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男「みゆきさんに俺を殺す勇気なんて無いよ。」
みゆき「…」
男「そうだろ?」
みゆき「…」
男「みゆきさん…?」
みゆき「…やっぱり…あなたは分かってませんね。」
男「みゆきさん…」
みゆき「私の事を随分と誤解してます。私は高良。お祖父様の孫。お祖父様がお父様を守るために人を殺せたように、私だってあなた達を殺せるんですよ?」
ズブ…
男「あ…」
みゆき「…本当に馬鹿々々しいです。」
ザッ
みゆき「あなたも!泉さんもッ!!」
ザッ
みゆき「私の気持ちなんてッ!!」
ザッ
みゆき「少しも理解してないッッ!!!」
ザッ
ザッ
ザッ
…
…
…
男の顔は涙と血で溢れ、虚ろな目でみゆきを見つめていた。
薄れゆく意識の中で、少しずつ感覚が消えていく。
痛みが消え…
光が消え…
温もりが消え…
最後に残った音が消えそうになる時、幽かにみゆきさんの声が男の意識に届いた。
みゆき「…あなたのおかげで…私も鬼になれそうです…お祖父様と同じ鬼となって…高翌良を守っていけそうです。」
みゆき「…でも…私は………」
みゆき「………」
みゆき「…鬼に気持ちなど…不要でしたね。」
小さな赤い水たまりの中に、静かに男が横たわった。
みゆきはその赤い景色が滲んでよく見えなかったので、一度眼鏡を外して顔を拭った。
みゆきの頬についた男の返り血が、拭われて薄いラインを作った。
みゆき「…あなたを殺せたんです…もう、迷いません。」
みゆき「…さようなら。男さん。」
みゆきは机の引き出しから拳銃を取り出すと、静かに部屋を出た。
地下から銃声が響いた。
ついさっきまで男だったその物体は、硝子のような目で部屋のモニターを見つめていた。
モニターに映し出された青い髪の少女は、机に置かれたナイフを持ち、よろめきながらも眠っているもう一人の少女に近付くと、そのナイフを何度か突き立てた。
青い髪の少女はまだ足が覚束ないからだろうか、ナイフを落とすと足がもつれ転んでしまうと、そのまま再び眠りについた。
タイミングを見計らったように、モニターにはみゆきが部屋に入るのが映し出された。
みゆきは横たわる青い髪の少女の頭を狙い、正確に引き金を引いた。
…
…
…
…
男性の声「…長!」
男性の声「…長!」
男性の声「病院長!!」
みゆき「……はっはい!!」
男性「…病院長、言われたカルテ持ってきましたよ。」
みゆき「あ…はい。ありがとうございます。…すみません、居眠りしてしまって…。」
男性「いえ、病院長は少し働き過ぎです!もう少し休まないと体を壊しますよ!!」
みゆき「ふふ…そうですね。ありがとう。」
男性「じゃあ僕は診察に戻りますんで。」
みゆき「はい、ご苦労様でした。」
男性は院長室を出た。
その夜。
男性医師①「お疲れー」
男性医師②「お疲れ。なぁちょっと飲んでかないか?」
男性医師①「いいなー行こうか。」
二人の若い医者は並んで夜の町に歩き出した。
男性医師①「なぁ…」
ビールのジョッキを傾けながら喋る。
男性医師②「どうした?」
男性医師①「今日さ、病院長に頼まれてカルテ持っていったんだ。」
男性医師②「ふーん…それで?」
男性医師①「いや…なんて言うかさ…病院長って美人だよな…。」
男性医師②「……はっはっはっ!止めとけ!止めとけ!!院長は無理だよ!」
男性医師①「結婚してるのか?」
男性医師②「いや、してないみたいだけど、今まで何人も玉砕してるからな!」
男性医師①「そうなのか…確かに仕事一筋って感じだもんな…。」
男性医師②「まぁ仕事が原因ではないかもしれないけどな。心に決めた人が居るとか。」
男性医師①「…もしかして病院長のデスクに置いてある写真に写ってる奴か?」
男性医師②「ああ…なんか女の子三人と男一人と一緒のやつか。やたら院長若いやつ。」
男性医師①「そうそう。」
男性医師②「でもあれって院長、高校生だろ?15年くらい前だぞ。さすがに付き合ってたらもう結婚してるだろ。」
男性医師①「そっか…。」
男性医師②「…まぁどっちにしろT大主席の院長に俺らじゃ釣り合わねーよ。」
男性医師①「まーな。」
男性医師②「それよりさ、今度××航空のスッチーと合コンあるんだけど、お前も来ない?」
男性医師①「あー最近忙しいからなー…また今度にするわ。」
男性医師②「おーそっか…じゃあまた今度なー」
院長室でデスクワークを終えたみゆきは、立ち上がり明日の予定を確認した。
…明日も朝からハードになりそうだ。
あれから15年の月日が流れた。
みゆきの友人達が『行方不明』になってから、暫くしてそうじろうは病死し、黒井先生は不慮の事故で亡くなった。
もうみゆきの友人達の失踪が『事件』として扱われることは無い。
そして、みゆきが当時の友人達と遊ぶことも二度と無い。
みゆきはこれまでたくさんの人の命を救ってきた。
そしてこれからも数え切れない人の命を救っていくのだろう。
少なくともみゆきは、明日も明後日も、人の命を救うために寝る間も惜しんで動き続ける。
…何かに取り憑かれた様に。
【 ENDING③ これからも、ずっと 】
最終更新:2008年08月24日 01:43