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「あっ!そうだ、みゆきさん。」

こなたさんがチョココロネを食べる手を止めて私を見ました。

「なんですか?」
「昨日、一緒に歩いてたオトコは誰だね?」
「「「!!」」」
「あ…あの…昨日、東京にいらしたんですか?」
「なるほどー…みゆきも私たちの見てないとこでちゃんとやることやってるのねー」
「ゆきちゃんモテそうだもんねー」
「ちっ…違いますっ!彼とは幼い頃からの友達なんですよ!」
「ふむ、それを『フラグ』と言うのだよ。」

…男君とは、本当に友達です。…あの時からずっと。


十年前。
男の子A「あいつさーあのでっかい家の子だろ。…なんかいっつも本読んでて暗いしさ、同じ班になりたくねーよな。」
男の子B「なんか金持ちなんだろ?オレもやだなー。」
幼みゆき「………。」

幼男「おーい、みゆき!」
幼みゆき「えっ?!」
幼男「本ばっか読んでねーで外で遊ぼーぜ!」
幼みゆき「でっ…でも…。」
幼男「ほら、行くぞー!」
幼みゆき「うん…。」

幼みゆき「…ねえ、おとこくん。」
幼男「ん?」
幼みゆき「あのね…わたしと一緒に居たらおとこくんも嫌われちゃうよ?」
幼男「なんで?」
幼みゆき「…」
幼男「みゆきは友達なんだから、一緒に遊ぶの普通だろ?」
幼みゆき「…うん。」



私にとっては、男君は本当に大切な友達でした。

幼みゆき「もう、卒業だね。」
幼男「うん。」
幼みゆき「別々の中学になっちやったね…」
幼男「みゆきは頭良いからなー。」
幼みゆき「そんな事ないよ!」
幼男「だっていっつも勉強教えてもらったし。」
幼みゆき「男君はスポーツ得意でしょ?!だからね…わたしが勉強頑張れば男君と二人で苦手なとこ補えるかなーって…思ったの。」
幼男「そっか…。」
幼みゆき「…もう一緒に遊べないのかな…。」
幼男「そんな事ないよ!また一緒に遊ぼーぜ!…んで勉強教えてくれると助かる。」
幼みゆき「…うんっ!」 
中学三年生の秋。
男の家で勉強するみゆきと男。
男「ん…もう十時近いな。そろそろ帰らないとまずいんじゃない?」
みゆき「そうですね…一応家には遅くなるって言って出てきたんですが。」
男「女の子があんまし遅くなっちゃまずいでしょ。」
みゆき「……男君。」
男「ん?」
みゆき「私は女に生まれたくて女になった訳ではありませんよ。」
男「…え?」
みゆき「…あっ!ヘンな意味ではないですよ?!」
男「う…うん。」
みゆき「わ…私にとって男君は一番大切な友達です。」
男「…。」
みゆき「最近思うんです。私が男だったら、もっとあなたと仲良くなれたのではないかと…。」
男「…みゆき。」
みゆき「今日だってそうです。私が男に生まれていたら、ギリギリまで一緒に勉強して泊まっていけたかも…。」
みゆき「…ってごめんね!変なこと言ってしまいました。」
男「みゆき…俺にとってもみゆきは一番大切な友達だよ。」
みゆき「うん……じゃあ帰るね。」
男「おやすみ。」
みゆき「おやすみなさい。」



…そして男君とは別々の高校に行きましたが、それからも私達は友達です。


「ふーん、みゆきさんがそう言うならさ、今度直接みんなと会わせてよー」
「こらっこなた!みゆきが迷惑だろーが!」
「いいですよ。彼…男君とは日曜日などよく一緒に勉強するので、今度の日曜日はみなさんも一緒にやりましょう?」
「いいの?ゆきちゃん!」
「そこは遠慮するとこよ、つかさ。」
「本当に大丈夫ですよ、かがみさん。」
「ほらほら、みゆきさんもおKて言ってるよーかがみん?」
「…みゆきが迷惑じゃないんならいいけどさ…。」
「お姉ちゃんも実はゆきちゃんの彼氏さん(仮)見たいんだよね?」
「えと…本当に友達ですよ?」


日曜日。
「男君、そういう訳で今日は学校の友達が来るんですが…」
「うん、いいよ。みゆきの友達だからみんな頭良いんだろーな。」
「……。」
ピンポーン
「あ、来たみたいです。行ってきますね。」
「うん。」

「みなさん、こんにちは。」


「ほうほう」
「ふーん」
「へー」
「み…皆さんどうしたんですか?」
「「「別にー」」」
じーっ×3
「みゆき、なんか俺めっちゃ見られてるんだけど…」
「ご…ごめんなさい。」



月曜日、学校。
「みゆきさん、男君とは本当に友達なの?」
「本当に友達です。」
「でもゆきちゃんと男君、いい感じだったよねー」
「お互い昔からの知り合いだからじゃないでしょうか…?」
「あーあ、勿体ないわねー。」
「…でも大切な友達です。」


次の日曜日。
電話をかけるみゆき。
トゥルルル…
トゥルルル…
「どうしたんでしょう…」
トゥルルル…
トゥルルル…
トゥルルル…
ガチャ
「あ…あの、男君ですか?」
「………………あっ!みゆきっ!!ゴメン寝てた!!今行く!!!」


