目的論を語る子供たち
Kelemen&DiYanni(2005)は、英国の児童を調査して、「生物および非生物の自然界の事物について、人工物のような目的機能の説明をつくり、動物と人工物の起源としてインテリジェントデザインを支持する傾向があること」を見つけている:
実験に参加した児童は、西ロンドンの2つの公立学校の:
- 6歳8ヶ月~ 7歳9ヶ月 31名 (男子17, 女子14) 平均 7歳3ヶ月 [Year=2 第1学年]
- 9歳9ヶ月~10歳3ヶ月 24名 (男子14, 女子10) 平均10歳3ヶ月 [Year=5 第5学年]
であり、人種構成は(両親から特定)...
人種 |
全体 |
Year=2 |
Year=5 |
欧州および英国 |
30% |
23% |
38% |
アフリカおよびカリブ |
20% |
26% |
13% |
混血 |
20% |
23% |
17% |
アラブ |
11% |
13% |
8% |
南アジア |
9% |
13% |
4% |
ラテンアメリカ |
4% |
4% |
4% |
不明 |
7% |
0% |
17% |
であって、1名を除いて英国生まれで、全員が英国育ち。両親の年収は低い~中低。
宗教は、
キリスト教40%, イスラム教31%, 無宗教11%, ヒンズー5%, 不明13%
主な集計結果を見てみると...
TABLE 2: 誰が起源かと質問したときの自由回答
誰: |
人間 |
神 |
自然 |
不明 |
自然現象: |
19% |
50% |
8% |
23% |
自然物: |
19% |
44% |
0% |
37% |
動物: |
3% |
76% |
0% |
22% |
人工品: |
58% |
3% |
0% |
39% |
動物の起源は神様というのは強く支持されている。
目的論的な質問に目的論で返してきた学年別比率は..
TABLE 3:起源の目的論質問したときの目的機能な回答した比率(選択肢から)
学年: |
自然現象 |
自然物 |
動物 |
人工品 |
Year2: |
32% |
60% |
53% |
82% |
Year5: |
27% |
48% |
35% |
92% |
合計: |
30% |
55% |
45% |
86% |
人工品は本来、目的機能なもので、これは普通。自然現象に目的を見出さないが、自然物には見出す傾向がある。いずれにせよ学年があがると、目的機能な回答は減少する。
インテリジェントエージェンシーすなわち、神様とか人間とかインテリジェンスを持つもを起源・原因だと回答した比率を学年別に見ると...
TABLE 4: インテリジェントデザインな質問に対して、インテリジェントエージェンシーな回答をした比率
学年: |
自然現象 |
自然物 |
動物 |
人工品 |
Year2: |
45% |
53% |
73% |
87% |
Year5: |
35% |
27% |
58% |
88% |
合計: |
41% |
42% |
46% |
87% |
人工物にインテリジェントエージェンシーだと答えていないのは少数派。これはいいとして、動物は、自然現象や自然物よりも、インテリジェントエージェンシー起源と回答されることが多い。が、学年があがるとその比率は落ちていくというもの。
インテリジェントエージェンシーな原因から選択させた場合は...
