男「急いては事を仕損じるというもんな。もう少しだけ待ってみるか……」
男「逆上したつかさに殺されたりしたらたまんねーし。入れ替わりなんて卑怯だよな」
男「……」
男「…………ネトゲでもしよ」
(=ω=.メ)『男きたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
男「またこなたいるおww帰るわwwwwwwwwww」
(=ω=.メ)『ヒドスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』
☆はかせ☆『あのー。ちょっといいですか?』
(=ω=.メ)『はい?』
☆はかせ☆『PT組みませんか?』
(=ω=.メ)『お誘いktkr』
男「イヤッホォォォォウ! 狩りじゃ狩りじゃ!」
☆はかせ☆『面白い人ですねww』
(=ω=.メ)『じゃ、誘うぜ?』
☆はかせ☆がパーティに加わりました。
男「よろww」
(=ω=.メ)『よろしく!』
☆はかせ☆『よろしくお願いします』
つかさ「……くん……男くん!」
男「んあ」
つかさ「そんなとこで寝てたら、風邪引くよ?……といってももう朝だけど……」
男「つかさ……なんで俺の部屋に……」
つかさ「男くんのお母さんに入れて貰ったの。綺麗な人だね」
男「なんであの人はホイホイ入れるんだよ……」
つかさ「ほい? あ。ゲームつけっぱなしだし!」
男(……そっか。昨日は☆はかせ☆とかいう人と、やたら盛り上がって……そのまま寝オチしちまったんだ)
つかさ「ネットゲームってさぁそんなに面白いの? 私、やり方とか全然わかんないよー」
男「お前はやめとけ……」
つかさ「なんでー?」
男「……朝飯……」
つかさ「あっ! よ、よかったらだけど、私が何か作るよ!?」
男「頼むわ」
つかさ「うん! じゃあ台所借りるね!」
つかさ「えぇっとぉ……」
男「……」
つかさ「あのぉ……」
男「……」
つかさ「ううっ……」
男「……なんで卵焼を振り回してるんだ。卵となった生命への冒涜だぞ」
つかさ「まさかぁ。市販の卵からは何も産まれないよー」
男「え?」
つかさ「え?」
男「産まれないの?」
つかさ「そうだよー。まさか男くん、暖めればヒヨコが出ると思ってたとか」
男「そ……そんなわけないじゃないか! はっはっは(渇いた笑い)」
この日を境に、男の趣味の中から『新鮮な卵を温めること』が消えたという。
つかさ「まさかねー」
男「まさかなー」
つかさ「で……えーと……」
男「……」
つかさ「男くん……」
男「なんだ……?」
つかさ「えとえと……あ、あーん……ってしていい?」
男「へ? も、もちろんいいけど……」
つかさ「…………では失礼します」
男「うむ」
つかさ「あーん……」
男「あー……」
つかさ「ぱくっ」
男「ガチンっ(歯と歯が噛み合わされる音)」
つかさ「……むぐむぐ」
男「……あれー……」
つかさ「むぐ……や、やっぱり恥ずかしいむぐ……」
つかさ「でさ! 今日はプールに行こうよ!」
男「いやだ、めんどくさい」
つかさ「ひ、ひどいっ」
男「……」
つかさ「……」
男「……」
つかさ「ま、まさか男くん……。今日一日中家の中で不健康な遊びをするつもりじゃ」
男「よし、プールに行こう」
つかさ「はやあっ」
市民プール。
つかさ「ぷかぷか」
男「ふー。着いてみるといいもんだな、極楽極楽」
つかさ「ぷかぷか」
男「つかさ、競争でもするか? 市民プールの悪夢と呼ばれた俺の速さをみせてやる」
つかさ「ぷるぷる」
男「プールよ、私は帰ってきた!」
つかさ「ぷかぷか」
男「……お前、会話する気ある?」
つかさ「ぷん」
男「……」
つかさ「ぷかぷか」
男「……んああっ……出る……っ……」
つかさ「ひいぃぃぃっっっ! なな、ななななにを出しているの!?」
バシャバシャ!
