アットウィキロゴ



先日かがみに誘われて以来、かがみ、
つかさとその友人達の勉強会に参加させてもらっている。
その縁で二人の友人であるという泉さん、高良さんという人達と知り合いになった。
二人共かがみとつかさの話によく出てきていたので、
名前だけは以前から知っていた人達だ。
高翌良さんはかがみ達から聞いた話以外にも、容姿端麗文武両道、
おまけに品行方正という絵に描いたような完璧な人物という噂は聞いたことがあったが、
実際にそのとおりの人だった。
丁寧な言葉遣いに常に人をたてる穏やかで気配りのできる性格、
そして進路希望は全て医学部だとか。
いるところにはいるんだな、こんな凄い人。
泉さんは体が小さく足元まで届くような長い髪が印象的な、飄々とした、猫のような人だ。
初めて会った時、かがみとつかさとの関係を物凄い勢いで問い質されて困った。
どうやら俺が二人のどちらかと、
もしくは両方と(…それは人として駄目だろう)恋人関係である事を期待していたらしい。
残念な事にそんな事実は全くないのできっぱり否定しておいたが。
ちなみに泉さんは民放の野球中継の延長に困っているらしいので、野球に関わる者の端くれとして一応謝っておいた。
いやもちろん俺が謝ったところで意味なんて全くないわけだが。

そんなわけで高翌良さん、泉さんにかがみ、つかさの仲良し四人組に、俺が加わらせてもらい、
最近はもっぱらこの五人で図書館なり柊家なりに集まって勉強会を開いている。



――――――――――――



ということで今日は五人集まり図書館にて勉強会、午前一杯勉強を続け昼飯時を迎えた。

「はい、泉さん。お弁当」

昨夜電話で頼まれたとおり、泉さんに弁当を渡す。
午前中から図書館で勉強する場合は、昼食は各々弁当持参の形をとる事が多いのだが、
泉さんはほとんどの場合コンビニで買った適当な物で済ませているので、
部外者が参加させてもらっているお礼を兼ねて俺が弁当をつくる事を申し出たのだ。
泉さんは家で昼食をとり昼過ぎからの参加というケースも多いので、
必要な時は前日に電話で連絡してもらっている

「おおー、ありがとうね男君」

「あー、こなちゃんまた男君にお弁当頼んだんだ。いいなぁ」

「もう、こなたってば……こいつにそういう事あまり頼まないでって言ってるでしょ」

「言ってくれれば二人の分もつくるぞ? 高良さんも、必要なら遠慮なく言ってください」


「いえ、お気持ちは嬉しいですが、ご迷惑でしょうし。
初めてお会いした日にお弁当を用意していただいただけでも十分ですよ」

「初対面でいきなり、弁当つくってきたから遠慮なく食べてくれ、だもんね。
正直ちょっと驚いたよあの時は」

「う……やっぱりあれおかしかったな?」

初めてこのメンバーの勉強会に参加させてもらった日、
挨拶とお礼の意味を込めて俺は全員分の弁当を用意していった。
かがみとつかさはともかく、泉さんと高翌良さんからしたら見ず知らずの得体の知れない男の手料理をいきなり、
さあ食べてくれ、なんて差し出されたわけで。
大多数の女の子は見知らぬ男にいきなりそんなことされたら普通ありがた迷惑と感じるだろう。
結果的に快く食べてもらえたからいいが、今思うとあれは失敗だった。
食事を振舞うにしても、いきなり自分で作ったりせずに
コンビニなりファミレスなりで奢るという形にした方がよかったんだろうな。
かがみやつかさに女心がわかってない、とよく言われるが、
俺のこういう辺りがそう言われる由縁なんだろう。
自分でも直したくはあるけど、結局後になって初めて気付くようなことばかりだ。
嫌がらず弁当を食べてくれた泉さんと高翌良さんの懐の深さに感謝するしかない。

