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基礎生理学

基礎生理学まとめ


目次


われわれの子づくりの方法


  1. オスとメスという性を持つ集団は一様でなく、多様性を持つ
  2. 性は病原菌対策のために発生したと考えられた
  3. 単性の生殖では、次世代は常にただのコピーになってしまい、それでは病原体につけ込まれやすい。それに対して有性の生殖では次世代は常に親の世代とは違っているので、病原体は単一の戦略では勝つこどができないと考えたからである
  4. 「性を持つこと」と「雄雌があること」は同じではない。「非雌雄型」の性がある
  5. 卵子に精子が複数入り込んだ受精卵は自然界では全く生存不能である
  6. 卵子も精子も生体の細胞に比べると、DNAの量がきっかり半分になっている。あらゆる細胞の中で、生殖細胞だけが行う減数分裂という特殊な分裂によってそれは達成される。


無限の可能性が否定されたとき、個性が生まれる


  1. 一卵性双生児は1個の精子と卵子の受精から、2体の赤ちゃんが生まれることになる。つまり、遺伝的には全くの同一であり、自然界におけるクローンと言える。
  2. 受精卵の遺伝子はすべて「読み取り可能状態」である。
  3. 細胞の全能性の喪失とは、その細胞が個性を与えられ、その個性に沿った遺伝子しか読まないようになることにある。
  4. 細胞の個性化の過程で、DNAそのものにメチル化という修飾が加えられ、一部遺伝子は読み取り不能になっている。
  5. 「クローン羊ドリー」は乳腺細胞の核と、脱核した他のメスの卵母細胞から作成された。
  6. この乳腺細胞は分化した組織の細胞であるが、栄養分の少ない培地で培養することによって、DNAがリセットされ、読めなかった遺伝子まで読めるようになった。
  7. クローンは同じ遺伝情報を持つので、同じ優れた性質と同様に同じ劣った性質を持つ。そのため、安定した環境では地球を覆い尽くす程の繁栄が可能かもしれないが、厳しい条件に晒されたときには、全てが同時に死に絶える事になりかねない。
  8. ES細胞は「胚性幹細胞」の略語であり、胚盤胞の内部細胞塊と同義に使われている。
  9. あるヒトのES細胞は、脱核した受精卵にそのヒトの体細胞の核を移植し、これを胚盤胞まで発生させ、内部細胞塊を取り出し培養することで樹立される。
  10. 再生医療とは、最初に患者の体細胞から核を取り出し、脱核したヒト受精卵に核移植し試験管内で発生させることで患者のES細胞を作製する。次にこのES細胞を試験管内で分化させ、患者の失われた組織に移植する治療法のことである。この治療法の利点は移植した組織に対する拒絶反応がないことである。
  11. 現在、様々な種類の細胞がES細胞から作る研究が進められている。各細胞はそれぞれ固有の機能を発揮するため、病気や怪我でそれらの機能に障害が生じた患者のES細胞を移植してやれば、拒絶反応がなく、失われた機能を取り戻す再生医療が実現出来ると期待されている。


