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727 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 12:28:35.64 ID:0jRLgPvrO 京太郎「う……ん…」ガバッ 京太郎が目覚めたのは真っ白い部屋の中だった 京太郎「こ……ここはどこだよ!?俺は確か咲と別れた後、白い光りに包まれて…」 ?「目覚めたみたいですね京太郎」 京太郎がの声のした方に顔を向けると…一人の少女が立っていた ?「おはよう、京太郎……調子はどう?」 京太郎「お前か……俺をさらったのは!お前は何者だ!」 ?「私はsakiという世界の創世した者…とでも良いかしら…?」 京太郎「あん…?何を言っているんだお前!」 立「そうね………『立』とでも呼んでもらえれば問題はないわ」 京太郎「立……saki……創世した者……だと」 立「そう、あなたは…いや、あなたにまつわる全ての存在は私が作り出したのよ」 731 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 12:38:05.54 ID:0jRLgPvrO 京太郎「言っている事が全くわからねえよ…!」 立「なら、黙って聞いててちょうだい…話をスムーズにすませたいから」 立と名乗る少女が指をパチンと鳴らすと、京太郎の視界が真っ白になる。 京太郎「ぐわっ…!?……………ここは清澄高校?」 京太郎が目を開けると、そこは清澄高校だった。 京太郎「うおおおっ!?俺が空を飛んでいる!」 立「落ち着いて京太郎、あなたはただ私の写した世界を見ているだけだから」 京太郎「写した世界…?」 立「そう、私が見せているのはあなたがいたsakiの世界……そして」パチン 京太郎「なんだ……この世界は!?」 京太郎「これが1番目の世界……この世界でのあなたは片岡優希と一緒にいた」 京太郎「1番目って…じゃあ俺は」 立「あなたは13番目の京太郎よ」 733 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 12:48:04.05 ID:0jRLgPvrO 京太郎「13番目だと……?」 立「そう、現在京太郎はあなたを含め13人も存在する……それぞれ自分の世界で生きているわ」 京太郎「だから……なんだっていうんだよ」 立「でも…やがて世界は一つになる…、故にあなたという存在は一人にならなければならない…」 京太郎「アンタは俺に何が言いたいってんだ……」 そう問いかける京太郎に対して、立は冷たい眼差しで京太郎を見つめる。 立「京太郎……あなた達13人にはこれから戦ってもらいます……。そして、最後の一人になった者が……一つとなったsakiの世界での『須賀京太郎』として生きてもらう」 京太郎「は……はぁ!?」 立「つまり……自分の存在をかけた戦いが始まるのよ…13番目の京太郎…」 742 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 13:17:40.05 ID:0jRLgPvrO 京太郎「ふざけるな!誰がそんな事を…!」 立「もう物語は始まっている……止める事はできない…」 京太郎「ちょっと待てよお前―――!」 立「さあ、お行きなさい京太郎……そして勝ち取るのです…あなたという存在を」パチン 京太郎「うわああああああああああ!」 ピカァァァァァァ…… そして、しばらくの時が流れた 京太郎「う……ん…ここは…麻雀部の部室…」ムクッ 京太郎「俺は寝ぼけて夢を見ていたのか?……それとも本当に…」 パラララララ パラララララ 京太郎「なんだ…?なんだか騒がしいぞ」 京太郎が外を見るとそこには衝撃的な光景が広がっていた。 京太郎(3番目)「ベーリング海で鍛えたこの俺を甘く見るなよ!」バシュン バシュン 京太郎(11番目)「ホーッホッホッホッホッ!そういうあなたも私を甘く見ないでいただきたい!」パラララララ パラララララ 京太郎 残り13人 744 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 13:32:00.87 ID:0jRLgPvrO 京太郎「な……なんで俺が二人いて、殺し合いをしているんだよ!」 京太郎(10番目)「それがこの世界のルールだからだよ!」チャキッ 京太郎「なに――――!」 ダァァァァァン! 京太郎「あ……危なかった…!」 京太郎(10)「ちっ……運がいい野郎だぜ!」カチャ 京太郎「よせよ!なんで自分同士で戦う必要がある!?こんなバカな真似…」 京太郎(10)「馬鹿が!例え外見が同じでも…中身は全く違うんだよ!」ダァーン! 京太郎「うわあああああああ!」チュイン 京太郎(10)「それに自分が消えるか消えないかがかかってんだ……四の五の言ってる暇はねえ!」ダァーン! 京太郎「よせ!やめろ!」チュイン 京太郎(10)「そういう訳だ13番目の俺!悪いがさっさと死んでくれや!」 745 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 13:48:43.99 ID:0jRLgPvrO 京太郎「くそっ……話をしても無駄か!……逃げるぞ」タッタッタッ…… 京太郎(10)「待ちやがれ!こうなったら…」ガチャン シュウウウウウ…… 井上(10)「待ちやがれ京太郎!」タッタッタッ… 京太郎「何…!?あれは龍門渕高校の……!」 井上(10)「うおおりゃあああああああああああ!」パラララララ 京太郎「あ、危なっ!」チュイン チュイン チュイン 井上(10)「おとなしく殺されやがれってんだ!」パラララララ 京太郎「見境なし……って訳かよ!どうしたらいいんだ!」チュイン チュイン チュイン 京太郎(5番目)「さあ、10番目の京太郎が13番目の京太郎を追い詰めている~!このまま13番目は殺られてしまうのでしょうか~!?」 京太郎「な……なんだ!?」 746 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 13:58:00.73 ID:0jRLgPvrO 京太郎(5)「さあ!この戦いの実況は私、5番目の京太郎がさせていただきます!」 京太郎「こいつが…5番目の世界での俺!?」 京太郎(5)「正解正解!私は5番目の京太郎だ~!それよりもよそ見をしていて大丈夫なのだろうか13番目の京太郎!? 魔の手はお前の喉元にまで迫っているぞぉぉ!」 京太郎(10)「鬱陶しい野郎だ!おい、ノッポ!アイツも始末しろ!」 井上(10)「おうよ!」パラララララ 京太郎(5)「おおーっと!?まさかの私に対しての攻撃!予想していたとはいえ、これはマズイ事になってしまったぞ~!」チュイン チュイン チュイン 京太郎「な……なんだか知らないけど、今のうちに逃げよう」タッタッタッ… 754 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 14:16:11.01 ID:0jRLgPvrO 京太郎(5)「さあ、私としてもやられっぱなしでは終われません!私もアシストを召喚させていただきましょう!」ガチャン 井上(10)「な…なんだぁ!?」 京太郎(5)「選ばれし戦士達よ……出てこいやァ!」 シュウウウウウ…… まこ(5)「清澄ナメんなコラァァァァァ!」 京太郎「あれは……染谷先輩!?なんだかプロレスラーの格好をしているけど……」 まこ(5)「ブゥッ!」 井上(10)「ぐわあああああああああ!目が!目がぁ!」 京太郎(10)「な…!?毒霧だとぉ!?」 まこ(5)「来いよオラァァァァァァ!」バシィ! バシィ! バシィ! 井上(10)「ち……チキショぉぉぉぉぉぉ!卑怯だぞてめえぇぇぇぇ!」ビシッ! ビシッ! ビシッ! 757 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 14:38:08.20 ID:0jRLgPvrO バリィィィン! リンシャンカイホー「シャアアアア!」グルグル… まこ(5)「な…なんじゃこの馬鹿デカイ蛇は!?」 井上「く…くそっ!放しやがれ!」 リンシャンカイホー「シャアアアアアアアア!」ギリギリギリ… まこ・井上「ぐわああああああああああ!」ミシミシミシ… 京太郎(5)「おおーっと!?突然、蛇が乱入して来たぞ~!?でかい!その長さはゆうに20メートルくらいでしょうか!?恐ろしくデカイ蛇に私も困惑しております!」 京太郎(7番目)「ハハハハハ!ブラジルで発見したリンシャンカイホーの力……とくと見ろ!」 京太郎(10)「クソッタレがぁ!あんなふざけた蛇…倒せる訳ねーだろーがよ!」 京太郎(5)「さあ!私の有利な状況から一転、一気にピンチに追いこまれてしまったぁぁ!  さあ、私はどうしたらよいのでしょうか!全く分かりません!」 京太郎「と…とにかくにげろ~!」ピュー! 762 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 15:02:11.53 ID:0jRLgPvrO 京太郎「はぁ…はぁ…!どうにか逃げ切る事が出来たぜ…」 京太郎(2番目)「うわぁぁぁぁ!」ブォン! 京太郎「なっ!?」ヒョイッ 京太郎(2)「守ってみせる…!ともきーさんの居場所は俺が守るんだぁ~!」ブォン ブォン ブォン 京太郎「やめろ!俺達が戦うなんて間違っている!こんな馬鹿な事はやめるんだ!」 京太郎(2)「黙れ!そうやって俺をだますつもりなんだろう!その手には乗らねーよ!」ブォン 京太郎(駄目だ!完全に自我を失っている!――畜生! 自分自身の狂った姿を見るなんて胸クソ悪いぜ!」 京太郎(2)「うわあああああ!」ガチャン シュウウウウウ…… 京太郎「ま……またかよ!」 智紀(2)「………………」 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ… 763 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 15:26:03.99 ID:0jRLgPvrO 京太郎「い…一体何が起きるってんだ!?」 智紀(2)「…………」 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ 京太郎「………?」 智紀(2)「…………」 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ 京太郎(2)「うわあああああ!殺してやるぅぅ!」ブォン ブォン ブォン 京太郎「何もないのかよ!?」ヒョイッ ヒョイッ ヒョイッ 京太郎(2)「待っててください智紀さん!智紀さんの世界は俺が……!」 バシュンッ ビシッ… 京太郎(2)「えっ…………?」グラッ… 智紀(2)「―――――――!?」ピタッ 京太郎「な…なんだ今のは!?一体何が起こったんだ…?」 766 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 16:06:03.06 ID:0jRLgPvrO 智紀(2「京太郎…………!」タッタッタッ… 京太郎(2)「す……すいませ…ん……智紀さ………俺……智紀さんの事を…まも……」ガクッ… 京太郎「し……死んだ…のか……!?」 智紀(2)「京太郎…………………」シュウウウウ…… 京太郎「龍門渕の人の身体が…消えていく…?」 ?「アシストは自分に深刻なダメージを負ったり、召喚した京太郎が死ねば消滅する」ガチャン 京太郎「お……お前が…こいつを…!」 京太郎(9番目)「アシストが強力だった場合、召喚主を先に殺る……この戦いの基本だぜ…」チャキッ 智紀(2)「………………ありがとう…京太郎…」シュウウウウ…… 京太郎「消えた……」 京太郎(9)「これで2番目の世界は消えた…という事だ」チャキッ 京太郎 残り12人 768 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 16:34:10.01 ID:0jRLgPvrO 京太郎「テメェ……!」キッ…! 京太郎(9)「そう怖い顔するなよ……お前だって分かってた事だろ?」 京太郎「だからって…こんなの間違ってるぜ!どうして…こんな事に…」 京太郎(9)「じゃあお前は、大人しく殺されろって言うのかよ?」 京太郎「違う!そういう訳じゃねえよ!」 京太郎(9)「じゃあ、どういう訳なんだ…?」 京太郎「それは…それは…!」 京太郎(9)「…………フゥ…、どうやらお前には戦う事が出来ないみたいだな…終いだ」チャキッ 京太郎「くっ………!」 京太郎(9)「戦えない奴は死ぬだけだ……この場所ではな…」 京太郎「やめろ……!もうこんな馬鹿げた事は…」 京太郎(9)「お前は、己の世界を守る事もせずに死ぬ……もう一人の自分とはいえ情けないもんだぜ…」チャキッ 769 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 17:07:46.37 ID:0jRLgPvrO 京太郎(1番目)「伏せろ!」バシュン バシュン 京太郎「えっ!?」 京太郎(9)「チッ…!新手か……」ヒョイッ ヒョイッ 京太郎(1)「そっちの銃を持ってない方の俺!早くこっちに来るんだ!」バシュン バシュン 京太郎「もしかして…俺の事を言っているのか…?」 京太郎(1)「早くしろ!そろそろボウガンの矢が切れる!」バシュン バシュン 京太郎(9)「チッ……面倒くせぇ…!」チャキッ 京太郎(仕方ない…!今はあのボウガンを持っている方の指示に従おう!) タッタッタッ… 京太郎(9)「逃げるつもりか!?そうはさせん!」チャキッ タッタッタッ…… 京太郎(9)「―――いや、今はやめておくか。囮は多い方がいいからな…」ガチャン… 771 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 17:51:11.70 ID:0jRLgPvrO 【体育倉庫】 京太郎「はぁ…はぁ…助かったぁ…」 京太郎(1)「大丈夫だったか……?あの世界の京太郎は俺の知る中でもトップレベルの実力を持っている……危ない所だった」 京太郎「なんで俺を…助けたんだ?」 京太郎(1)「お前が京太郎同士で戦う事が間違っている、と言っていたからだ…」 京太郎「それは……どういう事なんだ?」 京太郎(1)「俺も…お前と同じ気持ちだからだ。同じ京太郎なのに殺し合うなんて、絶対に間違っている」 京太郎「それじゃあ……!」 京太郎(1)「だが、戦いを求めている京太郎がいるのも事実だ。……さっきの京太郎みたいにな」 京太郎「………なんで、こんな事になっちまったんだろう……」 775 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 18:31:52.28 ID:0jRLgPvrO 【食堂】 モモ(4番目)「やれるものならやってみろっす!」 モモ(7番目)「上等っす!こっちはアンタと違ってサソリやら毒蜘蛛やらで死線を掻い潜ってきたっすよ!」ポカッ モモ(4)「馬鹿にするなっす!私はムチで何回も打たれてるっす!」ポカポカッ モモ(7)「だからどうしたっす!ただ単に自分の変態っぷりをアピールしてるだけじゃないっすか!」ポカッ モモ(4)「う…うるさいうるさいうるさいっす!私の癖に生意気っすよ!」ポカッポカッポカッ モモ(7)「やったっすね~!お返しっす!」 ポカポカポカポカポカポカポカ 京太郎(7)「えーい!リンシャンカイホーはまだ戻ったこないのかよ!」 778 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 18:54:16.50 ID:0jRLgPvrO 【プール】 京太郎(3番目)「まずいな!数で圧されつつある!」バシュン バシュン ガースー雑魚A「あいややややや!戦いは数なんですよぉ!」パラララララ ガースー雑魚B「エッエッエッ!力こそ数、数こそ力ですぅ!」パラララララ 京太郎(12番目)「ふっ、ただの船乗りがこのドン・京太郎に戦いを挑むなど百万年と3日早いわ!」パラララララ… 京太郎(3)「くそっ、こうなったら……出てきやがれ!」ガチャン シュウウウウウ…… 池田(3)「うおえええええええええっ…!凄く気持ち悪いし…!」 