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「では、これで失礼させていただきます」

「うん、ありがとう。プリン美味しかったよ」

「お粗末さまでした。風邪、ぶり返さないように気をつけてくださいね」

「ああ、明日はなんとしても学校に行かなきゃならないしね」

「……そうですね。お返事、お待ちしています」

「あの……高良さん……」

「はい?」

「すげー勝手なこと言うようだけど、一つだけいいかな?」

「……なんでしょう?」

「明日、俺がどんな結論を告げても……できれば、その……こなたやつかさや……できればかがみともこれまでと同じように友達のままでいてほしいんだけど……勝手を承知でお願いしたいんだ……」

 高良さんは目線を足元に落とした。

「とくにかがみとは難しいかもしれないけど……」

 玄関先から家の中に吹き込んでくる風でロングスカートの裾がすこしはためく。

「……男さんが、それを望むのであれば」

 顔を上げた彼女は真摯なまなざしと共にそう答えてくれた。

「そか、ありがとう」

「かがみさんがどう思うのかわかりませんけれども……」

「あいつにもお願いするよ」

「かがみさんもこれからお見舞いにいらっしゃるんでしたよね?」

「うん。お昼には来るってメールしてきたから、そろそろ来るんじゃないかな?」

 今は12時を少し回ったところだった。

「そうですか。では、かがみさんがいらっしゃる前に……」

「うん……」

「……それにしても、かがみさんには今だけは感謝しなければなりませんね」

「ん?」

「彼女が遅れてくれたおかげで……男さんと二人っきりの時間を過ごせたのですから……って、やだ。私ったら……」

 顔を赤らめる高良さん。

 俺は『今だけは』にアクセントが置かれていたことが少し気になった。

「では、これで。ちゃんとお昼食べてくださいね」

「わかってるよ。さっきも言った通り、今朝、朝飯を買いに行ったときに一緒に昼の分も買ってきたから」

「本当は今からでも作って差し上げたいんですけれど……」

「気持ちはありがたいんだけど、俺はほとんど自炊しないし、父さんは週一くらいでしか家に帰らない人だから、残念だけど調理器具がほとんど無いんだよ、この家には」

「う~、栄養が偏らないようにしてくださいね」

「あはは、気をつけるよ」

「では、失礼します。明日学校で……お返事待ってます」

「ああ。じゃ、また明日」

ガチャ、
バタン。


ヴイィィィィィィ、
ヴイィィィィィィ、

玄関先で彼女を見送ったと同時に、携帯が鳴った。

まるで見計らったようなタイミングだ。

携帯を開く。



……!?

……いや、どうやら文字通り「タイミング」を「見計らった」らしい。




 【from】柊かがみ
 【タイトル】無題
 【本文】
  今からお見舞いに行くね☆

  邪魔な子が帰ったみたいだから





 『邪魔な子』か……

 こめかみの辺りが少し痛いような気がした……

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最終更新:2008年07月04日 05:44