心の高鳴り。
男さん。
男さん……
ドンッ!
「キャッ!?」
「チッ、痛てーな。気ぃつけろよ」
「す、すみません……あの、その……ボーっとしてて……」
「お、よく見るとかわいい子じゃん?今から俺らとどっかに遊びに行かねえ?」
「……!?」
「なあ、いいじゃん?俺らヒマでさ~」
「……困ります」
「はぁ?」
「私、お付き合いしている人がいるので、そういうの困ります!失礼します!」
「ケッ、気取ってんじゃねーよ!メガネ女!」
私は走ってその場から逃げました。
幸い、ガラの悪い男の人たちは追っては来ませんでした。
あ~、恐かったです……
でも……
『私、お付き合いしている人がいるので、』
うふふ、言っちゃいました。
言っちゃいましたよ、男さん。
あんなに恐かったのに、男さんのこと考えると、勇気が出てきたんです。
男さん……
やはり、あなたは私にとって太陽のような存在です。
ありがとうございます……
私を選んでくださっ――
ドンッ!
「キャ!?」
「ちょっと……気をつけてよね?」
「す、すみません!」
いけない、いけない。
男さんのことを考えると……つい周りが見えなくなってしまいます。
うふふ、男さん……
「ただいま帰りました~」
「あら、お帰り、みゆき。今日はちょっと遅かったのね?」
「え?ええ……あの……委員会があって。すみません、心配させてしまいした?」
「ううん、ちょうど良かったわ。実はお昼寝し過ぎちゃって、さっき起きたところなの」
「さっきって……」
……何時間寝たんでしょう?
「ごめんごめん。ご飯の支度もちゃっちゃと済ませちゃうから、少し待ってね?」
「あの、手伝いましょうか?」
「いいの、いいの。お昼寝でばっちり充電してるから。お部屋で休んでなさい」
「ふう……」
自分の部屋。
いつもは、部屋に入ると机に向かうのですが、今日はなんとなくベッドに座りました。
「男さん……」
今日の帰り、男さんに抱きついた時の感触を反芻します。
男さんに抱きついた時の……あの感触を……
男さんの身体……
一見華奢に見えるのに、抱きつくと……とてもたくましい……
ドサッ、とベッドに寝転び、今日の男さんとのやり取りをさらに思い出しました。
糸を、
紡ぐように。
男さんとの記憶の糸を紡いでできるその編み物は、心にかけるケープのようなもの。
私の心を暖めてくれます。
じんわりと……
ふんわりと……
『ぞれでも、私を……選んでよ……ねえ、おどご……お願い……よぉ……』
「……!!?」
そのとき、頭に割り込んできたその言葉に、思わず私は身を起こしてしまいました。
そう、まるでノイズのように、私の頭に割り込んできた……かがみさんの声。
「かがみさん……」
……かがみさんには、少々申し訳ないことをしてしまいましたが、
『男、わだじに……キス、してくれたじゃない!』
……仕方ありませんよね?
『みゆきッ!あんたさえいなければ良かったのにッ!』
だって、男さんが選んでくださったんですもの……
『昨日よりも……初めての時よりも……緊張しなかったわ、』
………
最後に、私の頭に甦った音声と映像。
それは、昇降口に行くように言われた私が、どうしても心配で、陰からこっそり見ていたものでした……
その映像は、私の記憶の糸を、ズタズタにして、
編みあがった心のケープをボロボロにして、
暖かかった私の心を、冷やしてしまうのには十分すぎるものでした……
最終更新:2008年07月18日 20:43