十一月十三日、始まりの日

京太郎「部長ー、これどこ置いときます?」

部長「そっちの棚でいいんじゃないかな?」

京太郎「はーい」


京太郎「ふぃー、これで買い出し終了」

部長「お疲れ、お茶でも飲む?」

京太郎「早速買ってきたお茶菓子の出番っすね」


京太郎「そういや、久ちゃんはまだですかね?」

部長「竹井さん、今日来ないってさ」

京太郎「え」

部長「用事があるって言ってたけどね」

京太郎「……今日って何日でしたっけ?」

部長「たしか、十一月十三日」

京太郎「あぁー、久しぶりすぎて忘れてた」

部長「? 今日はなにかあるのかな?」

京太郎「まぁ、なんというか……誕生日ですよ、久ちゃんの」



久「あぁ、もう……最悪」

久「なんで私を捨てたような親の顔を見に行かなきゃならないんだか……」

久「今日って誕生日よね? これじゃとんだ厄日じゃない……」

久「はぁ……もう出よ」


ピンポーン


久「このタイミングで……はーいっ」


京太郎「よっ、元気?」


久「……なんか用?」

京太郎「元気かどうかはともかく、不機嫌っぽいな」

久「わかってるならほっといてよ」

京太郎「わかったわかった、これ渡したら去るよ……ほい」

久「……プリン?」

京太郎「一応誕生日プレゼント。結構高めだから味わって食べろよ」

久「覚えてたんだ」

京太郎「出会って八周年の記念日でもあるし」

久「その割にはプレゼントがしょぼくない?」

京太郎「うっ……気持ちはこもってるはず」

久「絶対直前まで忘れてたでしょ」

京太郎「お、思い出したからセーフだし」

久「はぁ……まあいいや」


久「じゃあ、明日付き合ってくれたら許す」


京太郎「よし、許された」

久「気が早い」

京太郎「んじゃ、おとなしく去りますよっと」

久「……京太郎」

京太郎「ん?」

久「その、ありがとう」

京太郎「久ちゃんが喜んでくれただけで嬉しいよ」

久「……気持ち悪」

京太郎「ひどっ」



久「もう八年になるんだ」

久「私の誕生日……私とあいつの始まりの日」


『うっせーよ、ちかよんなよ』


久「なーんて、最初トゲトゲしてたのって向こうよね」

久「ま、お互い人のことは言えないかな」


久「ふふ、明日何してもらおうかしら?」
最終更新:2015年12月27日 03:53