京太郎(3)「出て来て早々に吐いてんじゃねええええええ!」パラララララ ガースー雑魚A「アラアラ、いい吐きっぷりですねぇ」 782 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 19:15:25.98 ID:0jRLgPvrO 【広場】 ガォーン ガォーン 京太郎(11番目)「ホッーホッホッホッ!案外としぶといですね!」ダァーン ダァーン 京太郎(10番目)「けっ!その鬱陶しい笑い方を治してやるよ!…こいつでな!」ガチャン シュウウウウウ…… 透華(10)「さあ行きますわよ!パソコン!マジック」パラララララ 智紀(10)「了解……アンテナ…」ダァーン ダァーン 一(10)「ボク達の世界を守るんだ!」パラララララ 衣(10)「おまえたちー!がんばれ~!」 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ……数で攻めて来ましたか!これはちょっと厄介ですね!」ダァーン ダァーン 京太郎(10)「へへっ…!アシストを呼び出すのは……多い方がいいんだよ!」パラララララ 783 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 19:37:10.11 ID:0jRLgPvrO 京太郎(11)「 ホッーホッホッホッ!こうなったら私も……」ガチャン シュウウウウウ…… 睦月(11)「みんな~!睦月だよ~!私なりに~!?」 パラララララララララララララララ 睦月(11)「きゃあああああ!?やっぱり駄目だ!あの口紅がなければ私は――!」 京太郎(11)「ホッホッホッ……戦いにおいて、彼女はあまり役に立ちませんね……それなら!」ガチャン シュウウウウウ…… ギャラリーっB(11)「ウリィィィィィィ!むっきーは俺が守るゥゥゥゥゥゥ!」タッタッタッ 透華(10)「な…なんですのあれは!?」 智紀(10)「過激なファンは死をも恐れない……」 京太郎(10)「けっ!んなもん、まとめてぶっ殺してやんよ!」パラララララ 788 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 20:17:37.58 ID:0jRLgPvrO 【再びプール】 京太郎(5番目)「さあ、ガースーファミリーの攻撃を受けている3番目の京太郎! せっかく呼び出したアシストも池田という役立たずが呼び出されるという残念な結果に! これは3番目、ピーンチ!」 ガースー雑魚A「さっきから五月蝿いですねえ!やっちまいましょ!」パラララララ まこ「やかましゃああああああ!雑魚のタマが当たるわきゃねーだろおおおお!」ビシッ ビシッ ビシッ ガースー雑魚A「いやややややや!もうやだよやだよ~!」バシッ バシッ 京太郎(5)「おおーっと!出ました染谷まこの竹刀ラッシュ!竹刀は銃よりも強し!それが染谷まこという戦士だぁぁ!」 池田(3)「うえええ……まだ気持ち悪いし……うっぷ!」 京太郎(3)「この役立たずがあああああ!」 790 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 20:53:24.96 ID:0jRLgPvrO パラララララ…… パラララララ… 京太郎「銃声がさっきから鳴り止まないな…」 京太郎(1)「……俺達同士で戦っているんだろうな」 京太郎「……くそっ!何が世界の創世者だよ!あの立って奴!」 京太郎(1)「奴は俺達の事を単なる物語に使う道具として見ているのだろう……でなければ、こんな馬鹿げた事など考えはしない…」 京太郎「結局、俺達が頑張っても立の前じゃ無駄だって事かよ……ふざけるなってんだ!」ドガッ ?「そいつは違うぜ13番目の兄ちゃん…」 京太郎「だ、誰だ!?」 京太郎(8番目)「どんな 人生にも無駄なもんなんかありやしないんだい……人は何かを成すがために生まれてくるんでさあ」ゴクゴク… 京太郎(1)「お前は…8番目の京太郎」 京太郎(8)「隣…空いてっかい?」 794 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 21:20:42.35 ID:0jRLgPvrO 京太郎「お、お前は戦うつもりは…ないのか?」 京太郎(8番目)「なんだい、13番目の兄ちゃんは戦いをお望みかい?」 京太郎「いや、そういう訳じゃ……」 京太郎(8)「なら……物騒な話は止めましょうや…」グビグビ… 京太郎(1)「お前も…俺達と同じように戦う事は間違いだって思っているのか…?」 京太郎(8)「グビグビ…………………さあ、どうだろうねぇ」 京太郎「なんだかあやふやな答えだな…」 京太郎(8)「俺はただ………戦う時が来たら戦うだけさ。今はその時じゃあない…そういう話って事さね…」 京太郎「………9番目の奴が言ってたけど…これは自分の世界を守る戦うだって……お前はどう思っているんだ?」 京太郎(8)「……………世界を守るためねぇ」グビグビ 796 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 22:02:05.36 ID:0jRLgPvrO 京太郎(8番目)「そんな大層なもんじゃあないと思うんだけどなぁ……」 京太郎「えっ…?」 京太郎(8)「まっ、自分の世界を守るために戦うっていう意見も…あるんじゃないかね」 京太郎(1)「だからって俺達が戦う理由は…」 京太郎(8)「ふわぁ~!なんか言ったかい1番目の兄ちゃん?」 京太郎「ふ……フリーダムすぎる…!」 京太郎(1)「やれやれ…なんだか真面目に考えるのが馬鹿らしくなってきた…」 京太郎(8)「戦う事が……間違いだって言うのなら何が正しいってんだい?」 京太郎(1)「なに…?」 京太郎(8)「それを示しもしないで拒否してばっかりてのは筋違いじゃあないかい?」 京太郎「それはそうですけど…」 京太郎(8)「まっ……後ば自分が決める事だろう…頑張んな」タッタッタッ… 797 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 22:25:51.77 ID:0jRLgPvrO 京太郎「行ってしまった……なんだったんだろうか」 京太郎(1)「何が正しいのかを示せ、か……確かに8番目の京太郎の言う通りかもしれないな」 こうして、京太郎達の戦いは一夜を明ける…しかし、戦いが止まる事はなかった 【家庭科室】 京太郎(11番目)「ホッーホッホッホッ!いい加減しつこいですね~!」パラララララ 京太郎(10番目)「てめえの笑い声がウザくてしょうがないぜ!」ダァーン ダァーン ゆみ(7)「蒲原!今のうちに敵の背後から攻撃するぞ!」 蒲原(7)「ワハハー!りょーかい」サッ… 京太郎(7)「リンシャンカイホーが行方不明の今、皆さんには期待していますよ!」パラララララ… 睦月(7)「うむ」 妹尾(7)「今日も大変だなぁ…」 798 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/22(月) 22:38:07.08 ID:0jRLgPvrO 京太郎「今のうちに早くこの場所から離れよう……」コソコソ 京太郎(1)「隠れながら移動するのも…なんだか情けない気分になってくるな」 咲(6番目)「あはははははははははは、京ちゃんみーっけ!」ブォン 京太郎「うおっと!?あぶねーって……咲!なんで咲がこんな所に…」 京太郎(1)「落ち着け、おそらく奴は別の世界の咲だ…」 京太郎(6番目)「お前の言う通りだぜ…こいつは俺の世界の咲だ」 咲(6)「あっ、京ちゃーん!見ててね京ちゃん…今から別の京ちゃんを殺してあげるから!でも安心して別の世界の京ちゃん! 京ちゃんは京ちゃんだからいーっぱい愛しながらじっくりゆっくり…殺してあげるからね~!あははははははははははははははははははははははははは!」 京太郎(1)「この感じは……まるで…」 806 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 00:11:02.81 ID:TUUIzldjO 咲(6)「ほらほらほら京ちゃああん!よそ見しちゃあ駄目だよ~!あはははははははははは」ブォン 京太郎「うおっと危な……止めろ咲!そんな物騒なものを捨てるんだ!」 京太郎(1)「13番目の京太郎…残念だが、彼女に説得は通用しない」 京太郎「と…どうしてだよ!?咲はきっと分かって……」 咲(6)「すきあり~!」ブォン ブォン 京太郎「うおおおっと!?あぶねーあぶねー!危うくやられる所だったぜ……確かに話が通じる相手じゃあなさそうだ…」ヒョイッ 咲(6)「なんで逃げるのかなぁ~!?京太郎は私に殺されればいいんだよ~?他の奴に殺されるなら~私に殺されなよ~!あは…ははははあははははははははははははははは!」ブォン ブォン ブォン 807 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 00:16:53.84 ID:TUUIzldjO 申し訳ない 一旦休憩させてもらう 817 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 07:59:45.52 ID:TUUIzldjO 京太郎「なんだよこれ……こんなの俺が知ってる咲じゃねえよ!」 京太郎(6番目)「まあ、お前の気持ちも分からないでもない…事実、俺も最初はお前と同じだった」 咲(6)「あははははははははははははははは!京ちゃーん!京ちゃーん!」 京太郎(6)「だけど…それでも俺は咲のいる世界を守りたいんだ。例え監禁されたり、スカンガンで気絶させられたりしても、俺は咲が可愛いんだ」 京太郎「そんな…!」 京太郎(6)「狂ってるとか頭がおかしいとか言われようが……俺は咲の存在を守る!…だから、俺は…お前達を倒す!」 咲(6)「あはははははあははははは!京ちゃんだーい好き!永遠に私の京ちゃんにしてあげる!別の世界の京ちゃんだってその方が嬉しいよね?嬉しいよね!!」 京太郎(1)「似ている…………こいつは、俺に」 820 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 08:18:18.19 ID:TUUIzldjO 咲(6番目)「私達の世界を壊すなんて許せないよね~!そんな悪い京ちゃんは私が殺してあげる!あははははは」ブォン ブォン 京太郎(6)「ああ……そうだな咲」 京太郎「くそっ!あんなデカイ鉈…当たったらひとたまりもない!」ヒョイッ 京太郎(1)「13番目の京太郎…お前のアシストは何が出てくるんだ!」 京太郎「アシスト…光から出てくるあれの事か!?あれって一体何なんだよ!?」 京太郎(1)「もしかしてお前……アシストを持っていないのか!?」 京太郎「持っているもいないも……俺にはさっぱり分からねーよ!」ヒョイッ 京太郎(1)「持って…いないのか。まさかアシストを持っていない京太郎がいたなんて」 咲「あははははははははははははははははははははははははは!」ブォン! 京太郎(1)「…………やむを得ない。本当は……こいつを使いたくなかった」スチャッ 823 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 08:45:41.46 ID:TUUIzldjO 京太郎(6番目)「あれはまさか…!咲!あの1番目の俺を早く倒せ!じゃないと……」 咲(6)「あはははははははははは分かったよ京ちゃーん!」タッタッタッ… 京太郎(1)「優希………!」ガチャン シュウウウウウ…… 咲(6)「あはははははははははは!じゃあね1番目の京ちゃーん!」ブォン ガギィンッ! 咲(6)「な……なに!?」 優希(1)「そんなおもちゃで京太郎を殺そうなんて…私を馬鹿にするんじゃないじょ!」バキッ! 咲(6)「きゃあああ!?」バタッ 京太郎(6)「さ…咲!」 京太郎「あれは……タコス!?」 優希(1)「きゃははははははははははははははははははははははははは!さ~き~ちゃ~ん!一緒にあソビましょ~♪ひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ」ドルン…ドルルン…! 京太郎(1)「……………」 京太郎「あれは……チェーンソー!?なんでタコスがそんなものを…」 824 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 09:00:57.86 ID:TUUIzldjO 優希(1)「みんなー!ジェイソンごっこをしようじぇ~!モチろん私がジェイソンで~他のみんながコロされるイッパん人の役だじょ~♪あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」ドルゥゥゥゥン! 咲(6)「面白いじゃない!そんな無駄にデカイものよりも私の鉈の方が役に立つよ!京ちゃーん!今から優希ちゃんを始末してあげるから応援してね~! あはははははははははははははははははははは」チャキッ 優希(1)「きゃはははははははははは!イッパン人役は黙ってバラバラになっちゃえ~!」ドルゥゥゥゥン! 京太郎「狂ってる……何もかもが狂ってやがる!」 京太郎(6)「またあの時の悲劇がよみがえった……か」 京太郎(1)「…………………くそっ!」 826 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 09:23:04.88 ID:TUUIzldjO ガシャアアアアアン! 京太郎(6)「な…なんだ!?」 リンシャンカイホー「シャアアアアア!」 京太郎「あれはまさか……昨日の馬鹿デカイ蛇!?」 リンシャンカイホー「キシャアアアアア!」 咲(6)「なにをこの蛇~!私の邪魔をしないでよ~今から優希ちゃんを殺そうとしているのに~!」 優希(1)「きひひひひひひひひひひひひひひひ 蛇だろうがなんだろうが私の邪魔をする奴はみーんなバラバラニしてやるじょ~!」 京太郎(6)「咲、ここは一旦退こう。あの蛇は相手にするには無理がある!」タッタッタッ… 咲(6)「あ~ん!待ってよ京ちゃ~ん!せっかく皆を始末しようとしたのに~!」タッタッタッ… 京太郎「あんな化け物…勝てるわけがねえよ!」 京太郎(1)「しかし、召喚した京太郎を見かけないが……もしかしてこの蛇は暴走しているのか?」 827 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 09:36:53.49 ID:TUUIzldjO 京太郎「俺達も早く逃げた方がいいと思う!あんなの人間の手に負える訳ない!」 京太郎(1)「そうだな…優希!俺達も早く……」 優希(1)「キャハハハハハハハハハハハ!」タッタッタッ… 京太郎「おいタコス!どこに行くんだよ!」 京太郎(1)「戻ってくるんだ優希!俺達はこっちに…」 リンシャンカイホー「シャアアアアア!」 京太郎「まずいぞ!蛇がこっちに向かってくる!」 京太郎(1)「やっぱりこうなってしまったか……くそっ!」 リンシャンカイホー「キシャアアアアア!」 京太郎「早く逃げようぜ1番目の俺!」 京太郎(1)「……仕方ない!優希……後で必ず見つけ出してやるからな!」タッタッタッ…… 828 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 10:03:18.43 ID:TUUIzldjO 咲(6)「あははははははははははどこまで逃げるの京ちゃ~ん!」 京ちゃん(6)「とにかく、あの蛇が見えなくなるまでだ!あいつさえいなければ……」 バシュッ ビシッ 京太郎(6)「ぐわっ!?」バタッ 咲(6)「きょ……京ちゃん!?足から血が…!」 クボ星人A「イケダァァァ!」ガシッ 咲(6)「な…なにこいつ!?離してよ!私は京ちゃんの所に行かないと」 クボ星人の大群「イケダァァァ!タルンデルンジャネーゾ!イケダァァァ!」ガシッ ガシッ ガシッ 咲(6)「離して!離してよこの化け物!」 京太郎(6)「さ……咲!さきぃぃぃぃ!」 京太郎(9番目)「悪いがお前のアシストは厄介だから拘束させてもらったぜ」 京太郎(6)「お…お前は9番目の!」 