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 俺は運動能力がこなたほど高くもないし、高翌良さんやかがみほどに秀才でもない
至って普通の高校生だ。たぶん。
しいて違うところを言えば年下の子が好きってとこかナ。名前は男。

「う~、自販機自販機」

 今日は空気が乾燥してるせいか、やけに喉が渇いてしょうがない。
そんなわけで喉を潤すものを求めて公園近くの自販機の前までやってきたのだ。

「ん?」

 遠目に見えるベンチに座る一人の少女。
彼女は(小さなリュックの)ジッパーを開け、そこから黒光りするものを取り出したのだ。

(ウホッ!いいMDプレーヤー…)

 新型…というわけでもないのかも知れないが、ここからでもきらりと輝いて見える限り、
大切に使っているというのがわかる。

「あ…」

 イヤホンを耳に当てたところで向こうもこちらに気づく。
こっちから見ておいて今更黙って去ってしまうのも気持ち的によろしくない。
俺はささっとジュースを二本買うとゆたかちゃんのもとに歩んでいった。

「よっ」
「こ、こんにちは」
「飲むかい?」
「え…あ、はい。いただきます」 

 素直でよろしい。
俺も座らせてもらおうかな…と思ったが、会って間もないのにあまりくっついて座ると
なれなれしいかもというか、いやむしろこの子の方が恥ずかしがっちゃうかなとか、実は俺が
恥ずかしいかも知れないとか。

「?」
「あ、いや。ははは」

 一人であたふたして、これじゃ不審人物じゃないか。
こなたやかがみと喋ってる時は普通じゃないか、なあ俺。落ち着けばなんてことはない。

「ひっひっふー」
「…くすっ」

 笑われたあああ!
それ以前に俺は何をやってるんだ。もうダメだ、生きていけない…

「あ、ごめんなさい」
「いや…いいんだ。変なのには違いないから」

 訂正しよう。俺は普通じゃなかった。

「ところで何を聴いてるの?」
「あ…はい。聴きますか?」

 イヤホンを片方貸してもらい、耳にはめる。
――お、これはこの間出たばかりの曲だな。このリズムのよさが俺も好きだ。

「…いいね」
「はいっ」

 俺のシンプルながらも素直な感想に可愛い笑顔で返事してくれる。
――こなたの従妹って聞いてるけど、いい子じゃないか。

「「……」」

 しばらくの間、お互いに黙って曲に聞き入る。
――ゆたかちゃんは俺の隣で小さな声で曲を口ずさんでいた。
自分では気づいていないようだ。またそういうところも可愛いと思ってしまう。

「楽しそうね」
「ぐわっ!?」
「うひゃうっ!?」

 二人揃って変な声を出しながら飛び上がった。

「こ、こここんにちは」
「や、やあ…かか、かがみ君。元気かな」
「元気よ。そんなに慌てなくてもいいじゃない」

 完全に不意打ちだった。
いや、かがみはそんなつもりは全くなくて、俺達が来てるのに気づかなかっただけなんだが。

「見たことのない組み合わせだったからちょっと興味が出てね」
「まあ、この間知り合ったばかりだし」
「はい」
「一応経緯はこなたから聞いてるけど…男って年下の子が好きだったのね」
「ぶっ!」

 余計なことまで話しやがったなあんにゃろう…

「そういうのじゃないんだって。会ったのも偶然」
「そ、そうですそうなんです」
「はいはい、わかったわよ。でも会って数日なのに仲がいいわよね」
「「そんなことは…」」

 そんなことは…あるか。

「ほら、息ぴったり」
「…俺はもう黙るわ」
「うう…」

 なんだろうな、うまく言葉に出来ないけどこの子といるとほっとした気持ちになる。
ゆたかちゃんがどう思っているかはわからないけど。

「で、何してたのよ」
「ようやく本題か」
「これを聴いてたんです」

 ゆたかちゃんからイヤホンを受け取り、流れてくる曲を聴く…どころか聴きながら
口ずさんだり片足をトントンさせながらリズムを取っている。それを横で黙って眺める俺達。
…それにしてもこのかがみ、ノリノリである。よほどこの曲が好きなんだろう。

「ふんふ~ん――はっ!」
「いや、気にせずにやってくれ」
「いい曲ですよね」
「~~っ」

 初対面の時は生真面目な印象があったけど、ラノベが好きだったりゲーマーだったりと
意外にこなたに近い部分もあった。それが親しみやすくなった理由でもある。  
…ちなみに俺は未だにかがみにゲームで勝ったことがない。

「ゆたかちゃんありがと。男、そっち貸しなさい」
「うえっ?俺まだ聴いて…」

 ゆたかちゃんにイヤホンの片耳を返したかと思うと、かがみは今度は俺からもう片方を
ひったくって俺達の間にどっかり腰を下ろした。

「♪~」
「うん、いつ聴いてもいい曲よね」
「…まあいいか」

 やることもなく、妙に寂しい気分になりながら公園で遊ぶ小さな子供達の姿を
無言で眺めている俺がいた。 




「――やっぱり小さい子が好きなんだ」
「違うっちゅうねん」

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最終更新:2008年07月01日 01:50