「お、これくれるのか?」
幼馴染の家にいるシベリアンハスキーは俺がじゃれてやる度に何処かから掘り起こしてきた物を俺の目の前に置く。
年々大きくなっていくシベリアンハスキー、『チェリー』。立ったら俺よりデカイな.....、多分。
「男君.....」
「おお、みなみ」
「お茶、入ったよ」
そう言ってみなみは俺のすぐ横に来てしゃがむ。
「チェリーと遊んでたよ」
「.....それ」
みなみは不思議そうに泥まみれになったチェリースペシャルコレクションを見つめる。
「チェリーがくれたんだ」
「.....」
「いいだろ?欲しいか?」
みなみはフッと笑ってチェリーの頭を撫でる。
「チェリー、私にはくれないの?」
チェリーは擽ったそうに唸るだけで、しばらく撫でられた後、すぐ横になった。
「はぁ.....」
「ははww相変わらずだなチェリーは」
太股に力を込めて立ち上がる。血流が循環して行くのを感じる。
「行こうぜ、みなみ」
「うん」
みなみも立ち上がる。
頭の位置がが俺よりも高い。
「.....はぁ」
「?どうしたの?」
みなみは少し傾いで聞く。
「お前、身長いくつだっけ?」
「163かな.....」
「.....あと、八センチか」
「気にしてるの?身長」
「俺は大器晩成型なんだ、きっと。それよか、家入ろうぜ」
「うん」
壱=
「アップルティーか、みなみが淹れたのか?」
みなみは頷いて、持っていたカップに口を付ける。
「美味いよ」
「.....うん」
みなみは普段からこんなに無口だけど、結構長い付き合いだから大抵の事は分かる。
静かな場所が好きで、意外と蕎麦好きで、炭酸飲料が苦手。
それから結構イイやつ。
話はちゃんと聞くし、自分の答えもくれる。良い友達ってヤツだ。
それに俺よりも頭がいいし、身長も.....高い。
二人っきりの時は大抵俺が話して、みなみが聞く側に回る。
小学校の頃からそうだった。俺は今日あった嬉しかった事、面白かった事を話して明日の希望を語る。みなみは静かな眼で俺を見て笑ったり、一緒に考えてくれたり、俺たちはずっとそうしてきた。
「えっと、パトリシアさんだっけ?あの人俺よりアニメに詳しいだぜ、今期アニメは喰霊がオススメDEATH!とか言ってたし」
「アニメなら田村さんも詳しいよ」
「ああ、あの眼鏡かけた子か。えっと、小早川さんだっけ?みなみが仲良いの」
みなみは薄ら笑みを浮かべて頷く。
「どんな子なんだ?」
「とっても優しい」
「そうか、よかったな良い友達が出来て。俺なんてどう見ても三十代の先輩がいるぜ」
「ふふww本当?」
みなみの笑顔はとっても儚い。
すぐに消えてしまうし、人前では無表情が多い。
だからこうやってみなみが笑ってる間はとても嬉しい。みなみが落ち着いてくれる。
そんな些細な事が、小さい頃から俺は嬉しかった。
=弐=
「チェリーも七歳になるんだな」
「うん、でも.....」
みなみは寂しそうに笑って、俯く。
「.....男君と、ゆたかにしか懐かないね」
最近、みなみはチェリーとの関係を悩んでいる。七年間も愛情を注いでも、そっけない仕草しか見ないらしい。
「そうか?俺はみなみは好かれてると思うけど」
「でも、私が呼んでも.....チェリーは起きてくれないもの」
「みなみは、いちいち反応しなくても傍にいてくれるって安心してるからだろ?俺はそう思うよ」
「.....そう、かな?」
「優しい人が嫌いな奴なんていないよ」
みなみは顔を赤らめて、また俯く。
「.....男君も?」
「ああ、だからチェリーの事はそんなに気にすんな」
「うん.....ぁりがとう」
みなみは耳を真っ赤にして微笑む。
「うん.....そろそろ帰るよ、親が心配する」
俺はクッションから腰を上げ、部屋を後にする。みなみは玄関まで見送りに出てくれた。
「また、明日な」
「うん、また明日」
玄関を開けると、チェリーが待っていた。
「出迎えか?チェリー」
頭を乱暴に撫でてやる。チェリーは気持ちよさそうに唸ってから、一鳴き。
「じゃな、チェリー」
門を開けて、もう一度振り返りみなみに手を振る。
みなみも振り返してくれる。ついでにチェリーも吠える。
また明日な、みなみ。
==参=
みなみとは小さい頃から同じ組、同じクラスになることが多かった。
小学校から、中学までみなみがいつも同じクラスにいた。