京太郎(9)「気分はどうだい…6番目の俺」チャキッ 829 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 10:23:41.73 ID:TUUIzldjO 京太郎(6番目)「てめえ…!」 京太郎(9番目)「さて、最後に言いたい事はあるか?それくらいはサービスしてやるよ」 咲(6)「京ちゃん!私の可愛い京ちゃん!離せ!離せブタ共!京ちゃんは私が助ける!こんな奴に殺らせない!」 クボ星人「イケダァァァ!イケダァァァ!」 京太郎(9)「無駄だよ。いくら咲とはいえ、集団のクボ・コーチ星人から逃げる事は不可能だ」 京太郎(6)「さ……き…ごめんな…咲…」 咲(6)「やめてよ!京ちゃんを殺さないで!京ちゃんは…世界で一番大切なんだから!」 京太郎(9)「じゃあな…6番目の俺」チャキッ 京太郎(6)「咲……俺は…お前を……愛して…!」 咲(6)「いやあああああああああああああああああああああ!やめてえええええええええええええええええええええ!」 クボ星人「イケダァァァ!イケダァァァ!タルンデルンジャネーゾイケダァァァ!」 ダァーン……… 京太郎 残り11人 831 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 10:51:44.03 ID:TUUIzldjO 【校庭】 照(4)「京ちゃん…私も力を貸してあげるから…必ず勝つのよ?」ダァーン ダァーン 京太郎(4番目)「分かっていますよ照さん……必ずコイツらを倒してみせますぜ!」パララララ ハギヨシ(10)「思っていたよりやりますね……流石はスパイの世界…と言った所でしょうか」 歩(10)「ハギー様!この戦いが終わったら…塩むすびを……」 ダァーン! 歩(10)「あ………う…まさか…こんな……」シュウウウウ…… 透華(10)「キィィィィィ!何をやっていますのメイドは!?」ダァーン ダァーン 京太郎(10番目)「クソッタレがぁ!よそ見をするからだ!」パララララ 蒲原(7)「ワハハー、まばたきしている余裕なんかないなー!」 モモ(7)「それにしてもリンシャンカイホーはどこに行ったっすかね?」 833 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 11:14:55.93 ID:TUUIzldjO ガシャアアアアアン! リンシャンカイホー「シャアアアアア!」 照(4)「な…何!?あの長い蛇は一体……」ダァーン ダァーン モモ(7)「ようやく来たっすねリンシャンカイホー!これで勝てるっす!」 ゆみ(7)「ああ…少し不安ではあるが…」パララララ 透華(10)「いくらなんでも卑怯ですわ!勝てるはずありませんわ!」パララララ 京太郎(10番目)「またあの蛇かよ!?ふざけるなってんだ!」パララララ 一(10)「どうするのアンテナ!?ボク達に蛇を倒す手段なんかないよ!」 ハギヨシ(10)「誠に辛い事ですが……撤退した方が良いと思われます」 妹尾(7)「一気に形勢が逆転したよ!やったねみんな!」 京太郎(4番目)「仕方ない…俺達も逃げましょう照さん!」 834 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 11:33:38.30 ID:TUUIzldjO 京太郎(7番目)「ははははは!流石はリンシャンカイホー!圧倒的じゃないか俺達の世界は!」 ゆみ(7)「少し卑怯な気もするが…私達の世界を守るためだ…仕方ない」 蒲原(7)「ワハハー!そのとーりそのとーり!」 リンシャンカイホー「シャアアアアア!」 モモ(7)「ありゃ…なんだかリンシャンカイホーの様子がおかしいっすよ?」 睦月(7)「うむ……こっちに向かってきます!」 京太郎(7番目)「てか……こっちに向かって倒れてきているし!」 蒲原(7)「ワハハ…もしかしてかなりヤバイって感じ?」 ゆみ(7)「まずいぞ!早く逃げろぉ~!」 京太郎(7番目)「よ…よせリンシャンカイホー!こっちに来るな!」 リンシャンカイホー「シャアアアアアアアアアア!」 一同「ぎゃああああああああああああ!」 ズゥゥゥゥゥン……… 京太郎 残り10人 835 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 11:59:19.38 ID:TUUIzldjO 【校舎裏】 京太郎「どうやらあの蛇はまいたみたいだな…」 京太郎(1番目)「ああ……だが優希を見失ってしまった」 京太郎「なあ……なんでタコスはあんな風になっちまったんだ…?元からああだったのか?」 京太郎「いや、違う…俺と一緒にいた時はいつもの優希だった…あいつがああなってしまったのは…」 京太郎「ああなったのは…?」 京太郎(1」「俺が交通事故でし――――」 ピ イ イ イ イ イ イ 京太郎「ん……なんだこの音は…」 ドカァァァァン……! 京太郎(1)「今度は爆発 音―――!?一体なにが……」 ピ イ イ イ イ イ イ ドカァァァァン! 京太郎「うわあああ!?なんだよこれ!?一体なにが起きてんだよ!?」 京太郎(1)「敵の襲撃……いや違う、見ろ!爆発が至る所で起きている!」 837 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 12:16:41.62 ID:TUUIzldjO ピイイイイイイ ドカァァァァン… ピイイイイイイ ドカァァァァン… 京太郎「一体なにが起きてるってんだ!?別の世界の俺が爆弾を使って無差別攻撃を仕掛けているのか!?」 京太郎「分からない……とにかく、この場から離れるぞ!このままだと爆発に巻き込まれる!」 京太郎「わ、分かった!」タッタッタッ… ピイイイイイイ ドカァァァァン! ドカァァァァン! ドカァァァァン! マホ(11)「きゃああっ!こっちでも爆発が起きてますよぉ!」 京太郎(11番目)「畜生が!このドン・京太郎に対して無差別攻撃を仕掛けるなんて、ふざけた真似をしやがる!」 マホ(11)「は…早く安全な場所に避難しましょう~!」 京太郎(11)「言われなくても分かっている!」 ピイイイイイイ ピイイイイイイ ピイイイイイイ ドカァァァァン… 838 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 12:18:43.91 ID:TUUIzldjO 番号を間違えた(11)は(12) レスが足りるか心配 839 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 12:31:55.01 ID:TUUIzldjO ピイイイイイイ ピイイイイイイ ピイイイイイイ ドカァァァァン ドカァァァァン 透華(10)「一体なにが起きておりますのマジック!?いきなり爆弾が降ってくるなんて…!」タッタッタッ… 一(10)「分からないよアンテナ!このままじゃあボク達が…」 井上(10)「一体どこのどいつだよ!?こんな狂った事をしやがるのは!」 京太郎(10番目)「チキショー!どこに逃げても爆発がやまねえ!どこに逃げれば…」 ピイイイイイイ ドカァァァァン! 智紀(10)「―――――!」バタッ 一(10)「パソコ~ン!」 智紀(10)「アイル………ビー……バック……」バタッ 京太郎(10)「駄目だ!こっちにも爆弾が……!」 ピイイイイイイ ピイイイイイイ ピイイイイイイ ピイイイイイイ ピイイイイイイ 京太郎(10)「う わ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! 」 ドカァァァァン ドカァァァァン ドカァァァァン ドカァァァァン 京太郎 残り9人 842 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 12:50:36.63 ID:TUUIzldjO 京太郎(5番目)「止まらない!爆発が止まらな~い!まさに阿鼻叫喚!まさに悪夢! 実況している私の近くでも爆発が起きており、非常に危険な状態だ~!私はどこへ逃げたらよいのか全くわかりませ~ん!」 ピイイイイイイ ドカァァァァン! 池田(5)「ぎゃあああああああああ!」 ピイイイイイイ ドカァァァァン… 京太郎(3番目)「くそっ……なんで…急に……爆発……が…!?」ガクッ 京太郎(8番目)「……どうやら逝っちまったみたいだね……全く悲しいこった…」 京太郎 残り8人 京太郎(8)「それにしてもこの爆発は一体どこから起きてるのかね……早く止めないと大変な事になるよ」 【屋上】 シイイイイイイ…… バシュン! 優希(1)「きひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ何もかもぶっ壊れればいいじょ! 京太郎の世界を破壊する奴らを皆殺しだじぇ!」 シイイイイイイ バシュン バシュン バシュン 優希(1)「クックックッ……キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」 843 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 13:05:08.53 ID:TUUIzldjO 【屋上】 優希(1)「きゃはははははははは!まさか屋上に爆弾が馬鹿みたいにあるなんて…きっと神様が私にくれたものに違いないじぇ!」 優希(1)「待っててね京太郎……私と京太郎だけの世界がもう目の前まで来ているんだじょ!ひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ」 シイイイイイイ ポイッ 優希1「今度はダイナマイトだじぇ~!当たると痛いじょ~!あはははははははははははは!」 ドカァァァァン…… 京太郎(4番目)「お前かタコス!こんな爆発を起こしているのは!」チャキッ 照(4)「気をつけて京ちゃん…あの子、正気じゃないわ!」 モモ(4)「観念するっすよ!この爆弾魔!」 優希(1)「うるさい連中だじょ………」ガサコソ… 京太郎(4)「動くなタコス!そこから動いたらお前を撃つぞ!」チャキッ 844 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 13:20:50.79 ID:TUUIzldjO >841 書き貯めた奴はレスが足りなくなると判断したので全部消した 残り100で終わらせたい所 ――――――― 優希(1)「撃てるものなら…撃ってみろだじょ!」バッ! 京太郎(4)「な――――!?アイツ、身体中に爆弾を縛り付けてやがる!」 照(4)「狂ってる…完全に狂ってるわこの子!」 モモ「あり得ないっすよ!世界を守るために自分の身体に爆弾を仕掛けるなんて…」 優希(1)「あはははははははははははは!お前達の方こそ下手な真似をしたら…吹き飛ばすじょ~!」 京太郎(4)「クソが……ふざけた真似しやがって…!」 優希(1)「すきありだじょ」ポイッ カラン…カランカラン… 京太郎(4)「しま――――!」 ドカァァァァン! 照・モモ「きゃああああああああああああ!」シュウウウウ… 優希(1)「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!京太郎がバラバラになったじょ~!」 京太郎 残り7人 845 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 13:43:38.13 ID:TUUIzldjO 京太郎「何だ、屋上から爆発が起きたぞ!?」 京太郎(1)「あの笑い声はまさか……優希!?」タッタッタッ 京太郎「ちょっ、ちょってくれよ~!」タッタッタッ 京太郎(1)「優希…待っててくれよ優希…!」 ピイイイイイイ ドカァァァァン… 京太郎「なぁ…どうしてタコスはあんな風になってしまったのかまだ教えてもらっていなかったよな……良かったら教えてくれないか?」 京太郎「……優希が狂ったのは…俺が交通事故で死んだからだ」 京太郎「なんだって……じゃあ!」 京太郎(1)「俺がその事を知ったのは立と出会ってからだ。奴は優希が俺が死んだ後、何をしたのか…見せてくれたよ」 京太郎「…………」 京太郎(1)「最初は信じられなかったよ…アイツが俺のせいで人を殺してしまうなんて…。でも、これも全て俺のせいなんだとも思った…」 846 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 13:56:50.79 ID:TUUIzldjO 京太郎(1)「さらに立は俺にこう言った…もし、お前が最後の1人として勝ち残ったなら…俺が死んだ事をリセットしてやるってな」 京太郎「なんだよそれ…!」 京太郎(1)「そうすれば優希がおかしくなる事もなく、復讐のために人を殺める事もない。 悲劇は起きる事もなく、お前も優希も幸せになるだろう…と立は言ったんだ」 京太郎「あの外道―――どこまで汚い真似を!」 京太郎(1)「でも…それを聞いた時、俺は…戦おうと思ってしまった。優希を助けるためなら…なんでもしてやるってな。 だが………奴は…立はこともあろうにおかしくなった優希を俺のアシストにしやがったんだ!」 京太郎「……あの野郎!」 847 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 14:10:04.41 ID:TUUIzldjO 京太郎(1)「立にとってあの約束は…俺を戦わせるための手段に過ぎなかった…それに気がついた時は、例えようのない怒りと憎悪が俺の中に沸き起こったんだ。 だから俺は、京太郎同士で戦う事は間違いだって思ったんだ」タッタッタッ… 京太郎「1番目の俺……」 京太郎(1)「今、俺がやらなければならない事はただ一つ…優希をとめる事だ!これ以上、優希がおかしくなるのは耐えられない……!」 京太郎「……そうだな!俺だってタコスがおかしくなるのを見たくねえ!俺も手伝うぜ!」 京太郎(1)「すまない…恩にきる!」 京太郎(8番目)「なら、俺も一緒に行かせてもらうとするよ」タッタッタッ… 京太郎「お前は…あの時の京太郎!?どうしてここに…?」 京太郎(8)「なーに!俺達は同じ京太郎なんだ!細かい事は気にするない!」 848 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 14:38:12.69 ID:TUUIzldjO シイイイイイイ バシュン 優希(1)「キャハハハハハハハハハハ!もっともっと爆発するじょ!出来るだけ多くの敵を巻き添えにするんだじぇ~!」キャッキャッ 京太郎(1)「やめろ優希!」 京太郎「なんだこりゃあ!?なんでこんなに爆弾が…」 京太郎(8)「それに…黒焦げになった別の世界の俺達がいるねい……怖い怖い」 優希(1)「あはははははは京太郎!なんで他の京太郎が一緒にいるんだじぇ!?そうか!今から殺すんだな~!じゃあ今から爆弾で殺してやろうじぇ~!ひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ」 京太郎(1)「もうやめるんだ優希!こんな馬鹿な事…俺は望んでいない!俺はもう…お前が誰かを傷付ける姿を見たくないんだよ!」 京太郎「1番目………」 849 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 14:55:50.44 ID:TUUIzldjO 優希(1)「何を言っているんだ京太郎…?私は京太郎を守るためにやっているんだじょ?なのになんで…やめろなんて言うんだじぇ!?」 京太郎(1)「俺は…お前がそんな風になってまで蘇りたいなんて思ってない! 例え…俺の死がリセットされたとしても、そのために生まれた沢山の犠牲はリセットされる訳じゃないんだよ優希!」 京太郎「………1番目」 京太郎(8)「なるほどねい……」 優希(1)「………」 京太郎(1)「だから優希…もうこんな事は」 優希(1)「違う」 京太郎(1)「京太郎はそんな事は言わないじぇ…いつだって京太郎は私の事を好きでいてくれたんだじょ。  京太郎はいつだって私の味方なのに…それなのに…!」ギリギリギリギリギリギリ 京太郎(1)「優希!」 優希(1)「お ま え は き ょ う た ろ う じ ゃ な い 」 850 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 15:20:35.10 ID:TUUIzldjO 京太郎「なっ…!?