TABLE 5: 誰が起源かインテリジェントデザインな質問したときの選択肢からの回答
誰: |
人間 |
神 |
不明 |
自然現象: |
13% |
84% |
2% |
自然物: |
17% |
83% |
0% |
動物: |
8% |
82% |
10% |
人工品: |
82% |
13% |
5% |
これは、無理にインテリジェントエージェンシーから選択させているので、これは人間起源と神様起源の識別を目的としたもの。人工品を神様のせいにすることはあまりないことの確認程度。
目的論を好む大人たち
Kelemen and Rosset (2009)は大人の目的論選好を調べている
彼らは目的論選好を調べるために次のような例文を使っている(実際は、目的論調査用26と、被験者の注意力確認用54あるが、掲載されていたのは24個)。
- 目的論志向を調べるための項目
- Implicit biological: (さりげない生物学
- Earthworms tunnel underground to aerate the soil.(ミミズは土に空気を通すために、地面にトンネルを掘る)
- Mites live on skin to consume dead skin cells.(ダニは死んだ皮膚細胞を消費するために、皮膚の上に生息している)
- Mosses form around rocks to stop soil erosion.(コケは土壌侵食を止めるために、岩の周りに生える)
- Explicit biological: (露骨な生物学)
- Finches diversified in order to survive.(フィンチは生存するために多様化した)
- Germs mutate to become drug resistant.(病原体は薬物抵抗を持つために突然変異する)
- Parasites multiply to infect the host.(寄生虫は宿主に感染するために増殖する)
- Implicit non-biological: (さりげない非生物学)
- The sun makes light so that plants can photosynthesize.(植物が光合成できるように、太陽は光を放つ)
- Water condenses to moisten the air.(大気に水分を与えるために、水は凝集する)
- Molecules fuse in order to create matter.(分子は物質をつくるために結合する)
- Explicit non-biological: (露骨な非生物学)
- Earthquakes happen because tectonic plates must realign.(地殻構造プレートは再整列しなければならないので、地震が起きる)
- Geysers blow in order to discharge underground heat.(間欠泉は地下の熱を放出するために噴き上がる)
- The earth has an ozone layer to protect it from UV light.(地球は紫外線から防護するためにオゾン層を持っている)
- 対照項目(被験者が正しく問題文を読んでいるか確認するため)
- Good physical: (正しい物理)
- Flowers wilt because they get dehydrated.(花は水が足りないと弱る)
- Bread rises because it contains yeast.(パンはイースト菌があるので膨れる)
- People get the flu because they catch a virus.(ウィルスに感染するので、インフルエンザに罹る)
- Bad physical: (間違った物理)
- Zebras have black stripes because they eat coal.(シマウマは石炭を食べるので黒い縞がある)
- Gusts of wind occur because animals exhale together.(動物が同時に息を吐くので、突風が起きる)
- Clouds form because bits of cotton collect together.(綿の切れ端が集まるので、雲ができる)
- Good teleological: (正しい目的論)
- Children wear gloves to keep their hands warm.(子供は手が冷たくならないように、手袋をする)
- Teapots whistle to signal the water is boiling.(ティーポットは水が沸騰していることを知らせるために、口笛のような音を出す)
- People buy vacuums because they suck up dirt.(掃除機は集塵するので人々は掃除機を買う)
- Bad teleological: (間違った目的論)
- Cars have horns to illuminate dark roads.(自動車は暗い道路を照らすために警笛を鳴らす)
- Eyelashes developed so that people can wear mascara.(マスカラがつけられるように、睫毛が発達した)
- Mothers kiss babies in order to scare them.(母親は赤ちゃんを怖がらせるためにキスをする)
Kelemen and Rosset [2009]の実験では、これらを、Fast(画面上に3.2秒表示), Moderate(画面上に5秒表示), Unspeeded(制限時間なし)で実施し、対照項目の正答率の差異に比べて、目的論選択率には大きな違いが出たという結果を得ている。
Table 2
Mean percentage of unwarranted teleological test explanations accepted and control items answered correctly in Study 1.
|
目的論選択率 |
対照項目正解率 |
生物 |
非生物 |
合計 |
物理 |
目的論 |
合計 |
Fast |
51 |
44 |
47 |
92 |
96 |
94 |
Moderate |
41 |
33 |
36 |
92 |
94 |
93 |
Unspeeded |
35 |
26 |
29 |
90 |
91 |
91 |
Total |
43 |
35 |
38 |
91 |
91 |
93 |
対照項目は問題文表示時間が短くてもほとんど正解しているが、目的論調査用項目では回答時間が短いほど目的論を選考している。
なお、Kelemen and Rosset [2009]の実験では、問題文表示時間によらず「地球は紫外線から防護するためにオゾン層を持っている」のような地球が生命のためにデザインされ維持されていることを意味する誤った文を正しいと判断する傾向があることを見出している。
最終更新:2012年04月24日 20:44