駅から家までの道。
その道を、私、柊かがみと妹、柊つかさは歩いていた。
男の家にお見舞いに行った帰りだった。
そう、男。
こなた達のクラスにやってきた転校生。
私の、
好きな人……
最初はただの「よそのクラスに来た転校生」だった。
それがどうして……
たった二週間ほどの間で、こんなにも男の存在が私の中で大きくなったんだろう?
恋愛小説やマンガのように、具体的な事件やきっかけがあったわけじゃない。
でも、男と軽口を叩き合っているとなんだかすごく安心する。
いや、男を見ているだけでなんだかすごく安心する。
何故なのか、自分でもうまく言葉にできないけれど……
「ねえ、お姉ちゃん!」
「え?ああ。ごめん、つかさ。何?」
「お姉ちゃん、どうしたの?なんだか、男くんのうちに行ってから元気ないよ?もしかして風邪うつされちゃったの?」
「いや、別に。大丈夫よ」
元気がない、か……
別に元気がないわけじゃない。
ただ、頭の中をいろいろなことがぐるぐると回っているだけだ。
男のこと。
みゆきのこと。
つかさのこと。
こなたのこと……は別に今はどうでもいいや。
つかさのことは……今目の前にいる本人に聞くのが一番早いんだけど。
さっきから何となく聞けずじまいにいる。
さっき、男の家の玄関先でつかさが言った『昨日』という言葉。
結局あの後、男は適当にはぐらかして家の中に引っ込み、その場はお開きになったけど、やっぱり昨日、男と会ったってことだよね?
昨日、つかさは午前中、駅前の本屋に行くとか言ってたから、そのとき会ったんだろうか……
あーあ、昨日は存在しない親戚のお兄ちゃんの誕生日会ってことになってたんだけどな。
男と買い物に行きたかったから、つい口実として適当な嘘ついちゃったけど、バレバレじゃない!
もう!恥ずかしいな……つかさのせいよ!
……いや、そんなことはもうどうだっていい。
いつかはバレる嘘だ。
それに、あのこなたにオタクの卵として弟子入りしている(させられてる?)男のことだ。
『そういう嘘つくかがみ萌え~』とか言うかもしれない。
……それはそれでちょっと嫌だけど。
……かなり嫌かも。
いやいや、そんなことより、つかさは男とどんな話しをしたんだろう?
男の好きなチョコチップをたくさん乗せたとか、言ってた。
つかさは男の好みを知っている。
そして男の好み通りにお菓子を作った。
まるで……
まるで……
……恋人同士みたいじゃない!
ただでさえみゆきっていう強力なライバルがいるっていうのに、とんだ伏兵だわ……
「ねえ!お姉ちゃんてば!」
「もう!なによッ!?」
「ひっ!?ど、どうしたの?お姉ちゃん?なんだか恐いよ……?」
「あ、ああ、ごめん。ちょっと考え事してたから……」
つい、キツい言い方になってしまった。
「で、なに?」
「あ、あの~、お姉ちゃんが家を通り過ぎちゃいそうだったから……」
「あ……」
気がつくともう家の前だった。
考え事に熱中しすぎて周りが見えなくなっていたらしい……
なによ、これ?
まるでみゆきみたいじゃない……
そう、みゆき。
目下、私の最大のライバル。
大事な友達だけど、それとこれとは話が別よね?
男はみゆきと話をしたって言ってたけど……
返事を明後日まで待ってくれって言った以上、きっと迷ってるんだと思う。
それはすなわち、私が望んだような展開にはならなかったってこと……
男がみゆきのことを吹っ切って、即答で私を選んでくれるっていう展開には……
男が、みゆきともう一度話をすると言ったとき、いっそもっとギクシャクした関係になればいいのにと思った。
あはは……ホント私、嫌な子だよね。
でも、たとえ嫌な子になったとしても、私は男のそばにいたい。
一番そばにいたい!
かつて、みゆきが一番だった男の心の中、そこで今度は私が一番の存在になりたい!
だから、
だから、こんなところで伏兵なんかに、つかさなんかに、足元をすくわれるわけには行かない。
……私は今、自分の妹に嫉妬している。
最終更新:2008年07月05日 18:44