夏休み、遠征二日目――鹿児島

京太郎「次は鹿児島だっけ?」

久「なんだかよくわからないけど、オカルト的なパワーを持った人達がいるらしいわ」

京太郎「それ、部長が?」

久「どっから仕入れてきたんだか……」

京太郎「なんとも言い難い胡散臭さがあるな……で、その人たちは鹿児島のどこにいるんだ?」

久「霧島神境ね……願掛けでもしてこいってことかしら?」

京太郎「とりあえず行ってみようぜ」

久「そうね」



京太郎「お、海だ海」

久「そっちは違うでしょ」

京太郎「せっかくの海水浴日和なのにな」

久「日帰りで時間もないし、水着もないから無理」

京太郎「えー」

久「水着代と宿泊費を出してくれるってなら考えてもいいけど」

京太郎「よし、じゃあ先を急ごうか!」

久「その前にお昼にしない? ちょっと早いけどお腹空いちゃった」



京太郎「あー、食った食った」

久「適当に入ったけど、結構当たりだったかも」

京太郎「大盛りにしてくれたしな」

久「地元の高校生たちもよく来るみたいね」

京太郎「ここで張ってりゃ、そのオカ持ち来ねーかな」

久「可能性はなくもないけど、目的地はわかってるんだからそっちに向かうべきね」

京太郎「……正直食べ過ぎて動きたくない」

久「自業自得。ちょっとトイレ行ってくるから外で待ってて」

京太郎「うぃっす」



京太郎「んー、いい天気……って言うにはちょっと暑いよな」

「そうですね」

京太郎「むしろ外に立ってたら汗が……」

「アイス、良かったら食べます?」

京太郎「いや……ちょっとお腹の余裕がない」

「あ、でもこれっていわゆる関節キスなんでしょうか?」

京太郎「そうかもな……ってか君、誰?」

「すみません、そういうのは好きな人にだけしなさいってお母様が……」

京太郎「アイスいらないから。なんで俺が欲しがってるみたいな流れになってんだ」

「あ、私、神代小蒔っていいます」

京太郎「ここで名前か!」

小蒔「……zzz」スヤッ

京太郎「誰かー! この子の保護者さーん!」



久「で、あんたはなにしてるわけ?」

京太郎「ちょっとこの子がいきなり寝ちゃったんで」

久「私には、気絶した女の子をどこかへと連れ去ろうとしているようにしか見えないわ」

京太郎「信用ねーな、おい」


小蒔「ん……」


京太郎「起きた! なぁ、早いとこ誤解を解いてくれないか?」

小蒔「? 何の話でしたっけ?」

京太郎「だから、俺と君が――」

小蒔「ああ! 間接キスの話ですねっ」

京太郎「違うから、それ違うから!」

久「……ちょっと来なさい」

京太郎「いだっ、耳ちぎれる! 引っ張るなら腕にしてくれっ」

小蒔「わー、仲が良いんですねっ」

京太郎「ヘルプ! 誰でもいいからなんとかしてくれ!」


「あら、どうかしたんですか?」


小蒔「あ、霞ちゃん」

「姫様、アイスはもう買えました?」

小蒔「もうバッチリと」

「あらあら、それじゃあ帰りましょうか」

小蒔「そうですね」


京太郎「ってちょっと待った!」


「……小蒔ちゃん、知り合い?」

小蒔「さっき合ったばかりです。私と間接キスがしたいみたいで……」

久「あんたやっぱり……!」ギリギリ

京太郎「またそれか! だから違うって!」

「……潰しておこうかしら」

京太郎「潰す!? なにを!?」


「とまあ、冗談はさておき、うちの姫さまがお世話になりました」


京太郎「やっと話が通じたよ……」

小蒔「ごめんなさい……私、いつも急に眠っちゃうんです」

京太郎「いや、わかってくれたならもういいよ」

久「じゃあ、結局間接キスは……」

京太郎「ただの誤解だって」

久「……最初からそう言えばいいのに」

京太郎「いや、最初からそう言ってたからな」


久「ところで、あなたたちに聞きたいことがあるんだけど」

小蒔「聞きたいこと、ですか?」

久「私たちこのへんに来るの初めてだから、地理に疎いのよね」

京太郎「なんでもオカルト的な力を持った人たちがいるらしいんだけど、なにかしらないか?」


小蒔「……霞ちゃん」

「ええ、悪そうな人たちじゃないし」


小蒔「じゃあ、うちに案内しますねっ」

京太郎「はい?」

小蒔「外のお客様は久しぶりです」

久「えーと、つまりはあなたたちが?」


「はい、石戸霞、姫様に仕える六女仙の一人です」

小蒔「神代小蒔です。よろしくお願いしますね!」
最終更新:2015年03月11日 04:20