~翼人華伝~
「渡会です。よろしく」
転入挨拶はこんなもんだ
よくあるパターンだし、特にひねりを入れる必要も無い
「それじゃぁそこの空いてる席に座ってね」
ちょー綺麗な担任の指示された窓際の席に座る
…と、隣の席が不運と言うべきか、神奈がいた
「やったね、ヒロ君。隣だねっ」
なにが嬉しいのかわからん
「そか?でもまぁ、知った顔があるのは楽かもな」
「む~…よくわからないですっ」
神奈はちょっと頬を膨らませてすねてた
「一番後ろの窓際はなんとも言いがたい最高な場所だなぁ」
「あ、ヒロ君。授業寝るつもりでしょぅ…」
呆れた顔の神奈
「あったりめ~だ、授業なんざハナっからやる気ねぇもん」
「だめですよ~?ちゃぁんと勉強しなかったら」
「嫌だ」
「やらなかったら、朝ごはんとお夕飯抜きだよ?」
「それも嫌だ」
「じゃぁやろうよ?」
「嫌だ」
「もぅ…わがままだねぇ」
肩を落としてうなだれる神奈
「あらあら、神翼さんと渡会君仲良いわねぇ」
不意に担任の声が来た
「はい、一緒に住んでますから」
テレながら神奈が言った
…ってヲィ!
「うわっ!神奈、なんで言うんだよ!」
「え?だって、本当じゃない」
「いや、でも、あんまり…」
『ヒューヒュー』
「…」
「どうしたの?ヒロ君」
「あらあら、渡会君転入早々石になっちゃったね」
…誰か、たしゅけてー
「渡会君、狙おうかと思ってたのにぃ~」
「神翼とられちまったぁ~!相沢~!」
「つか、お前と神翼じゃ、月とすっぽんだ」
…なんかいろんなことも言ってるし…
「…寝る」
「わぁ!ヒロ君寝ちゃダメだよぉ~っ」
『やっぱり仲いいなぁ~』
「ZZzz..」
寝た!寝たつもりだ!つもりでも寝たんだ!
「…ヒ・ロ・く・ん」
この甘ったるい淫靡な響きは一体…
「お・き・て・ヒ・ロ・く・ん」
「うがぁぁっ!なっ…なんだぁ!?」
「あ、ようやく起きました~」
…俺、汗ダクなんですけど…
「アジィ…」
「今、冬だよ?」
「誰のせいだよ全く…」
「…発情ですか?ヒロ君」
…もう何も言うまい…
夜
「ったく…転入早々変なことすんなよ全く…」
「?変なことって?」
「おこちゃまはだぁってろ」
「なんだとぉ~?」
ゲシッ!
「うがっ…額にアッパー繰り出すな!」
「ヒロが変なこと言うからでしょ」
「…うぜぇ、俺、もう風呂入って寝る」
「あっ…ヒロ…」
ガラガラッ
「…ん?なんだこれ」
脱衣所で拾い上げたのは、パンツとブラ
…これってまさか…
ガラッ!
「…げ」
「…ヒロ君?」
「…」
「…」
「…」
「…なにしてるの?」
「あっ、いやっ、風呂入りに来ただけで」
「なぁ~んで、私の下着を持ってるのかな?」
…笑いながらこっちを見てる
…怖い
「いや、中に入ったら何か落ちてるから、拾っただけだ!」
「…それじゃぁなんでまだ握り締めてるのかな?」
「これはっ…」
「私、どうやって着替えればいいの?替えのパンツも一緒に握っちゃってるじゃん…」
「…うわぁ」
ぴたぴたぴた
まずい…ヒジョーにまずい!俺、逝ったかも…
「ヒロ君、こっち向いて」
俺の胸に抱きかかってくる
「…」
ふと俺は神奈の背にあるモノを見た
「…翼…?」
「そう…あなたの使命を請うものよ?私は」
「俺の使命?」
「鬼…うぅん、まだ早いよ。あなた自身がちゃんと気づいたらね」
ふと神奈が離れる
「そんなこと言われてもなぁ…ぁ」
…やばい、全裸の神奈を見てしまった…
「ヒロ君。今、しっかり見たよね…」
…渦巻く怒りのボルテージ
あの温厚な神奈が…ここまで変わるのか…
「い、いやっ!ちょ…まっ!」
ゴィィン
「う"ぉ…」
「もう…全くヒロ君は…」
「…三途の川の畔を走り抜けてた…」
「ヒロ君がすぐ廊下に出ればよかっただけの話でしょう?」
「んなん、あんな話されたら出づらくなるだろ…」
疲れた…ヒジョーに疲れた…
もう、このまま寝ようっと…
「あ、寝ちゃうの?ヒロ君…」
「ZZzz..」
「あらら…寝つきは相変わらず早いんだから。もう…」
夜中に目が覚めた
「…そういえば、まだ何もやって無いな…」
ここに来てからゴタゴタしてて、作戦のことは頭から抜けてた
「たしか、学校所有の山の半ば辺りにある洞窟に1つあるって話だよな…」
資料をめくりながらつぶやいた
「…今のうちに回収しておくか」
玄関から出ると、神奈達に見つかるかもしれないので、窓から出た
「いよっと…さぁて、さっさとかたずけっか」
「ヒロ君…やっぱりあそこに行くんだね…あなたの中にいる鬼が目覚める場所へ…」
「この辺りだな…」
『ククッ…』
「!?」
とっさに後ろを見る
「何も無い…か」
『わざわざ俺を復活させてくれるとはな…』
「…誰だ」
『俺はおまえ自身だ。最も、お前の中にいる鬼、とだけ言っておこうか』
「なんだと…?」
『お前の中は少々居心地が悪かった…』
「…」
『だが、それも今日、この場所で終わりだ。お前にこの俺の力なぞ扱えぬからな』
「なにっ?」
『そう…我の真の名は…ブラスト。この世の生きとし生ける者の頂点に立つ者だ」
奴が具現化されていった
「なっ!?」
強靭な体躯に鋭利な爪
1m90はありそうな大柄な体
「まさか…」
記憶がフラッシュバックのように舞い戻ってくる
「ヒロ君、はやくいこーよー」
「ヒロ!ほらほらぁ!」
「引っ張るなっ!洞窟探検なんて今時古いだろうが」
「そうかしら?」
「今でもドキドキだよ?ボクは」
「ガキが」
「なんだとぉぅ!?」
「や、やめなよぅ…二人とも」
ガガッ
「…!」
「な…なに?今の…」
ガッ!
