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「おい、大丈夫か?」
「は、はい」
消毒液臭い保健室に年頃の男女が二人。なんてことは無い。
俺は保健委員で彼女は貧血。たったそれだけだ。
「私、もう大丈夫ですから」
小柄な背、幼い声。
初日の自己紹介の後に飛び級小学生説が飛び交ってた理由にも頷ける。
「先生帰ってこないな」
「そ、そうですね」
「横になってろよ、そっちの方が楽だろ」
「は、はい」
少し顔が赤いな。
「ごめんな、デコ触るぞ」
「へ?」
熱い。三十八度二分くらいか?勘だけど。
「お前.....熱あるのか?」
「ご、ごめんなさい」
俺は何も言わないまま、ペン立てに突っ込まれていた体温計を渡してやる。
「ポカリ買ってくるから、その間に熱計っとけ」
「はい.....」


―2
「ほら、体温計見せてみ」
ポカリと体温計を交換する。
液晶の表示は三十八度六分。外れたな。
「お前、朝から気付いてただろ」
「.....はい」
溜息が出る。今どきこんな生真面目な奴が高校生してるのか。
「皆勤でも狙ってたのか?」
首を横に振る。
「.....学校が楽しいから」
「そうか」
なんで寂しそうなんだろう?
もう七月を迎えて、皆が倦怠期に突入した高校生活。
俺だってズル休みを一週間前にしたぐらいだ。今日だって同じクラスで女子の方の保健委員が休んでた。えっと、なんて名前だったけ?
「お前、名前は?」
俺は保健室来客通知表を取り、名前を聞く。
「小早川.....ゆたか、です」


――3
四時間目もあと二十分で終わる。時計を横目で見て、俺は口元だけで笑う。
「氷枕、作ってきたぞ」
「ありがとう。お、男君」
身体を起こすのも辛そうだから、頭浮かした時に枕を換えてやる。
「どこまで話したっけ?」
「バイト先の人が全員中国人だったとこまで」
「ああ、そうだったな。それでなそいつ等出荷する大根を切る作業のとき、捨てる先っぽ食うんだよ。どんだけ飢えてるんだよwwwwwwって見てたらチーフにチクられて玉葱係りに変えられてちゃったんだ」
辛そうな小早川を少しでも楽にしようと、俺は高校生活であった面白い話を聞かせてやった。
最初はくすくす程度にしか笑わなかった小早川も段々表情から凝りが取れていって、話を真剣に聞くようになっていた。
「それ、ホントなの」
「ああ、マジだ。だから俺はそれからユニバ○サルのオニオンリングは絶対食わないって誓ったんだ」
小さな肩を揺らし、小早川は笑う。
なんか、嬉しいなこういうの。
横目で時計を見る。あと十分か。
俺はパイプ椅子を立ち、小早川の少しはだけた布団を掛け直してやる。
「.....んじゃ、そろそろ行くわ」
「え、でも.....」
「購買混んじまうからさ。あ、小早川今日弁当か?」
「うん」
「あとで誰かに持って行かせるよ。うーん、あの留学生でもいいよな?」
「.....男君がいい」
「ん?悪い。聞こえなかった」
「ううん、なんでも、ない」
さて、どうすっかな。
「あんぱんでも買ってきてやる。もちろん奢りだからな」
「え、でも」
「あんま、食えないだろ。それにあんぱんなんてどうせ百円程度だしな」
「あ、ありがとう」