「い、いえ。確かに驚きはしましたけど、おかしくはないと思いますよ?
お弁当、美味しかったですし。」

「お手製弁当くらいギャルゲーではよくある事だよ。
まあ男の子がやってもそこに萌えが生まれるかは微妙だけど」

フォローしてくれる泉さんと高翌良さん、いい人達だ。
泉さんの言ってる内容は正直よくわからなかったけど。
かがみとつかさはいい友人に恵まれたな。

「そっか、そう言ってもらえると助かるよ。
で、つかさとかがみはいいのか? 弁当」

「うう……男君のお弁当……欲しいなあ……。
で、でも駄目だよ、男君も忙しいでしょ?」

「ていうかあんたは人の世話してる暇があったら自分の事に時間使いなさいよね。
こなたもあんまり男に頼み事しないでよ、こいつそういうの断るって事を知らないんだから」

「いやあ、正直自分でもちょっと図々しいかな~と思わなくもないんだけど、
自分で弁当つくるのは面倒だし、外で買うにしてもコミケに向けて節約しなきゃならないし、
それに男君の弁当ってつくってもらう度に上手くなってくから楽しみでさ」

「ほ、ほんとか? 泉さん。質上がってるかな?」

「うん、最初の時も十分美味しかったけど、最近は更に味付けから盛り付けまで洗練されてる感じ。
って作ってもらってる立場で偉そうに品評するのもなんだけどね」


よし、と見えない所で小さくガッツポーズをとる

「いや、こっちとしても忌憚ない意見をもらえるとありがたい」

泉さんはこう見えて……なんて言っては失礼だが、家事万能らしく、料理の腕も相当なものだ。
一度泉さんが自作の弁当を持ってきたことがあったが素晴らしい出来だった。
つかさも、元々料理上手なのは知っていたが少し見ない間に更に上達していて、二人共明らかに俺より数段上手い。
ここ数年忙しさにかまけて適当料理ばかり作っていた俺は、そんな二人に対抗心が湧いてしまったわけだ。
一人暮らしになると食事の用意が自分の分だけで済むのでついつい手を抜きがちになってしまうが、
人のために作る場合は気合の入り方からして変わってくる。
泉さんの弁当を作る事で大分勘が戻ってきた。
食べてる本人であり、さらに目下の目標でもある泉さんのお墨付きをもらえたのは嬉しい。
いやまあ受験生がそんな事に熱を上げてどうするって話ではあるが、料理人目指してるわけでもないし。
でも人に食べてもらう以上なるべく旨い物を作りたいと思うのは自然なことだろう、うん。

「あんたそんな事してる場合じゃないでしょうに……」

「あ、じゃあさ、男君のお弁当は私がつくるっていうのはどうかな?」

「つかさが?」

そりゃつかさの料理は美味しいし、食べたいとは思うけど

「いや、いいよ。部活があった時ならまだしも今は時間にもそれなりに余裕があるしな。
つかさに迷惑はかけられない、気持ちだけありがたく受け取っておくよ」

「も~……迷惑なんかじゃないのに……」

「迷惑はかけられないって、そう言われると男君に弁当作ってもらってる私めの立場がないんですが……」

「い、いや、俺が泉さんの分作るのが迷惑ってわけじゃなくてっ」

いかん、誤解させてしまったか。

「社交辞令で言ってるだけよ、わざわざ人の弁当まで作るなんて面倒に決まってるんだからこなたは自重しなさい、
……って言いたいとこだけど男の場合はその限りじゃないからなぁ……」

「とにかく遠慮せずに必要ならどんどん申し付けてくれてかまわないよ、泉さん。
本当に迷惑なんかじゃないし、こっちもいい練習になるからさ」

「じゃあ私も何かお礼考えとこうかね、さすがに作ってもらってばかりじゃ悪いしさ」

「そんな気を遣わなくてもいいぞ?」

こっちも好きでやってる事なんだし、それでお礼をもらうというのも心苦しい。

「いやいや、毎回手の込んだ物作ってもらっちゃってるしお礼の一つもしないと。
どれ今日のは……ミニサイズのエビフライに
牛肉と野菜の炒め物、そしてシイタケと茄子の煮物に、しっかり生サラダもついてる、と。
揚げ物焼き物煮物と揃ってるとは、手間かかってるなぁ。
時間かかるだろうに朝からこんな物作ってくれるなんて、ありがたやありがたや」

