秋、欲張り娘にご褒美を

初美「秋ですねー」

巴「もうすぐ冬だけどね」

初美「冬とは言っても、ここらはあんまり雪が降らないのですよ」

巴「そのかわり、降ったら大変なんだけどね……」

初美「この前はまさかの大雪でしたねー」


霞「あら、二人ともこんなところにいたのね」


初美「おやつですかー?」

霞「残念、はずれね」

初美「ちぇっ、おっぱいおばけはけちくさいのですよ」ボソッ

霞「……初美ちゃん?」ピキッ

初美「な、なにも言ってないのですよー」

巴「と、ところでなにかあったんですか?」

霞「そろそろコタツを出そうと思って。二人も手伝ってくれるかしら?」

初美「おコタ!」

巴「もうずいぶん寒くなってきましたからね」

霞「小蒔ちゃんも寒そうにしてるし、そろそろ出してもいい時期だと思ってね」

初美「ちゃっちゃと用意して丸くなるのですよ!」

霞「丸くなる前にお話、いいかしら?」

初美「あうっ」



巴「ふぅ、設置完了だね」

初美「ひ、酷い目にあったのですよ……」

巴「あはは……」

初美「もうコタツで丸くなって忘れるのですよ」

巴「風邪はひかないようにね?」

初美「そのぐらい平気平気」

巴「とは言っても、はっちゃんとはるるはコタツから動かないからなぁ」

初美「そういえば!」

巴「え、どうかした?」

初美「今日ははるるの姿が見えないなーって」

巴「それなら戒能さんのところに遊びに行くって」

初美「なるほどなるほど、最近暇ですからねー」

巴「フットワーク軽いよね」

初美「むしろ私たちは腰が重たすぎだと思うのですよ。だから出会いもないし」

巴「そ、それは……ね?」

初美「考えない方向で」


霞「二人とも、お疲れ様」


初美「も、もうお説教はこりごりなのですよ……!」

霞「人聞き悪いわね……せっかくおやつ持ってきたのに」

初美「霞ちゃん大好きですっ」

巴「はっちゃん……」


小蒔「あ、コタツです!」


小蒔「緊急避難ですっ」ササッ

初美「あ、まだスイッチは入れてないのですよ」

小蒔「あ、あたたかくないですっ!」

巴「ふふ、じゃあお茶淹れてきますね」



春「今日も黒糖がおいしい」ポリポリ

良子「あなたは外に出てもそれですか……」

春「?」

良子「まぁ、食べる場所によっていきなり味が変わるのもおかしな話ですが」

春「実はそうでもなかったり」

良子「そうなのですか?」

春「前にサウナで食べてたら見事に溶けた」

良子「それは味以前の問題では?」


春「姉さん、明日は?」

良子「朝にあなたを送り届けた後、仕事に向かいますが」

春「忙しいね」

良子「昼過ぎに長野で撮影がありますから……せっかくのサンデイなのに」

春「ふーん、長野……」

良子「二か月ぶりですか、長野は」

春「その時も仕事で?」

良子「あなたの代わりに姫様について行った時ですよ」

春「あ、そうだった」


春(外せない用事のおかげで……)

春(しょうがないけど、ちょっと残念だった)

春(あの人にも会えなかったし)