宿探し


  1. 胚盤胞の外側に位置した細胞は将来胎盤となり、内容物である不定形の細胞塊が胎児となる。
  2. 胚盤胞はパパイン様タンパク質分解酵素で子宮内膜を襲撃する。それで開いた空洞に、自らの栄養性外胚葉を送り込む。これが着床である。
  3. 着床という過程が「侵略」である以上、母体側には「防御」のメカニズムが働き、卵は母体の免疫システムによる攻撃を受け死ぬ場合がある。
  4. 免疫には獲得免疫と自然免疫がある。血液のABO型は自然免疫が成立している。
  5. 自然免疫は、主として、細菌やウイルスに対して働き、最初の侵入で宿主の免疫システムによる攻撃を受ける。
  6. 獲得免疫は外来物の2回目の攻撃に対処する仕組みである。
  7. 血液のABO型は赤血球の細胞表面抗原の糖鎖の違いにより決められている。
  8. 胎児と母体の血液型が一致して胎児の血液が母体に輸血可能ならば適合、不一致によって輸血不可能なら不適合と定義する。
  9. 血液型の異なる胎児は、母親の免疫システムによる攻撃によって死亡することがある。
  10. 母親は妊娠中に、胎児の血液表面についての情報が伝達され「感作」という免疫反応が起こる。
  11. 主要組織適合性抗原HLAはどの細胞でも発現し、細胞のIDカードとして機能し、どの細胞表面にでも発現している。
  12. 両親が相似したHLAを持てば、胎児のHLAは母親のHLAと極めて良く似るようになり、これが習慣性流産の原因となる。
  13. トロフォブラストは胎児がつくる特殊な膜で、その内側に胎児の欠陥があり、胎児血と母体血が直接接しないようなバリアの役割をしている。
  14. このトロフォブラスト膜は母親の抗体も胎児の抗体も乗り越えられるが、母親の細胞は全く入っていけないようになっているから、攻撃力の強いT細胞は全く侵入出来ない。従って、母体が移植臓器を拒絶するような激しさで胎児を拒絶することはないのである。
  15. 胎児抗体は自由にトロフォブラスト膜を通過し、母体血管内に出て行く。母体は胎児抗体に対する免疫反応を起こし、結果的に胎盤の腫れを引き起こすが、これが、胎児にとって好適な環境になっている。


免疫システム(プリント)


  1. 免疫システムには細胞性免疫と体液性免疫がある。
  2. 細胞性免疫の仕組みも体液性免疫の仕組みも、骨髄の幹細胞から分化したマクロファージによって、侵入した外来物(抗原)が補食され、外来物(抗原)の特徴が他の免疫細胞に伝えられることから始まる。
  3. 細胞性免疫は、骨髄で作られた幹細胞から分化したT前駆細胞が胸腺で自己と非自己(外来物)を区別するように訓練され(T細胞になる)、さらに分化したキラーT細胞、ヘルパーT細胞によって外来物を攻撃する仕組みである。
  4. 体液性免疫は、骨髄で作られた幹細胞から分化したB細胞が、外来物(抗原)の特徴が伝えられるとその抗原を捕獲出来る抗体(抗原特異的抗体)を産生、放出する仕組みである。
  5. 体液に放出された抗体は抗原と反応する、これを抗原抗体反応といい、外来物(抗原)を捕獲し分解する。
  6. B細胞は、抗原の情報をある期間保持し、2回目に同じ抗原が侵入したときに直ちに反応し抗原特異的抗体を産生放出する(細胞感染やウイルス感染に対するワクチンの効果)。
  7. AIDS(後天性免疫不全症候群)はacquired immunodeficiency syndromeの頭文字で、日本語ではエイズと略称される。
  8. エイズはエイズウイルス(ヒト免疫不全ウイルス : HIV、human immunodeficiency virus)によって引き起こされ、T細胞に感染し破壊するため、免疫システムが機能しなくなる。


オス・メスはコインの両面である


  1. 胎生初期には生殖巣には雌雄の差異は存在しない。
  2. 性の決定はY染色体の有無による。
  3. Y染色体上のSRY遺伝子が働くと、睾丸の発達が決まり、「男」が出来上がる。
  4. SRY遺伝子の産物は転写因子で、「他の遺伝子の読まれ方を変える」という一種の司令塔タンパク質である。


生命の基本デザイン、そして逸脱


  1. 体の前後や体節を決定するホメオティック遺伝子は、高等な動物から下等な動物や植物までにも保存されている。体づくりの基本ルールは、動物と植物で分かれるよりも前の、太古の時代に定められたと考えられる。
  2. 体づくりのシステムは単純で、卵内に存在する(つまり母体に供給した)物質が不均等に分配されていて、その物質の濃度勾配に応じて遺伝子の読まれ方が決まり、結果として、頭になったり尻になったりする。
  3. 異なった生物に同等の器官が存在するが、これを相同器官という。