アイツ、身体中に爆弾を!」 京太郎(1)「優希…!何をするつもりだ!?」 優希(1)「私の大好きだった京太郎はここにはいない、私だけの京太郎はどこにいるの?私は…私は…」シュポッ… シイイイイイイイイイイイイ 優希「私には誰も…誰もいないんだじょおおおおおおおおおおおおおおお!」 京太郎「まさかタコスの奴…ここを爆破するつもりじゃあ!」 京太郎(8)「そいつはえらい事になったねい!このままじゃあ俺達も…」 京太郎(1)「優希………!」グッ 優希(1)「あはははははははははははははははははははは!壊れろ!何もかも壊れてしまえ!こんな世界いーらーなーい!」 シイイイイイイイイイイイイ…… 京太郎(1)「1番目の京太郎……短い間だったがお前と一緒にいれて良かったぜ」 京太郎「えっ……それはどういう事だよ…」 851 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 15:43:57.59 ID:TUUIzldjO 京太郎(8)「まさかあんた……死ぬつもりじゃあないだろうね…?」 京太郎(1)「………………ニッ」 タッタッタッ… ガシッ 優希(1)「――――――!」 京太郎(1)「優希……お前は1人じゃない…俺がいる…俺がずっと一緒いる……だから…」 スタッ…… ヒュウウウウウ…… 京太郎「きょおたろおおおおおおおおおお!」 京太郎(1)「ごめんな優希……全部俺が…俺が悪いんだ……」 優希(1)「違うよ……京太郎は何も悪くないよ……悪いのは全部……」 京太郎(1)「優希……!お前…」 優希(1)「京太郎……大好きだじょ……次に生まれ変わってもまた京太郎を好きになりたい……」ギュッ… 京太郎(1)「優希………俺もだよ優希…ずっとお前と…一緒に…」ギュッ… ドカァァァァン……… 京太郎 残り6人 853 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 15:55:01.12 ID:TUUIzldjO 【屋上】 京太郎「あの…馬鹿野郎!なんだよ…どうしてだよ…!」 京太郎(8番目)「自分の愛する者のために死ぬ、か……見事な最期だったねい」 京太郎(9番目)「だが、そのせいで奴の世界は消えちまった訳だ」 京太郎「な……お前は!?」 京太郎(8)「やれやれ…いつからそこにいたんだい?」 京太郎(9)「お前達がここに来た時からずっといた…タコスが自分の身体にある爆弾に火をつけた時はヒヤヒヤしたぜ」 京太郎(8)「ふーん、そうかい……」 京太郎(1)「まあ、結果としては助かった訳だがな。それにしても馬鹿な奴だな1番目も…他にやり方はいくらでもあっただろうに…」 京太郎「んだと……!?」 京太郎(9)「アイツは一人のために世界を消滅させちまったのさ……それを馬鹿と呼ばずになんと呼ぶってんだ?」 855 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 16:27:23.91 ID:TUUIzldjO 京太郎「てめえ!いい加減にしやがれ!」 京太郎(9)「おっと動くなよ。こっちには武器がある事を忘れるな」チャキッ 京太郎「くっ……!」 京太郎(9)「とりあえず…それなりに数が減った訳だし、お前達にはここで死んでもらうぜ」 京太郎(8)「おっといいのかな9番目の兄ちゃん?そんな事して」 京太郎(9)「ああん?どういう意味だそれは…」 京太郎(8)「さあねい……あんたの後ろにいる12番目に聞いてみちゃあどうだい?」 京太郎(9)「なに!?」クルリ 京太郎(8)「残念!そいつァ嘘だよ!」ポイッ 京太郎(9)「しま―――!」 京太郎(8)「1番目!目をふせえぇぇぇぇぇぇ!」 カランカラン…… ピカッ! 京太郎(9)「があっ……!?目眩ましだとっ…クソが!」 京太郎(8)「上手く引っ掛かてくれて良かったぜい!やはり抜けている所があるってのが京太郎という人間だって事さね!」 858 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 17:09:27.84 ID:TUUIzldjO 京太郎(9)「く……ふざけた真似しやがって!」ダァーン ダァーン 京太郎(8)「今のうちだ1番目の兄ちゃん!さっさと逃げるぞ!」タッタッタッ 京太郎「あ……ああ!」タッタッタッ 京太郎(9)「待て!逃がすかよ!」ダァーン ダァーン ダァーン 京太郎(8)「全く、爆弾に引火するかもしれないってのによく撃つね~!」 タッタッタッ…… 京太郎(9)「はぁ…はぁ…!逃げられてしまった、か……」チャキッ 京太郎(9)「だが、ほんの少しだけ寿命が伸びただけに過ぎない……結局は俺が勝つんだからな」 【麻雀部・部室】 京太郎「ふぅ……どうやら逃げる事が出来たみたいだな」 京太郎(8)「そうだねぃ……だが、まだまだ油断は出来ないってもんさ」 859 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 17:34:29.17 ID:TUUIzldjO 【グラウンド】 京太郎(5)「さあさあ!この戦いも終盤戦を迎えて参りました~!  一体との世界の京太郎が最後まで生き残る事が出来るのでしょうか!?」 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ!実況している暇があったら攻撃したほがいいですよ~!」パララララ まこ(5)「ブゥッ!」 ギャラリーっB「ぐはあぁぁ!目をやられたあああ!」 まこ(5)「オラァァァ!往生せぇやああああああ!」ビシッ ビシッ ビシッ 睦月(11)「ギャラリーさーん!頑張ってくださーい!むっきーはあなたを応援しておりま~す!」 睦月(5)「何がアイドルだ!私なんか……空気が薄いって言われたのにぃ!あなたと私…一体何が違うって言うのおおおっ!」タッタッタッ 京太郎(5)「おーっと!むっきー・サムライがアイドルむっきーに突撃したぁ~!むっきー・サムライを駆り立てるものはアイドルむっきーに対しての嫉妬なのだろうかぁぁ!?」 860 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:03:41.07 ID:TUUIzldjO 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ!嫉妬というものは恐ろしいですね~!」パララララ 深堀(5)「むん!むん!むん!」ビシッ ビシッ ビシッ 京太郎(11)「ホホ!?いつの間に!?」バシッ バシッ バシッ 京太郎(5)「おおっ!?バルバロイ深堀のデストロイ張り手が炸裂~!これには11番目の京太郎も笑みが消える~!」 パララララ パララララ まこ「うおっと!?なんじゃなんじゃ!いきなり別の方から攻撃されたんじゃが!?」 マホ(12)「この~!あ~たれ~!」パララララ パララララ 京太郎(12)「おうおうおう!このドン・京太郎を忘れてもらっちゃあ困るぜ!」ダァーン ダァーン 京太郎(5)「きたきた~!ドン・京太郎こと12番目の京太郎~!その風格はまさにギャング界のシロナガスクジラや~!」 861 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:30:23.93 ID:TUUIzldjO 【麻雀部・部室】 パララララ……… パララララ…… 京太郎「もう夜だっていうのにまだ戦いは続いているんだな…」 京太郎(8)「みたいだねい……1番目の兄ちゃん…おでんでも食べるかい?」 京太郎「いや……いらない…なんだか食べる気がしないんだ…」 京太郎(8)「…まだ、1番目の兄ちゃんの事を気にしているのかい?」 京太郎「……アイツは自分の大切なもののために世界を犠牲にした…って9番目は言っていた」 京太郎(8)「ああ、そんな事を言っていたなぁ。アイツの言う事なら気にしない方がいいんじゃないかい?」 京太郎「だけど、もし…アイツの言う事が正しかったら俺達はなんのために…」 京太郎(8)「1番目の兄ちゃん。正しい答えなんてありゃあしないんだよ」 863 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:39:49.18 ID:TUUIzldjO 京太郎(8)「これは正しい、これは間違っているなんてもんは俺達が決めるもんじゃあないさね。今はただ…生き残る事を考えるべきさ」 京太郎「8番目の俺……」 京太郎(8)「まぁ…今はゆっくりと休みなよ。見張りなら心配するない」ガチャン シュウウウウウ…… 池田(8)「皆の味方!華菜ちゃんの参上だし!」ボイーン 未春(8)「ちょっと華菜ちゃん…今は静かにしようよ」ボイーン キャプテン(8)「見張りなら私に任せてください…京太郎さん」モトカラボイーン 文堂(8)「ようやく出番が回って来ました…」ボイーン 深堀(8)「…………むん」ボボボボイーン 京太郎「こ……これはまさにおっぱいいっぱい祭り……!」ゴクリ 京太郎(8)「はははは……まぁ、細かい事は気にするなや」 池田(8)「そーそー!華菜ちゃん達に全てを任せて欲しいし!」ボイーン 864 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 18:54:32.42 ID:TUUIzldjO 【食堂】 京太郎(12)「やれやれ……戦力になるアシストはこの二人だけか」 マホ(12)「すいません…あまり役に立てないアシストで…」 久(12)「仕方ないわよ…長い間戦っていたんだから」 京太郎(12)「残っている京太郎もあとわずか…気を引き締めていくぞ!」 マホ(12)「はい!頑張ります!」 久(12)「それにしてもやけに静かね……なんだか嫌な予感がするわ」 京太郎(12)「確かにそうだな……一応注意して…」 パララララ パララララ 久(12)「敵襲!?一体どこから!」チャキッ マホ(12)「あわわわわ!弾を補充しないと!」ササッ 和(9)「……一応、須賀君の言う通りに牽制はしておきました」 京太郎(9)「ああ……ご苦労」 マホ(12)「あれは……和先輩…!」 久(12)「ええ…だけど別の世界の和みたいね…いつでも戦えるように準備しておきなさい」チャキッ 865 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 19:17:16.95 ID:TUUIzldjO 和(9)「須賀君…あなたとまた一緒に戦う事になるなんて正直驚いています」 京太郎(9)「……まだ俺の事を信用していないのか」 和(9)「いえ、別に…私はただアシストとして戦うだけです。だけど勘違いしないでください…私はあなたのために戦う訳ではありませんから」 京太郎(9)「そうか…なら、いい」 京太郎(12)「よし!今だお前ら!ありったけの銃弾をくらわしてやれ!」パララララ マホ(12)「マホ!行きまーす!」パララララ 久(12)「悪いわね和!私達の世界を守るために…本気でいかせてもらうわよ!」パララララ 和(9)「――敵を発見しました!攻撃に移ります!」チャキッ パララララ 京太郎(9)「さてと……いきますかね!」チャキッ 京太郎(12)「往生しろや~!うおおおおおお!」パララララ 869 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 20:15:33.23 ID:TUUIzldjO パララララ パララララ 和(9)「須賀君!このままではまずい事になります!撤退しましょう!」パララララ 京太郎(9)「やむを得ないか……分かった!」タッタッタッ… マホ(12)「見てください!敵が逃げていきますよ!」 久(12)「今こそ好機ね!ドン・京太郎!」 京太郎(12)「ふはははは!このドン・京太郎に恐れをなしたか!逃がすなよ!」パララララ タッタッタッ… マホ(12)「あれ、見失ってしまいましたね?」 久(12)「そんなはずはないわ…いくらなんでも逃げるのが早すぎる…」 京太郎(12)「………何だこの臭いは?調べようにも暗くてよく見えんな」 久(12)「……この臭いはまさか!」 パッ マホ「きゃっ!?眩しいです~!」 久(12)「この黒い粉は…火薬だわ!私達の周りに火薬が積まれているのよ!」 和(9)「まさかこんな簡単に引っ掛かってくれるなんて思いませんでした…」 870 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 20:23:59.71 ID:TUUIzldjO 京太郎(12)「お前ら…俺達を罠にはめたのか!?」 京太郎(9)「そういう訳だ…すまないな」シュポッ 久(12)「軽率だったわね……まさかこんな簡単な罠に引っ掛かるなんて」 京太郎(9)「その簡単な罠にあなた達は引っ掛かんですよ部長?」 マホ(12)「た…助けてください和先輩!お願いします!」 和(9)「ごめんなさいマホ…これも自分達の世界を守るためなの……本当にごめんね」 京太郎(12)「命乞いをするんじゃねえマホ!お前もギャングなら、最期まで堂々としろ!」 久(12)「ふふ……かっこいい事言うじゃないドン・京太郎……いえ、須賀君?」 京太郎(12)「……余計なお世話だ」 京太郎(9)「最期まで堂々、か……流石はギャングと呼ばれるだけある……じゃあな」ポイッ ドカァァァァァン…… 京太郎 残り5人 872 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 20:46:18.03 ID:TUUIzldjO 【麻雀部・部室】 池田(8)「こっちは異常はないみたいだし…キャプテンの方は?」ボイーン キャプテン(8)「こっちの方も大丈夫よ華菜」モトカラボイーン 未春(8)「兄貴!私達が見張っていますので、その間はゆっくりと休んでください!」 京太郎(8)「悪いねい姉ちゃん達……じゃあお言葉に甘えますかい」ゴロッ 京太郎「8番目のアシストってこの5人だけなのか?」 京太郎(8)「ああ、そうだよ13番目の兄ちゃん……。そういえば、お前さんのアシストは見ていないんだが一体誰が呼び出されるんだい?」 京太郎「……それが、俺だけアシストがないんですよ」 京太郎(8)「ないだって?そいつぁおかしな話だねぃ……他の連中はホイホイ出しているってのに」 京太郎「自分でも分からないんですよ…なんで俺だけがアシストがないのか…」ハァ… 京太郎(8)「ふーん……それは大変だねい…助けもなしに戦えってのもさ…」 873 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 21:03:11.84 ID:TUUIzldjO 京太郎(てか俺……いつの間にか敬語で話してるし…同じ姿なのに何だこの貫禄は…) 京太郎(8)「どうしたんだい13番目の兄ちゃん?」 京太郎「いや、何でもありませ……ねーよ、気にすんな」 京太郎(8)「なら、いいんだけどね~!今はゆっくりと休んだ方がいいよっと」 京太郎「ああ、わかってい…」 京太郎(8)「グー……グー……」 京太郎「寝るの早っ!?…全く頼りになるんだか…ならないんだか……」 京太郎「って、なに他力本願になっているんだ俺は。情けねえ、こんなんで生き残る事ができるのかよ」 京太郎「……よく考えてみると俺って今までの戦いで何もしてないよな…。 よく生き残れたもんだ」 京太郎「いつも誰かに助けられてばっかりで……何もしてない…」 京太郎「…本当に情けないな、俺」 こうして再び夜が明ける。残る京太郎は後5人。 875 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 21:43:53.22 ID:TUUIzldjO 【体育館】 京太郎(5)「さあ…さあ……!私にも…最期の…時が…やって…来ました……!最後……まで…実況…出来ないのが…誠に残念…です…!」 京太郎(9)「まだ実況できるのか…まさにプロ根性って奴か…」 まこ(5)「まだまだじゃあ……清澄…ナメんなぁぁぁ!」タッタッタッ… 和(9)「さようなら染谷先輩……あなたはよく頑張りましたよ」チャキッ パララララ まこ(5)「くはっ……!ワシも…ここまで…か…!」バタッ 京太郎(5)「おお……っとぉ…!ついに……染谷…まこが…倒れて…しまったあ…!