わたしは手を伸ばす。
貴方に触れる為に。
でもその手は、弾かれた。
親友だと思っていた人の手で。
お願い。置いていかないで。
わたしは走る。二人を追いかける。
でも、もう駄目だ。
わかってる。わたしはもう、一人になったんだ。
それでもわたしは追いかける。
「しつこいよ―――みなみちゃん」
追い付いた。
彼は気まずそうな、少し、苦しそうな。そしてぼろぼろになったわたしを心配するような目で、わたしを見ていた。
「ゆ、たか……」
彼女の名を呼ぶ。
わたしの友達。
この学校で初めての、友達。
わたしは再び手を伸ばす。
今度はさっきより強く弾かれた。
わたしは地面に転がる。
「みなみ!」
彼がわたしを呼ぶ。ゆたかが彼を無理矢理連れていく。
……ああ、わたしは何故願ってしまったのだろう。
ゆたかが彼を好きだと知っていたのに。
彼に想いを伝えたいと、願ってしまった。
ああ、愚かだ。
もう、わたしは一人だ。
ずっと、ずっと。
一人。
嫌だ。
一人は、嫌だ。
……何で、こんな。
わたしとゆたかは、上手く付き合えていた、はずだったのに。
原因は簡単。
彼だ。
彼がいたから。
彼を、二人が好きになったから。
…………ああ、じゃあ、例えば。
―――彼が死んだら、元通りに、なるかな?
わたしは立ち上がる。
足はがたがた。
心はずたずた。
でも、歩き出す。
しばらくして、走り出す。
やがて、二人が見えた。
信号待ちをしている。
わたしは足音をたてないように慎重に、しかし素早く背後に迫る。
わたしは三度手を伸ばす。
でも、今度は触れる為じゃない。
押し出す、為だ。
彼をこの世から消す、為だ―――
「消えて、しまえ……!」
そうしてわたしは、一人にならない為に。
好きだった人を、死神に、差し出した。
これで、元通りだね。
ゆたか。
ずっと、一緒にいようね。
ずっと、ずっと。
わたしとあなたは、しんゆう。
最終更新:2009年03月25日 18:12