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 気がつくと、俺は、どす黒い夢の中にいた。
薄暗い部屋に入った日に、いつも見る、それだ。

 ゆらゆら揺れながら、思った。
――もうすぐアレが来る。
この夢はいつもお決まりのパターンだ。

ゴポ……ゴポ……。

――ほら、きた。
身体が急に締め付けられる。
思考がぼんやりしてくる。
身体に、なにか異常が起きているのに、それがなんなのかわからない。

 もどかしい。

 苦しい。

 怖い。

 でも、もうすぐ終わる。
この夢は、怖くなったら終わる。
怖くてたまらないが、すぐに終わる。


 しかし、今日の夢は、いつもと少し違った。


夢がゆっくりと切り替わる……。


 白い壁。

 白い床。

 白い天井。

 白い机。

 あるものはそれだけ。
この部屋には窓はなく、扉もない。
それなのに、陽の光が差し込んでいるかのように、不思議と明るかった。

 そして俺は、部屋の壁を背に、座り込んでいた。

男「……ここは………………?」

 ちゃんと声も出る。
先ほどの悪夢とは、全てが対照的だ。

男「あ…………」

 ふと、この部屋にいたのは俺だけではないことに、気付く。

裸の女性「……」

 美しい女性。
顔は――なぜかよくわからない。
その女性に、俺は見覚えがあった。
前に、頭痛で意識を失ったときに、一度だけ彼女を見たことがある。
――……いや、他のときにもあったかな?
とにかく俺は、彼女を知っていた。


男「……今日はかがみじゃないの?」

 我ながら変な質問だが、前回のことを考えれば、おかしくもない。

裸の女性「……」

 しかし彼女は答えなかった。
その代わりに、とても悲しげな目でこちらを見ている。

男「なんでそんな目をするんだ?」

裸の女性「……」

男「……」

裸の女性「…………いつか……」

 唐突に、彼女は口を開いた。

裸の女性「辛い決断を迫られたときには……思い出…………て下さい」

男「ん……待って。よく聞こえない――」

裸の女性「……は、怖いものじゃ…………を……」

 最後の方は、もはや細々としか聞き取れなかった。
白い部屋に光が満ちていき、彼女の言葉をかき消していったからだ。

男「まって…………!」

 俺は手を伸ばすが、そこはもう、白い部屋ではなく――――




ぺたっ。



(=ω=.*)「やんっ……」



 そこは、こなたのつるぺたな胸だった……。

男「あ…………」
(=ω=.*)「なんだ、起きてたんだ。男、朝から強引だよ……」
男「……」
(=ω=.*)「今日は箱を調べてみるんじゃなかったの? え っ ち 」
男「ここ、夢……?」
(=ω=.*)「おお! つ、ついに男も、ひんぬーの素晴らしさに気付いたか! 夢のようだ、そう言いたいんだね!?」
男「えと……あー……」
(=ω=.*)「素晴らしいことに現実だよ! さぁ! 箱なんかほっといて、まずはCG回収しようか!」
男「お、おい、こなた! やめろ! 今はそんな気分じゃ……」
(=ω=.#)「……」

シュ。

男「うっ…………ふへ……」
(=ω=.*)「私と【禁則事項】しなさい」
男「ん……」

男「はぁはぁ……」
(=ω=.*)「ふぅふぅ……」
男「こ、この馬鹿こなた……。お前のせいで……夢……忘れちまったじゃねぇか」
(=ω=.*)「夢?」
男「そうだ、夢だよ」
(=ω=.;)「あ……。まさか、また悪夢? 昨日薄暗いとこ行ったから……」
男「ん……。そうだったんだけど」
(=ω=.;)「ごめん……」
男「途中から……なんか……違う夢になった」
(=ω=.)「違う夢?」
男「ん……。よくわからないんだけど、白い夢に、裸の女性が……」
(=ω=.*)「白い! 液体! といえばぁ!」
男「 皇 帝 液 ! 」
(=ω=.*)「つまり、ただの淫夢か」
男「ハメやがったな!」
(=ω=.*)「どっちの意味で?」
男「二つの意味で」

 その後、俺達はふざけるのをやめ、箱の問題に取り掛かった。

 箱に向かい合うと、ほどなく、俺達は気付いた。
箱の蓋の裏側、そこに薄いポケットがついていることに。
その中に入っていたのは、一枚のメモ翌用紙だった。
――内容はこうだ。


『これは貴方の助けになるものです。
 この香りを嗅いだ人間は、きっと貴方の望むままに動くことでしょう』


男「……」
(=ω=.)「……」
男「短いな……」
(=ω=.;)「短いね……」
男「…………でも、あのときのかがみには、これで十分だったのかもな……」
(=ω=.)「……煮えてたらしいからね」
男「煮え……なぁ……」
(=ω=.)「煮え煮え……」

男「…………まてよ?」
(=ω=.)「ん?」
男「タイミングが良すぎる」
(=ω=.)「え……」
男「かがみが煮えて、部屋に帰ったら、これが届いてた?」
(=ω=.)「うん。そしてかがみんは……」
男「……なんでそんなにピッタリなタイミングなんだ?」