今まで…よく…頑張って…くれました…! そして…私も…ここまでの…よう…です…!それでは……皆様…また会う日が…来たら…また…いつか…あ…いま…しょ……」バタッ 京太郎(9)「……よくやったよお前は…褒めてやる」 京太郎 残り4人 876 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 22:04:18.27 ID:TUUIzldjO 【広場】 京太郎(8)「うーん!昨日はよく眠れたねい」 京太郎(いびきが五月蝿くて眠れなかったぜ…) 京太郎(8)「それにしても…今まで聞こえていた銃声がぷっつりと止んだねい……嫌な感じがするよ」 京太郎「確かに……もうあまり生き残っていないんだろう……次に狙われる可能性が非常に高いって訳だ」 京太郎(8)「13番目の言う通りだね……念のためにアシストは出しているけどさ…」 未春(8)「兄貴!敵の気配はしませんよ!多分、大丈夫だと思われます!」ボイーン 京太郎(8)「ご苦労様~!じゃあ13番目の兄ちゃんよ……」 キラリーン…… 京太郎「――――!危ない8番目!」ガバッ ダァーン! 京太郎(8)「うおっと!?いきなりの銃声かい!」 未春(8)「兄貴ー!」ボイーン 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ!まさか避けられるなんて思いませんでしたね~!」チャキッ 877 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 22:22:50.48 ID:TUUIzldjO 京太郎(8)「悪いな13番目の兄ちゃん!助かったぜい!」 京太郎「今度のターゲットは俺達って訳か…!どうする、あっちは武器持ちみたいだぞ!」 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ!あなた達を倒せば残る敵は一人だけ!すいませんが、死んでいただきますよ!」ダァーン! 京太郎(8)「なるほどねい……どうやら残っているのは俺達を含めて4人だけみたいだなぁ」 京太郎「そんな…!もうそれだけしかいないのかよ!」 京太郎(11)「ホッホッホッ、こちらには武器がたーくさんありますよ!対するあなた達は武器なし……これは私の勝ちですね!」ダァーン! 京太郎「どうする8番目の俺!このままじゃやられちまう!」 未春(8)「兄貴達!こっちに来てください!見て欲しいものがあるんです!」 京太郎(8)「おう、姉ちゃん!何か面白いものでも見つけたのかい!?」タッタッタッ… 878 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 22:46:29.24 ID:TUUIzldjO 京太郎「これは…ボウガンか!」チャキッ 京太郎(8)「確かに銃には負けるけど、何もないよりはマシだねい!」チャキッ 未春(8)「やってやるぞ~!」チャキッ ボイーン 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ!私の武器はこれだけではありませんよ~!」ガチャン シュウウウウウ…… 蒲原(11)「ワハハー!ようやく私達の出番だな~!」 ゆみ(11)「ああ、私達も世界を守るために戦わせてもらうぞ」 モモ(11)「みんなで頑張れば楽勝っす!」 妹尾(11)「はわわ……油断しないようにしないと!」 睦月(11)「みんな~!私も一緒にがーんばるよー!私なりにー精一杯!」 京太郎「まずいな……一気に敵が増えてしまった!」 京太郎(8)「やれやれ…こちらもアシストを呼ぼうかね」ガチャン シュウウウウウ…… 879 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:05:21.94 ID:TUUIzldjO 池田(8)「じゃーん!華菜ちゃん参上だし!」ボイーン キャプテン(8)「みんな!頑張りましょう!」モトカラボイーン 深堀(8)「ムン!」ボボボボイーン 文堂(8)「私達の力を見せてあげましょう!」ボイーン 未春(8)「兄貴!鶴賀の連中は任せてください!」ボイーン 蒲原(11)「ワハハー!それじゃあ…いきますか~!」 ゆみ(11)「かかれ~!」 ワァァァァァ… 京太郎(8)「それじゃあ13番目の兄ちゃん!俺達は大将との戦いを始めましょうぜい」チャキッ 京太郎「あ、ああ……」チャキッ 京太郎(俺に…できるのか?自分の姿をした人間を倒す事なんて……。でも、今はやるしかない!) 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ!私を倒せるものなら倒してみなさい!」チャキッ 882 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/23(火) 23:24:41.24 ID:TUUIzldjO 京太郎(8)「そりゃ、よっと!」バシュン バシュン 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ!当たりません当たりませんよ~」ダァーン ダァーン 京太郎「………」バシュン バシュン 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ!一体どこを狙っているのですかあなたは!」ダァーン ダァーン 京太郎「……くそっ!」 京太郎(8)「兄ちゃん…ちょっとこっちに来い!」ガシッ 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ!隠れても無駄ですよ~!」ダァーン ダァーン 京太郎「ごめん…………やっぱり俺にはできない」 京太郎(8)「…そうか、なら仕方ない。兄ちゃんはそこに隠れていな…後は俺がやるぜい」チャキッ 京太郎「……俺を責めないのか?」 京太郎(8)「責めたりするもんかい……13番目の兄ちゃんは今までよく頑張ったんだからさぁ」 京太郎「俺は………」 京太郎(8)「じゃあ、俺は戦いに戻るぜい!」タッタッタッ… 京太郎「…………情けねえ…本当に情けねえよ…!」 884 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 00:01:16.53 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ!どうやら13番目はリタイアしたみたいですね~!やはりヘタレはヘタレだったって事ですよ!」ダァーン 京太郎(8)「へっ…そういうのも悪くはねえんじゃないかい?」バシュン バシュン 京太郎(11)「ホッホッホッ、確かにヘタレはヘタレなりの人生を歩んでいるでしょうが……全く無駄な存在ですね彼は!」ダァーン 京太郎(8)「…どんな 人生にも無駄なものがあるもんかい!無駄な命なんてもんはないのと一緒さね!」バシュン 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ!そうですか!それは素晴らしいですね~! だが…その無駄じゃない京太郎も私に殺される運命なんですけどね~!」ダァーン! 京太郎(8)「ぐふっ…!当たっ……ちまったか…!やっちまった…なあ…!」バタッ 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ!それでは止めといきましょうかね~!」チャキッ 京太郎(8)「くっ…………俺も…ここまでか…」 885 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 00:13:13.05 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎(11)「それでは…おさらばでございます!」 バシュン グサッ 京太郎(11)「ホッ!?」 京太郎「はあ……はあ……!」 京太郎(8)「じ…13番目の兄ちゃん!あんた…なんで……」 京太郎(11)「こ……の…クソ野郎がぁぁぁ!」チャキッ 京太郎「……うわああああああああああああ!」バシュン バシュン バシュン バシュン バシュン バシュン 京太郎(11)「ホッ!ホッ!ホッ!ホッ!ゴホォー!」グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ……バタン…… 京太郎(8)「に……兄ちゃん……」 京太郎「はあ……はあ…!う……う…俺は……俺は……自分を殺してしまった……!」ガチャン……カラカラカラ…… 京太郎(8)「13番目の兄ちゃん……」 京太郎「俺は……俺は!戦ってしまった!あれだけ…戦いたくなかったのに…!」 京太郎(8)「兄ちゃん……兄ちゃんのおかげで俺は助かったんだぜい……だから…気にするない…」 886 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 00:25:27.17 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎「だ……大丈夫か?8番目の俺……血が出ているけど…」 京太郎(8)「なーに…心配はいらねえよ…。ただ…ちょっと力を貸してくれないかい…?ちょっと…足が動かんのよ」 京太郎「あ、ああ!分かったよ」タッタッタッ… 京太郎(8)「やれやれ…これで残るは後3人って事かい……」 京太郎「ああ、最後に残っているのはおそらく9番目だろうな…」 京太郎(8)「やれやれ…一番面倒な奴が生き残ったまってるねい…」 チャキッ……… 京太郎「確かに奴は一筋縄じゃあ…」 京太郎(8)「兄ちゃん危ない!」ガバッ ダァーン! 京太郎(8)「か……は…!」 京太郎「――――えっ?」 京太郎(11)「ホッ…ホッ…ホッ……油断してはいけません…でしたねいえ……ぐっ!」バタッ 京太郎「8番目………?おい……おい!」 京太郎(8)「へへっ………兄ちゃん…勝てよ……必ず…な…」バタッ 京太郎「あ…あ…!…………うああああああああああああ!」 京太郎 残り2人 889 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 00:45:50.06 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎「なんでだよ!どうして俺なんだよ!どうして…どうして俺が生き残ってんだよ! ふざけるな!間違ってる!こんなの間違ってる!ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 未春(8)「間違ってなんかないよ……」シュウウウウウ… 京太郎「あなたは……!」 未春(8)「あなたが……京太郎さんが生き残った事には意味はあるんですよ…」シュウウウウウ…… 京太郎「意味……?」 未春(8)「そう……きっと…意味がある…だから……自分を責めるのは止めてください…京太郎さん」シュウウウウウ… 京太郎「…………」 未春(8)「でないと…兄貴が…この人が浮かばれませんから……!」シュウウウウウ… 京太郎「吉留さん……」 未春(8)「最後まで生き残ってください京太郎さん……私達のためにも…そしてこの人の……ため…にも……」フッ…… 京太郎「……………」 892 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 01:02:30.79 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎「ようやく分かったよ…!1番目や、8番目が俺に何を伝えたかったのかやっと分かった! 俺は…勝つ!そして…」 京太郎(9)「これで、お前と俺の二人だけになったな…」 京太郎「来たか、来ると思ってはいた」スッ… 京太郎(9)「ほう、良い面構えになったな…最初の頃とは全く違う……戦う者の面構えだ」 京太郎「俺は必ず生き残る……死んでいった奴らのためにもな!」チャキッ 京太郎(9)「まあ、そう慌てるな。今のお前はボロボロじゃないか」 京太郎「だから…なんだって言うんだよ」 京太郎(9)「それじゃあ面白くない。今から二時間後に体育館に来い…そこで全てに決着をつけよう…」 京太郎「……いいだろう。今から二時間後だな?」 京太郎(9)「ああ…お前が来るのを楽しみにしている…じゃあな」タッタッタッ… 京太郎(咲……そして皆…俺は必ず勝ってみせる!) 893 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 01:14:29.38 ID:Hhqm0Jk3O 【体育館】 京太郎(9)「………これで全てが終わる…」チャキッ 和(9)「須賀君……」 京太郎(9)「和、お前は手出しをするなよ…奴との決着は一対一でつける」 和(9)「な…なぜですか!?私はあなたのアシストですよ!」 京太郎(9)「同じ事を二度言わせるな和。手出しをしたらお前を撃つ…いいな?」チャキッ 和(9)「須賀君!この戦いには世界が――」 京太郎(9)「俺は世界なんてどうでもいい。つまらない世界になんか興味はない」 和(9)「須賀君!」 京太郎(9)「俺はただ……自分の存在を消そうとする奴を倒す……それだけの話だ」チャキッ 和(9)「…何を言っても無駄なようですね。分かりました、あなたの戦いには干渉はしません。 ただ…絶対に勝ってください」 京太郎(9)「和に言われなくても勝つつもりだ。……奴が来たみたいだな」 京太郎「………約束通りに来たぞ」 894 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 01:30:52.47 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎(9)「逃げずに来たか……よく来たな」 京太郎「当たり前だ、どの道お前と戦わないといけないんだからな」 京太郎(9)「よく言った13番目…それっ」ポイッ ガシャン…… 京太郎「これは……剣?」 京太郎(9)「男同士の戦いに銃を使うのは無粋というものだろう…安心しろ、この剣は強度の割にはお前でも持てるような代物だ」 京太郎「うわっ、本当に軽いわ」チャキッ 京太郎(9)「さて、準備は出来たか?出来たなら早速始めるぞ」 京太郎「俺はいつでも準備OKさ……必ず勝ってみせる」 京太郎(9)「なら始めるとしよう…どちらが死ぬにしろ…これが最後の戦いだ…いくぞ!」チャキッ 京太郎「俺は負けない…絶対に勝つ!」チャキッ 和(9)「…………始まってしまいましたか」 896 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 01:50:40.03 ID:Hhqm0Jk3O チィン…チィン…ガギィン…シュッ… 京太郎「はっ!ちっ!このお!」チィン チャキッ 京太郎(9)「どうした13番目!全然動きがなってないじゃねーか!威勢がいいのは口だけか!?」ヒュン チィン 京太郎「うる……せえ!余計なお世話だ!」チィン チィン チィン 京太郎(9)「ふん!ならもっと俺を楽しませてみろよ!そらっ!」ヒュン ガギィン! 京太郎「くうううううう…!」 京太郎(9)「むううううううううん!」 ガギギギギギギギギギギギギギ…… 和(9)「鍔迫り合いが始まった……やはり私達の世界の須賀君が圧倒しているけど…」 京太郎(くそっ…!なんてパワーだ…!全然押し返す事が出来ない…!) 京太郎(9)「むうん!」 ガギィン! 和(9)「やった!私達の世界の須賀君が13番目の須賀君の剣を弾き飛ばした!」 898 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 02:04:38.16 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎(9)「これで終わりだ……そらっ!」ヒュン 京太郎「まだだ!まだ終わる訳にはいかない!」ヒョイ 和(9)「な…!?今のを…よけた!」 ギュッ 京太郎「まだ勝負に決着をつけるのは早いんじゃないか?」チャキッ 京太郎(9)「ふん…再び剣を握った所で同じ事だ!13番目!」ヒュン チィン チィン 京太郎「くっ!そりゃ!くらえ!」チャキッ チィン ガギィン 京太郎(9)「ほう、だいぶサマになって来たじゃないか……だがまだまだだ!」