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「ねえ、ゆきちゃん。ここわからないんだけど、教えてもらえるかな……?」

「えっと、ここはですね…… 教科書のこの部分を参考に……」

「みゆきさ~ん! 私にも教えて!」

「ええ、泉さん。どこをお教えすればよろしいでしょうか?」

「あ、え~とね、ここと、ここと、ここと、ここと……」

「こなちゃん…… それって、ほぼ全部じゃ……」

「いーのいーの! 私ゲームクリエイターになるって決めたから、こんな教科は要らないの!」

「どんだけ~」

 ヴヴヴヴヴヴ……

「あっ、メールだ…… ちょっとごめんね。

 ――えーと…… よし、返信っと!」

「おや~? つかさ? それって例の……?」

「う、うん。この前言った、定期届けてくれた人。この学校の生徒だったんだって!」

「いや~、フラグ立ちまくりじゃん! しかも落し物を届けてもらうなんて、なんてベタな展開…… ニヤニヤ」

「こ、こなちゃん! まだそんなんじゃ……」 

「選択肢間違っちゃダメだよ! つかさのバッドエンドなんて見たくないからね!」

「う、うん…… えへへ、頑張るよ!」

「つかささんならきっと大丈夫ですよ」

「いや~、つかさにもついに春がね~」

「い、いや、だからまだそんなんじゃ…… それにこなちゃん、声が大きいよ…… そ、そういうこなちゃんのほうは、何か浮いた話無いの?」

「私? 私ね、実は近々結婚するんだ!」

「え~!? こなちゃん!? うっそー!?」
「えええ!? ご結婚されるのですか!?」

「あの、二人とも…… 声、大きいよ?」

「あ、ご、ごめん……」
「あ、す、すみません……」

「でも、学生結婚!?」
「お相手は、誰なんです!?」

「む~…… こういう時、かがみんの貴重さを特に感じるよね……」

「え?」
「え?」

「いや、実は結婚ってネトゲでの話なのよ。しかも私、男キャラ」

「あ~、何だそういうことか~」
「びっくりしてしまいました」

「ツッコミ役がいないと、こういうとき悲しいよね。説明的なセリフがまたなんとも虚しく響く感じでさ~」

「わかった! じゃあ、私が天国のお姉ちゃんの分もツッコんであげるよ!」

「( =ω=.)……」

「あからさまに、不安げな視線を感じるんだけど……」


 5月のあの事件から、早くも3ヶ月ちょっと。

 季節はすでに8月。もうすぐお盆です。

 とっくに夏休みですが、私たちは受験生なのでこうして毎日課外授業に出て、放課後は、図書室で勉強しています。

 あの事件以後、しばらくは泉さんも、つかささんもひどく沈んでしまい、お二人ともしばらく学校に来なくなってしまいました。

 しかし、次第に元気を取り戻し、学校にも来るようになって、前までは意識的に避けていたかがみさんの名前が話題に上るようにもなりました。





 一番変わったのはつかささんでしょう。

 ……本当に強くなりました。

 『天国のお姉ちゃんが安心して見ていられるように!』というのが今や口癖に。

 料理の得意なつかささんらしく『家庭科の先生』になりたいとのことです。

 現在では、彼氏候補(?)も見つかり、時折楽しそうにメールをしています。


 泉さんは、ぱっと見は相変わらずですが、どことなく真面目になった気がします。

 本人曰く『だってもうツッコんでくれる人がいないし』

 そういえば、先ほども言ってましたね。希望進路はゲームクリエイターらしいです。

 マインスイーパーとソリティアくらいしかやったことのない私にとっては未知の世界ですが、なんでも専門学校に入るとかなんとか……









 ……そして、日下部さんは、今は病院に入っているとのことです。

 かがみさんの話題が上るようになった今でも、日下部さんの話題が上ることはありません。

 泉さんも、つかささんも、言葉にこそ出しませんがきっと彼女を恨んでいることでしょう。

 かがみさんという存在を奪った彼女を……

 しかし、私はかがみさんと日下部さんのことを思うと複雑な気持ちになってしまいます。

 罪悪感に似た、心の奥に重石を乗せられたような気持ち……

 私が、かがみさんに対して抱いた感情は、日下部さんのそれとは大きく違うものではありましたが(そう、やはり私には、愛する相手を手にかける気持ちというのは理解できません)、もしかすると、かがみさんを手にかけていたのは私かもしれなかったのですから。

 でも、じゃあ日下部さんに対して同情のような感情や共感のような感情を抱くかといえば、それは皆無です。



 ……ここには、男さんがいません。

「さてさて、今日で課外も終わったことだし、これでようやく夏コミの準備に専念できるというものだよ!」

「こなちゃん、張り切ってるね~」

「そういうつかさは、うわさの彼と遊びに行ったりしないのかね?」

「え……? う、うん、じつは今度一緒に遊びにいく約束を……(モジモジ)」

「ヒュー!ヒュー!」

「それはおめでとうございます」

「えへへ、ありがとう。ゆきちゃんは今年もブルガリアな海外旅行?」

「(ブルガリア?) いえ、今年はちょっと別に行くところがありまして……」

「行くところ……?」

「( =ω=.)! なるほど…… じゃあ、みゆきさん、私たちの分もよろしく言っといてね」

「あ、そっか! ゆきちゃんの行くところって…… こなちゃん、また私たちも一緒に行こう?」

「む~、男には悪いけど、とりあえず夏コミ後だね」

「どんだけ~」

「うふふ、お二人の近況も伝えておきます。男さんも…… 喜ぶと思います」

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最終更新:2008年08月12日 13:17