良子「ふむ、黒糖はボッシュートしましょうか」

春「姉さんの人でなし!」

良子「ジョークですよ、三分の二くらい」

春「三分の一は本気ってこと?」

良子「ええまあ、少しムカッと来たので」

春「やっぱり人でなし!」

良子「黙りなさい、この黒糖ジャンキーが」



春「決めた、長野についてく」

良子「ホワイ? 話が飛んでいませんか?」

春「飛んでない。私の中では地続き」

良子「やれやれ……まあ、邪魔をしないのならオーケイです」

春「さすが、話が分かる」

良子「そのかわり、少し黒糖にリミットをかけましょう」

春「!!??」

良子「食べすぎですね、少し体形が変わったのでは?」プニッ

春「うっ……食欲の秋ともいうし」

良子「そしてスポーツの秋……簡単な運動でもいいから少しは動くこと、オーケイ?」

春「くっ……お、おーけー」ギリギリ

良子「グッドです」



小蒔「はふぅ……もう抜けられません」

初美「右……じゃなくて正面に同じくー」

霞「二人とも、すっかりコタツの虜になっちゃって」

巴「気持ちはわかりますけどね」

小蒔「まだ冬になってないのに……先が思いやられます」

霞「そういうことはコタツから出てから言わないとね」

小蒔「えへへ……」

初美「じゃあこの場にいる全員資格なしなのですよ」

巴「うっ、言い返せない……」

霞「そうね……」

小蒔「ん~……あっ、大変です!」


小蒔「みかんが……みかんがありません!」


巴「みかんが……」

初美「そんなバカな……」

霞「これは……誰かが取ってくるしか」

小蒔「寒いので出たくないです……」

初美「正面に同じく」

巴「私はさっきお菓子の補充したし……」

霞「お茶のおかわり用意したのは私ね」

初美「むむっ、よく見ると霞ちゃん、一番みかんの皮が多いような」

霞「……そうかしら?」

小蒔「巴ちゃんもお菓子の袋が多いような……」

巴「ごめんなさい、ちょっと食べすぎちゃったかも」


初美「こうなったらもう、勝負して決めるしかないのですよ!」


巴「勝負? じゃんけんとか?」

初美「私たちは一応麻雀部なのですよ?」

霞「ふんふむ……おもしろそうね」

小蒔「つまり、ラス引いた人がみかんを?」

初美「それにお菓子とお茶の用意も加えちゃいましょう」

巴「三つもやるとなれば、それなりの時間コタツから離れなきゃいけませんね」

霞「負けられないわ……」

小蒔「頑張ります!」


霞「じゃあ、私は自動卓から麻雀牌を」スクッ

初美「なら私はマットを持ってくるのですよ」スクッ

巴「私は……コタツの上を片付けますね」スクッ


霞「……」

初美「……」

巴「……」


「「「寒いっ!」」」


霞「そ、想像以上だわ……」ゴソゴソ

初美「かくも現実は厳しいのですよー」ゴソゴソ

巴「お、温度差で……」ゴソゴソ


小蒔「もうじゃんけんで決めちゃいましょうか」



小蒔「はふぅ……もう抜けられません」

初美「さっき同じことを聞いた気がしますねー」

小蒔「今度は眠くなってきました……」ウトウト

巴「そういえばはるる、明日帰り遅くなるって言ってたね」

霞「よっぽど戒能さんと会えて嬉しかったのかしら?」

巴「それについてなんですけど……」

霞「なに?」

初美「問題ありですか?」

巴「ちょっと二人とも、耳貸してもらってもいいですか?」


初美(で、なんなのですか?)

巴(戒能さんの仕事先について行ったみたいで)

霞(迷惑かけてなければいいけれど……)

巴(問題はそれだけじゃなくて)

初美(というかそれだけだったらたいした問題じゃないのですよ)

巴(行き先が……その、長野みたいで)

霞(長野? ……まさか)

巴(そのまさかだと思うんです)

初美(ふむふむ……つまり抜け駆けですねー)

巴(これ、姫様には言わない方がいいですよね?)

霞(そうね……記憶が戻ったとはいえ、不必要に揺さぶるのはどうかと思うし)

初美(了解なのですよ)

霞(あと、春ちゃんにはちょっとお話を聞かないとね)

初美(こわっ)