チャキッ 京太郎「てやぁぁぁ!」ヒュン! 京太郎(9)「くっ!」 ガギィン! 京太郎「ちっ…後もう少しだったんだがな……」チャキッ 京太郎(9)「貴様……中々やるようになってきたな」チャキッ 京太郎「へへ…それはどうも!」ガギィン 和(9)「もはや…どちらが勝つのか分からなくなって来ましたね…」 899 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 02:21:19.05 ID:Hhqm0Jk3O チィン…チィン…ガギィン… 京太郎(まずいな……!そろそろ体力が限界に近付いてきた……!) 京太郎(9)(まずいな……奴はこの戦いの最中に確実に強くなってきている…) 京太郎・京太郎(9)「次の一撃で決める必要があるな」 スゥ…… 和(9)「お互いに間合いをとりはじめた……そろそろ終わりにするみたいですね」 京太郎(咲…皆…!俺に…力を!)チャキッ 京太郎(9)(ここで負ける事は俺の全てを奴に奪われる事になる…絶対にそんな事はさせん!)チャキッ ドクン…ドクン…ドクン…ドクン… 京太郎「うおおおおおおおおおおおお!」タッタッタッ… 京太郎(9)「むううううううううううん!」タッタッタッ… シュン ガギィン! 900 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 02:32:01.90 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎「………………くっ!」ガチャン 和(9)「やった…13番目の須賀君が剣を落とした!この勝負は私達の…」 京太郎(9)「…………………」 和(9)「須賀…君?」 京太郎(9)「………」ガチャン ガチャン 京太郎「この勝負………」 京太郎(9)「お前の……勝ちだ!」バタッ……… 和(9)「そんな……!須賀君が…私達の世界の須賀君が負けるなんて!こんなオカルトは…オカルト…は…」 京太郎「9番目の俺……」タッタッタッ 京太郎(9)「ふっ……俺は今、満ち足りている。不思議なものだ……負けたというのに…心に心地好い風が流れたような感じがする…」 和(9)「須賀君!」タッタッタッ… 901 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 02:42:50.61 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎(9)「和……すまないな…勝つって約束したのに…負けてしまったよ……」 京太郎「和………」 和「………いいえ、あなたがなんと言おうとあなたは私の世界を守るために戦ったんです……謝る必要はありません」シュウウウウウ…… 京太郎(9)「そうか……ありがとな…和…。……13番目の京太郎…」 京太郎「どうした…9番目…」 京太郎(9)「例え……俺の存在が消えたとしても……俺がお前と戦った事…そして…俺が俺である事を貫き通した事…… それらは全部…消える事はない…」 京太郎「……………」 京太郎(9)「俺は…確かに……ここに…いた……」ガクッ 和(9)「お休みなさい……須賀…君…」フッ…… 京太郎「…………終わったか」 勝者 13番目の京太郎 903 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 03:02:32.57 ID:Hhqm0Jk3O シュウウウウウ……… 京太郎「なんだ!?視界が急に真っ白になっていく…!」 カァァァァァァ 京太郎「う……うわああああああああああああ!」 ピカァァァァァァ…… 【真っ白な世界】 京太郎「ここは……最初に見た…」 立「おめでとう、13番目の京太郎」パチパチ… 京太郎「お前は……立!」 立「あなたが勝ち残った事であなたの世界がsakiの世界となる。実に喜ばしい事です」 京太郎「……ふざけるのも大概にしやがれ」 立「なんの事ですか京太郎」 京太郎「何が喜ばしいだてめえ!てめえの腐りきった考えのせいでどんだけの人間が悲しんだと思ってんだ!」 立「……………」 京太郎「どんだけの人間が……涙を流したと思ってんだよおおおおおおおおおおおおおおおお!」 906 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 03:12:31.92 ID:Hhqm0Jk3O 立「確かに沢山の犠牲が生まれたのは事実。しかし、これも全て世界を一つにするため……その者達の悲しみは決して無駄ではありません」 京太郎「ふざけるな!そんな自分勝手な考えが!」 立「ならばあなたは消えても良いというのですか」 京太郎「……何?」 立「ようやく手に入れた自分の存在を、みすみす捨てるつもりなのですかと聞いているのです」 京太郎「それは俺を脅しているのか?」 立「そういう訳ではありません。もちろん私はあなたが勝ち取った世界をsakiの世界にするつもりです。 しかし――京太郎という存在はいくらでも差し替える事はできるのですよ?」 907 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 03:22:28.88 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎「…………」 立「せっかく守った世界なのに、その世界にあなたの存在がないなんて辛い事ではありませんか?」 京太郎「じゃあ逆に言えば、俺がいなくても俺の世界はsakiの世界になるんだな?」 立「そうなりますね―――それがなにか?」 京太郎「…………それを聞いて安心したよ」チャキッ 立「何をするつもりですか京太郎。剣などを私に向けて」 京太郎「お前の話を聞いてよく分かったよ……お前だけは絶対に許せないってな!」 立「お止めなさい京太郎。あなたは自分が何をしているのか分かっているのですか」 京太郎「うるせえ!そんなもん最初っから分かってんだよ!」 立「なら、止めなさい京太郎。今なら戯れとして許してあげますよ」 908 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 03:46:35.43 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎「悪いな、立…俺はお前を許す事が出来ない!」チャキッ 立「そうですか…なら仕方ありませんね。京太郎、私はあなたを修正する必要があると判断しました。さあ、来なさい……京太郎。私があなたを直してあげるわ」 京太郎「絶対に守ってみせる!俺達の…………存在を!」 ――――――― すまない 後ちょっとだけ続くんだ 長丁場のため思考回路がパンク寸前 休憩させていただく 919 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 10:28:26.82 ID:Hhqm0Jk3O チュン…チュン…… 咲「ふわぁ…今日も眠くなるような天気だなぁ…」 優希「咲ちゃ~ん!見ー付けた!」ガバッ 咲「きゃっ!?ゆ、優希ちゃん!もう、びっくりさせないでよ」 優希「すまんすまん!咲ちゃんがあまりにも可愛いから、思わず襲ってしまったじぇ!」 咲「もう、優希ちゃんったら…」 優希「また居眠りをしていたのか咲ちゃん!もうそろそろ部活が始まるから早く行こうじぇ!」 咲「あっ、待ってよ優希ちゃ~ん!」タッタッタッ… 【麻雀部 部室】 優希「おーっす!優希様の登場だじょ~!」ガチャ まこ「おっ、優希と咲も来たみたいじゃの」ジャラジャラ 和「遅いですよ二人共。早く練習を始めましょう」 久「これで全員ね…それじゃあ練習を始めるわよ~」 優希「タコスうまー!」 和「もう、ゆーきったらまた喉につまらせますよ?」 921 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 10:45:09.55 ID:Hhqm0Jk3O 咲「ツモ、嶺上開花」 優希「うわっと!また咲ちゃんに上がられちゃったじょ!」 まこ「やっぱりまこは強いのう」ジャラジャラ 久「じゃあ今度は私も混ぜてもらおうかしら?」 和「部長が相手ですか…負けませんよ」 まこ「ほほう、やけにやる気が出とるのお和!」 優希「頑張れのどちゃーん!私の敵討ちは任せたじょ!」 和「それじゃあ宮永さん、本気でいきますよ!」 咲「うん、分かったよ原村さん」ジャラジャラ 【部活終了】 久「じゃあ今日は解散!」 まこ「お疲れ~!部長、メシでも食べに行かんか?」 優希「咲ちゃん!のどちゃん!今からタコスを食べに行こうじぇ~」 和「もう、ゆーきったらまたタコスですか?別に構いませんけど…宮永さんも行きましょうよ」 咲「うん、いいよ!私も一緒に行くよ」 優希「それじゃあレッツゴー!」タッタッタッ 923 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 10:57:49.33 ID:Hhqm0Jk3O 【タコスショップ】 優希「タコスうま~!やっぱりタコスは美味しいじょ!」 和「だからゆーき、喉に詰まらせるって何度言えば」 咲「…………」 和「どうしました宮永さん?」 咲「ううん、なんでもないよ…ちょっと考え事をしてただけ」 優希「おおっ!?咲ちゃんに何やら悩み事があるみたいだじょ!ほれ、のどちゃん!相談に乗ってやれ!」 和「ちょっとゆーき!茶化すのは止めてください!…何か悩みがあるんですか宮永さん。良かったら私達に話してくれませんか?」 咲「悩みとかそういうのじゃないから気にしないで二人共。ただ……」 和「ただ…なんですか?」 咲「何かを忘れているような気がするの」 和「何かを忘れている…?」 926 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 11:08:25.02 ID:Hhqm0Jk3O 優希「なーんだ!咲ちゃんが暗い表情をしてたから、何事かと思ったらそんな事か!」ムシャムシャ 和「宮永さん、その忘れているものって一体なんですか?」 咲「それが、分からないんだよ原村さん…でもなんだか知らないけどそれが気になって……」 優希「何か買い物でも頼まれて、それを忘れているだけじゃないのかー?」ムシャムシャ 和「優希の言うとおりじゃないですか宮永さん?それともただ単に思い違いか…」 咲「う~ん…そうなのかなぁ」 和「きっとそうですよ宮永さん!さぁ、タコスが冷める前に早く食べましょう」 咲「う…うん、分かったゆ原村さん」 優希「タコスをおかわりするじぇ~!」 和「もう、ゆーきったら!あまり食べすぎると太りますよー!」 咲(………やっぱり何かを忘れているような気がする。とても大切な何かを…) 927 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 11:18:55.65 ID:Hhqm0Jk3O 咲「それじゃあ私はここで…じゃあね原村さん、優希ちゃん」 原村「はい宮永さん、また明日」 優希「のどちゃーん!早く次のタコスショップに行くじぇ~」グイグイ 和「もう、ゆーきったら…まだ食べるつもりですか」タッタッタッ… 咲「………帰ろうっと」 久「あら、宮永さんじゃない!こんな所で何をしているのかしら?」 咲「あれ、部長…どうしてここに?」 久「まこと食事に行って帰ろうとしたら、宮永さんを見かけたから声をかけてみたのよ」 咲「はあ……」 久「それよりもどうしたのかしら宮永さん?なんだか悩み事をしている様な顔をしているけど…」 咲「はい……ちょっと話を聞いてもらってもよろしいでしょうか?」 久「ええ、良いわよ。話を聞かせてちょうだい」 928 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 11:32:59.95 ID:Hhqm0Jk3O 久「……そう、何か大切な事を忘れているけどそれが何かが思い出せないって事ね…」 咲「はい、原村さん達は思い違いだって言ってたけど……私にはそう思えないんです」 久「あら、どうしてかしら?」 咲「だって…その事を思い出そうとする度に胸が苦しくなるんです……。大切な事を忘れているのにそれを思い出す事が出来ない……私にはそれが辛いんです」 久「なるほどね…宮永さんの話は大体分かったわ。……きっと宮永さんは大切な誰かを忘れているのよ」 咲「大切な…誰か」 久「そうよ、そういうのは大体相場が決まっているのよね!…きっとその人は宮永さんにとって凄く大切な人だと思うわ」 咲「凄く…大切な…」 久「……私もね、何かを忘れているような気がするのよ。大切な…何かをね」 929 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 11:48:24.90 ID:Hhqm0Jk3O 咲「えっ、部長もですか?」 久「そう…私もそれが何かを思い出す事が出来ないのよ…。でも、必ず思い出してみせるわ!忘れたままなんて…嫌だもの」 咲「部長……」 久「宮永さんも早く思い出せるといいわね…。じゃあ私はこれで…帰るわね」 咲「はい…さようなら部長…」 【帰り道】 咲「凄く大切な……人か。一体誰なんだろう…お姉ちゃんは……思い出す事ができるから違うし…」ピタッ… 咲「なんでだろう…なんでこんなに胸が切なくなるの?思い出す事が出来ないだけなのに…」 咲「なんで思い出せないの…?その人は私にとって大切な人じゃないの…?ずっと一緒に―――!」ハッ… 咲「そうだ…その人はずっと前から一緒にいた…!」 930 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 12:05:24.27 ID:Hhqm0Jk3O 咲(そうだ…その人は私が泣いていた時も優しくしてくれた……ちょっとおっちょこちょいな所があるけど、私はそんな所も大好きだった!) 咲「はぁ……はぁ…!」タッタッタッ 咲(その人は…その人は!) 【空き地】 咲「はぁ…はぁ…!ここだ…その人は確かここで住んでいた!ただの空き地かもしれないけど…私は知っている…!」タッタッタッ 咲「まだ思い出せないの?お願い思い出して私!その人の存在を!その人の名前を!」 『…………き』 咲「――ん!――ゃん!」 『……ほんとうに…トロいよな……さきは』 咲「――――ゃん!―――ちゃん!」 『咲………』 咲「きょう………ちゃん………!」 『咲、俺は………』 咲「京ちゃん……!京ちゃん、京ちゃん!」 931 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 12:14:05.87 ID:Hhqm0Jk3O 咲「ようやく思い出す事が出来たよ!やっと…やっと京ちゃんを思い出す事が出来た!」 咲「だから……だから!出て来てよ京ちゃん!私に…私に顔を見せてよ!」 シーン…… 咲「どうして出て来てくれないの!?私は京ちゃんの事を思い出す事が出来たんだよ? なのになんで!」 シーン… 咲「嫌だよ…こんなの嫌だよ京ちゃん!やっと思い出せたのに!…やっと…京ちゃんにまた会えると思ったのに…!」 シーン…… 咲「こんなの辛過ぎるよ!京ちゃんがいないなんて…もう二度と会えないなんて…!」 シーン…… 咲「私はどうしたらいいの?どうしたら京ちゃんに会えるの?どうしたら…どうしたら私は―――!」 ガサッ…… 咲「………誰!?」クルリ 932 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 12:19:19.40 ID:Hhqm0Jk3O ガサッ…ガサッ…ガサッ… 京太郎「……………」 咲「京……ちゃん……」 京太郎「ありがとな、咲……俺の事を思い出してくれて…ごめんな、辛い思いをさせちまって…」 咲「ううん、私の方こそごめんね…ずっと京ちゃんの事を忘れてて…」 京太郎「咲…………ただいま」 咲「お帰りなさい……京ちゃん」 ――京ちゃん!だーい好きだよ! 最終話「時を抜け出そう」 934 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 12:24:22.24 ID:Hhqm0Jk3O ようやく終わった 長かった 誤字脱字が多かったが今まで見てくれた人達に感謝する 938 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 12:40:09.15 ID:Hhqm0Jk3O まだまだ1000にたどり着くまで書き続ける 外伝「頭文字M」 咲「私!