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 期末テストも終わり、夏休みを前にして入院中のこなたの見舞いに来た俺達。
最初は黙っていることが多かったこいつも、だんだんといつもの調子を取り戻しつつ
あるように見えた。

「あー、ひ~ま~だ~」
「はいはい。怪我人は大人しくしとく」

 頭をぽんぽんと叩いてだだをこねるこなたを寝かせる。
俺は入院したことはないが、ずっとベッドの上というのも暇だろう。

「んー、男に頭触られるとなんか落ち着くなー」
「お姉ちゃんも?」
「ということはゆーちゃんもなんだ?」
「うん。なんかね、ほわーっとするの」

 幸せそうな表情で語るゆたかが非常に可愛い。
…ここ最近、ゆたかもこなたのことを気にしていたせいかあまり笑ってくれなかったから、
この笑顔をまた見られるようになったのは本当に嬉しい。

「そしてゆーちゃんの笑顔に癒される男…癒し要員同士のカップルですな」
「ぶほっ、なんでバレ…いやいや」
「癒し要員?」
「ゆーちゃんもそのうちわかるよ、自分の存在の偉大さが(歩く萌え要素的な意味で)」
「いや、ゆたかにそっち方面の知識を植え付けるのはぜひご遠慮いただきたく…」

 すでに染まり始めている気がしなくもないが。
俺がまっとうな道を歩ませたくても、周りにいろんな方面に詳しい面子が揃いすぎている。
まあ主犯格は目の前のこなたとかこなたとか。

「何か言いたいことがあるのかな、男くん?」
「HAHAHA、ナンデモアリマセンヨ」

 いろいろあったけど…元気を取り戻しつつあるのはいいことだろう。
こなたにしても、ゆたかにしても。

「泉さん、起きてますか?」

だらだらと雑談しているところにノックと共にみゆきさんの声。

「どうぞー」
「…失礼します。あら、男さんと小早川さんも」
「「こんにちは」」

 俺達の挨拶が見事に被る。
後ろでシンクロ率400%とか意味不明なことを抜かしてるこなたはとりあえず無視。

「具合はどうですか?」
「まだ痛いことは痛いけど、退院まではそうかからないんじゃないかな…って」

 みゆきさんの問いに答えつつ、こなたは彼女の後ろにいる誰かに気付く。
つかさ…?なんでお前は隠れてるんだ。

「……」
「つかさ、入っておいでよ」
「…ここに来る前からあんな感じなんです」

 何も遠慮することもないだろうに。
こなたの手招きにようやく応じて、つかさはそれでも遠慮がちに病室に入ってきた。
いや、遠慮しているというよりは…なんか。

「こなちゃん…男くん、ゆたかちゃん」

 こなたに、そして俺達に視線をめぐらせて。
つかさは――どうしてなのか、申し訳なさそうに深く頭を下げた。

「――本当に、ごめんなさい」

 何を謝ることがあるのだろう。
別につかさが俺達に悪いことをしたような記憶はない。なのに、彼女は今にも
泣きそうな顔でごめんなさいを繰り返している。

「ねえ、つかさ」
「どうして…謝るんですか?」

 こなたも、そしてゆたかも戸惑いながら頭を下げるのを止めさせようとする。
二十何度目かのごめんなさいのあと、つかさはようやく頭を上げてくれた。

「理由、話してくれないか」
「――」

 目じりに涙を浮かべるその顔を見て今になって俺は気付いた。
つかさも…少し前のゆたか達のようにこの一週間ほどずっと笑顔を見せていなかったことに。
そう、ちょうどこなたがここに運ばれたあの日以来。

「こなちゃんがこうなっちゃったのは…私のせいなの」
「…え?」

 思わず顔を見合わせる俺達。

「ちょ、え?」
「私が…私が止めなきゃいけなかったのに。止められたら…こなちゃんも、
男くんも、ゆたかちゃんもこんな目に遭わなかった、のに」

 声が震えて、その後はもう言葉にならなかった。
私のせい――って、こなたがおかしくなった原因がつかさにあるってことなのか?

「…先輩のせいではありませんよ」

 つかさの言葉に答えながら静かに入ってくるみなみちゃん。
なにがどうなってるのか俺には、わからない。

「みなみちゃんは…わかるの?」
「…推測でしかないけど。泉先輩」
「うん?」

少しためらう仕草を見せた後、みなみちゃんはこなたにこう頼んだ。

「辛いかも知れませんが…これまでのこと、思い出せるだけでいいので話してもらえませんか」

 これまでのこと、とは。
ああなってしまうまでのことを話してほしい…ってことか。こなたが悩み苦しみ、
ゆたかに刃を向けるようになってしまうまでの経緯を。

「なかなかキツイこと頼むね」
「すみません」
「でも、なにか掴んでるみたいだから。言っとくけど、聞くの辛いかもよ」

 それはみなみちゃんだけでなく、今からの話を聞くことになる俺やゆたか、みゆきさん、
そしてつかさへの確認を意味する言葉。
俺達は――全てを聞く覚悟を持って無言でうなずいた。

「そうだねえ。当時は結構記憶がぼやけてたんだけど…今になってさ、寝転がりながら
考えてみるとだんだん思い出してくるんだ」
「…大丈夫か?」
「大丈夫。ゆーちゃんがあれだけの勇気を見せたのに私が見せないわけにはいかないよ」
「お姉ちゃん…」

 優しい微笑みをゆたかに向けると、こなたはどこから話すか迷った末に
『あの日』のことから話し始めた。

「そうだね、たぶんあそこからかな…本格的におかしくなってきたのは」

 ――雲の流れが速い。
晴れていた空はいつの間にかどんよりと曇り、いつ雨が降り出してもおかしくない。
遠くで雷鳴が聞こえ、まるであの日を再現しているようだ。

「……」

 静かな校舎にコツコツと響く足音。
夏休みに入り、部活もとうに終了したこの時間にいる生徒などまずいない。
その校舎の廊下をただ一人歩いている。

(ここ、か…)

 階段を昇り、開け放たれる屋上への扉。
果たしてそこには青い髪の少女が不敵な笑みをたたえて来訪者を待っていた。

「遅かったね」
「――」
「何の用事かって?決まってるじゃない」

 彼女――泉こなたの後ろには男と小早川ゆたか。
そして岩崎みなみ、高 良みゆき、その横に…つかさが静かにこちらを見つめていた。

「私がゆーちゃんを刺そうとしたあの日みたいだねえ。まあ、こういう場面には
おあつらえ向きかもね」

 あの日と同じようにだんだん近づいてくる雷鳴。
目をすっと細め、こなたは『私』に向かって宣言するように言い放つ。



「それじゃ始めようか、かがみ。真相の解明を…さ」

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最終更新:2009年08月28日 16:14