――俺の出した答えは、
『高良さんと付き合う』
だった。
「ウ……ソ……!?」
かがみの顔からは表情が消えていた。
うつろな目が俺のほうに向けられていたようだが、その目が何を映しているか、俺には分らなかった……
「男さん………!」
高良さんは何か言いたそうだったが、それ以上何も言わなかった。
嬉しさ半分、戸惑い半分といった感じだ。
「ごめん、かがみ……」
決してかがみが嫌いなわけでも、女として見れないわけでもなかった。
むしろ一緒にいて楽しいのはかがみのほうだったと思う。
でも、
それでも――
俺が選んだのは高良さんだった。
理由は色々ある。
けどその色々を並べたところで、それは所詮後付けの理由な気がする。
……結局は、この桜陵学園に転入した日から、高良さんに会った日から、『初めからそうだった』っていうことだと思う。
そして一度は高良さんにフラれ、諦めかけたものの、
あの日に、高良さんが自分のことを話してくれたあの日曜日に、俺に好きだといってくれたあの日に、
……もうどうしようもなく「そうなった」っていうことだと思う。
「ごめん、かがみ」
俺はもう一度言った。
それ以外に言葉が思いつかなかった。
「男さ……一度、みゆきにフラれてるんだよね?好きだって言ったのに断られたんだよね?」
かがみが心なしか震える声で言った。
「ああ」
視界の端っこのほうで高良さんが俯いたのが見えた。
「でも好きなの?みゆきのことが?一度断ったくせに、『やっぱり付き合おう』なんて言う都合のいい女のことが!?」
「か、かがみさん!あれは!私は……!!」
「うるさい!今はあんたと話してるんじゃないでしょッ!!」
「………」
再び、視界の端っこのほうで高良さんが俯いたのが見えた。
「ねえ、男!答えて!」
「ああ、それでも俺は高良さんが好きだ」
「………ッ!あ、あの時は、私と話した土曜日には、みゆきのこと『好きかどうか良くわからない』って、そう言ってたじゃない!」
「あの時はわからなかったけど、今はわかるんだ」
「じゃ、じゃあ、あの時、私と一緒にいて楽しいって言ってくれた、あれはウソだったのッ!?」
「ウソじゃない。かがみといると楽しいのは本当だ」
「だったら、だったら、だったら、だったら、だったら、だったら、だったら、だったら、だったら、だったら、だったら、だったら……」
かがみは泣き出していた。
……ダメだ!流されるな。
ここでかがみに中途半端に同情したりすれば、それこそかがみに対して失礼なんだ。
答えを出した昨日の夜から……流されないと、そう決めていた。
「私で……いいじゃ……ない……う、うぐ……この前も、うう、言ったじゃない……男がみゆきと付き合ったって……男がみゆきと前の学校での……自分を……重ね合わせたって、えぐっ、辛いだけだよ……」
「そういうこと言うのは『嫌な子』だって自分でも言ってただろ?」
言えた。
かろうじて言えた。
流されずにかろうじて……でも、
「ううう、えぐ……わがってるけど。そんなこど、わかっでるけど……」
でも、
「ぞれでも、私を……選んでよ……」
「………」
「ねえ、おどご……お願い……よぉ……」
もう、何も言えなかった。
見てられなかった。
かがみの涙の前では、
俺はもう、黙るのが精一杯だった……
「男、わだじに……
……キス、してくれたじゃない!!」
最終更新:2008年07月11日 21:07