準備完了


  1. 呼吸と血液循環システムは、体を構成する細胞が生きていくために酸素を利用し、老廃物として二酸化炭素を出すのを効率よく処理するためにある。
  2. 成人の血液の循環には、血液に酸素を搭載したり二酸化炭素を除去するための肺循環と、全身の各部分へ血液を送り込む体循環がある。
  3. 肺循環は右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房への血液の流れを、体循環は左心室→大動脈→全身→大静脈→右心房への血液の流れをいう。
  4. 胎児は、胎盤から供給された酸素を豊富に含む血液を、静脈を使って心臓に一気に運ぶ。
  5. ほ乳類胎児の心臓には、成人(成獣)には見られない卵円孔という穴があいていて、右心室の血液は左心房に流れ、左心室を経て大動脈へと流れて行く。これはほ乳類胎児の心臓が、脳などの重要な器官に十分な酸素を供給するために、肺などの重要性の低い器官をバイパスする仕組みである。
  6. 卵円孔を通るバイパスは、出生後数週間で自動的に閉鎖され、2心房2心室の心臓が完成する。
  7. 胎児の血液には母親から効率良く酸素を奪うために、特別なヘモグロビン(これをγ鎖と呼ぶ)がある。
  8. ヘモグロビン遺伝子はα鎖、β鎖、γ鎖、δ鎖が存在するが、これは原子グロビン遺伝子が進化の過程で遺伝子重複をした結果、生じて来たと考えられる。
  9. 遺伝子重複は遺伝子レベルの進化の仕組みで、原子遺伝子が重複して二つの遺伝子になり、片方が新機能遺伝子となる。例えばヘモグロビン遺伝子や色覚遺伝子がこの仕組みで出来たと考えられている。


産みの苦しみ


  1. 胎児の脳下垂体から分泌されるオキシトシンというホルモンによって出産が引き起こされる。
  2. オキシトシンは1953年に化学合成され、陣痛促進剤として使われている。
  3. 脳化指数は同じサイズの体に換算したときの脳の大きさを表している。この数値で動物の「頭の良さ」をある程度推し量ることが出来る。
  4. 脳化指数はヒトで最大値となり、ヒト新生児は特に頭でっかちである。
  5. ヒトの頭骨は4つのプレートが組み合わさって出来ているが、胎児ではまだ嵌め合わさっていないので、自由に動き、母体の産道をすり抜ける事が出来る。


母乳の起源


  1. 母乳は汗に起源を持つ。もっとも原始的な授乳は、汗という形で子供に与えられていたと考えられる。
  2. 浸透圧調整を行うための尿産生のコントロールは、原始的生物ではプロラクチンというホルモンが行っていたと考えられる。
  3. 進化の過程で、生物は水中から過酷な環境の陸へと上陸し、尿の調節は自律神経がコントロールするようになった。「緊張するとトイレに行きたくなる」のはこのためである。
  4. 原子ほ乳動物が「汗をかく」ことによって、浸透圧調節と体温調節を始めた時に、プロラクチンがこの調節を行うようになった。
  5. 原子ほ乳動物が大型化し、体温調節が最重要課題になると、この調節は神経が行うようになった。「精神的にストレスをかけられたときに冷や汗がでる」のはこのためである。
  6. 汗という形で栄養を放出すると、昆虫を呼び寄せたり、微生物の繁殖による汚染が考えられる。それらの寄生体に悩まされない授乳器官を発達させる過程でプロラクチンが母乳生産のコントロールをするようになった。
  7. ホルモンとは、環境情報を直接受け取ることができない細胞に伝達する仕組みである。
  8. ホルモンは直接細胞に取り込まれる必要がなく、アンテナ役のレセプターに感知されることで機能を発揮する。


消化管の仕組みと働き(プリント)