男「あ、暴れるなよ!」
つかさ「いやだぁぁぁ! 逃げたいぃぃぃ! 離してぇー!」
男「冗談だって! なんも出してねぇよ!」
男「ただいまぁー……」
男(プールはいいんだけど、疲れるんだよなぁ……)
男「…………でもネトゲはするか」
男「こなたがインしてないだとおーっ!? 明日は無限の剣が降ってくる日じゃないだろうかっ!」
☆はかせ☆『あれ? 男さんじゃないですか』
男「☆はかせ☆さん! (=ω=.メ)←こいつがインしてないんだ!」
☆はかせ☆『はは。そういう日もありますって』
男「ない! なかった! 今までそんな異常なことはなかった!」
☆はかせ☆『異常というか普通だと思いますがww』
男「……た、確かにそうか……。あまりのことにちょっと取り乱したwwwwwwwwwwwwww」
☆はかせ☆『そうですよww(=ω=.メ)さん抜きになりますが、クエでもします?』
男「おkwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
☆はかせ☆『では、今夜もよろしくお願いしますww』
☆はかせ☆『……ふぅ。だいぶ狩れましたね』
男「休憩しますかww」
☆はかせ☆『ふう。休憩し始めると疲れがきますね』
男「だのww草生やす気力もないww」
☆はかせ☆『……』
男「……」
☆はかせ☆『ちょっと』
男「?」
☆はかせ☆『暇ですねww』
男「だぬ。じゃあ漏れが面白い話をしてあげるお」
☆はかせ☆『どうぞww』
男「ロイという人が、漬物石の代わりをしました」
☆はかせ☆『ほうww』
男「重しロイwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
☆はかせ☆『中々やりますねww犬の方だったらどうしようかと思いましたが』
男「……」
☆はかせ☆『じゃあ私も一つ』
男「wwktk」
☆はかせ☆『時は戦国時代、尾張の国』
男「壮大wwwwwwwwwwww」
☆はかせ☆『武将織田信長は、鉄砲伝来を記念して外国の建築形式を模した城を立てました』
男「……」
☆はかせ☆『尾模城E』
男「これはヤバスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
☆はかせ☆『このフリ嫌ですねww他の話しましょうかww』
☆はかせ☆『…………なるほど』
夜も更けたころ、俺はいつしか悩みの概要を、☆はかせ☆に話してしまっていた。
ネットを介した顔も知らない人物に、こんなことを話すのは、間違いだとは思う。
しかし、会ってまもない人物だと、そうは思わせない不思議な雰囲気が、☆はかせ☆にはあったのだ。
☆はかせ☆『男さん』
男「なんだお」
☆はかせ☆『話がプライベートすぎますww』
男「ですよねww」
☆はかせ☆『でも、聞いてしまったからには、私にも助言する義務がありますね』
男「頼むおwwwwwwwwww」
☆はかせ☆『助言は一つ。貴方は、Kさんへの誠実さを貫くべきです』
男(こなたへの……)
男「そうしたいお……でもTさんも傷つけたくないお……漏れを癒してくれたお……」
☆はかせ☆「人を傷つけるのは言葉だけではありませんよ」
男「どういう意味だお?」
☆はかせ☆『気を悪くさせるかもしれませんが、貴方は怖がっているんです』
男「なにを……っ」
☆はかせ☆『話を聞く限りでですが、貴方はKさんには向き合っていますが、Tさんにはそうしていません』
男「……そんなことっ!」
☆はかせ☆『違いますか? 貴方は傷つけたくないという理由で、彼女から逃げているんです』
サメ『違うのか? どっちを選んだ方が辛くないのかを考えるその頭が、辛がりじゃないのか』
男(そう……か……)
男(こなたにしたことと、つかさにしようとしていること)
男(同じだったんだな。俺は、同じことを繰り返そうとしていたんだ)
男(だけど……そうだとしても……)
男「そうだお……漏れはまた逃げてたお……でも……」
☆はかせ☆『……』
男「付き合うために向き合うことと、別れのために向き合うこと。この二つは、違うと思うんだお……」
☆はかせ☆『もちろんです』
男「なら、Tさんに向き合うのは、難しいんだお……」
☆はかせ☆『ふふww』
男「なにを笑うんだお!」
☆はかせ☆『いえ、貴方って不器用だなって思っただけですww』
男「裁縫は得意だお!」
☆はかせ☆『一かゼロかで考えるから駄目なんです』
男「え……どういう……」
☆はかせ☆『つまり――』
並木道。
つかさ「うーん! 暑いねー!」
男「だな。蝉は相変わらず
八月蝉いが……」
つかさ「……それ、なんて読むの?」
男「うるさい」
つかさ「ひ、ひどぉ……」
男「だから、うるさいって読むんだよ」
つかさ「あ……そういうこと……。難しい漢字はまだ一杯あるんたねー」
男「うむ。正しい漢字を使わないと駄目だぞ、つかさ」
つかさ「うん! あーあ! 蝉が八月蝉いなぁー!」
じーじーじー……
男「……」
つかさ「あ! ベンチがあるよ! 座ろうよ!」
男「んだな」
つかさ「デート楽しいねー」
男「ん……」
つかさ「あそこの蝉見てよー」
男「真上の?」
つかさ「そうそう!八月蝉いよねー……って……」
ピュッ!
