原辭論は文法學の一部門であつて原辭の詞中に於ける文法的法則を論ずるものである。
原辭は言語の最低階級であつて詞を構成する成分である。例へば「我等」は一詞であつて「我」と「等」との二成分より成るから「我」と「等」とは原辭である。又「我」といふ詞は「我」といふ成分から成るといふ見方に於て、その出來上つた「我」は詞であり、成分としての「我」は原辭である。
「磯山おろし」といふ詞は「磯山」と「おろし」との二成分より成るのであるから「磯山」は一原辭であるが、その「磯山」は「磯」と「山」との二つより成るものである。「磯」や「山」の様なまう分けられない原辭を單辭と云ひ、「磯山」の樣な原辭と原辭との結合した原辭を連辭といふ。
原辭が詞を構成する法則は之を次の如く分けて考察するべきである。
本章は此の圖に於ける〔一〕の内面的性質を論じ以下章を改めて〔二〕〔三〕〔四〕を論ずる。そうして連辭も一つの原辭であるから其の單獨的性質の論はその内部に於ける相關的關係の論でない限り本章の範圍に屬する。
原辭の一般的性質はその定義に盡きる。唯その各種類に特殊なる性質は分類に依らなければならない。
第一期に於ける日本文法學は原辭を分けて言と辭との二種とした。言を更に體(無活用)と用(有活用)とに二分して原辭の全軆を體言、用言、助辭の三種とした。私は此の分類は頗る意義あるものと思ふ。唯少し訂正して「言」を完辭と云ひ、別に字音を加へて原辭を次の三種にしようと思ふ。
一、完辭 二、助辭 三、不熟辭
此の三種は西洋文典に所謂る品詞とは違ふ。品詞は詞の種類であるが、この三種は原辭即ち詞の材料の種類てある。.
之の三種はその内部に小別がある。今之を表にすれば下の如くである。
最終更新:2015年07月19日 20:59