三月二十日、名探偵だよあらたちゃん

やえ「ふぅ、春休みで部活もない……暇だ」

やえ「春の大会は目前なのに」

やえ「いや、休めるときは休むのが大事だ」


やえ「……そういえば今日誕生日だったっけ」

やえ「よくよく考えれば、誰からもおめでとうって言われてない……」

やえ「もしかして私って……」ズーン


やえ「よし、出かけよう! 今日は自分へのご褒美のために使おう!」



やえ「とはいえ、なにをしたらいいんだろう」

やえ「一人で遊びに出ることなんて滅多にないし」

やえ「この前はあいつと……」

やえ「そういえば番号とアドレスもらってたっけ」

やえ「……かけてみようかな」


やえ「いやいやいや! そんなにわかなことできるかっ」

やえ「でも、連絡しろよって渡してきたのはむこうだし……」

やえ「いや、待て! おちょくってやるとか言ってなかったっけ?」

やえ「でも枯れ木も山の賑わいと言うし……そう、それだ!」

やえ「これはあくまで暇で暇でしかたなーくにわかなやつに電話をかける……そう、しかたなく!」


灼「……なにしてるの?」

やえ「うわっひゃ!」


灼「うわ、ほんとに飛び上がる人は初めて見た……」

やえ「い、いきにゃり後ろから声をかけてくるやつがあるかっ」

灼「少し前からいたけど、気づかなかったの?」

やえ「なん、だと……?」

灼「思い悩んでるようだからそっと見守ってたけど」

やえ「すぐ声かけてよ!」


灼「ところで、なんでそんな上着着てるの?」

やえ「も、もう三月とはいえ肌寒いし……」

灼「そうじゃなくて、全然サイズがあってないように見える」

やえ「こ、これは……」


やえ「べ、別にたまたま手に取ったのがこれってだけで!」

やえ「着てから、むしろ外に出てから初めて気づいたし!」

やえ「家に戻るのも面倒だからってだけで……そう、しかたなく!」

やえ「しかたなく袖を通しているだけだから勘違いしないように!」


やえ「勘違いしないように!」

灼「なんで二回言った」

やえ「大事なことだから!」

灼「はぁ……」

やえ「とにかく、そういうことだから。あいつからもらったとかあいつの匂いとか関係ないから」

灼「あいつ?」

やえ「だ、だれでもいいでしょ」

灼「……」


灼(そういえば、憧がなにか言ってたような……)


灼「なるほど、大体把握した」カッ

やえ「なにその目怖っ!」


灼「今日は暇で、一緒に遊ぶ相手もいない」

灼「知り合いと会わないならと、普段着ない上着を着て出かけた」

灼「そしてその上着の元持ち主に電話するかどうかで悩んでいたと」


やえ「にゃ、にゃにを……」プルプル

灼「その相手は須賀――」


やえ「ちっがぁーう!!」




この後二人は楽しく遊んで
小走さんが家に帰ったらサプライズパーティーがあったとさ
最終更新:2016年07月11日 02:09