つかさ「う、うわぁーっ! なんか降ってきたぁーっ! 男くんが好きそうな擬音とともになにかがーっ!」
男「ああ好きさ! でもこれは俺様の白濁した皇帝液ではなく、蝉のオシッコだ!」
つかさ「やー! 手についたぁー」
男「手くらいでよかったじゃないか、顔にかかった人も横にいるんだぞ」
つかさ「うう……確かにそれよりマシ……」
つかさ「くんくん……まだくさい。くさいよ。ちゃんと拭いたのに、くさい」
男「くさい話題が増えたな」
つかさ「べっ別にくさい話が好きなわけじゃないよぉ」
シュワシュワシュワシュワァ!
つかさ「あの鳴き声怖いな」
男「カッコいいと思うぞ。ターミネーターみたいで」
つかさ「……虫はやっぱり苦手だな……」
男「……」
つかさ「……」
男「……つかさ」
つかさ「ん? なぁに?」
男「……」
つかさ「……とじり」
男「ま、待て! 目を閉じるなっ!……その……話があるんだ……」
つかさ「なにー?」
男「あのさ……」
つかさ「うんうん」
男「……」
つかさ「なぁにー?」
男「…………こなたの話なんだ…………」
シュワシュワシュワシュワァ!
つかさ「……」
男「……」
つかさ「今さら……なんで……?」
男「この前、偶然……かな。会ったらさ……いや、違うな……んーと……」
シュワシュワシュワシュワァ!
男「ずっと……思ってたんだ。こなたを憎むことなんて出来ないって……」
男「俺に相談もなしに勝手なことしたり、悪いことしたりしたやつなのに……嫌いになれない」
つかさ「……」
男「この前、あいつにあったとき、それを思い知らされた」
つかさ「……」
男「……」
つかさ「いつ……会ったの?」
男「……先週、かな。ごめん。お前を裏切るようなことして……」
つかさ「……」
男「……」
シュワシュワシュワシュワシュワシュ……ジジジジジ……。
つかさ「……ちょっと、悲しい」
男「……ごめん」
つかさ「……いいの……こなちゃんとは、その、ちゃんとした話、出来たの?」
男「……ん。一応な」
つかさ「…………そっか」
男「……」
つかさ「……あの蝉も、逃げちゃったね」
男「……」
つかさ「…………八月蝉くてもいい。気持ちわるくても、怖くてもいいから、いて欲しかったなぁ」
男「……オシッコは勘弁してほしいけどな」
つかさ「………………うん。オシッコは嫌だね」
つかさ「……ねぇ、男くん」
男「なんだ?」
つかさ「私が……もし……男くんを諦められなかったら、どうする?」
男「……」
つかさ「私は男くんのオアシスになれなかったけど、砂漠のままだったけど」
男「……」
つかさ「わがまま言って、男くんから離れたくないって言ったら……」
男「……」
つかさ「……どうする?」
男「……」
つかさ「……」
男「……離れなきゃいけないのか?」
つかさ「え……」
男「離れずに、友達として、親友として、一緒にいられないのか!?」
つかさ「……」
男「……辛いことを押し付けてるのはわかる……でも!」
じーじー……シュワシュワシュワシュワァ!
俺「お前も、大切なんだ。傷つけることになるかもしれない。だけど……」
つかさ「……うっ……ううっ……」
俺「つかさは、砂漠とかオアシスとかにこだわってたよな……」
つかさ「ひ、ひぐぅ、う……うん……」
俺「砂漠でもいい。砂漠の夜の星空が、すげー綺麗なのを、俺は知ってるから」
つかさ「う……うわあああああああああああん! 男くううううん!」
最終更新:2009年06月20日 15:18