「仕込みは昨日の夜に済ましておいたからそんなに大変でもないよ」

今日のメニューは女の子には少々重い物が並んだが、その分一つ一つの量を少なめにしてある。
ただ見た目的にあまり女の子向きじゃないと言うか、色合いが地味な感じになってしまった。
つかさはもっと上手く華やかな彩りに仕上げられるんだが、
この辺りが生まれ持った美的感覚の差なんだろうか。

「男君お料理上手だもんね、わたしも教えてもらったことあるもん」

「うーむ、こりゃ私も負けてられないねえ。また自分でお弁当つくってこようかな。
今度は本気出しちゃうよ!」

「いや別に勝負してるわけじゃないんだし」

前に見た泉さんの弁当を見る限り本気でこられたらそれこそ勝ち目なさそうだ。
つかさも俺が教えたのなんて遥か昔の事、あっというまに追いつかれ今は俺より大分上手くなっている。
いや、俺だって最近は忙しさにかまけて栄養だけ気遣った安さ速さ重視の手抜き料理ばかりつくっていたが、泉さんのおかげもあり最近勘が戻ってきた。
今までつくった事のない料理にも挑戦しているし、勝負となればただで負けはしない……って何本気で張り合おうとしてんだ俺は

「そだね、ていうか料理勝負なんてしたらかがみんに悪いしねぇ」

からかうような笑顔でかがみに話をふる泉さん

「な、なによ。私だって少しはできるわよ」

「ああ、かがみも上手くなったよな、昔は全くだめだったけど」

「全くってどのくらい?」

「えっと…インスタントの生ラーメンあるじゃないか。
生めん茹でてスープつくって――ってやつ。
あれを作る時に、本当なら麺を沸騰した湯に五分つけるところを
水に火をかけた時点で麺を入れて、そこから五分数えてたりってことがあったな」

「いやいやかがみん、それはさすがにひどいよ……」

「あー、あったよねえ、そんなこと」

「う、うるさい! ちょっと作り方勘違いしちゃっただけだってば! お、男も変な話すんな!」

「もちろん出来上がったラーメンは生煮えでとても食べられたもんじゃなかったな。
結局俺がその後また煮なおしたけど。だから最初から俺がやるって言ったのに、あの時」

しっかりしてて基本的に苦手なものがなくなんでもそつなくこなすかがみだが、
長く付き合ってると意外に抜けたところが見えてきたりもするのだ。

「あーそっかあ、それから考えれば今のかがみんは大層進歩したんだねぇ……
がんばったんだね、かがみん☆」

「その生暖かい目はやめて……今はもうそんな失敗しないわよ。
あんた達程うまくはないけど、簡単な料理ならつくれるし…」

「かがみさんのお料理もお上手ですし、気になさることではないと思いますよ」

「それにかがみは他にいいところたくさんあるんだから問題ないだろ」

「たとえばどんなとこよ」

「む、そう改めて聞かれても困るが…」

たとえば、と言われてもな。かがみの良い所なんてそれこそいくらでもあるだろう。
一つ一つ上げていっても後から後から出てきてキリがないくらいに。
少なくとも俺にとっては本当にいい幼馴染だ

「人の良い部分しか見ないあんたに言われてもなあ…」

「そんなことないって」

かがみはよくこんな事を言う。
そんなんじゃいつか騙されたり、俺が損する事になるだろうから直せ、とも。
そう言われても自分じゃそういう見方をしているつもりはないので直しようがない。
というか騙されそうってことなら俺よりつかさの方が心配だと思うぞ

「いいじゃないお姉ちゃん、そこが男君の良い所だよ。
あ、もちろんそれだけじゃなくて他にも良い所いっぱいいっぱいあるよね、男君は」

「そ、そうか。ありがとな、つかさ」

俺はそんなふうに言ってもらえるような大した人間ではないが、つかさの裏表のない純粋な笑顔でそう言われると、
分不相応だとわかっていても嬉しくなってしまう

「えへへ、どういたしまして。ねえねえ、男君のエビフライ一つもらっていいかな?」

泉さんの分も作る時はその余り物を自分の弁当に詰めるので
大体メニューは泉さんの物と同じになる

「ああ。いいぞ」

「ありがと、あーん」

「ん、あーん…」

「って待てこらー!!」

いきなり顔を赤くして叫ぶかがみ、
つかさがあーんと開けた口にエビフライを持っていこうとした俺の手も驚いて止まってしまい……って何やってんだ俺は!?