小蒔「zzz……京太郎さまぁ」



京太郎「ふわぁ……」

京太郎「朝……というより昼か」

京太郎「寝すぎたかな……でも、久しぶりにゆっくり寝た気がするな」

京太郎「最近はなぜか土日が忙しいからなぁ」

京太郎「ま、今日は何もないしのんびり――」


春「おはよう」ガチャッ


京太郎「……」

春「どうしたの?」

京太郎「……」

春「私に会えて嬉しいとか?」

京太郎「……いや、思いっきり自分でフラグ立ててたことに今更ながら気づいた」

春「?」

京太郎「とりあえず着替えるから出てってくれ」

春「見学希望」

京太郎「見学希望ってな……まぁ、減るもんじゃないしいいけど」



良子「グッモーニン、には少し遅すぎますね」

京太郎「戒能さん? どうしてまた」

良子「セルフィッシュな従姉妹の付き合いですよ」

京太郎「従姉妹……もしかしてこいつの?」

良子「イグザクトリィ」


春「……すごかった」カァァ


良子「ところで、春になにかしましたか?」

京太郎「のーうぇい、むしろされました」

良子「ふむ……まあ、それは置いときましょう」

京太郎「うちの親、どこいったか知りません?」

良子「出かけましたよ」

京太郎「……そうだった、そういえばそんなこと言ってたな」


京太郎(というか一声かけてってくれればいいのに)

京太郎(……腹減った)グゥ


春「お腹すいたの?」

京太郎「ご飯とか残ってないかな……」ガチャッ


『女の子の手料理って最高じゃない? きゃっ♪』


京太郎「……」グシャッ

春「炊飯器に何かあった?」

京太郎「いや、なにもなかった……なにも」


京太郎(きゃっ、じゃねーよ。あのアラフォーめ)


春「……」

京太郎「そういやお前、今日はあれ食べてないな」

春「こ、黒糖は……」プルプル

京太郎「え、なんかあったのかよ」

春「黒糖は、あの悪魔に……!」グスッ

良子「だれがデビルですか」



京太郎「まあ。動かずに食べてりゃそうなるよな」

春「言わないでって言ったのに……」ムスッ

良子「人をデビル呼ばわりしておいて何を言いますか」


京太郎(照ちゃんにもお菓子をひかえさせようとしたことがあったっけ)

京太郎(……ものすごい徒労だったけど)


京太郎「でもまぁ、お前が黒糖食ってる姿が見られないのも寂しいしな」

春「……ぁう、不意打ち」

良子「……ふむ」

京太郎「そういうことなら俺も協力しよう」

春「一緒に黒糖を取り返して――」


京太郎「とりあえずちょっと走ってみるか?」


春「……」

良子「ナイスアイディアです」

京太郎「なんにしてもまずは飯だな。俺が動けない」

春「……もうどうにでもなーれ」



京太郎「さて、なに作ろうかな」

良子「作る? 買ってくるのではないのですか?」

京太郎「材料あるし、わざわざ買いに行くのも面倒ですし」

良子「なるほど……ハイスクールボーイに対して少々偏見があったようです」

京太郎「戒能さんはなんでもできそうですよね。まぁ、勝手なイメージなんですけど」

良子「それは……」


春「姉さんは料理ができない」


良子「春?」

春「これは事実。黒糖の恨みなんてこもってない」プイッ

良子「……たしかにあまりクッキングはしませんが、それは忙しいだけでできないというわけでは……」

春「口では何とでも言えるよね」

良子「……」ピキッ


京太郎(なんか妙な流れになってきた……)

京太郎(でもこういうとこで口出すと、確実に飛び火するんだよなぁ)


良子「いいでしょう、私のスキルを見せてあげましょう……!」

春「できるの?」

良子「ちょうどいいタイミングです。クッキングバトルといきましょうか」

春「わかった。なら審査員は私が」

京太郎「えっ、俺も作る側なのかよ。おかしくない?」

良子「決まりですね……負けませんよ?」


京太郎(口出さなくても飛び火した……!)