  1. 消化管は口から食堂、胃、十二指腸、小腸、大腸、直腸と肛門までの曲がりくねった長い管で、その長さは成人で約9メートルにもなる。
  2. 消化管には消化液を分泌して消化を助ける唾液腺、肝臓、膵臓がついている。肝臓でつくられた胆汁は総胆管を通り胆のうに一時的に蓄えられる。肝臓は消化液である膵液を分泌する外分泌部とインシュリンやグルカゴンを分泌する内分泌部からなっている。胆汁が通る管は、膵臓からきた膵管と一緒になり、十二指腸に開口し胆汁と膵液を腸管内に送り込んでいる。
  3. ヒトの胃液の分泌量は1日2〜3リットルで、塩酸、ペプシン、粘液を含んでいて、食物の摂取により変動し、空腹時の胃内のpHは1〜2であり、食物摂取後は5〜6に上昇し、胃内容物が小腸に移送されるに従って、1〜3に戻る。
  4. 食物の塊が十二指腸に送られると、そこに分泌された膵液、胆汁、腸液とともに混合され、消化酵素によって本格的に消化が始まる。空腸、回腸から大量の腸液が分泌され消化が行われる。
  5. 膵液には重炭酸塩が含まれ、小腸内をアルカリ性に調節し、同時に含まれているα-アミラーゼ、リパーゼ、トリプシンが働き易いようにし、糖質、脂質、タンパク質の消化が行われる。
  6. 小腸で消化された栄養素は、小腸の分節運動と蠕動の助けを借りて、極めて効率良く腸繊毛から吸収される。


肝臓の働き(プリント)


  1. 肝臓は三大栄養素である糖質、タンパク質、脂質の分解と貯蔵と合成を行っている。
  2. 酸素を運ぶ血液中の赤血球の寿命が来ると肝臓で分解され、赤血球の成分であるヘモグロビンはビリルビンという茶色の色素となり、これが胆汁の主成分である。
  3. 肝臓は毒物の代謝を行っている。腸から吸収した栄養分を受け取った血液は、動脈(門脈)を通って肝臓に運ばれる。腸では栄養分だけでなく有害物質も吸収していて、肝臓を経由して毒を除いている(解毒)。解毒には毒性自体を低下させる場合(アルコールなど)と、毒物を腎臓から捨てる形にする場合(アンモニアなど)がある。


母乳の成分と意義


  1. 母乳の成分には栄養分と免疫抗体が含まれている。後者は新生児が自前の免疫力を欠いているのを補っている/
  2. 母乳に含まれる糖の種類は乳糖であり、新生児は乳糖を分解するラクターゼという酵素を持って、乳糖を栄養源として利用出来る。
  3. ラクターゼの腸内の酵素濃度は出生後、急激に低下していく。つまり、母乳の中の乳糖はほ乳類の成熱個体では栄養源にならないのである。


母乳の与えるもう一つのもの


  1. 生後しばらくの間は母体が供給する(あるいは、生まれる前に供給された)抗体が、新生児の体を守っている。
  2. 抗体には全てに共通する不変な部分(C領域、constant)と、各抗体にユニークな可変部分(V領域、Variable)が存在する。
  3. 侵入してきた病原体に対する抗体は、その病原体を特異的に認識するV領域と共通のC領域等の抗体に必要な遺伝子を一カ所に集めるDNAの再配分、組変えが起こり、その結果出来た免疫細胞から産生される。
  4. 麺英気細胞は全て、骨髄に存在する幹細胞から生まれてくる。
  5. 人間は一生のうち、寿命の1パーセントを母親の胎内で無菌の環境で育つ。新生児としてこの世に生まれると間もなく皮膚や気道、消化管などの粘膜で色々な菌が増殖する。
  6. 出生直後から赤ちゃんの腸内では、クロストリジウムなどの、腐敗菌が増殖し始めるが、乳酸菌やビフィズス菌は有害な菌の増殖を抑える事が出来る。このため乳酸菌やビフィズス菌は腸内の善玉菌と呼ばれている。

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最終更新:2007年01月17日 13:49
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