九月二十四日、お揃い

京太郎「懐が寂しい……」

京太郎「そろそろ金貯めとかないと」

京太郎「今月は誕生日が多すぎなんだよなー」


京太郎「さて、どうすっかな」

京太郎「街をぶらつこうにも、暇はあれど余裕は無し」

京太郎「久ちゃんは用事があるって言ってたし」

京太郎「Roof-Topに冷やかしに行ってみるか?」

京太郎「うーむ……ん? あれって……」


美穂子「……」


京太郎「だーれだ」サッ

美穂子「ひゃっ」ビクッ

京太郎「おっと、目隠しは取らないぞ?」

美穂子「……あの、京太郎さん?」

京太郎「わかっちゃったかー、心が通じ合ってる証拠かな?」

美穂子「こんなことしてくる人はあなたしかいません」

京太郎「ありゃ、そうか」



京太郎「この前ぶりだな。元気してた?」

美穂子「この前……」カァァ

京太郎「ああ……嫌な、事件だったな」※『二年、秋、ロッカーの中』を参照

美穂子「私はそこまでイヤじゃ……」

京太郎「まあそれは置いとくか……今日は俺に会いに来たとか?」

美穂子「あ、久と約束があって」

京太郎「なんだ、久ちゃんの用事ってそれか」

美穂子「誕生日だからどこかに出かけようっていう話になったんです」

京太郎「なるほどなるほどー……って、誕生日?」

美穂子「はい、今日で17歳です」

京太郎「マジか。なんにも用意してない」

美穂子「気持ちだけで十分ですから」

京太郎「待て、約束までまだ時間あんの?」

美穂子「えっと、少しなら」

京太郎「よし、じゃあプレゼント買いに行くか」



京太郎(とは言ったものの、金はあまりない)

京太郎(しかも何を買えばいいのかよくわからないときた)

京太郎(本人に聞くのが一番っちゃあそうなのかもしれないけど)


京太郎「うーむ」

美穂子「あの、無理に買ってくれなくてもいいですから」

京太郎「いやいや、ここは見栄を張らせてくれ」

美穂子「もう……」

京太郎「なんか欲しいものとかないの? できれば安いので」

美穂子「そんなすぐには……あ」

京太郎「なんでも言ってくれていいぜ。できれば安いので」

美穂子「なら……」



京太郎「本当にそれで良かったのか?」

美穂子「はい、これが良かったんです」

京太郎「まぁ、たしかに値段は抑え目だったけど」


京太郎(カピバラのキーホルダー……)

京太郎(なんかデジャブるな)


京太郎「喜んで受け取ってくれるなら、なによりだ」

美穂子「返せって言われても返しませんよ?」

京太郎「そんなケチなことは言わないって」

美穂子「ふふっ」

京太郎「もうそろ時間か?」

美穂子「そうですね。そろそろ行かないと」

京太郎「そっか……じゃあ久ちゃんと楽しんできてくれ」

美穂子「はい」

京太郎「じゃあな、誕生日おめでとう」



京太郎「まあ、金がないからおとなしく帰宅だな」

京太郎「あれ? 鍵かかってる……母さんはお出かけ中か」

京太郎「じゃあカピのやつ、寂しがってるだろうな」

京太郎「さて、たまには思いっきり遊んでやるとするか」ガチャ


京太郎「……カピバラの、キーホルダー」


京太郎「そういやこれ、前にみほっちゃんからもらったんだっけ」

京太郎「……もしかして、同じものか?」



美穂子「ふふっ」

久「……さっきからニヤついてるけど、なにかあったの?」

美穂子「これ、さっきプレゼントしてもらったの」

久「キーホルダー? それ、なんか見覚えあるわね」


美穂子(これでお揃い……)

美穂子(あの人も気づいてくれたかしら?)




『美穂子はお揃いのキーホルダー(色違い)を手に入れた!』
最終更新:2015年12月05日 19:15