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松下大三郎『改撰標準日本文法』第二編 原辭論 第一章 原辭の性質及び分類 第二節 完辭

完辭は自己單獨に一つの四となり得る原辭である。例へば「道」「山」「鶯」「聞く」「遠し」「高し」「若し」「或は」「あゝ」「あはれ」などの類がそうだ。これらは其のまゝ詞になるのであるが、之を詞と云ひ完辭といふのは見かたが違ふからである。「道遠し」などいふ時の「道」は詞であるが、「道」といふ詞は如何なる材料を以て構成されてゐるかといふ段になると「道」といふ完辭から構成されてゐるのである。

右に擧げた樣な完辭は單獨なる完辭であるが、又「山里」「遠道」「長引く」「見忘る』などの樣なものも各一つの完辭であつて、之を連辭の完辭といふ。これもそのまゝ一單詞となる。
完辭の中には右に擧げた樣な本來の完辭の外に完辭でないものゝ完辭化したものがある。「鉛筆」「海綿」「高山」などはもと完辭でない「えん」「ひつ」「かい」「めん」「かう」「さん』が相結合して完辭化したものである。
完辭は活用即ち語尾の變化の無いものと有るものと有る。第一期時代の文法學では無活用の完辭を體言と云ひ、有活用の完辭を用言と云った。しかし第二期に至つては名詞、代名詞を體言と云ひ、動詞、形容詞を用言と云ひ、副詞などを體言から除いた人が多いから、體言、用言といふ語は不朋瞭な語となつた。私は體言、用言といふ語を用ゐたくないと思ふ。

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最終更新:2015年07月19日 21:00