もっともっと麻雀がしたいんです!」 和「私がこのバトルに勝つ…!清澄のエースは私です!」 優希「私は一人の麻雀士として咲ちゃんとバトルがしたいんだじぇ!」 まこ「流石は清澄のダブルエースじゃのう!」 久「奴は一戦ごとに進化しているわ!」 ゴ ギャ ギャ ギャ ギャ ギャン キャプテン「上埜さん…見せてあげるわ!風越で鍛えた私の麻雀というものを!」 池田「チョロチョロ鳴きやがって!目障りだし!」 未春「なめてんじゃねーぞ!地獄待ちでいかすかよ!」 京太郎「どれ……プロに勝った腕とやらを拝ませてもらおうかな」 近日公開!(嘘) 940 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 12:51:45.80 ID:Hhqm0Jk3O 外伝2「さよなら池田華菜」 キャプテン「はい…春といえば出会いと別れの季節。私達、風越麻雀部にも別れがやって参りました。 今日、麻雀部に所属する池田華菜が麻雀部を退部する事になりました」 池田「………………どうも華菜ちゃんだし」 キャプテン「さて、まずはコーチのお言葉があります…どうぞコーチ」 コーチ「池田…私はお前が退部すると聞いてびっくりしました…もうこれを何回繰り返せばいいのか、と」 池田「……………」 コーチ「正直…私は池田ァ!と叫ぶのに疲れました。なぜ、私が池田ごときのために喉を痛めなければならないのかと…何回も自分に問いました」 池田「……………」 943 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 13:06:53.38 ID:Hhqm0Jk3O コーチ「私は池田に何故やめるのかを問いました…『最近、文堂さんが私の事をいやらしいで見てくるから』 『文堂さんが私の弁当のカマボコを食べたから』 『風越にいる猫に引っかかれたから』 そう、池田は私に言いました」 池田「…………」 コーチ「それではメンバーの皆から花束を贈呈と共に別れの言葉を」 文堂「池田さん…今までお疲れさんした、まあ先輩としてはすごく軽蔑してましたけど、よく頑張ったな池田! まあ、街中で出会ったら遠慮なく声をかけてくれ…奢るから」ガサッ 池田「………………」ギロッ 944 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 13:22:48.73 ID:Hhqm0Jk3O 深堀「まあ、悲しいと言えば嘘になりますが……お疲れさん。これ以上贈る言葉は特にない」ガサッ 池田「……………」ギロッ 未春「お疲れ様華菜ちゃん、学校以外会う事は無いので、もう話すことはないがお元気で」ガサッ 池田「……………」ギロッ キャプテン「華菜がやめると聞いて私は正直、だから何?と思いました。 華菜に代わる新レギュラーの候補としては…今までは猫だったのでウナギイヌかアンパンマンのカバ夫君などをあげております。 それではさようなら」ガサッ 池田「……………」ギロッ コーチ「今までお疲れ池田。一年生の中に池田がウザいせいで麻雀をしたくない人がいるらしいので これを機にキッパリとやめていただきたい」ガサッ 池田「………………」 【池田はコーチに握手を求めるがスルーされる】 946 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 13:43:05.70 ID:Hhqm0Jk3O コーチ「次に池田に対して関係者からメッセージがあります」ピッ ゆみ『池田が麻雀をやめようがやめまいが私の人生に全く影響ない……とにかくお疲れ様』 咲『池田って誰ですか?龍門渕と鶴賀の人以外に誰が大将戦にいましたっけ?』 衣『とにかくウザかった…それ以外の言葉などあろうはずがない』 藤田『これほどウザいのも珍しい。あなたは本当に人間ですか?』 京太郎『あんたのは図々しいんじゃなくて、ただウザいだけ。こういうのは本当に救いようがない』 コーチ「……以上、関係者からの温かい言葉だ」 池田「……………チッ」 948 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 13:56:34.04 ID:Hhqm0Jk3O キャプテン「それでは最後に…池田華菜から麻雀部の皆にメッセージを送ります…どうぞ」 池田「はい………」タッタッタッ… 池田「………………こんなたくさんの花束に囲まれて……誰が囲まれると思うんだし……!?」 文堂「く………くく……」 池田「ふう………はっ…ふう………!こ、こ、こんな………こんな終わり方は………ど…どうなんだし……? み、みはるんがぁ………みは…みは…みはるんがおはようって言ったんだし………そうね……嬉しかったね……!」 未春「……………」 池田「ま、麻雀大会だったかな……?この前皆で戦ったの……麻雀大会だったかな………?あれは本当に残念だったね~」 深堀「誰のせいだと思ってんだろ……」 950 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 14:08:17.20 ID:Hhqm0Jk3O 池田「き……キャプテンもお………!…頑張ったって………頑張った……てぇ……がん…………………ばっ………頑張って~! 私に言ってくれたからあああああ~!頑張ったってえ~!頑張った~!」 キャプテン「早く言ってよ……」 池田「ふっ………ふっ…ふっ……た……た…助けてください!だれか~!私はやめましぇ~ん!麻雀部にいたいよぉ~!誰か助けてくださ~い!」 キャプテン「ああもう、吉留さん…華菜を運びましょう」 未春「はい……ほら、華菜ちゃん」 池田「いやだああああ!助けて~!みはるん助けて~!みはるん~!みはるん~!助けて~!麻雀部にいたいよお~!やめたくありませ~ん!」 未春「自分からやめるって言ったんでしょうが……」 953 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 14:21:24.41 ID:Hhqm0Jk3O 未春「ようやく静かになりましたね……」 キャプテン「そうね、早く帰りましょうよ……」 文堂「今日はもう疲れました…」 池田「待て~い、華菜ちゃんは~、麻雀部を~、や~めないし~!」 ガシャアアアアアアン! キャプテン「あっ、もう準備したのね」 池田「華菜ちゃん、やーめない!気分上々で!まー、じゃん!麻雀部やめないしー♪」 キャプテン「ああもう、本当にウザくてウザくて仕方ないわね」 マホ「ジュース、池田からさんです」ダンッ! 文堂「うわっ、荒々し」 マホ「何見てんだよ、変態」タッタッタッ… キャプテン「なんだろう…」 こうして池田華菜のウザいコンサートは8時間続いた…めでたしめでたし 954 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 14:43:08.76 ID:Hhqm0Jk3O 外伝3「咲の日記」 ○月××日 今日は京ちゃんと一緒に買い物に行ったよ。本当は二人だけで行きたかったのになぜか優希ちゃんがついてきた…なんで一緒にくるの? そんで「犬~タコス買いに行ってこい!」なんて馴れ馴れしくつきまとってさ。 何調子乗ってるの?京ちゃんに馴れ馴れしくしないでよ。京ちゃんに命令していいのは私だけなんだよ。明日優希ちゃんのタコスに強力な下剤を入れてあげようっと♪ ○月××日 うざい、本当にうざいよ部長。なに「今日も買い出しお願いね~♪」ってベタベタまとわりついてるの。 権利を振りかざす女ってむかつくよね。部長の鞄の中に生きたヤリイカでも入れてあげようかな? ○月××日 あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは京ちゃんだーい好き 955 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 14:55:04.93 ID:Hhqm0Jk3O 外伝4「京太郎の日記」 ○月××日 今日は咲と一緒に昼メシを食べた。咲が手作りの弁当を俺に作ってくれてすごく嬉しかったぜ。 しかし…なんだか咲がニヤニヤしながら俺が弁当をを食べるのには違和感を感じた。 「隠し味に私の愛がいーっぱい詰まってるよ♪」っていう咲の言葉はどういう意味なんだろう。 ○月××日 おかしい、なんだか視線を感じる。メシを食っている時も、トイレに行っている時も、学校にいる時も、麻雀をしている時も そして家に帰ってからも…ずっと視線を感じるんだ。咲にその事を相談したら「あははは、気のせいだよ京ちゃん、うん、気のせい」と答えてくれた。 やっぱり気のせいなのだろうか……うーむ。 ○月××日 もう駄目だ。アイツは今、俺の部屋の前にいる。どうして気がつかなかったのだろう。彼女の狂気に。 今、扉を破壊しようとしている誰か助けてくれ…ああもうだめ―――― 957 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 15:31:49.88 ID:Hhqm0Jk3O 1000まで後45 ネタが尽きそう 外伝5「風越ファイトクラブ」 夏までに全国を制覇するという目的のために始まった風越ファイトクラブ。 だが、それは修羅場の幕開けでもあった! 池田「クチャクチャ………」 コーチ「おい、ガム捨てろやコラ!」ガッ 池田「うるせーし!余計なお世話だし!」 コーチ「おどりゃあ口の聞き方に気をつけろや!らああ!」 池田「やんのかコラ!やんのかコラァ!」 始まっていきなりの大乱闘!池田の不遜極まりない態度に部室内に暗雲が立ち込める! しかし、一人の少女の発言がさらなる波乱を呼ぶ! 文堂「ワシはなぁ…麻雀をするために来たんじゃわ!この風越麻雀部を潰すために来たんじゃワレ!」 コーチ「もういっぺん言うてみいコラァ!」 風越ファイトクラブは一体どうなってしまうのか! (完) 960 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 15:57:06.94 ID:Hhqm0Jk3O 外伝6「13人の京太郎」 京太郎「ちーっすってありゃ、誰もいねーし」 ガタッ 京太郎「ん、なんだこの玩具。部長のものかな」 ガチャン 京太郎「なっ、勝手に動いた!」 シュウウウウウウ… 京太郎(1番目)「なんだ…ここは?」 京太郎(2番目)「智紀さーん!ジュースってあれ?」 京太郎(3番目)「おい、池田!さっさとカゴを…ってなんだここは」 京太郎(4番目)「了解照さん!今から…ん?」 京太郎(5番目)「おおーっと!一体ここはどこだ~!?突然の出来事に私は面食らっております!」 961 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 16:03:39.49 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎(6番目)「分かった!分かった咲、だからこれ以上は…ありゃ?」 京太郎(7番目)「待て!近くにリンシャンカイホーがいるかもしれない!ここは一旦…」 京太郎(8番目)「おんや?ここは一体どこかねい?」 京太郎(9番目)「任務…遂行しようと思ったがここはどこだ」 京太郎(10番目)「へへっ!捕まる訳に……はあ?」 京太郎(11番目)「ホッーホッホッホッ!どうやら私は知らない世界に来てしまったみたいですね~!」 京太郎(12番目)「おう!このドン・京太郎…なにやら変な場所に来てしまったぜ!」 京太郎「な…な…!俺が増えた~!?」 962 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 16:13:21.15 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎(1)「全く、優希と一緒にデートをしていたのだが邪魔されてしまった」 京太郎(2)「智紀さん大丈夫かな?早くご飯を作ってあげないといけないのに~!」 京太郎(3)「まあ、いいや。休憩休憩っと」フゥ~ 京太郎(4)「ふーん…こっちの麻雀部も悪くないな」 京太郎(5)「さて、須賀京太郎という存在が私を含め13人いるという状況に私は困惑しております!」 京太郎(6)「さ…咲はここまで来ていないよな…?」ビクビク 京太郎(7)「全く、ブラジルの次は別のせかいか!」 京太郎(8)「こいつぁ面白い事になっているねい」グビグヒ 963 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 16:19:09.19 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎(9)「まあ、宇宙にまで行っている俺だ…こんな場所など珍しくもない」 京太郎(10)「どうやらあの鬱陶しい警察は来ていないみたいだな…良かったぜ」 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ!この世界には心に隙間がある人はいるんでしょうかね~?」 京太郎(12)「酒はないのか酒は!このドン・京太郎を馬鹿にするつもりか~?」 京太郎「一体何がどうなって…ハッ!」 京太郎(まさかこの玩具を使ってしまったからか…?だとしたら戻す方法だって) 京太郎(8)「やれやれ…同じ顔が沢山あるってのも変な話だねい」 965 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 16:31:09.70 ID:Hhqm0Jk3O 【数日後】 京太郎(5)「おおーっと!ここで宮永咲の嶺上開花が決まったあ~!流石は主役なだけありま~す!」 咲「うるさいよ!5番目の京ちゃん!」 京太郎(1)「ほらよ、タコスを買ってきてやったぜ」 優希「よくやったぞ犬!お前は他の京太郎と違って使える犬だじぇ~!」 京太郎(1)「はいはい…」 京太郎(2)「聞いてくださいよ~!智紀さんの所に行ったら…変質者扱いされてしまったんですよ~! ひどい話だと思いませんか~!?」 京太郎(8)「そうかいそうかい!仕方ないさね…ここはあんたの世界とは違うんだからねい」 966 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 16:40:13.38 ID:Hhqm0Jk3O 久「それじゃあ6番目の須賀君と10番目の須賀君には買い出しに行ってもらうわね~♪」 京太郎(6)「はいはい、またですか…行ってきますよっと!」 京太郎(10)「チキショー!なんでこの俺がこんな小娘に顎で使われないと…」 久「早く行ってきなさーい!」 京太郎(10)「チキショー!いつか必ず仕返ししてやるからな~!」 京太郎(12)「ふう~、全く…静かに酒も飲めやしねえなあ…」 まこ「なにを格好つけとるんじゃあ、コーラなんか飲んで格好つけても痛いだけじゃぞ」 京太郎(12)「う…うるさい!このドン・京太郎を…」 まこ「そのネタはもうええわ」 967 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 16:47:17.10 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎(3)「部長~!この荷物はこっちに置いておきますよ~!」ドスン 久「お疲れ様、3番目と7番目の須賀君!重い荷物を運ばせて悪いわね~!」 京太郎(7)「はははは!こんな荷物軽い軽い!」ドスン 和「ちょっと9番目の須賀君!こんな所で銃のメンテナンスなんて物騒な事はしないでください!」 京太郎(9)「…断る、俺はお前の言うことを聞く義務はない」 和「じゃあ、せめて部屋の換気をしてください!火薬の臭いが不愉快ですから!」 京太郎(9)「ちっ……相変わらずうるさい奴だ」 和「聞こえてますよ9番目の須賀君!誰がうるさい奴ですか!」 968 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 16:51:13.37 ID:Hhqm0Jk3O 京太郎(4)「注文したブツは持ってきたか?」 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ!これの事ですね!それでは受け取ってください」 京太郎(4)「フフフ…11番目、お前も相当の悪よのう~!」 京太郎(11)「ホッーホッホッホッ!いえいえ!4番目ほどではありませんよ~!」 京太郎「一体…一体俺はどうしたらいいんだああああああ!?」       完 969 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/24(水) 16:55:32.11 ID:Hhqm0Jk3O これで本当に終わり 久しぶりに咲SSを書いて楽しかった できれば1000まで埋めて欲しい またいつか 書きたいと思う その日までご機嫌よう