「ゴメン!寝坊しちゃって。」
「いえ、私は大丈夫ですが…どこか体調悪いんですか?」
「いや、その…昨日寝たの遅くてさ…四時頃までゲームしてて…」
「えっ?!珍しいですね…」
「うん、実はみゆきの友達の泉さんにゲーム貸してもらってさ、だいぶハマってた…」
「そう…ですか…。」
「あっ、せっかくだし勉強しよう?」
「…うん。」

いつも通りの日曜日のはずでした。
…なんでしょう…この心のモヤモヤは…。

   男君は私の友達。 
 大切な友達。

      友達…。

……トモダチ…



…1ヶ月程して、予感は当たりました。




「みゆきさーん。」
「どうしました?」
「今週の日曜さ、みゆきさんの家遊び行っていい?」
「いいですよ、皆さんで来るんですか?」
「んーん、私だけ。」
「??そうですか。」
『泉さんだけなんて、珍しいですね…』


日曜日。
ピンポーン
「こんにちはーみゆきさん。」
「こんにちは、泉さん。どうぞ、上がってください。」
「おじゃましまっす。」

「…どうしたんですか、今日は。」
「んとね…みゆきさんには報告しとかなきゃって思って。」
「??何をですか?」
「…その…私さ………男君と付き合う事になった。」
「……………………えっ?」
「一緒にゲームとかしてたらだんだんとさ…その…」
「……………そうですか。」
「みゆきさん…」
「おっ…男君はいい人ですよ。きっと泉さんの事、大切にしてくれるて思いますよ。」
「うん、そーだね。」
「おめでとうございます。」
「…ありがとう。」
「…せに…」
「えっ?」
「幸せになってくださいね。」
「うん。」


泉さんが帰った後、私は男君にメールをしました。
【本文】
泉さんから聞きました。
おめでとうございます。
泉さんの事大切にして、幸せになってね。



その日は、いつもより更に早く寝ました。

…男君は大切な友達。

   これからもずっとそう…。

『でも、もう二人では遊べないね。』



また次の日曜日。
今日は一緒に勉強する約束はしてないのに、男君がうちに来ました。

「みゆき、おはよ。」
「うん、どうしたの男君。」
「ん…ちょっと話ししたくて。」
「…うん。」
私のメールに対する男君の返信は無く、何だか男君に会うのは久し振りな気がしました。
「泉から、聞いたんだよね?」
「うん、聞いたよ。おめでとう。」
「…なんて言うか、みゆきにはお礼を言わなきゃって思ってさ。」
「お礼…ですか?」
「うん、泉と知り合ったのはみゆきのおかげだし。」
「…お礼よりも、ちゃんと泉さんの事を大切にする事を約束してください。」
「…うん。約束する。」
「…」
「…」
「あっ…関係無いんだけど来週も一緒に勉強しない?」
「………ダメです。」
「えっ…?」
「泉さんのこと、大切にしてないって思われますよ?」
「…でも、みゆきは友達だろ…?」
「…前も言いましたが、私は女なんです。私が男性だったら許されますけど…。」
「……うん、そうだな。」
「もう、二人で遊んだりは出来ませんけど…私達…ずっと友達ですよね?」
「…うん。」
『あれ…?』
私は胸が苦しくなりました。
「ちょっと待っててくださいね。」
私は男君を残して台所に向かっていました。
気付いたら私はナイフを持って部屋に向かっていました。



ガチャ
「男君。」
「…どうしたの、みゆき。ナイフなんか持って。危ないよ?」
「男君…。」












「……リンゴ剥いてあげるね。男君リンゴ好きだもんね。」
「…うん。でもリンゴ持ってないよ。」
「そうだね。かんじんのリンゴ持ってくるの忘れちゃった。持ってきますね。」
「うん、ありがとう、みゆき。」

私は泉さんみたいに料理は上手くありません。
必死に剥いたリンゴを、男君は美味しそうに食べてくれました。

私の…大切だった、男君。

…これから男君を見守るのは私じゃないけれど、男君なら、きっと大丈夫。


男君が帰った後、私は携帯電話から男君のアドレスを消しました。
それからも、男君からは時々メールが来ます。
でも私からメールをする事はありません。



それからまた、十分な時間が流れました。




「泉さん、男君とはうまくいっていますか?」
「うん。男優しいよ。」
「ふふふ、よかったです。」
「でも、学校でその話題はキケンだからさ…ほら、かがみんとかにバレると色々言われそうで。」
「ふふふ、そうですね。」

私の大切な幼なじみと、私の高校での大切な友達が一緒になって、幸せになって、私は嬉しい。
でも私が男性に生まれていたら、きっと、もっと嬉しかったでしょう。

少し未来の事を想像します。
男君の隣には泉さんがいて、二人は幸せそうに笑っています。
やがて二人は結婚するかもしれない。
子供が産まれるかもしれない。


男君の中から、私は消えないかもしれない。
でも、もう二人で時間を過ごすことは出来ない。
それでは私は無いのと同じなんです。


日曜日の昼、私は駅のプラットフォームに立ちました。
これは事故なんです。
私は貧血でよろめくような仕草をしました。
電車が来ます。
大丈夫。あれから随分時間が経ったし、私は貧血でした。
だからこれは事故なんです。
私はよろめいて線路に投げ出されました。
電車が来ました。


やっと気付きました。
私は…













…男君が好きだった。

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最終更新:2008年06月30日 17:05