小学校の高学年の頃からよくそれでからかわれたけど、みなみは別に何とも思ってなさそうだったし、俺も俺で気にしてはいなかった。
中学に上がってから、みなみは少し周りと距離を取るようになっていった。
休み時間は教室の隅で一人、読書に没頭していた。
中三に上がった時、みなみが何も文句を言わないのをいい事に、学級委員に推薦された。
勿論みなみの意思なんて無い。みなみは優しいから、そんな無茶な推薦でも受けてしまう。それに、何も言えないだろう。
俺はそんな人の優しさを無碍にするクラスに腹が立って、決まっていた保健委員を蹴って男子学級委員に志願した。
「おい、みなみ」
「.....何?」
「嫌だったら、言ってもいいんだぞ」
初めての委員会集会に行く前に、俺はやっと声を掛けた。学校で話すのは久しぶりだった。
みなみは少し驚いた顔をしてから、目を覆った。
「.....あ、りがとう」
「いや、俺もごめん。何も言えなかった」
「.....、うん」
みなみはその後少し泣いて、前髪で上手く眼を隠していた。
==4==
それから俺たちは委員会関係でよく帰り道を一緒に帰った。
学校、帰り道、たまに遊びながら俺たちはいつもの関係に戻っていった。
そして、秋が来て委員会最後の集会の帰り道。俺たちは初めて自分たちの進路について話し合った。
「みなみ、俺凌桜受けるわ」
「.....本当?」
「ああ、みなみも受けるんだろ?」
みなみは小さく頷く。
「頑張ろうな、みなみ」
「.....うん」
みなみはそう言って笑ったのは覚えている。
嬉しそうな、楽しそうな。それでも不安そうに笑って、頷いてくれた。
===伍==
凌桜に入学してよかったと思うことは上げたらキリがないけど、最初に思う事はみなみにいい友達が出来た事だ。
休み時間にみなみの席を見てもみなみの姿が無い。
席を立って、友達のグループと笑いながら話してるのを見ると少し寂しい気持ちになるけど、それでも嬉しい方が強い。これからみなみにはどんどん友達が増えていくだろう。きっと。
高校に入って俺は友達がいるみなみに極力近寄らない事にした。
みなみの方から遊びに誘ってきた時以外は遊ばなくなったし、一緒にも帰らなくなった。
こういうのを『巣立つ雛を見送る親鳥の心境』というのだろうか。
きっとこれから先、みなみにはもっと友達が出来る。
俺よりもきっとみなみの事を理解できる奴も。
俺よりもみなみの事考えてくれる奴が。
一学期に入る頃には俺はみなみよりも他の友達を優先するようになっていった。去年一緒に行った夏祭りも断ったし、花火の誘いも断った。
受話器越しのみなみの声は寂しそうだったけれど、みなみには俺と行く事よりも、新しい友達を優先して欲しかったからだ。
二学期の始業式の時以外は登校も先輩の高良さんに譲っている。
どんどん、俺はみなみと距離をとって行く。
このほうが良いと何度も心の中で唱えながら。
===碌===
二学期の文化祭も終わり、みなみの文化祭での活躍を称えてやるために久しぶりに遊ぶことにした。
「なんか、緊張するなぁ」
インターホンを鳴らすと庭の端で丸くなっていた白い塊とと玄関のドアが同時に動いた。
「おお、チェリー久しぶりだなぁ!ってか、またでかくなったのか?お前」
必死に俺にしがみ付き、状態を起こしたチェリーの大きさに俺は度肝を抜かれる。
「.....いらっしゃい」
「おお、お邪魔します」
このやり取りも久しぶりだな。
「上がって.....」
「おう、またなチェリー」
見ないうちに、みなみの表情は豊かになっていった。
笑顔にはいくつもの彩が付いて、仕草一つ取っても前とは違っていた。もう俺はみなみにしてやれる事は無いだろう。一ヶ月も遅れた誕生日プレゼントを渡して。
====七===
「.....これ」
「誕生日プレゼント、今年はパーティ断ったろ?だから」
「ありがとう、大切に使う」
たかが栞に大げさだな。
コップに注がれた紅茶、懐かしい整理された部屋に、初めて見る可愛らしいキャラクターのクッション。その全部がみなみの変化を意識させる。
「最近.....」
「ん?」
「.....なんで避けてるの?」
気付いてるよな、そりゃ。
「そうか?普通だと思うけど」
みなみは這って俺のすぐ横に詰め寄る。
「.....惚けないで」
「俺も友達と遊んだりしてるんだよ、お前もだろ?」
嘘は付いていない、そうなるようにしたんだから。