京太郎「おし、できた」

良子「フィニッシュ、出来上がりです」


春「うん、どっちも見た目と匂いは合格」

京太郎「お前の上から目線は気になるけど、早く食ったらどうだ? ってか俺が食いたいわ」

良子「春、まずは私のディッシュから」

春「いただきます」パクッ


春(……思った以上に美味しい)

春(悔しいけど、このパスタに限っては多分私と同じくらい)

春(姉さんめ、いつの間にこんなに腕を……)


良子(今日のパスタは……まさにミラクルと言ってもいい)

良子(一年に……いえ、数年に一度の出来。それが負けるはずありませんね)フフン


春「じゃあ、今度はこっちを……」パクッ

春「……」モグモグ


春(この出来は姉さんのパスタと同じくらい……でも)

春(なんだか、気になる味が……)


春「……もしかして黒糖?」

京太郎「当たり、肉のタレに使ってみた」

春「こっちの勝ち」

良子「なっ、まさか好物で攻めてくるなんて……!」

京太郎「まあ、料理に使う分なら大丈夫ですよね?」

良子「くっ、私は思いつきもしなかったというのに……」


良子「……いいでしょう、負けを認めます」



良子「では、夕方に迎えに来るのでそれまで春をおねがいします……」


京太郎「……なんか目に見えて落ち込んでたな」

春「意地はるから」

京太郎「お前が挑発したせいだろ」コツン

春「黒糖の恨みは深い」

京太郎「やっぱりそれじゃねえか」

春「でも、邪魔者はいなくなったから――」


京太郎「よし、走りに行くか」


春「……」

京太郎「そんな顔すんな。俺がばっちり付き合ってやるから」

春「……あとでご褒美くれるなら」



春「このジャージ……」

京太郎「シューズも母さんのだけど、きついか?」

春「ううん……あ、胸はちょっときついかも」

京太郎「そ、そうか……」

春「たしかめてみる?」

京太郎「たしかめねーよ」

春「残念」

京太郎「てか年上をからかおうとするんじゃない」

春「私の復讐はまだ終わってないから」

京太郎「まだ覚えてたのか……」


京太郎(となると、さっき言ってたご褒美の意図も見えてくるな……)

京太郎(いっそ、そんなことも考えられないくらい疲れさせてみるか?)


京太郎「そろそろ出るぞー」

春「んしょ……準備完了」



京太郎「よし、ここらで休憩にするか」


春「も、もうダメ……」ヨロヨロ

京太郎「思ったよりへばらなかったな」

春「明日は、きっと、全身筋肉痛……」

京太郎「今夜は気持ちよく眠れるんじゃないか?」

春「この、鬼畜……!」

京太郎「まぁ、しゃべれるだけの元気があれば十分だな」

春「うぅ……黒糖が足りない……」

京太郎「はいはい、飲み物買ってくるからちょっと待ってろよ」



京太郎「おーい、生きてるかー?」

春「死んでる……死因は黒糖分欠乏症」

京太郎「休んで回復したみたいだな。ほら、飲め」

春「……なんか手慣れてる」

京太郎「昔はお菓子ばっか食ってる奴の相手してたし、最近まではタコス娘の相手だからな」

春「そうやって手篭めにしてきたの?」

京太郎「そうそう……ってちげーわ」

春「私もするの?」

京太郎「飲み物取り上げるぞこの野郎」

春「……いただきます」


京太郎「ところで、お前にはいいものを用意してるんだよな」

春「いいもの?」

京太郎「やる気を出させる上で重要なのはモチベーションだからな」ゴソゴソ


京太郎「これ、ついでに買ってきたんだけど――」


春「こ、黒糖っ」ガバッ

京太郎「おっと」ヒョイ

春「なんで避けるの!?」

京太郎「そりゃ避けるだろ。大体これは帰ってからだ」

春「うぅ……じゃあご褒美の先払いは?」

京太郎「いや、ダメだろ」

春「本当にダメ?」

京太郎「ダメだ」

春「本当の本当にダメ?」

京太郎「ダメ」

春「ほ、本当の本当の本当に?」ウルウル

京太郎「……」


京太郎「わかったよ……ただし、量は俺が決めるからな」

春「やった」パァァ



春「あーん」

京太郎「……いや待て、これはおかしいだろ」

春「早く食べさせて。口開けてると疲れるから」

京太郎「自分で食べなさい」

春「そうしたら多分一瞬でなくなっちゃう。ほら、早くして」

京太郎「なんか納得いかないが……」スッ

春「あむっ……」パクッ


春「~~っ、幸せ……」フニャッ


京太郎「……」


京太郎(うまそうに食うなぁ)