―――4
「ごめんな」
「ううん、それにおいしいよ。このカレーパン」
病人にカレーパンとか、キツ過ぎだろjk.....
ってか、授業中に行ったのになんで混んでるんだよ。
「ねぇ、男君」
「ん?」
「面白い話、まだ.....ある?」
「あ?ああ、あるよ。聞きたい?」
「うん!」
「うん、そうだな。ドナル○にドロップキックした話なんてどうだ?」
それから昼休みが終わるまで俺は中学時代の悪ガキっぷりを小早川に話した。
こうやって話してたら、いかに自分が糞ガキだったのか思い出す。ごめんよ生徒指導部で三年間担任だったアイアン向井。
夢の国で頭下げさせてごめんよ。
「ウソ、絶対ウソだよww」
「いや、ほんとに。あの時ドナルドは同じ場所に二人いたwwww」
ごめんよ、ドナルド。
時計を見る。予鈴がそろそろ鳴るな。
「そろそろ戻るわ。五時間目始まっちまう」
パイプ椅子を立った、直後小早川が俺の袖を握った。
「どした?」
「あの.....、よかったら、またお話聞かせてくれる?」
「ああ、まだたくさんあるからな。小学生編もあるww」
「ありがとう」
そのときの小早川の笑顔はなんというか、とても素敵だった。

――――5
あれから一週間経って、俺たちは携帯の番号を交換して日に十通は交換するようになっていた。
大体は俺のバカ話なのだが、時折小早川の中学時代の話も聞いた。
病弱で休みガチだったために、卒業アルバムにすら四枚しか写っていない事。行事にも参加出来なかった事。
「.....学校が楽しいから」
あの言葉が、耳の中で反芻する。
ゆたかは、俺の馬鹿な話聞いて何を思ってるんだろう?
目を輝かせて、小さな肩を揺らして。本当に笑ってくれてるのか?ゆたか。


―――――6
「あ、リコーダー忘れた」
「は?別にいいだろ、リコーダーくらい」
「バカ、俺アルト選んだから練習しとかなきゃヤバイんだよ。先帰っとけ、追いつくから」
畜生、なんでアルトなんて選んだんだろ。ムズイだけなのに。
「WAWAWA~っと♪ん?」
教室の前で立ち止まる。
「誰かいるのか?」
ちいさな笛を吹く音。誰だよ?家で練習しろよ。
教室のドアを勢いよくスライドさせる。
「おいっすー!リコーダー取りに来ましたー!」
「ふぇ!?」
「え、小早川?あ、それ」
ネタになると思って買ったクラスでたった一本しかない俺のスケルトンのリコーダーが小早川の手に、握られていた。
「あ、お、男君!ご、ごめんなさい!」
それからすごい勢いで小早川は教室を出て行った。
「お、おい.....なんなんだよ一体?」
転がって、夕日浴びて綺麗な色に染まっているリコーダーを拾う。
「っうわ!なんだこれ!?」
リコーダーはベチョベチョに濡れていた。指と指の間に糸が引く。
「.....小早川、お前」

――――――7
俺は小早川と全く口を利かなくなっていた。
あれだけ交換していたメールもしなくなっていた。いや、無視するようになった。
あの翌日から俺は.....、小早川を無視している。
「お、男君.....ごめんね」
話しかけてきた小早川はいつもこう言って去っていく。
メールの数は日に日に増え、先日にはついに五十通を越えた。
ついに俺は友に相談した。
「ちょ、お前ガチじゃん」
「どうしよう、アドレス変えようかな」
「うん、そっちの方がいいと思うぜ。でもまさか小早川さんがこれ程とは」
「だよな、正直きついわ」
でもアドレスを変えても、小早川からのメールは拒めなかった。
『本当にごめん』
題名が同じメールは溜まる一方だった。
我慢の限界だった。
しかたない、ここは一言キツく言ってやるか。
俺は久しぶりに小早川のメールに返信した。
『明日の放課後、視聴覚室に来てくれ』

―――――――8
「あ!男君!」
「悪い、待ったか?」
先に来てるとはな。
「あの、ごめんなさい」
「いや、リコーダーの事はもういい。それより」
「うん」
「もうやめてくれないか?」
「なにを?」
「メールだよ、もう送ってくんな」
「え.....」
「はっきりいって、迷惑してるんだよ。話はそれだけだ。じゃあな」
そう言って、後ろを向くと首筋がいきなり衝撃と熱が来た。
そして直後、もう一度衝撃。
なんなんだこれは。
ああ、気絶か。

