走る必要なんか無いのに、私は走ります。
ううん、もしかしたら今そこに行く事自体が意味なんて無いのかも知れない。
でも……。
「いや、泉が宿題写しに来てるけど?」
何故かそれを聞いたら居ても立ってもいられなくって。
私は電話を切ってすぐに家を飛び出した。
だって、今男君は私以外の女の子と一緒にいる。
私はドジだから……、足手まといだから。
いつか男君はは私に飽きられちゃうかも、邪魔だと思ってしまうかも。
そう思うと、怖くなった。
私は、ゆきちゃんみたいに可愛くないし、お姉ちゃんみたいにしっかりしているわけでも無い。
こなちゃんみたいに男君の好きなゲームとかアニメのお話も……出来ない。
でも、それでも。私は誰より男君が好きで、誰にも渡したくなくって。
こういうのを独占欲っていうのかな。
男君は優しくて、男君の手は大きくて、男君は暖かい。
私はそんな素敵な男君に惹かれていく。
自分でも分かる。
だから、怖い。
男君が私から離れて行っちゃうのが。
絶対に、それだけは……嫌だ。
◇◇◇
「いいか!絶対コイツを倒してもSELECTボタンは押すなよ!絶対だぞ!」
「分かってるってー(=ω=.)ポポイ」
ボスとの一触即発の会話イベントの終盤にインターフォンが鳴る。
時計を見ると四時十五分。
「は?」
泉がコントローラーを持ったまま窓から玄関を見る。
「あっ!∑(=ω=.)!」
「誰だ?郵便か?」
泉はこっちを見て不適に笑う。
「つかさが来てるよ(=ω=.)ニマニマ」
俺はそれを聞いてすぐに一階に滑るような速さで下りた。
◇◇
「つかさ!?」
玄関を出ると、可愛らしいワンピースのつかさがいつもみたく可愛らしい笑顔を浮かべて待ち受けていた。
「えへへ」
「めちゃくちゃ早かったな、もうちょい掛かると思ってたんだけど」
「うん、急いで来ちゃった」
つかさの額に汗が光っていた。走ってきたのか?
「ごめんね、迷惑だったかな?」
つかさ、上目遣いは反則だろ?
「何言ってんだよ、つかさならいつでも大歓迎だぜ?」
そう言ってつかさを家に上げてやる。
俺の後をちょこちょこ付いて来てるのを考えると、息子が少し硬くなった。
「ねえ、男君」
つかさが階段を上がる直前に俺の袖を摘む。
「ん?」
「・・・・・、こなちゃん」
「どうした?」
「こなちゃん、まだいるの?」
「え?ああ、上でゲームしてるぜ」
俺がそう言うと、つかさの摘んでいた手が今度は俺の手を掴んだ。
「つかさ?」
「ううん、ゴメン」
つかさはすぐに笑顔を浮かべて、手を離した。
「なんでも無いよ」
「そか。先に二回に上がっててくれ、お茶淹れてくっから」
「うん・・・・・」
◇◇◇
愛の戦士、こなた・イズミ。参上!!
ポポイを颯爽と葬った私は当然の様にSELECTボタンを押した。
やっぱダークラピの方が強いかな。
階段を上がってくる音がする。
可愛らしい軽やかな足音。
ドアが開く。
「うぃーす、つかさ(=ω=.)ノ」
「・・・・・」
ありゃ?
「あれー?つかさ?(=ω=.)ドッタノ?」
いつものノリじゃない?
っというか、つかさは無表情のまま私を睨みつけている。
こんなつかさは始めてだ。なんというか、怖い。
少し経って、つかさが口を開いた。
「・・・・・こなちゃん、宿題は?」
「へ?(=ω=.)what?」
「宿題は?終わったの?」
咎めるような口調。
どうしたんだろう?
「いや、終わったよ(=ω=.)ホラ」
私は机の上に置いていたノートに視線をやる。
「そっか、良かったね」
男がまずい事でも言ってしまったのか?
今日のつかさはなんか怖い。
私が何か言おうとして口を開こうとした直前、「おはラッキー☆」
スク○ェアオタクがやって来た。
◇◇◇
お茶を持って上がると、俺の部屋は静まり返っていた。
よし、ここは俺の空気ブレイカーで!
