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松下大三郎『改撰標準日本文法』 はしがき

一 この書は、大正十三年の十一月に始めて刊行し三囘ばかり小修正を施して來たのを、昭和三年四月に至り思ひ切つた大修正をする爲に全部を書き直して改版し書名へ改撰といふ文字を冠して刊行したのであるが、今囘また若干の小修正を加へ昭和五年訂正版と名づけるととにした。
二 昭和三年版が始めて刊行された時、ほゞ同時に松尾捨治郎氏の國文法論纂と安田喜代門氏の國語法概説とが世に著れた。この二書は眞摯なる態度を以て多年研究された蘊蓄の發表であつて、國語學有數の名著であることは學界の認むる所である。されば私のこの昭和五年版にも、この二書から得た知識を取り入れた處が三四箇處有る。
三 昭和五年版の冊行に先だつて、今年二月私は標準日本口語法を發表した。標準日本文法は文語を主とし口語を從としてあるから、口語だけに就いては標準日本口語法の方が詳しい。世の口語研究家の一瞥を煩したいと思ふ。
四 本書に用ゐた假名遣の中、「こう」「そう」「まう」の三つは國定教科書などと違ふ。私は「かう」「さう」「もう」ではないと思ふ。その理由は「こう」「そう」に就いては本書第九六頁に論じてある。「まう」が「もう」でない理由は「まう一度」などの「まう」は「今」であり、「まうだめだ」などの「まう」は「今は」であるからである。

 昭和五年四月 著者

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最終更新:2015年07月19日 12:00