ぼす事はないが、放置すれば空間が拡大し、最終的には現実世界と入れ替わってしまうとされている。
なお、佐々木も閉鎖空間を発生させているが、これはハルヒのものとはかなり異なる。詳細は登場人物の佐々木の項を参照。
神人(しんじん)
閉鎖空間に出現する青い巨人。ハルヒの精神的ストレスが具現化したものとされる。彼女の心のわだかまりが限界に達すると出現し、ストレス解消の役割があるためか、ひたすら破壊活動を行う。神人が消滅すると閉鎖空間も消滅するが、逆に言えば神人が消滅しない限り閉鎖空間も消滅しない。発生自体を阻止するには現実世界でハルヒのストレスの原因を取り除く以外にない。
超能力
古泉が持つ「超能力」は閉鎖空間を察知・侵入し、赤い球体に変化して神人へ攻撃できるというもので、それ以外は普通の人間と変わりはない。『憂鬱』の3年前に突然発現したらしく、古泉はハルヒによってその力が与えられたと語っている。彼と同じ力を持つ超能力者は地球全土で10人程度しかいないらしく、その全員が「機関」に所属しているという。
「機関」と敵対している橘たちの組織も「超能力」を持つが、彼女たちの場合は『憂鬱』の3年前に佐々木によって与えられたものと認識しており、佐々木の閉鎖空間に入ることができる。
「機関」
古泉と同じ「超能力」を持つ者たちによって3年前に発足された、ハルヒの監視を目的とした組織。古泉と同じ力を持つ超能力者が数名所属しているようだが、古泉も組織の実態を把握しきれていない様子。彼以外にも数人のエージェントが県立北高に潜入しており、中には生徒会長のようなある程度事情を把握している外陣協力者もいる。世界の「現状維持」を活動目的としており、閉鎖空間における神人を消滅させるほか、ハルヒがストレスを溜めないために様々な対策(イベントの開催など)を実施している。数々のスポンサーがついているらしく、莫大な金額を動かし、主にハルヒのストレス対策に費やしている。また情報収集力にも長けており、キョンや北高生徒の経歴調査を徹底的に行ったり、長門以外のTFEI端末との接触にも成功している。
すべての人や物は、神であるハルヒが3年前にその形態を予め保った状態で創造したという説を提唱しており、彼女が世界の「神」であるという理念のもとに活動している。みくるが所属している未来人一派とは、ハルヒの能力の解釈や求める役割に違いがあり、敵対とまではいかないが小康状態であるらしい。
最終更新:2011年01月03日 21:17