「おはラッキー☆」
部屋にいた二人の視線が一気に俺に集中する。
「・・・・・」
「・・・・・(=ω=.)」
なんだこの空気は?
いや、俺はこの雰囲気を知っている!知っているぞッッ!!まるで期待してなかった奴がドッチボールで最後まで偶然生き残って、女子が応援し始めた途端当たってしまったあの感じの!!そうだ、あの時の雰囲気だッッ!!
それでも、俺のmy angelつかさはまたあの可愛らしい笑顔を浮かべてくれた。
泉は……なぜか俺を見つめているだけ。
「おい、なんか言えよ。スベったみたいじゃねぇか」
「・・・・・、男(=ω=.)」
「わー、サイダー!」
泉が何か言おうとした瞬間、つかさが割って入った。
俺はお盆を机の上に置いて座る。そしてすぐ横につかさが座る。
「・・・・・あの、つかささん?」
「ん?」
近い、もんすごく近い。肘と肘が触れ合うくらい近い。
「見せ付けるねー(=ω=.)ムフフ」
「フヒヒ、サーセンwwwwww」
泉はそう言うと立ち上がる。
「そろそろ帰る(=ω=.)」
「おう、お疲れさん」
つかさは何も言わずに泉を見つめている。
泉はノートを片付けて、さっさと出て行く。
「さいならー(=ω=.)ノシ」
泉が出て行った直後、つかさが腕を絡ましてくる。
「男君」
頬を俺の二の腕に寄せ、つかさは俺に凭れ掛かる。
「つかさ?」
「男君・・・・・」
つかさはギュッと絡ませた腕に力を込めて、俺の顔を見上げる。
「どうした?」
「・・・・・明後日、一緒に出掛けようよ」
思わず俺を仰ぐ瞳に吸い込まれそうになる。
「えっと、いいけど・・・・・、どこ行くんだ?」
「海がいいな。あ、男君が嫌だったら別のとこでもいいよ?」
海・・・だと・・?
待てよ、待ってくれよ。
夏+海美×少女=sneg?
「つかささん、それマジすっか?」
「う、うん」
照れたような、困ったような、そんな表情を浮かべるつかさ。
俺は少し考えるフリをしながらつかさを焦らして表情の変化を俺の答えを待っているつかさの表情を楽しんでいた。
◇◇◇
私は携帯の履歴から柊かがみの欄を開き、電話をかける。
お決まりの呼び出し音。少しそれを聞いたから、かがみんの「もしもし柊ですけど」と別に言わなくてもいい応答が来た。
「かがみん、今日つかさとなんかあった?(=ω=.)?」
「いきなりだな、あんた」とちょっと呆れたような声。
「いやー、ちょいと気になったんでね(=ω=.)フヒヒ」
少しばかり冗談ぽく言う。
「ってか、そこにつかさいるの?」
「んや、いないよ(=ω=.)」
スピーカーの向こうでかがみんが悩んでいるような、考えているような声が聞こえる。
「どったの(=ω=.)センセイ?」
「こなた、どこでつかさ見たの?」
「うぇ?男の家に居るよ?聞いてるんじゃないの(=ω=.)?」
「また、男か」
かがみんの溜息。
「なんかあったの(=ω=.)?」
「いや、なんでも」
なにか在るんだろう、かがみんの声の調子で分かる。
「ねぇ、かがみん(=ω=.)」
「うん?」
「男とつかさの事でしょ(=ω=.)」
「・・・・・、うん」
かがみんは少し躊躇ってから答えた。
「最近、つかさがさ、暇があったら男に電話を、ね」
なるほど。
私はかがみんから話を聞いている間、つかさのあの奇妙な雰囲気を思い出していた。
◇◇◇
男君と一緒に歩く。
それだけの事なのに、私の胸はドキドキしている。
左を向けば男君が私に笑いかけてくれる。
私はそれが嬉しくて、勝手に笑顔になってしまう。
私は繋いでいる男君の右手を少し強く握ってみた。
肩が触れ合うぐらい近づく。
時間が止まってしまえばいいのに。
私は心の底からそう思った。
最終更新:2009年05月25日 17:34