「いやいやつかさ! あーんは駄目だろ! 俺もつられそうになったけど!」

「え? え? だ、駄目かな?」

「駄目よ!」

「いやあ、流れが自然すぎておかしい事だと思えなかったよわたしゃ。さーすがかがみん、よくぞ流されずに突っ込んだ!」

「こ、ここは周りに他のお客さんもいますし、少々問題があるのでは…」

ちなみに今みんなで弁当をつついているこの場所は図書館の裏口付近にある休憩スペースだ。
ベンチがいくつか用意されてあり、高翌良さんが言ったように他のお客さんの姿もちらほある。
別にその人達がこちらを見てたりするわけではないが……やっぱりあーんは問題あるだろ。
そもそも泉さんと高翌良さんが目の前にいるわけだし

「むー……男君昔はよくやってくれたのにぃ……」

いや確かにそういう事したこともあるけどさ……

「……あのな、つかさ。つかさももうお年頃なんだから、男相手に気軽にそういう事させちゃいけません。
相手に変なふうに勘違いされて困ることになるかもしれないんだからな。
やるならおじさんとか、あとつかさに好きな人ができたらそいつにしてもらうといい。きっと相手も喜ぶから。
それ以外の男、特に若いやつ相手に軽々しくそういう事せがんじゃ駄目だ」

全く、昔からそうだったがつかさは少し無防備にすぎる所がある。
子供の頃はただ微笑ましいだけで済んでいたが、この年になると相手次第じゃよくない事態を招きかねない。
今のところそういう気配はないようだが、顔立ちも纏う雰囲気もかわいいつかさには、いずれ好意を持った男が近づいてくることがあるだろう。
それがいい男なら喜ばしい事だが、その中に悪いやつがいないとも限らない。
そういう時のために少しは警戒心という物を持って欲しいものだ。

「え……う、うん」

「うわー、男君てばお父さんっぽいっていうか……保護者みたいなこと言うね」

「もう子供じゃないんだから、気をつけなきゃ駄目よ、つかさ」

「かがみも普段からその辺ちゃんと注意してやんなきゃ駄目だぞ」

「つられてやりそうになったあんたが言うなっ」

「う……すまん、気をつけます」

「よろしい」

「おおぅ、なんか娘の教育について揉める父母の図って感じ?」

「「そ、そんなんじゃない!」」

せめて長男長女が次女の心配を、ぐらいにしてくれ泉さん

「息がピッタリですね、羨ましいです」

「もう、みゆきまで……」

「ね、ねえ男君……」

「ん?」

「あのね、す、好きな人が相手ならいいんでしょ? ……だったら……。
………ううん、なんでもない。ごめんね」

「? ああ」

「じゃ、じゃあエビフライもらうね、はむっ……おいし~い! 
やっぱり男君料理上手だね、時間たっても衣がサクサクしてるよぉ」

「あ、私ももらうわよ。ラーメンの事ばらした罰ね。……ん、まあさすがね、いい出来だわ」

「そうか、よかった」

自分のつくった料理を美味しいと言ってもらえると嬉しいものだ。
泉さんや高翌良さんも食べ始めてるし、俺も食うか。
……って、もうないじゃん、エビフライ。かがみのやつ何気に三つも食べてやんの。
しゅ、主菜だったのに……



「……太るぞ」

「う、うるさい!ほらっ」

「むぐっ!」

いきなり俺の口に自分のおかずの唐翌揚げを突っ込んでくるかがみ、これがお返しってことか。全く乱暴な。

「ん……旨い」

「そ」

突っ込まれた時箸が軽く刺さって口の中が痛いんだが……まあそれはいいか

「お、お姉ちゃん……ずるい……」

「……どうした?つかさ」

「……別に……」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年03月16日 00:25