みなみは俺が見た事もない表情で問い続ける。
「私は.....あ、あなたの方を優先する」
「は?」
「証明.....しようか?」
みなみはセーターを脱ぎ捨てて、胸元のボタンを外す。
「お!おい!もう分かったって!」
「.....まだだよ」
みなみがそう呟いた直後、唇が塞がった。
====八====
「んっ!」
思わず後ろに倒れこむ。みなみは俺の両手を握りながら、一緒にそのまま倒れる。
俺は何も抵抗が出来なかった。昔から身長どころか体力も敵わなかったからな。次に舌が入ってきた、俺はせめてもの抵抗に思い切り歯を食いしばった。みなみの舌はそんなのお構い無しに歯の隅々を舐めていった。
どのくらいキスしていたんだろう?窒息か、それともファーストキスの魔力か、脳髄はマヒ状態。不本意にも下半身は魔力のお陰で今までになく元気だ。
「お、おい、みなみ?」
「本気、私は」
みなみは乱暴にスカートを下して、それから俺のベルトを解く。
「おい!いい加減にしろ!」
俺は空いた左手でみなみを押す。
「.....大声出すよ」
「は?お前、なに言って.....」
部屋を見渡すと、みなみがさっき脱ぎ捨てた服が散乱していた。
「お前.....!」
「これが、その証明」
みなみは見た事も無い色の炎を瞳に灯したまま俺をベットに押し倒した。
「お、おい!」
ガチャと金属音。頭上で無理やり手錠を掛けられて、その手錠もまた別の手錠でベットの金具に繋げられる。そして、ものの五分の間に四肢の自由は削がれ、口にはみなみの下着が突っ込まれた。
「私、何かした?」
みなみは何度もそう聞いてきた。
「私が暗いから?私といるとつまらないから?」
いつもより饒舌なみなみにあっけに取られてしまう。
「それとも、身長が高いから?胸が無いから?」
みなみは泣きながら俺の息子を舐める。
俺は間違ってたのか?ただみなみのために思ってきた事が。
「私が嫌い?男君」
バカ野郎、大間違いじゃないか!何がみなみのためだ、コイツをここまで傷つけて、何してたんだ俺は.....
「ん!!」
いつの間にか俺は射精していた。みなみはそれすらも舐めとる。
「気持ち.....良かった?」
布団を汚した最後の雫を指で掬い、それも舐めとる。
みなみは身に纏っていた服を全て脱ぎ捨てる。ブラも、ショーツも。露になった細い体。凹凸の少ない身体だが、筋肉は引き締まり、肌は美しい色を保ったまま。
「もっと、気持ちよくできるから.....、だから」
そう言ってみなみは俺の体を抱きしめる。
それから俺の首筋を舐め始めた。首から、胸に降りる頃には息子は完全復帰。みなみは時折目を堅く閉じて身体を震わして甘い吐息を漏らしていた。
「男君.....、見てて」
みなみは俺の息子に優しく触れたあと、自らの性器をあてがった。
「これで、ずっと...一緒に.....いてくれるよね?」
みなみはためらいも見せずに一気に腰を下す。
「ぅっ!」
短い悲鳴。血は流れて、俺へと伝う。
「男君は.....動かなくても...、いいから」
嫌だったら言えよみなみ。頼むから。
「私は...、気持ちいい?.....、男君?」
我慢して笑わないでくれよ、頼むから。
「泣かないで.....、すぐ、気持ち良くなるから、んっ.....」
俺は、みなみの中に全部を吐き出した。みなみは全てを受け止めた後、俺の方に倒れる。
「気持ちよかった?男君.....」
初めて聞いたみなみの満足そうな声に、俺は応える事も出来ずに強烈な眠気に呑まれていった。
====急=====
目を覚まして、飛び起きると。
そこはいつかのみなみの部屋だった。
「おはよう」
みなみは俺の腕を大げさに掴みながら嬉しそうに呟く。
「みなみ.....」
俺たちは服もしっかり着直していたが、さすがにシーツと布団は変わっていた。あとみなみの態度も。
俺の右腕を抱きしめながらみなみは俺にもたれ掛かる。
「みなみ.....おれは」
言おうとした俺の口をみなみの唇が塞ぐ。
「ごめんなさい、でも私頑張って好きになってもらえる様になるから。.....だから」
「.....みなみ」
「だから、もう.....離れないで」
みなみはもっと強く俺の腕を抱く。縛るように、刻むように。
俺はみなみの頭を撫でる。諭すように、語りかけるように。
傍にいるためにみなみが安心できるように。
最終更新:2009年04月18日 12:21