(=ω=.)「え……」
男「異常じゃないか? これじゃあまるで、俺達の状況を知ってるみたいだ!」
(=ω=.;)「私達の……状況を……?」
男「……いや、それだけじゃない! そもそも、なんでかがみなんだ!?」
(=ω=.)「……!?」
男「かがみは、あの時点で誰にも自分の想いを打ち明けてないはずだろ!?」
(=ω=.;)「――あ!」
男「なんでかがみに送るんだ? こなたやつかさならまだしも、なんでかがみなんだ?」
(=ω=.;)「……」

男「かがみの心の中まで知ってるみたいに、どうして送ってこれるんだ!?」

(=ω=.;)「男…………」
男「……これを書いたのって……何者なんだよ……」



 俺はもう一度メモに目を落とした。
本当に人間が書いたのか疑わしいほど、整った字体。
それを見ていると、俺はこれ以上なく不安な気分にさせられた。


男「……」


だから俺は


男「……」


無意識の内に



男「……」



メモを、裏向けた――










☆はかせ☆

(=ω=.)「ん? 男、どうしたの?」
男「はかせ……?」
(=ω=.;)「はい?」
男「ど……どうして…………はかせ…………?」
(=ω=.)「あー。ネトゲの?」
男「……」
(=ω=.)「こんなときに何言ってんの。……でも最近、ネトゲしてないねー」
男「……」
(=ω=.)「はかせさんにも会いたいなー」
男「…………会いに……行こう…………」
(=ω=.)「え? でも、そんなことしてる場合じゃ……」
男「こなた……これ、見ろよ…………」


――――



男「じゃ……メッセージ送ってみるな……」
(=ω=.)「うん……」

男「……はかせ?」
☆はかせ☆『あ! 男さんじゃないですかwwまたお久し振りですね』
男「……」
☆はかせ☆『私、色々と凄い武器手に入れたんですよーww』
男「……」
☆はかせ☆『あれ?wwちょっとは羨ましがってほしかったなぁww』
男「……」
☆はかせ☆『どうしたんですか? いつもみたいに草生やさないんですか?』
男「武器って」
☆はかせ☆『?』
男「香水とか?」





☆はかせ☆『……………………………………………………』

☆はかせ☆『……』
男「……」
☆はかせ☆『ww』
男「……」
☆はかせ☆『wwww』
男「……?」
☆はかせ☆『wwwwww』







☆はかせ☆『wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』







男「……っ!」
(=ω=.;)「ひっ……」

☆はかせ☆『遅かったですねww』
☆はかせ☆『もっと前に気付くと思ってたんですが』
☆はかせ☆『期待ハズレ』
☆はかせ☆『wwwwwwwwwwwwwwwwww』
☆はかせ☆『待ってたんですよ? 貴方 達 がこの世界に来るのを』

男「こいつ……!?」
(=ω=.;)「私がいることも……知ってる?」

男「誰だ」
☆はかせ☆『?』
男「お前は誰だ」
☆はかせ☆『言ってもわからないと思いますよ?ww』
男「お前はなにを知ってるんだ」
☆はかせ☆『んー。そうですねー。全部……ですかねーww』
男「お前が犯人なんだな」
☆はかせ☆『そんなとこですね』
男「……」
☆はかせ☆『私に会いたいですか?』
男「……」
☆はかせ☆『私がどこにいるか知りたいですか?』
男「……」

☆はかせ☆『お友達がどこにいるか知りたいですか?』

(=ω=.)「……行こっか」
男「……」
(=ω=.)「せっかく場所がわかったんだよ? 二人を……助けに行こう……」
男「わかってるさ。この前、お前に気合い入れられたしな」
(=ω=.*)「あは」
男「……でもな」
(=ω=.)「ん?」
男「最後にもう一度だけ、聞かせてくれ」
(=ω=.)「……なに?」
男「行ったら、戻って来れないかもしれない。助けるどころか、俺も、お前も捕まって……ひどい目に合わされるかもしれない」
(=ω=.)「……凌辱ゲー……」
男「……それでも、本当に行くのか?」
(=ω=.)「行くよ」
男「はやっ」
(=ω=.)「私、男が大好き。男がいない世界なんか、考えられない」
男「……」
(=ω=.)「……でもね、その世界には……みんなもいた方が、楽しいんだぁ」
男「……こなた……」
(=ω=.*)「それに、約束したから、大丈夫だよ。きっと無事に帰って来れる!」
男「…………そうだな。俺とこなただもんな」
(=ω=.*)「最強でしょ!」
男「あぁ! パレパレードだ!」
(=ω=.)「あ。でも、万が一凌辱とかされたら困るからさぁ」
男「最強どこいったっ!?」
(=ω=.*)「最後に……いっぱい愛してほしいな」
男「…………あぁ」

