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「ねえ?お姉ちゃん……なんか変だよ?やっぱり風邪うつされちゃったんじゃ……?早く家に入ろうよ~?」

「ねえ、つかさ……ちょっと聞きたいんだけど」

「え?何?」

 つかさは半分おびえるような顔になっている。

「つかさ、昨日男と会ったの?」

「え!?あ、うん……昨日駅前の本屋さんに行ったときに偶然会って。ほら、お菓子作りの本を買いに行くって言ったじゃない?そのときに……」

「そう……そのときに男にクッキー作ってあげる約束したのね?男がチョコチップを好きだって言う話も、それをクッキーに乗せるって話も」

「う、うん……新しいレシピのクッキーを男くんにも食べてほしくて……」

「ふ~ん。他に男と何か話したの?」

「え?えっと……そういえば男くん、誰かと待ち合わせてるって言ってた」

「そう……きっと、みゆきね」

「え?ゆきちゃん……?」

「ううん、何でもないわ。つかさは気にしなくて良いことよ。他に何か話さなかった?」

「え~と……あ、あと男くん、なんか変なこと言ってたよ?私たちの『親戚のお兄ちゃん』とか『誕生日』とか……私たち親戚にお兄ちゃんなんかいないのに、おかしいよね?」

「そっか……」

「男くんは、お姉ちゃんがそう言ってただなんて言ってたけど。男くんの勘違いだよね?」

「えっ!?そ、そうね。男の頭の中では、きっと私が男に話したラノベの内容とごっちゃになってるんじゃないかしら?」

 ……やっぱり、男には私の嘘がバレちゃってるわね。

 まあ、それはいいわ。

「お姉ちゃん、ホントにどうしたの?なんか変だよ?」

 考え込む私の顔を見てつかさが訝しげな顔をする。

「……もしかして、お姉ちゃん、――」

 ………

 さすがに気づかれちゃったかしら?
 私が男のこと好きなこと。

 ま、いいわ。

 つかさにははっきり言っておこう。

 牽制のためにも。

 つかさが私の足元を救おうとする伏兵ならば、先手を打っておくべきよね?

「――お姉ちゃんのクッキーにもチョコチップ乗せたほうが良かった?」

「……はあ!?」

 ……この子はホントに鈍いんだから。

「ごめ~ん、言ってくれたらお姉ちゃんの分にもチョコチップを……」

「いや、そうじゃなくて。……まあ、いいわ。それよりつかさ、どうなの?」

「ほえ?どうなのって、なにが?」

「……その、なんていうの?ほら、あれよ……えっと、男のことどう思ってるの?」

「どうって……う~ん、なんだか『お兄ちゃん』みたいな感じかな?最初はちょっと恐かったけど、本当は優しいし、頼りになるし……それにどことなく、お姉ちゃんに似てるかな~なんて」

「そっか……お兄ちゃんね」

 お兄ちゃん。

 それって、そういうことよね?

『恋愛感情は無い』ってことよね?

「そっか、そっか。うふ、うふふふふ」

「……?お姉ちゃん?」

「……良かった。うふふ、さすがに妹を、つかさを敵に回したくはないものね、うふふ」

「え?なに?ごめん、お姉ちゃん。よく聞こえなかったよ」

「ううん、なんでもないわ。ふふふ。さ、家に入ろっか、つかさ」

「うん!もう暗くなってきたしね……あ!」

 そこで、つかさは思いついたように言った。

「でも、じゃあ、お姉ちゃんは男くんのことどう思ってるの?」

「え!?……ま、まあ、つかさと大体同じかな?」

「ふ~ん、そっか」

 つかさは、それ以上深くは聞いてこなかった。

 ホントのことを言ってもよかったけど、

 つかさに、男への恋愛感情がないとわかった以上、
 『伏兵』じゃないとわかった以上、
 牽制する必要がないとわかった以上、

 今はまだ、言わなくてもいいだろう。

 正直、あんまり話広まってほしくないし。

 男が私を選んでくれたらみんなに言おう。


 ……そう、男には私を選んでもらうんだ!

 そのためには、

 そのためには、

 立ち塞がる障害に打ち勝たなくちゃ……


 男が即答できない理由。
 私と付き合うと即答できない理由。


 それはおそらく、あの子の存在があるから。


 うふふ、一度はフラれてるくせに。

 男も純情ね。

 そんなところも、また良いんだけど……

 つかさが伏兵で無いとわかった今、
 立ち塞がる障害は……
 倒すべきライバルは……

 男が一度は告白した相手。


 そう――聖人君主、高良みゆき。




「明後日まで黙って待ってるなんてできないわ……」

 私は夕食後、部屋に戻ると、ケータイを取り出して男のアドレスを開いた。

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最終更新:2008年07月01日 00:00