国歌大観例言

例言
一 本書は古歌の凡ゆる一句より其の出典を求むるに便ずるものにして、主編索引、助編歌集の二卷より成る。

二 索引は歌集に收むる所の長短歌をそれ<各句に分解して之を五十音順に排列し、各句の下に書名及び歌集に符合する番號を記す。

三 索引に同一の句十一以上有る時は其の句の次に|號の下に次の句を記し、次の句亦十一以上有る時は更に=號の下に復其の次の句を記す。但し最終の句に在りては次の句に代ふるに前の句を以てし、|號を下に附す。

四 歌集は二十一代集、萬葉集、新葉集を收め、又別に諸書に散在する古歌を集録せる者を加ふ。而して索引に便せむが爲に各歌の頭に番號を記す。

五 歌集の原本は流布本を採り諸本を校合して異同を註し、疑ふべきは何々歟或は如舊とし妄に私見を以て改めず。萬葉集は特に寛永版に從ひ一字一画を忽にせず、誤字の明瞭なるものに至るまでもとの儘を飜刻す。唯訓は諸本を參考して妥當と思はる、ものを取れり。二十一代集其の他假名交體のものは假名遣を訂正せり。又字數の都合上假名を、漢字に改めたるも少からず。

六 今索引法を例示すること下の如し。
「とまをあらみ」の一句より其の全首を求む。索引を引くに「とまをあらみ後撰三〇二、同新古四三一、同續後撰三七八」と有り。歌集を閲するに、後撰集に天智天皇の御製として
 三〇二 秋の田のかりほの庵の苫を粗み我が衣手は露に濡れつゝ
とあるを見る。
「秋の田のかりほの庵の」よりその歌の全首を求む。索引に「あきのたの」の處に「かりほのいほの後撰三〇二」と有り歌集を閲すること前に同じ。
「足引の山時鳥鳴きぬなり」より全歌を求む。索引に「あしひきの」の處に、「ーやまほとときす」と有りて其の下に「=なきぬなり新後撰一七八」とあり。歌集に就きて新後撰集を檢せば全歌を得べし。.
「葦の云々秋風ぞ吹く」より全歌を求む。索引に「あきかせそふく」の處に「あしのかれはにー
新古一五九四」とあり。新古今集一五九四を檢すべし。

七 本書は嘗て明治三十四年より翌年に亙り分本七册を以て刊行せしものなり。今回その發見せられたる舊版の誤謬を訂正して第八版を刊行す。
昭和六年二月十一日 編者識

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最終更新:2016年11月15日 00:54