トランジスタによる増幅

 増幅とは、

   何らかの信号の入力に対して元の信号よりも大きな出力信号を得るような作用のこと
                                                                                                     by wikipedia

 である。マイコンを用いて、何らかの機器を制御する場合、LEDの様に小さなエネルギー(電力)で動作する物であればよいが、
大きな電力を必要とする物は、マイコンに直結する事が出来ない。
 この場合は、マイコンの出力を何らかの方法で増幅してやる必要がある。

 例として、直流モータ(以降、モータ)の回転を制御する事を考える。ここで取り上げるのは直流(電池などの電源で動作する)で動作するモータについて説明する。
 まず、モータの特性について理解するために、等価回路(模式図)使って説明する。
     

網掛け部分がモータの等価回路である。(等価回路とは、モータの特性を理解しやすくするために、抵抗などの部品で置き換えたもの) 

  1. モータは電源から電流(Ia)を流すことで回転する。(ロータが回転)
  2. 電流は、無制限に流れるわけではなく、内部の電線などの抵抗によって、一定以下に制限される。
  3. モータが発生する力(トルク)は、流し込む電流に比例する。発生トルクは、以下の式に従う。
                 T(発生トルク) = Kt(トルク定数) × Ia(電流)
  4. 直流モータは同時に発電機でもある。ロータが回転することで、電圧を発生する。(これを起電力という)
  5. 電源の電圧とモータの起電力が釣り合うと、それ以上は電流が流れなくなるため、ロータの回転数は頭打ちとなる。

 以上まとめて、図に表すと、以下の様になる。

            

 図で分かるように、回転数が0(つまりロータが停止した状態)で、最大のトルクが生じる。この図から、回転数の制御をしたいなら、電流を調整すれば良いことが分かる。(下図参照) ただし、負荷の変動がトルクの範囲内に収まっている必要がある。

            

 モータを回すには、物にもよるが、LEDに比べるとはるかに大きなエネルギーを必要とする。
 模型用の小型のモータでも、1A程度の電流が流れる場合がある。特に回転が停止してしまった場合などに、非常に大きな電流が流れる事がある。このような大きな電流は、直接、マイコンが制御する事はできない(マイコンでは最大30mA程度)ため、何らかの手段を講じて電流量を増やす必要がある。
 この目的で、一般的に用いられるのは「トランジスタを用いてマイコンの出力を増幅」するという手法である。トランジスタを用いると数100mAから場合によっては数100Aといった大電力の負荷も駆動できる。ここでは、模型用DCモータの駆動として、数Aの負荷を駆動する方法について、考えてみる。

 トランジスタとは何者か
 
 簡単に言うと、電流で電流を制御する素子(電流増幅素子)。入力電流の数百倍に増幅して出力電流を制御する。下図(2SD1899を例に)の様に、入力電流Ibをhfe倍した電流Icが流れる。例えば、Ibが2.0mAだったとすると、右の図から、Icは500mAであることが分かる。(Ic = hfe × Ib)
 さらにIbを大きくすれば、Icの値も大きくなる。(Icの値はIbをhfe倍したもの) このように、入力を何倍かして出力する事を、増幅という。
 入力側に入っている抵抗は、Ibの値を調整するためのもの。マイコン制御の場合も、適当な物をマイコンとの間に挿入する。
     

 マイコンとの接続は、下図の様に行う。AVRマイコンの場合、各IOポートが流せる電流の最大値は40mAである。従って、この値を超えないようにIbを設定する。仮に、Ibを5mAとすると、オームの法則より、

    R   = I / E          ...           R = 0.005 / 5 = 1000Ω = 1kΩ

 となる。この時、負荷に流れる電流は1.4A程度になる。今回使用する模型用モータはロータを停止した状態で1A程度の電流が流れるので、設計上は十分という事になる。また、使用するトランジスタ(2SD1899)の外観を示す。
       

 トランジスタには、通常3つの電極があり、それぞれベース:B、コレクタ:C、エミッタ:Eと呼ばれる。間違って接続すると破壊が生じる可能性があるので、十分注意する事。
 

      

 

最終更新:2015年06月01日 17:48