「マズいな…神奈、木葉、すぐにここから逃げろ」
「ヒロも一緒に!」
「あぁ、そうだな。いくぞ」
俺たちは走り出した
タッ!ガッ!ダッ!
「ちっ!迅い…」
刹那
ザクッ!
「がっ…は」
「ヒロ君!」
「ヒロ!」
『エモノハニガサナイ…』
鮮血が飛び散る
「…がはっ…かっ…は」
一気に呼吸が苦しくなる
「ヒロ君!…ヒロ君!」
神奈が泣きながら俺の体を揺すっている
「ヒロ…」
木葉はガタガタ震えながら異様な”奴”を見ていた
『神翼一族ノニオイ…コノ雌ヲ犯セバ俺ハ最強ニナレル…フハハ!』
「さ…せるか…よ…」
俺はズキズキする胸を押さえながら言った
『ナンダト?小僧、貴様ニ何ガデキル』
「か…ん…な…あれを…やれ」
「えっ…!?で、でも…」
「は…やくっ!」
「う…うん」
『ナンダ!?』
奴の周りに白い煙が包んでいった
『ガッ…!?ナッ…ナンダ!?』
「鬼、汝が四肢五体に枷を架け封印をす」
『ガァァァァァ!!!』
「…」
「ヒロ君!」
「ヒロ!」
ここから意識が切れた
俺はこの出来事と、神奈と木葉に関する記憶がぽっかりと抜け落ちていた
鬼を俺の体に封印したことを引き換えに、記憶までも封印してしまったのだった
「…思い出した。お前は俺の中にいた鬼…いや、俺の中に封印されていて鬼」
「ホウ…封ガ解ケタト同時ニ記憶ガ蘇ッタヨウダナ」
「…だが、今またここにお前が復活したのなら…」
―あの時できなかった事―
「お前を…倒す」
―そう、俺は鬼を倒さなければ
―…神奈達を守る為に!
「フハハハ!我ヲ倒スダト!?笑止!」
「勝手に笑ってろ…参るっ!」
縮地で駆け出す
「遅イ!」
一瞬の閃光
…ブシャァァァ!
散る鮮血
崩れる体
「ククク…我、無敵!」
俺は…ここで力尽きるわけには…いかない
神奈達や雪奈達を守るために…
ここで…くたばる訳には…!
―ドクン
「…」
「ナンダ?」
「…俺は…」
「ナッ…ナゼダ!?」
―ドクン
「…俺は…ここでくたばるわけには…」
「確カニ胸部ヲ貫イタハズ…!」
「くたばるわけには…」
「チッ!今度コソ、クタバレェェ!」
―ドクン!
「くたばるわけにはいかねぇんだよぉっ!」
ほぼ光の迅さ
鬼の左腕が飛んだ
「ガァァッ!?」
「…お前は…俺の糧となり…コノ…鬼神ノ力を高める為のモノとしてやる…」
「鬼…神ダト!?バカナ!ソンナハズハ…」
右腕が飛んだ
「…クッ…クソッ」
「終わりだ」
「やばっ!張り切りすぎて血まみれになってしまった…」
TシャツからGパンが真っ赤
「やべぇ…神奈、絶対気絶する…どーしよ」
渋々洞窟最深部にある核鉄を回収した
「明日休みだし、隠れて洗っちゃおっかな」
「ヒ~ロ~く~ん~?」
…終わった
「な~に、しよぉ~としてんのかなぁ~?」
「い、いやぁ…えっと…その…」
「まぁとにかく、家に帰りましょ?」
「…ほっ」
「今、安堵してなかった?」
ギクぅ
「い、いえいえ決して」
「そう?まぁいいわ。とりあえず、ヒロ君は跳躍で戻った方がいいかもね」
…ん?
「そういや、なんでお前ここにいんの?それに、跳躍…」
「なんとなくよ、なんとなく。ほら、早く早くっ」
「まぁいいや。わかったよ。先に帰ってる」
しゅっ
「ようやく…私の勤めも終わりそうね…あとは後継者探し…かな」
俺は鬼神の力を制御することができるようになった
奴を取り込んだことがいい方面で作用したようだ
物語はまだ続いていく…
最終更新:2006年03月24日 05:45