765 : ◆fj8531kkRc :2007/11/05(月) 00:04:19.91 ID:A3+84Ylf0
>>759続き

「ザオリク!…ザオリクぅ…うぅ…」
何度も、何度もザオリクを唱える。しかし、最愛の人は帰ってこない。
やっぱり僕のレベルじゃ無理なんだ、おじいちゃんに教わったときに、もっと練習しておけば良かった、そんな考えが頭をよぎる。
もうマジックポイントも気力もない。次が、最後のチャンスだ…。

「お願い、神様ぁ…ジャスティスを、僕の大好きな人を返してッ!」

渾身の願いを込めて、呪文を唱える。ジャスティスの身体が黄金色に輝いた…が、それも一瞬の事だった。

ジャスティスは、帰ってこなかった。

万策尽きたとはこういう事だろう。中島に出来ることは、友の、最愛の人の亡骸にすがりつき、嗚咽を漏らすことだけだった。
そのとき、

「どきな、坊主」

背後から声がした。振り返るとそこには、ジャスティスの家に居着いていた居候、タマが仁王立ちで立っていた


771 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/05(月) 00:17:44.95 ID:oYA+EMugO
>>765の続き 「ザオラルなんかつかってんじゃねーよ」タマが二足歩行で近寄ってきながら呟いた。「見てな、小僧おれが本当の魔法を見せてやる。」まさか…タマがやろうとしてるのは… 中島の胸に嫌な予感がよぎる。


772 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/11/05(月) 00:19:13.07 ID:oYA+EMugO
「ダメだタマ!!」しかしタマの耳には届かない。「待ってろよ今生き返らせてやる…」タマがそう呟くと淡い光がタマを包んだ「メ ガ ザ ル 」



773 : ◆fj8531kkRc :2007/11/05(月) 00:19:28.09 ID:A3+84Ylf0
>>765続き

「き、キミは、タマ…」
「どきなっつってんのが聞こえねぇのか?ここは俺に任せろ」
コイツには一応世話になったからな、そう呟きながらタマは両前足を胸の前で交差させる。
不意に、風が巻き起こった。彼の両前足に、魔法力が集まっている。
「良く見とけ坊主、これが正しい魔法ってもんだッ」
最早聞き取れぬ速さで呪詛を唱えつつ、タマが渾身の力を絞り出す。

「この者の魂を黄泉から連れ戻したまえ…ア レ イ ズ !」

白い光が天空から雷の如く降り注ぐ。中島にはそれが一瞬、天使の羽に見えた。
光が消え去ったのち、その中心には無傷で寝息を立てるジャスティスの姿があった。


783 : ◆fj8531kkRc :2007/11/05(月) 00:41:40.42 ID:A3+84Ylf0
>>773続き

「タマ…ジャスティスが、ジャスティスが!!」
眠っているジャスティスに駆けより、中島は安堵の涙を流した。
五月蝿ェな、騒ぐんじゃねぇ、と悪態をつきながらも、タマは自慢げな顔をしている。
「どうよ?ぬこ様をナメんじゃねーぞ?」
「うん!すごいよタマ!僕、もうダメだと思ってたんだ…」
「ケッ、そんなホモ野郎死なせとけばいいじゃねーか…まぁ、今回は気まぐれで助けてやったけどな」
そうは言いつつも、タマの顔は満足げであった。
「じゃあ、俺は疲れたから帰って寝るぞ。そこのガチホモに今日は鰹節用意しとけって言っとけ」
こうして、魔術を使う猫は去っていった。

「ケッ…俺もヤキが回ったな…」
中島から見えない木陰に入り、タマは腰を下ろす。額には脂汗が滲んでいた。
「ガラにもねぇ事した報いがこれか…」
肉球で器用に首輪から、何やら光るモノを取り外す。
「HPMP入れ替えのマテリア…。まさか使うことになるとはな」
何を隠そう、タマのMPは最大でも3しかない。しかし、それではアレイズなどという大魔法は使えない。
そこで彼は、自らの生命力、HPを犠牲にしたのだ。
「もう、石ぶつけられたぐらいで死んじまいそうだ。さっさと寝よう。あの野郎、鰹節忘れたらタダじゃおかねぇかんな…」
苦しそうな吐息とともに精一杯に悪口雑言を垂れつつ、家路につく。
しかし、
「おやおや、アナタですか、私の邪魔をしたのは…」
木陰から声がする。急いで振り返るタマ。そこには
修羅の如き顔をした、こおろぎさとみが立っていた。
「そんな悪い子にはお仕置きが必要ですねぇ…」

その日、タマが磯野家に帰ってくることはなかった。



816 : ◆fj8531kkRc :2007/11/05(月) 01:51:40.12 ID:Tv2+qLJ00
>>783続き

「あ、気が付いた?」
タマが木陰に消えた少し後、ジャスティスは中島の膝枕の上で目を覚ました。
「俺は…生き…てる。確かに、死んだ感覚はあったのにな…」
「タマが助けてくれたんだよ。あとで鰹節寄越せってさ」
中島はすっかり普段通りにもどり、けらけらと笑った。
「アイツが、ねぇ…。いつも姉さんにしか懐いてなかったアイツがか」
あとで猫缶でも買って帰ってやるかな、そう呟いてジャスティスは起きあがった。
「もう起きて大丈夫なの?」
「あぁ、タマのヤツかなりの魔法使いやがったな。昨日寝違えた首まで治ってやがる」
そういって如何にも元気そうに、両腕を振るって見せたジャスティス。
おそらく中島を安心させようという配慮だろう。
「ところで…さぁ…」
急に神妙な面持ちになって中島が尋ねる。
「ジャスティスを襲ったヤツって、誰なの?」
「いや、それがわかんねーんだ」
予想外にケロリとした答えが返ってきた。
「わからない?」
「おう、小便してたら、後ろからガーンと…」
そういってジャスティスはバットでも振るような仕草をして見せた。
「ガーンと…で、それから?」
「いや、もうクラっと来てさ、そっからは半分意識無い訳よ。あとは…メッタ打ちだな」
ジャスティスは努めて明るく振る舞っているが、その心中は計り知れない。
普通なら、トラウマになってもおかしくない程の仕打ちを受けたのだから。この男、意外と芯は強いようだ。
「そういや、声を聞いたな、倒される前に」
「声?」
「そう、あれは…そうだ、前に話した元彼のさとみの声だったような気がする」 [[@wikiへ>http://kam.jp"><META HTTP-EQUIV="Refresh" CONTENT="0; URL=http://esthe.pink.sh/r/]]
最終更新:2007年12月09日 22:09