春「次、早く」ソワソワ

京太郎「わかったわかった」



京太郎「終わり、終わりだ終わり」

春「えっ」

京太郎「これ以上はまた後でだな」


京太郎(ついつい予定より多く食わせちゃったしな)

京太郎(こいつがあんなに美味しそうに食べるもんだから……)


春「……ケチ」

京太郎「ケチで結構。もう少ししたら行くぞ」

春「……」ジー

京太郎「聞いてんのか?」

春「……あむっ」パクッ

京太郎「はぁ!?」

春「んっ……」ピチャピチャ

京太郎「ちょっ、お前なにしてんの!?」スポッ

春「ああっ」


京太郎「お前はあれか、いきなり人の指を舐める変態なのか?」

春「……指に黒糖が残ってたから」

京太郎「ああ、変態じゃなくてジャンキーか……」



春「はぁ、はぁ……やっと、帰ってきた……」

京太郎「お疲れ、頑張ったな」

春「それよりも、黒糖、早くっ……」

京太郎「もはや執念だな……」



春「生き返る……」ポリポリ

京太郎「今日ほどじゃなくても少しは動いとけ。歩くだけでもいいから」

春「ん」ポリポリ

京太郎「見事に生返事……まったく」


春「……はい」

京太郎「くれるのか?」

春「今日はお世話になったから」

京太郎「そうか……ま、そういうことなら素直に受け取っておくよ」スッ

春「ダメ」ヒョイ

京太郎「いや、くれるんじゃないのか?」

春「私が食べさせる」

京太郎「またそれか」

春「今は誰も見てないし」

京太郎「そういう問題じゃないんだけど……」

春「……ダメ?」

京太郎「……」


京太郎「わかった。たしかに今は誰もいないしな」

春「……まさかいいって言われるとは思わなかった」

京太郎「ならやめとくか?」

春「ううん、やる」


春「口、開けて?」スッ


京太郎「んっ」パクッ


春(本当に食べてくれた……)

春(嬉しい……嬉しいな)


春「じゃあ次は口で――」

京太郎「アホ、調子に乗んな」コツン

春「あうっ」



良子「では、私たちはこれで」

京太郎「気をつけて。お前も戒能さんに迷惑かけんなよ」

春「私には黒糖を与えておけば基本安全」

良子「それを自分で言いますか」


良子「しかし……今日のことは忘れません。あなたも覚えておいてください」


京太郎「えっと……は、い?」

良子「次に会うときはリベンジを果たします、必ず」

春「……」

良子「それでは、ご両親によろしく伝えておいてください」

春「さよなら」


京太郎「リベンジって……まさか料理のことか?」

京太郎「……従姉妹だからなんか似たようなとこにこだわるってことなのか」

京太郎「まあ、綺麗な年上の女の人とお近づきになれると考えれば……」

京太郎「って、こんなこと言ってたらだれかにぶっ殺されそうだな」



春「……姉さん」

良子「なんですか?」

春「あんまりあの人に深入りしちゃ、ダメ」

良子「姫様やあなたの気持ちはわかっているつもりですよ。私も麻雀生命を捨てようとは思いませんしね」

春「……ならいいんだけど」


春(あの人が姫様を選ぶなら、私は傍にいられる)

春(でも、それが他の人なら……)

春(やめた、考えないようにする)


春「……姫様とは、キスしたんだよね」ボソッ


春(私も同じ……ううん、もっとそれ以上……)

春(でもそれだと姫様に悪いし……)


良子「何か言いましたか?」

春「黒糖が食べたい」

良子「それは向こうに着いてからですね」


春(けど、やっぱり――)


春「もっと、欲しいかも」
最終更新:2016年10月28日 20:31