「おはよ~、男」
「ういっす、こなた」
「男くん、バルサミコ酢~」
「ミコ酢~、つかさちゃん」
「おはようございます、男さん」
「おはよう、『みゆき』」
「あれ?」
「あれ?」
「ん?」
「むむ?なんだか、何かがいつもと違う気が……?」
「あ~それ、今、私も感じたよ、こなちゃん!でもなんだろう……?」
「そっか~?いつも通りだろ?」
「ん~……ま、いっか」
俺はみゆきと目と目で合図しあい、そして笑った。
別にこなたやつかさちゃんに秘密にしようとしているわけじゃないけど……な
まあ、そのうち言えばいいだろう。
みゆきは、みんなに知られるのは恥ずかしいと言っていたし、俺もなんだか照れ臭かった。
そして……かがみのことが少し心配だった。
「あ~、腹減った……昼飯までまだ一時間もあるのかよ……」
三時間目と四時間目の間の昼休み。
ある意味、一番苦痛な時間帯だ。
「あの……男さん……」
「ん?どした?みゆき」
「ちょっと、来ていただけますか?」
「?」
人通りの少ない廊下に呼び出された。
「あの、これ……お弁当です」
「え!?俺のために作ってくれたの?サンキュー!」
「お口に合うといいんですけれど……」
「いやいや、きっと合うよ。みゆきのプリンも美味しかったし。
……あ、でも俺、昼飯はいつも白石達と学食で食ってるから……」
「ええ、ですから。お野菜を中心としたおかずだけを作ってきました。学食のメニューにこれをプラスすれば、栄養のバランスはばっちりです!」
「な、なんという配慮!俺は今モーレツに感動している……」
「本当は、男さんと二人っきりで食べたいのですけど……クラスの皆さんの前でいきなり二人でというのは、ちょっと……」
「そうだな、俺もそれはちょっと恥ずかしいかも。まあ、そのうち俺たちが付き合ってるってことも自然に広まっていくだろうし、そうなったら、たまには一緒に、な?」
「はい!
あの、男さん……泉さんやつかささんには、私たちのことお話すべきでしょうか?」
「ん~、秘密にする理由もないしな……ただ、かがみのことが気になるから……」
そういえば、今日はまだかがみを見ていない。
いつも授業と授業の間の休み時間にうちのクラス(主にこなたのところ)に来るのに……
「……もう少し、そうだな、ゴールデンウィーク明けくらいまで様子見てから、二人には話そう」
ちなみに、明日は半日授業。それが終われば、4連休だ。
今年は祝日と土日の重なり方が悪くて、例年より短いが……
「かがみさんですか……」
一瞬、みゆきの顔が曇る。
しまった、かがみの名前は出さないほうが良かったか……?
「心配いりませんよ。男さんと約束しましたから。かがみさんとはこれまでどおりお友達として接しますから」
「そっか……ありがとう」
「かがみさんのほうがどう思っているかは分りかねますけれど……」
「ま、なるようになるさ。かがみも分ってくれるだろう。さ、教室に戻ろうぜ」
「さ、4時間目の数学を乗り切れば、メシだ!」
「あと一時間、頑張りましょう」
ガラガラッ……
「あ」
「あ」
「あ」
かがみがうちのクラスから出てくるところだった。
「お、おっす、かがみ」
「お、男……それにみゆきも……あ、えーと……ういっす」
「こんにちは、かがみさん」
「何してんだ?」
「……英語の教科書忘れちゃって、こなたに借りに来たのよ」
「お前、自分の妹に借りろよ」
「五月蝿いわね~!そんなの私の勝手でしょ!」
「ま、そりゃ、そうだけど……」
「あ、あの……かがみさん」
「……なに?みゆき」
「………」
俺に走る一瞬の緊張。
「あの……昨日はひどいこと言ってすみませんでした」
「あ……うん……ま、それはお互い様よね。私もひどいこと言っちゃったし。授業始まるからもう行くわ。校内であんまり見せ付けないでよね、お二人さん」
「そ、そんなつもりじゃ……」
「冗談よ」
「はいはい、分ったからさっさと教室に戻れよ。教科書忘れのかがみちゃん」
「五月蝿いわね~ それじゃ」
かがみは小走りで自分の教室に戻っていった。
「……よく言えたな」
「え?」
「かがみに謝ってたじゃないか」
「はい……男さんとの約束ですから」
「昨日も言ったけど……自分の意思で!」
「は、はい!」
昼休み、白石達と学食に向かう途中で、かがみが自分のクラスで日下部さんたちと弁当を食べているのが見えた。
いつもは、こなた達と食べていたのに……
でも、ま、今まで、かがみがうちのクラスに来すぎてたってのもあるしな。
あとは時間が解決してくれるのを待つしかないか。
四時間目前の休み時間でのみゆきとかがみのやり取りを見る限り、険悪ってわけでもなさそうだし……
「お~い、男。何してんだよ?学食が混むから早く行くぞ」
「お、おう!」
「え?映画?」
帰り道。俺はみゆきと二人で帰っていた。
こなたとかがみは一緒にゲマズに行くと言って先に帰り、つかさちゃんもそれについていった。
『脱☆3ページ坊主!』とかいう意味の分らない名言を残して。
俺も誘われたが、断った。
「はい……見たい映画があるんですけど。ゴールデンウィークに一緒に……いかがですか?」
「いいね。行こうぜ!えっと……5日とかはどう?」
「すみません……その日は泉さんたちと勉強会をする予定でして。今日のお昼に約束したんですけれど……」
「ああ、こなた達とね……」
あいつ……絶対みゆきの宿題写すだけだな……
「ん?ってことは、かがみも……?」
「いえ、かがみさんは、お昼は一緒ではなかったので……」
「そっか……そう言えば、かがみは別行動だったか……」
俺は学食に行く途中にかがみが日下部さんたちとお昼を食べていた光景を思い出した。
「……あの!私がこんなこと言うのもなんですが……かがみさんは別のクラスですし、別に不自然なことではないと思います!」
みゆきが珍しく強い口調で主張した。
「え?まあ、そう言われれば、そうかも……」
「そうですよ!」
「う~ん……」
「男さん、かがみさんの心配ばっかり……(ボソッ)」
「ん?ごめん、『そうですよ』の後、よく聞こえなかった」
「いえ、何でもありません。それより、映画の件はいかがでしょうか?他の日はご都合悪いですか?」
「あ、ごめんごめん。じゃあ、4日は?」
「その日は大丈夫です!」
「じゃあ、4日に一緒に行こう!」
「はい!」
みゆきは満面の笑みで答える。
「では、男さん、私はここで」
「ん……?あ、おう」
いつの間にか駅前だった。
「あの……男さん……」
「ん?」
「あ……いえ、何でもありません……では、また明日」
「うん、じゃな!」
「みゆきと映画か……楽しみだな~」
そう言えば、これが初デート……ってことになるな。
「それにしても、かがみはやっぱり勉強会も自分のクラスの友達とするのかな?
……このまま4人を元通りにすることはできないのかも……」
いつの間にか、俺はかがみのことが常に心に引っかかるようになっていた。
最終更新:2008年07月20日 00:54