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今、俺はバイトの始めての面接くらい緊張していた。
「男くんは、サボテン好きなのかな?」
「あ、いや好きって言うほどじゃ.....、ただ面倒が掛からないって聞いて買ってみたらどうしても花が咲くとこ見たくて.....」
「そうだねぇ、シャコバサボテンの花は綺麗だからねぇ」
おっとりとした口調で、『優しい』と人目で分かってしまうこの人と俺は一時間前からずっと観葉植物の話題で妙に盛り上がっていた。
子守唄みたいなゆっくり口調、やんわりさがった垂れ目、のんびりとした性格、ニコニコと穏やかな笑顔。
「男くんは、今時珍しいね趣味が観葉植物だなんて」
「いえ、中学のときは大概家に篭もりっきりでしたから.....」
「そうかい、うちはつかさと家内しか分かってくれなくてね。男君みたいな子が来てくれて嬉しいよ」
そう、この穏和な男性こそ柊家の大黒柱なのだ
◇◇◇
こなたと柊の協力もあってか、俺は人生初の『お誕生日パーティー』に参加する事が決定した。
しかも『異性』のだ。俺は柊姉妹から許可を貰った直後、はしゃぎ過ぎてその拍子に線路に落ちてしまった。
今日が七月七日とか織姫と彦星とかどうでも良い、今日が柊姉妹の誕生日であることに俺は感謝した。
誕生日プレゼントをこなた共に吟味し、一か月分丸々のバイト代を始めて私事に注ぎこんだ。
昨日は一睡もしてないのは言うまでもないが、約束の二時間前に着いたのは痛かった。
玄関の掃き掃除に出てきた柊の母親にまんまと見つかり、家の中に招かれてしまった。
早すぎる来訪に柊は呆れ、つかさは苦笑い。
やっちまったよ、親父。
つかさに応接間(?)みたいな部屋に招かれ、時間を待つこと十分。
縁側から中年の男性が汗を拭いながら入ってきた。
「あれ、つかさのお友達かな?」
「お、お、おおお邪魔しています!」
「どうぞ、ゆっくりしていきなさい」
驚かなくてもいいよ。と諭すように言う父親に、俺はいつかの誰かの背中を思い出してしまう。
「いつも、かがみとつかさをありがとう。すまないけど、君の名前を教えてくれるかな?」
「お、お、おお男です!!」
「そうかい、男君。私も高校生の男の子と話すのは久しぶりでね、つかさ達が取り込んでいる間だけ話し相手になってもらってもいいかな?」
えっ?まじっすか?


最初の内は俺の方が緊張しすぎて最初の方何を喋っていたか覚えていないが、喋っていく中で落ち着きを取り戻していった。
柊のおじさんはものすごく落ち着いていて、どちらかと言うと聞き手に回るほうだった。
適当な所で相槌を打ち、ちゃんと受け答えもしてくれる。
話している相手には安心感すら感じさせるほど穏やかな笑みを浮かべて、話を聞いている。
どのくらい喋っていたのか、いつの間にかケーキとクッキーが焼き上がったらしくつかさが声を掛けに来てくれた。
「男くーん、ってあれ、お父さん?」
「お疲れ様、つかさ。少し男君と話していたよ」
「えっと、あははww」
どうすればいいのか分からずに笑っていると、インターホンが鳴る。
「あっ、きっとこなちゃんだ。男くんいこ!」
つかさはすぐに玄関に迎えに行ったが、俺は立ち上がって少し戸惑っていた。
おじさんはどうするのだろうか。
そんな俺の困った顔を見上げ、おじさんは嬉しそうな笑みを浮かべる。
「大丈夫、行っておいで」
その言葉に胸を突かれる。
俺は一度頭を下げて、すぐに玄関に向かった。
◇◇
「うわっ、本当に男来てた!!」
すでに玄関の方にはいつもの四人が揃っていた。
「男君、二時間前に来たもんね」
「ちょww二時間前とかwwwwwwどんだけwwwwww」
「フヒヒwwサーセンwwwwww」
「パネェwwwwww」
ほらほら、と柊は急かす様に高良さんと泉に靴を脱がせ、二階に上がる様に指示する。
「ハリッキってんなぁ」
「男さんは、」
高良さんは階段を先に登りきった俺に声を掛ける。
「男さんは何を上げるんですか?」
「ん?おれ?」
俺は紙袋を開けて、中身を高翌良さんに見せる。
手のひらに収まるほどの布張りの小箱を二つ。
「まぁ、ペアですか?」
「うん。ペアの指輪」
高良さんは私もペアなんですよと上品に笑う。
「えっ!ダブった?」
「いえ、私のはイヤリングです」
「へぁ、びっくりしたww」
うふふとまた高良さんが上品に笑う。


プレゼントを渡し、ケーキを食べ終えてゆるゆるとおしゃべりタイムに入っていった。
苦労と俺の一ヶ月が幸いしてか、二人。特につかさはプレゼントを喜んでくれた。
藍色と桃色の石をはめ込んだ二つの指輪。桃色はつかさに、藍色はかがみに。
「へー男にしては、なかなかね」
「ありがとう男君!大切にするね!!」
嬉しそうに指輪を嵌めたり取ったりするつかさを見て、頑張ってよかったなぁとしみじみ思う。
ああ、今なんとなくキャバ嬢に年甲斐もなく貢ぎ続ける中年親父の気持ちが分かった気がする。
やっぱりこちら側が相手を喜ばそうとして言葉や物を贈って予想以上に喜んでもらえるとなると、もっとその表情が見たいってなるもんなぁ。
つかさにはそういう才能もあるんじゃないかと思ってしまう。失礼だな、全く。
逆に柊は二、三度空けて見るだけで、それっきり小箱を勉強机の上に置いて触らなかった。
ああ、こういう所にも違いが出るんだ。
流石にいつもの委員会帰宅メンバーとはいえ、緊張すると思ったが案外拍子抜け。
俺達はいつものようにグダグダだらだらと話し続け、余韻に浸って、ただいつもより柊とつかさのネタが多くなった。それだけだった。
「おわっ!もう六時じゃん、俺そろそろ帰るわww」
俺は少し痺れた足を引き摺りつつ、ドアノブを回して部屋を出る。
「あ、まって!」
ドアを閉める直前、つかさがドアの僅かな隙間から出てきた。
「送るよ、男君」
確かに嬉しいけど、泉たちもいるしここは残ったほうがいいんじゃないのか?
「いや、悪いよ」
「んー、じゃあ玄関まで、ね!」
うーん、アムロも『人の善意を無視する奴は一生苦しむぞ!』って言ってたしな。
別にいいか。
玄関をくぐり、柊家の門まで来てもつかさは着いてきた。
「もうここまでで良いから、ありがとう。つかさ」
つかさはもじもじと指先を合わせ、何か言いたそうにしている。
「あ、あのね、男くん.....」
どこからか、あの小箱を取り出してつかさはあの指輪を嵌める。
キラキラと反射する小石がいつもよりつかさの笑顔を輝かせる。
ときめきってのが何だか分かった気がする。
これは確かにメモリアルだわ、うんスターダスト。
正直に言ってトキメキが一週して、逆に冷静だ。
「えへへ、本当にありがとう!」
嗚呼、女の子って可愛い。
「あ、あのね!なんて言っていいのか分からないんだけど、あっ、でもね、あの、また男君と遊びたいな.........んて」

こ、これって.........。
フラグ立ってる?父さん。

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最終更新:2009年05月25日 12:46