――――――――9
目覚めたときに大の字で拘束されていると実は目覚めがいい。
こんな事に気付いた夏休み前の十六歳の放課後。
「あ、男君おはよう」
「ー?」
おまけに猿轡。
「ごめん、すぐ外すね」
「ッぷは!おいなにしてんだよ!って首痛!」
「ごめんね、痛かったよね?でも男君も悪いんだよ、喋ってくれないし、メールも無視しちゃうから」
「.....どうする気だ?」
小早川はゆっくりと制服を脱ぎ始める。華奢な背丈。なにもかもが可憐で、幼い。
「だったら、無視できなくすればいいんだよね?」
スカートのホックを下し、スカートも脱ぐ。
純白の下着から伸びるふっくらした太股に、艶のある脛。まだ履いたままの靴下が妙にいやらしい。
「大丈夫だよ、男君。お姉ちゃんのエッチな本で勉強したから.....」
気付けばマーラ様は精神を集中させていた。
「うわぁ、男君もすごいね」
「やめろ小早川、お前はそんな奴じゃなかっただろ」
「でも!でもこうでもしないと、男君がぁ、男君が!」
「小早川.....」
ごめんね。そう聞こえた。
「うp!??」
いきなりタオルの玉を口に突っ込まれた。
「ぜったい気持ちよくしてあげるから!」
それから俺のマーラ様は食われた。
ぬるりとあたたかい感覚に、包まれ、マーラ様はさらに精神を集中した。
そして、
「ぅん!?!?」
特大のメギドラオンが炸裂した。

―――――――――10
「んっぐ.....」
小早川は見事にそれを飲み下す。なんかエロイよ、それ。
「だ、大丈夫。男君のなら私いくらでも!」
小早川はそう言って立ち上がると、ショーツを脱ぎ捨てた。まだ、毛が生え揃っていないアソコは、太股まで蜜を垂らしていた。
「私無しじゃ生きていけない身体にしてあげる」
いきなり棒読みの台詞。多分さっき言ってたエッチな本から抜粋してきたんだろう。
小早川の息が少し荒れている。
「男君.....」
保健室で見た、寂しそうな顔。
「好きです」
そして、何とも言えない素敵な笑顔を見せて。
「んっ!」
小早川の純潔は砕け散った。
「いっ、ふ、っ!」
多分すごく痛いだろう。
接合部からは血が伝い、小早川は目を赤くして泣いている。
それでも.....。
「お、とこ、くぅん!」
俺の名を、呼んでいた。そして、無理な笑顔を作っていた。
ああ、いつかの答えなんて出てたんじゃないか。俺はコイツをほっとけなくて、コイツは俺から離れなくて。二人は抱きしめあっていた筈なのにな。
俺はただ、泣く事しか出来なかった。手を伸ばそうとしても、声を掛けようとしても。コイツの孤独を埋めるにはまだ足りない。
「ほっ、とうに、ごめっ、ん!」
特大のメギドラオンを放ってやる。後悔すんなよ、俺。

――――――――――11
「大丈夫か?」
「.....う、うん」
あの後抜かずのメギドラオン三連射にSPを使い果たした俺はおとなしく小早川の、ゆたかの軍門に降った。ゆたかも、ゆたかで情事の一部始終をカメラ四機で撮っていたらしく、俺が逃げるならそれをPTAに差出し、無理心中する気だったらしい。
「男君」
「なんだ?」
「もうメール無視しないでね」
「ああ、すぐに一通に二通で返してやる」
冷たい壁に寄り添って俺はゆたかを抱く。
「本当?」
「冗談だ、笑えよ」
「えへへ、また面白い話してね」
「ああ、腹筋が割れるくらい笑わせてやる」
「うん。あ、でも.....、腹筋が割れるのはヤだな」
「あははww俺も嫌だよ」
「うん.....、っくし」
「ああ悪い、寒いか?」
「ううん、もう少しこのままがいい」
ゆたかは俺の胸に耳を当てる。
「大きいね、音」
ゆたかは気持ちよさそうに耳を澄ませる。俺の話に、俺の声に、俺の鼓動に。

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最終更新:2009年04月18日 11:35