高校に入って新しい友達が出来た。
女の私から見ても容姿端麗で頭脳明晰なみゆき。
オタクで怠け者で見た目小学生だけど憎めないこなた。
きっと二人は一生の友達になるだろう。
私は強がりで恥ずかしくって、いつも言いたい事言えないけど、二人はそんな私のこと分かってくれる。
そんな大好きな仲間だからこそ、言えないことがある。
私のクラスでイジメが始まったのは高校一年の二学期。
私は強くない。
だからもし、いじめられている人が知らない誰かだったら私は見て見ぬふりしたかもしれない。
でも、いじめられているのは私の中学からの大切な友達。
峰岸あやのがイジメを受け始めたのは、あやのに彼氏が居るって事がみんなにばれた時くらいだったらしい。
女子達の間のイジメってのは陰険。あやのは誰にも言わないでずっと我慢してた。
私があやのの様子が変だって気付いたのは一年生の終わり頃だった。
私は日に日にやつれていくあやのを問いただした。
そしてその理由を聞いて愕然とした。
あやのに彼氏が出来たってしゃべったのは私だったから。
私は自殺未遂までしたあやのの事を一生かけて守っていく事にした。だって原因は私だから。
あやののイジメは、私のもう一人の大切な友達の日下部みさおが、イジメをしていた人達との間に立ち解決してくれた。私が原因を作って、私が守るって誓ったのに、私は結局何も出来なかった。私は何て弱いんだ…。
あやのは私を許してくれた。これからもずっと友達で居てくれると言ってくれた。でもそれが私には耐えられ無いくらい辛かった。
そんな私の暗いオーラに気づいたのだろうか、いつしかイジメの標的は私になっていた。そしてその事をあやのやみさおに言えないままで四月も終わろうとしていた。
私は二人にイジメの事がばれるのが怖くて、つかさたちのクラスでお弁当を食べるようになった。
今日、いつもと違うことがあった。
こなたに新しい友達が出来たみたい。
大きなネコ目で女っぽい顔をした男の子。男っていう名前みたい。
私は自分のクラスでの事で、新しい人との交わりが恐くなっていた。
でも男はごく自然に私に話し掛けてくれて、あっという間に私も心を許せた。
私は男がすごく大人なんだと感じた。
ゴールデンウイークが近づいたある日、妹のつかさが、男を含めてみんなでどこか遊びに行きたいと言い出した。
もしかしたらつかさは男の事が好きなのかもしれない。男はまるでみゆきの性別を男にしたみたいで、完璧な雰囲気がある。その上、みゆきには無いフランクな社交性もある。
私としても男を含めた四人は気の許せる人間だから、遊びに行きたいと思った。
つかさが、放課後行く場所を決めようと言った日も陰険ないじめがあった。でも誰にも言えない。
あやのはきっとこんな気分だったんだ、と感じる度に私は罪の意識に悩まされる。
放課後、上の空で歩いている私の暗い妄想を断ち切ったのはつかさと男だった。
つかさは多分気付いていないが、鋭い男は私の異変に気付いていた。
私が一人で考え事する散歩の口実に言った『買い物』に着いてきて、私に『どうしたんだ?』と聞いてきた。
私は何も言えなかった。でも『買い物』の口実で買ったポッキーはいつもより少し甘く感じた。
私は初めて出来た男友達が、男でよかったと思った。
みんなで行ったわんこシティで、苦手なジェットコースターに無理して乗った後、男が私にかけてきた言葉は、単純だけど私の心の氷を簡単に溶かしてしまった。
私は素直になる。少なくとも私を知る人達の間では。
私をいじめる人達とも、うまくやっていける気がした。
ゴールデンウイークが明けたら、みんなに笑顔で『おはよう』って言えそう。
それでもダメだったら、男に相談しよう。強がってなんかいないで。
私が小さな決意をした日の帰り道、私は電車の中で夢を見た。私は夢の中ではどこまでも素直で、男にも言いたい事が言えていた。
目が覚めると、男の顔が目の前にあって、私は焦ってしまった。
男の事が少し気になるようになって、改めて考えてみた。
私は自分の部屋の窓にほおづえをついて考える。
『男とこなたって仲いいなぁ…』
まぁ当然と言えば当然。同じクラスなんだから。でもなんか雰囲気が違う気がする。まるで昔からお互いを知っているような、兄妹みたいに仲がよく見える。
こなたは男に宿題を見せて貰ったらしい。その役目は今まで私だったな…と思うと私は複雑な気持ちに頭がショートしそうになる。
多分、男は私よりも頭がいい。なら、こなたも私より男に見せて貰った方がいい。それは理論的に当然だ。
でも、何か嫌なの。
こなたが男に取られたから?…違う。分からない…。
ゴールデンウイークの最終日、こなたは来れないって言ってた。
男も用事があるって言ってた。
それだけの事なのに、何だか引っかかる。モヤモヤする。
でも今は明日から始まる学校生活の事を考えなきゃ。
明日は朝、みんなに笑顔で『おはよう』って言うんだ。
大丈夫、男に勇気を貰ったから。
こなたの事、男の事を考えるのはそれからにしよう。
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最終更新:2008年07月05日 01:47