アットウィキロゴ


今年度最後の学級委員集会も終わり俺は部費の最終決算を終えた。電卓を打つのも意外に疲れるもんだ。
「はい、お疲れさん」
長い髪をツインで纏めているのが印象的な同じクラスの学級委員の柊かがみが俺に湯気が僅かに見える湯飲みを持ってきてくれる。
「サンキュ、柊」
もう外は暗い。部活動の掛け声ももう聞こえない。
時計を見ると六時手前。
「バス、まだ出てるか?」
「さぁ?でも五時半のもとっくに出ちゃったし、しばらくは無いでしょ」
柊は既に諦めたらしく、自分の湯飲みをゆっくり冷ましながら飲み始めた。
「はぁ、これで高校生活の一年目終了かー、なんか呆気ないなぁ」
「確かに、もう一年か」
「早いよね、入学式が昨日みたい」
柊は溜息混じりに苦笑する。
「失礼します」と、声と共にドアがスライドする。
「お、みゆき。そっちも終わったの?」
「高良さんお疲れ」
「はい、男さんもかがみさんもお疲れ様です」
やんわりとした物腰の謝辞を告げ、ニッコリといつもの可愛らしい笑顔を浮かべるこの人は他クラスの学級委員の高良みゆきさん。その人だ。
「予算表、出来上がってたんですね?スゴイです」
両手の平を合わせてみゆきさんは嬉しそうに目を輝かせる。宇宙の歌姫も銀河の果てまで抱きしめちゃう可愛さだ。
「いや、ただの計算だけだから。そんなに褒められても.....///」
「お、男?」
「べ、別に照れて訳じゃないんだからね!?」
柊は呆れたような目で俺を見てまた溜息を吐く。
「はぁ、結局類友かよ.....」
ん?なんだ類友って?
「あの、何を話されていたんですか?」
「え、ああ。もう入学して一年経つんだなとか、そんな話だよ」
「まぁ、本当ですね!」
みゆきさんは和やかな笑みを浮かべて上品に笑う。
そうか、もう一年か。早いな。

「じゃあね、みゆき!」
「はい、かがみさんも男さんもお気を付けて」
高良さんに丁寧に見送られて、俺たちの乗った電車は走り始めた。
「それじゃあ、アンタバイトの間全部寝てんじゃないwwwwww」
「あww確かにwwww」
柊が座席に座り、俺が吊革に掴まるという形で俺たちは道中話していた。
「ところで、柊ってさ」
「ん、なによ?」
「ズバリ、一人っ子だろ?」
「何よ藪から棒に?」
「当たりだろ?スバリ」
「どこの学級委員長よwwそれに私三女だしww」
柊はしてやったりな笑みを見せる。
「な!なんだってーーー!」
「社会人が一人に、大学生が一人。あと隣のクラスに双子の妹が一人」
「え?柊の、双子?」
「あ、双子って言っても二卵性だからクリソツってレベルじゃないわよ?」
「そっか、なんて子なんだ?」
柊はいままで俺の前では見せなかった遠い昔を懐かしむような、愛でるような表情で言った。
「つかさ。柊つかさよ」

春休みもバイトに相殺されて、俺は妙な疲れを覚えたまま新二年生になった。
クラス分けの紙が張り出された掲示板の前には人だかりが出来ていた。
「二の.....Eか」
やや遠くからそれを確認するとすぐに新クラスに向かうことにした。
「あ、男じゃん」
「お、みのる」
「お前、クラスどこになった?」
「E。お前は?」
「俺もだ、また一年よろしくな」
へらへらと笑っているとみのるの携帯が鳴った。
「あ!スタジオからだ!男、先行っといてくれ!はい!もしもし、えっ!番組のレギュラーを!?はい、よろこんで!」
嬉しそうだな、白石。先輩とかに虐められんなよ。
クラスには既に結構な数の生徒が集まっていた。
「ねぇねぇ、こなちゃん」
あ、あのショートカットの娘.....可愛いな。というかあの髪の長い子は飛び級か?バーロー?小さすぎるだろJK
「ほら、さっさと席付けー」
はっ!見惚れてしまっていた!?
教師の登場で全員席に着く。
ありがちな教師の自己紹介と初心表明が終わり、この後の予定を述べられる。
「よっしゃ、ほいじゃお前らの自己紹介始めよか」
来たよ、来ちゃったよ。
ここでこれからの生活が決まるからな。明るく行かなきゃな!!
自己紹介は教壇に一人ずつ立ち発表する事になっていた。
趣味、出身中学、生年月日.....。
なんでもいいが、ここで目立ち過ぎるのは不味いよなjk
「泉こなた。趣味はネトゲです」
なん...だと..?
ネトゲが趣味とか言っちゃたらヤバいだろjkそこは隠れてフヒヒとか言っとくだろ。
俺が王子ならバカヤロー!どうなっても知らんぞ!!とか叫んじゃうね。
「ねぇ、こなちゃんネトゲって何?」
そうか、パンピーには分からんよな。助かったな、バーロー。
「ん?ネットゲームの事だよ」
「んー分かんないや。ごめんね、こなちゃん」
嗚呼、笑顔もかわいいなあの子。
「ほな、つぎ男」
ふ、見てろバーロー。隠れオタの自己紹介特と心に刻むがいい!!
教壇に立つと分かるが、教室の隅々まで見渡せる。緊張するな。
しかもさっきの可愛い子が見ているジャマイカ!!ここで噛む訳にはいかない!!
最初からクライマックスだぜ!!
肺に一気に空気を溜めて、少し大きめの声を出す。
「東ちぃうからくぁwwせdrftgyふじこlp!!!」
あ、噛んだ。

クラスに小さな笑いが起きただけでまともな自己紹介も出来なかった俺は意気消沈していた。
何より凹んだのは笑ってるバーローに「男君が可哀相だから笑っちゃ駄目だよこなちゃん」って庇ってくれた彼女の堪えきれずに出ていた笑顔だった。
はぁ、欝だ氏のう。
うな垂れる俺の耳に次に響いたのは。
可愛らしいあの子の可愛い声だった。おのずと伏せていた顔を上げてしまう。
教壇にはスカートの端を握って恥ずかしそうに躊躇っていたあの子がいた。
「柊つかさです」
あの時、柊が見せた笑顔を思い出す。可愛らしいボブカットに小動物のような可愛さ。
垂れ目がちなその目はさながら子犬を思い出す。
緊張していたのか、喋りながら目がグラブロ並みに泳いでいた。
「えっと、趣味は」
その瞬間、目が合った。
「お菓子ずくぁwwせdrftgyふじこlp!!!」
あ、噛んだ。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年05月25日 11:06