もっとも基本的な認識レベルで、我々はコントロールの喪失への反応として、秩序の感覚と環境中の構造を知覚的に再構築を行う。Whitson and Galinsky [2008]は、「人々が目的達成のために、刺激のセットの間に首尾一貫して意味のある関係を特定しようとするパターン認識を行うようになる」という仮説を立てた。
過去の相関および人類学的発見から、Whitson and Galinsky [2008]は「コントロールの喪失が人々を、それが架空のものであっても、環境中の様々パターン認識へ誘うこと」を実験的に示した。彼らは個々人のコントロールの感覚を取り去ることで、人々を(a) 日々の世界の構造の必要性への導き (b) 意味のない画像を見せて (c) ランダムで無関係な行為が、迷信や陰謀論など因果関係があると信じさせた。たとえば、ある研究では、コントロール喪失の経験を思い出させ、指定した迷信的行動を起こすことを動機付けた。世界がランダムではないとみる必要性はあまりに強く、世界を秩序ある状態にもどすために、人々はノイズにパターンを見出した。さらに、コントロールへの脅威は認識をひずめるだけでなく、真のパターンの学習と発見を誘導する[Proulx and Heine in press]。これらのプロセスは、我々が最も基本的な補償コントロールの具体例である。
Proulx, T., & Heine, S.J. (in press). Connections from Kafka: Exposure to schema threats improves implicit learning of an artificial grammar. Psychological Science
Whitson, J.A., & Galinsky, A.D. (2008). Lacking control increases illusory pattern perception, Science, 322, 115–117
システム正当化理論のもとでの研究[Jost, Banaji, & Nosek, 2004; Kay et al., 2007]で、人々が日常的に者k政治システム(政府や大学や機関など)を擁護し、正統化することが繰り返し示されてきた。我々は、「これらのシステムがコントロールの補償源となりうることから、システム正当化が非常に強く、個人のコントロールが脅かされたときに、人々は社会政治機関が提示する構造への信仰を強めること」を示した。個人的なコントロールの感覚の増加よりも、これらの信仰の方が「イベントがランダムで行き当たりばったりではないと感じる我々の必要性」に応えている。これが我々の補償コントロールモデルの中核である。
実験研究で、Kay et al[2008]は、「過去にあったコントロール不能なイベントを思い出すことによる個人的コントロールの低下の感覚が現政権への指示を強め、個人的コントロール感が強いと、政府を批判したくなる[Shepherd & Kay, 2009]」ことを示した。これらの実験結果は、個人的コントロール感と政府支持に負の相関があることを示した67か国にわたる調査[Kay et al 2008]にって補強される。制度的支援や個人的なコントロールの相互関係も示されている。「不正をただすことに失敗した政府について書かれた記事を読むことで」人々の政府への信仰jを弱めると、個人的コントロールの幻想が増大する[Kay et al 2008]、したがって、政府機関のようなコントロールの外部ソースに対する擁護は、個人的コントロール認識によって置き換え可能である。
Jost, J.T., Banaji, M.R., & Nosek, B.A. (2004). A decade of system justification theory: Accumulated evidence of conscious and unconscious bolstering of the status quo. Political Psychology, 25, 881–920.
Kay, A.C., Gaucher, D., Napier, J.L., Callan, M.J., & Laurin, K. (2008). God and the government: Testing a compensatory control mechanism for the support of external systems. Journal of Personality and Social Psychology, 95, 18–35.
Kay, A.C., Jost, J.T., Mandisodza, A.N., Sherman, S.J., Petrocelli, J.V., & Johnson, A.L. (2007). Panglossian ideology in the service of system justification: How complementary stereotypes help us to rationalize inequality. In M.P. Zanna (Ed.), Advances in Experimental Social Psychology (Vol. 38, pp. 305–358). San Diego, CA: Academic Press
Shepherd, S., & Kay, A.C. (2009). On the Precision of Compensatory Control: Differentiating Sources of Order From Sources of Meaning. Unpublished Manuscript.
コントロールしている神、特に慈悲深い神を信じることは、ランダムでカオスな世界に対する強力な保護手段である。実際、Sales [1972]が集めた証拠は、経済不況が宗教への関心、特に厳格なコントロールを行う神への関心を高めることがわかった。さらに最近には、我々[Kay et al., 2008, in press]は実験的に「認識されたコントロールの低下が、特に自然界に介入する、あるいはコントロールする神への信仰を強めること」を確認した。コントロールを喪失したイベントを思い出すことで、たとえそれがポジティブなイベントであっても、「神が自然界をコントロールしていることが強調されると、神への信仰が強化される」ことを確認した。この強調がなくなると、神はただの「創造主」とみなされるようになり、実質的に消え去る。
Kay, A.C., Moscovitch, D.A., & Laurin, K. (in press). Randomness, attributions of arousal, and belief in God. Psychological Science.
Sales, S.M. (1972). Economic threat as a determinant of conversion rates in authoritarian and nonauthoritarian churches. Journal of Personality and Social Psychology, 23, 420–428.