 部屋を出るとき、こなたはクラゲのストラップを握っていた。
俺はイルカのキーホルダーを持ってきた。
顔を見合わせてにやり、としながら、俺達は夜に足を踏み出した。





 目的地に向かう途中、俺達は他愛ない話をしながら歩いた。
つかさに会ったら何を話そう。
かがみに会ったら香水吹き掛けてやろう。
下らない話が、さらに勇気をくれた。





 そして、ようやく辿り着く。
俺達が目指していた場所。
そこは、あまりにも意外な場所。






――俺達の、思い出の水族館。
ここに、全てがある。


『私は、貴方達のよく知るところにいます。……昨日、貴方達が行った、あの――』



(=ω=.)「本当にここにいるのかな」
男「そうだろうな」
(=ω=.;)「ふーむ。なんか嫌な気分になるねぇ」
男「わかる」
(=ω=.;)「やっぱり? 思い出の場所が敵の本拠地だった、なんて洒落にならないね」
男「RPGによくありそうな展開だよな」
(=ω=.*)「そうだねー。案外はかせは、私が神になる! みたいなマッドなサイエンティストだったり――」


?「半分正解ね」


(=ω=.;)「…………!」
?「もちろん、後半。マッドって部分が特に当たってるわ」
男「……お前がはかせ……」
博士「そうよ。現実で遊ぶのは初めてね」
(=ω=.)「……私、ネトゲと現実は区別する主義なんだ」
博士「あはは! そうつれないこと言わないでよ」
男「……お前、なんか、らっきー☆ちゃんねるのあきら様に似てないか?」
博士「あきらって、誰?」
男「…………他人の空似か」
博士「世界には、自分にそっくりな人間が、三人はいるらしいわよ?」
男「……まぁ、そんなことはどうでもいい。お前は何者だよ? なんで俺達にこんなことするんだよ!」
博士「……そのわけを知りたい?」
男「当たり前だ!」
博士「私は逆に、貴方に聞きたいんだけどなぁ」
男「――は?」
博士「……まぁ、いいわ。着いて来なさい」


コツコツ……。

博士「夜の水族館も、綺麗なものでしょう?」
男「……」
(=ω=.)「……」
博士「貴方達、ここにはよく来ていたけど、夜に来るのは初めてよね」
男「……なんで、そんなこと知ってんだよ」
博士「見てたからに決まってるじゃない」
男「見てた?」
博士「監視カメラくらいどこにでもあるわ」
男「……だからなんで、俺達に付きまとうんだよ」
博士「……」

コツコツ……。

博士「それを説明するのに、この場所は相応しくない」
男「……」
博士「もっと、ぴったりなところがあるのよ? 貴方達の知らないところが……」
男「……」

コツコツ……。

男(なぁこなた)
(=ω=.)(ん?)
男(どう思う?)
(=ω=.)(……そんなに、怖い感じはしないよね)
男(……)
(=ω=.)(でも、それが、逆に……)
男(……)


コツコツ……。



コツコツ……。





コツコツ……。






博士「……ここよ」

 目の前には館内の雰囲気とかけ離れた、なめらかな扉があった。
部屋の名前もかいてなく、ノブも取っ手もない。
この扉はどのように開くのか、俺にはまったく想像出来なかった。

博士「ここはね、館内でもごく僅かな関係者以外は、入れない場所なのよ?」
(=ω=.)「……」
博士「中に魚達はいないけど、まぁ楽しんで貰えると思うわ」
男「……」
博士「……貴方達の大好きな友達も、ここで待っているしね」
(=ω=.;)&男「――っ!」
博士「ふふ……。そんなに会いたいの?」
(=ω=.#)「あんたは――」
男「こなた、よせ!」

 今にも飛び掛かろうとしたこなたを、俺は押し止めた。

 俺だって、出来るならそんなことはしたくなかった。
しかし、ここでそうすると、二度と二人には会えなくなるかもしれないから。

博士「ふふ。賢明な判断ね。私がいないと、この扉は絶対にくぐれないわ」
男「……なんで二人を、こんな所に連れてきたんだ?」
博士「貴方に心当たりはないの?」
男「んなもんねぇよ……!」
博士「ふーん……。まぁいいわ。それも後で説明してあげる」

 博士はそう言うと、扉の横のコンソールに、何度か触れた。
すると、扉は静かにスライドし、固く閉ざしていた状態を解いた。

博士「さぁ、ついてきて」

 中は、小さな個室になっていた。
俺達が中に入ると、扉は一人手に閉まった。

(=ω=.)「!」
博士「大丈夫よ。なにも閉じ込めたわけじゃないから。エレベーターになってるのよ」

 身体が軽く浮上がるような感覚。
地下に向かって動いているらしい。
音はしない。

博士「……この下には、ある施設があるのよ」
男「施設?」
博士「そう。そしてそこでは、素敵な研究をしているの」
男「……それと俺達と何の関係があるんだよ」
博士「……」

 博士は答えなかった。
そのまま少しだけ時間が過ぎ、俺が二の句を告げようとしたとき――エレベーターが動くのをやめた。
博士が言う施設とやらに着いたようだ。

 目の前の扉が、また勝手に開いた。

博士「この先に、貴方達が探している全ての答えがある」
男「……」
(=ω=.)「……」
博士「これを見たら……そうね……泉さん」
(=ω=.)「!」
博士「貴方の反応が楽しみだわ」

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最終更新:2009年08月20日 14:48