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1354280210/ いつからだろうか。 「負けてもいい」と思わなくなったのは。 久「ツモ。これで逆転ね」 和「ふぅ……捲られてしまいましたか」 京太郎「うぅ……また俺がラスか……」 優希「はっはっは、犬ごときが私に勝とうとは百万年早いわ!」 まこ「お前さんも、威張れるほどの点ではないじゃろ」 優希「とっ、東場だけなら私がトップだったじょ!」 京太郎「いっつもそれだろ、お前は」 優希「なっ、なにをー!」 なぜなのだろうか。 みんなの下にいることに、耐えられなくなったのは。 京太郎「なぁ、咲。前から気になってたんだけどさ」 咲「どうしたの、京ちゃん」 京太郎「なんでお前、いつも槓材が入ったり嶺上牌が分かったりするんだ?」 咲「え、えぇ……それは、何と言うか……自然にと言うか……何となく?」 京太郎「何となくで済むわけねーだろ、あんなに連発されりゃあ」 咲「と言われても……」 京太郎「はぁ……俺も咲みたいに、欲しい牌を都合よく引けたら少しは勝てるかもしれないのになぁ……」 咲「京ちゃんだって、欲しい牌を引けたことくらいあるでしょ」 京太郎「そりゃ何度もあるけどさ、肝心な時に引けずに負けるんだ」 京太郎「そう……俺は、ここぞって時に欲しい牌が引けたことは一度もないんだよ」 咲「そうなんだ……」 京太郎「咲と何が違うのかなぁ、俺は……」 咲「うーん……ちょっと考えてみたんだけど、京ちゃんは『この牌で和了れる』って思って引いたことないんじゃない?」 京太郎「は?」 咲「私はいつも嶺上牌を引くときは『この牌が和了り牌だ』って信じてる。牌のことを信じてる」 咲「だから……その気持ちに、牌が応えてくれるんじゃないかなって、ふと思ったんだ」 京太郎「何だそりゃ。信じるだけで引けるわけないだろ」 咲「そんなことないよ。麻雀が好きなら、きっと引けるようになるよ」 咲「愛する麻雀を、牌を、信じる気持ちがあれば……」 ――――――――その言葉は、俺の心の奥深くに―――――――― 咲「きっと、京ちゃんにも引けるよ。京ちゃんの、和了り牌を」 ――――――――溶けて、消えていった―――――――― 京太郎(……結局、気持ちなんか関係なかったんだ) 京太郎(俺と咲の差は、牌を愛しているかどうかじゃない。牌に愛されているかどうかだ) 京太郎(咲は牌に愛され、そして俺は……牌に、愛されなかった) 京太郎(努力だけでは、埋めることのできない壁がある。俺と、咲のような……魔物たちとの間には) 京太郎(そんな俺が、勝ち進むためには……方法は一つしかない) 京太郎「……リーチ」 京太郎(何かを犠牲にしてでも……) 京太郎(一方的に敵を蹂躙できるほどの、圧倒的な力を得ること!) えり「……結局、順当に前チャンピオン宮永照の連覇で終わりましたね」 咏「結果だけ見れば確かに順当だねぃ。でも、彼女の優勝への道のりは決して平坦なものじゃなかった」 咏「荒川憩、神代小蒔、原村和……彼女らとの対戦は、彼女にとっても楽なものじゃなかったはず」 咏「特に、決勝戦の宮永咲との熱戦……最後の最後まで、どちらが勝つか私にも分からなかった」 えり「宮永咲……団体戦優勝の清澄高校の、大将ですね」 咏「宮永照は今の力ですら、即プロに放り込んでもそこそこやれるだろうさ」 咏「彼女のような有望な若者が、どんどん現れてくるんだ。私もうかうかしてはいられないかもねぃ」 えり「……そういえば、今年からエキシビジョンマッチをやるんでしたね」 咏「そうそう。男女の各個人戦優勝者と、プロ2名で戦うアレ」 えり「女子の優勝者は宮永照……彼女にしてみれば、今の力を試すチャンスといったところですか」 咏「それはどうかな。しょせん非公式のおまけバトルだから、彼女はともかくプロ側はどこまで本気だか」 えり「そういうものですか……そういえば、男子の部はどこまで進んだんですか?」 咏「ちょっと遅れて、今は準決勝って聞いたよ。ね、ね、今から見に行こうぜ!」 えり「はぁ……構いませんけど……」 咏「いや~、男子の部も楽しみだなぁ」 えり「なんだかずいぶん、ワクワクしているように見えますが」 咏「男子も女子に負けず劣らず、強い子がいっぱいいるからねぃ。どんな奴がいるのか楽しみってのもあるし、さらには」 えり「さらには?」 咏「噂によると、とんでもなく強い奴がいるらしいんだよ。しかもなかなかのイケメンだとか」 えり「とんでもなく、強い……?」 咏「どんだけ強くて、どんな顔してるんだろうなぁそいつ。楽しみで仕方ないさ」 えり「あの……一つお聞きしますが、強さと顔、どちらを楽しみにしてるのですか?」 咏「決まってんじゃん、両方!」 えり「……………………」 咏「……お、着いたな。さすがに観戦者も沢山だ」 えり「モニターによると……ちょうど真っ最中みたいですね」 咏「ほうほう、さすが準決勝まで残った連中だ。かなりのつわもの揃いだねぃ」 えり「見ただけで、分かるのですか?」 咏「強者からはそういうオーラってものが発せられるんだよ。えりちゃんは、感じないか?」 えり「わ、私は麻雀は素人なので……」 咏「宮永照からももちろん感じたし、今打っている彼ら……モニター越しからでも、十分わかるさ」 咏「例えばAブロックの方の準決勝は、あの七三分けの彼がヤバい。彼は相当デキるねぃ」 えり「そうなんですか……」 咏「Bブロックの方の準決勝では……トップがずいぶん独走してるな。何て子だい、彼は?」 えり「少々お待ちを、今確認しますね」 咏「やっぱりオーラも、彼から圧倒的に強いものを…………感…………」 咏「…………じ…………」 咏「…………………………………………」 咏(え?) 「ロン、タンピン三色ドラ1。8000」 咏(おい……ちょっと待て……) 「ツモ、リーヅモ七対ドラドラ。3000・6000」 咏(なんだこいつは……高校生だろ、そんな……ありえない……) 「ロン、発中チャンタドラ1。7700」 咏(こんな……こんな、奴が……) 咏(存在、していいのか…………?) カラーン えり「三尋木プロ、扇子落としましたよ」 咏「…………」 えり「三尋木プロ?」 咏「…………えりちゃん」 えり「え?」 咏「…………彼…………何者だい?」 えり「えっと、今の子ですよね。彼は、清澄高校一年の」 「リーチ」 えり「須賀、京太郎……という名のようです」 咏「須賀……京太郎……」 京太郎「ツモ」 京太郎「リーチ一発ツモ……海底撈月。4000オール」 『決まったぁーっ! 初出場ながらも、ダントツのトップで決勝進出!』 『強い! 圧倒的に強い!』 『清澄高校一年、須賀京太郎選手! この強さは本物だぁーっ!』 まこ「お疲れさん、咲」 優希「準優勝なんて凄いじぇ! さすが咲ちゃんだじぇ!」 咲「う、うん、ありがとう……やっぱりお姉ちゃんには届かなかったけど……」 和「でも、素晴らしい戦いでした」 久「……不思議なものね。去年まで大会にも出られなかった状態だったのにね」 優希「まるで酷い配牌だったのが、国士無双に化けたような気分だじぇ!」 久「あら、昔からいる私は酷い配牌だったのかしらねぇ~?」 優希「じぇっ! そそそ、そういう意味では……!」 まこ「こらこら、優希をからかうのはやめんしゃい」 和「ふふふ……」 池田「おーい、清澄ー!」 透華「見事な戦いぶりでしたわ、皆さん」 ゆみ「うむ、素晴らしい結果だな」 咲「あ……風越と龍門渕、鶴賀の皆さん……」 久「ありがとう。みんなもわざわざ東京まで応援に来てくれて」 一「いやいや、ボクたちも楽しかったよ」 睦月「こちらも、勉強させていただきました」 池田「でも、来年こそはキャプテン率いる風越が優勝をいただくし!」 美穂子「か、華菜、私卒業するんだけど……」 純「オレたちも今度は負けねえぜ」 蒲原「ワハハ、じゃあうちもだー」 妹尾(私たちはそもそも来年出られるのかな……) 久(……思えば、ここまでの道のりは険しいものだったわね) 久(県予選での龍門渕戦は今考えても勝てたのが不思議なくらいだし……) 久(全国でも宮守、永水、姫松、有珠山、臨海……そして白糸台。どの学校も、紛れもない強敵だった) 久(またあの舞台に立つには、これらの強豪と再び戦わなければならないけど) 久(きっと、皆ならやってくれるはず。咲たちなら、きっと) 蒲原「それにしても、本当に清澄は大活躍だったなー」 ゆみ「団体戦は優勝、個人戦は準優勝だからな」 池田「いやいや、もしかしたらそれだけじゃ済まないかもしれないし」 美穂子「他にも何かあるの、華菜?」 未春「あれ? キャプテン、知らないんですか?」 池田「清澄、もう一つタイトル取りそうな勢いなんですよ」 美穂子「もう、一つ…………?」 池田「今やってる男子の部個人戦で、須賀京太郎とかいう清澄の一年が決勝に進んだみたいだし!」 「「「「……………………!」」」」 美穂子「ええっ!? け、決勝に!?」 池田「ネットでも、イケメン強豪男子として評判ですよ」 未春「その暴力的なまでの圧倒的強さに、ヘルカイザー京というニックネームまで付いていると聞いています」 モモ「は、初耳っす……」 ゆみ「なんだ、そんな強い部員がいるのなら話してくれてもよかったじゃないか、久」 久「あ……う、うん……」 智紀「…………」 一「須賀君……か……」 福路「龍門渕の皆さんは、ご存じだったんですか?」 透華「え……えぇ、まぁ……」 池田「?」 咲「…………京ちゃん…………」 まこ「京太郎は……きっと、この大会を最後に麻雀部を辞めてしまうじゃろう」 未春「えぇっ!?」 ゆみ「ど、どういうことだ!?」 和「……須賀君は、元々はとても弱かったんです。それこそ、初心者同然に」 和「それが、全てを犠牲にすることで……圧倒的な力を得てしまったんです。誰一人、太刀打ちできないほどの」 モモ「ど、どういうことっすか?」 池田「華菜ちゃん、話が全然見えないし!」 久「……そうね、話しておくわ。須賀君のことを」 久「かつて私たちの仲間だった、一人の男の子のことを…………」 透華(……………………) 透華(あら…………?) 透華(そういえば、衣はどこに?) 京太郎(もう少しで、決勝開始か……) 京太郎(体の方はもう、この力には慣れた。具合が悪くなることはない) 京太郎(今までの相手も、皆県予選を勝ち抜いた猛者だが……全く寄せ付けず、ここまで勝ち上がることができた) 京太郎(これが、清澄のみんなが……咲が、見ていた景色。高校麻雀の頂か) 京太郎(ここまで来るのに、何を犠牲に……いや、考えるのはよそう) 京太郎(後悔など、100点棒の一本ほどもしていないのだから) 京太郎(そう、俺は後悔なんかしているはずは……) 京太郎「……………………」 京太郎「県予選前の……満月の晩以来ですね」 京太郎「お久しぶりです、天江さん」 衣「…………京太郎…………」 京太郎「東京に来たのは、清澄の応援ですか?」 京太郎「それとも……俺を、止めに来たんですか?」 衣「……決勝の舞台まで来たお前に、この場で力を捨てろとは言わぬよ」 衣「それに、衣が何を言っても聞く耳持たぬだろう」 衣「だが、それを承知で言わせてもらおう。もう、これっきりにしてほしい」 京太郎「……どういうことです?」 衣「衣は辛いのだ。闇の道を歩み続ける京太郎を見ているのが」 衣「そして、その京太郎を見ている清澄の面々を見ているのが……たまらなく、辛いのだ」 衣「何せ、今の京太郎を生み出してしまったのは、他ならぬこの衣なのだからな……」 京太郎「……………………」 衣「お前は、自分だけ力がないことに……舞台に立てないことに、絶望を抱いていた」 衣「だが、この大会でお前は、誰も彼をも魅了するほどの華々しい麻雀を打ち抜いた」 衣「須賀京太郎の名は、大会の記録にはもちろん……全国の観衆全ての記憶に深く焼きついたことだろう」 衣「ならば、もう十分じゃないか。これ以上、何を望むというのだ」 京太郎「……天江さん。あなたには感謝しています」 京太郎「そのあなたに負担を強いてしまったことは、申し訳なく思います」 京太郎「でも……俺はやっぱり、この力を捨てることはできません」 衣「……どうしてもか?」 京太郎「俺だって、本当に心から望んでこの道を歩んでいるわけではないです」 京太郎「出来ることならば、今まで通りの生活の中で、この舞台に立ちたかった」 京太郎「でも、気付いてしまったんです。あの、女子団体県予選の日で」 衣「…………」 京太郎「俺には、悪待ちを和了る力はない」 京太郎「気付かれずリーチをかける力も、捨て牌を見えなくする力もない」 京太郎「嶺上牌や海底牌で確実に和了る力もない」 京太郎「そして……槓を繰り返し、役満を作り出す力も……ない」 京太郎「素人でもわかります。そこには……努力だけでは埋めることのできない、魔物たちとの壁がありました」 衣「京太郎…………」 京太郎「俺は勝ちたいんです。望んだ牌を引くことのできない俺でも、そんな連中に勝ちたい」 京太郎「だから……俺は、この力を捨てることはできません」 衣「…………だが」 京太郎「……そろそろ決勝の時間です」 京太郎「もう、俺には関わらないで下さい。お互い、苦しむだけでしょうから」 京太郎「では、失礼します」 バタン 衣(…………京太郎…………) 衣(お前の苦悩は理解できる……勝つための力を欲するのもわかる……) 衣(だが、なぜなのだ。京太郎よ) 衣(なぜ、お前は……そこまでして、勝ちたいのだ……?) ガチャリ 京太郎(ここが、決勝の舞台か……) 京太郎(……咲の奴は、個人戦準優勝……) 京太郎(あの気弱で泣き虫な咲が、準優勝……全く、大したもんだ……) 京太郎(だが、俺は咲には負けない……優勝して、お前を完全に超えてやる) 京太郎(見てろよ、咲、和、優希、部長、染谷先輩……) 竜「一年坊……あンたの背中は一人もしょえない、やめなよ麻雀は……」 京太郎(俺こそが最強だってことを……見せてやる!) 『それでは、いよいよ男子個人戦決勝開始です!』 久「……これが、彼に関する事実よ」 美穂子「そんなことが……」 ゆみ「強さを求めるために、他の全てを犠牲に……か」 透華「彼があの日、龍門渕を訪ねて来た時……確かに感じましたわ。強くなりたいという強い意志と……若干の、狂気を」 透華「ですが、ここまでとは……衣も、私たちも、全く予想していませんでしたわ……」 久「私も気付いてあげられなかったわ……彼がそこまで、自分の力にコンプレックスを抱いていたなんて」 久「もう少し私が彼に気を配っていれば……こんなことは、避けられたかもしれないのに」 和「ぶ、部長のせいじゃありませんよ!」 優希「そうだじぇ! 一人になってまで強くなりたいなんて考える、あいつがどうかしてるじぇ!」 池田「……私は……正直、ちょっとわからないでもないな。須賀君の気持ちが」 未春「華菜ちゃん……?」 池田「私もさ、あの決勝戦……天江衣にボロボロにされた時、やっぱり思ったよ」 池田「もっと自分が強ければ、こうはならなかった。もっと自分が強ければ、みんなを勝たせてあげられた……って」 池田「でもそれは、大好きな仲間を捨ててまでやることじゃない。それで得た強さに、意味なんかない」 美穂子「華菜……そうね、私もそう思うわ」 純「ああ、そうだな。あいつのやり方は、絶対に間違っている」 和「でも……須賀君は、そのことに気付かなかった。何としてでも、強くなりたかったんですね」 咲「……………………」 ゆみ「……男子は、今決勝の真っ最中だろう。行ってみなければな、彼を見に」 久「……ええ」 咲(……京ちゃん……) 咲(京ちゃんは……自分のやり方が間違ってるって……) 咲(本当に、気付いていなかったの?) 咲(私は知ってる。京ちゃんが、本当はとても優しい人だってことを) 咲(私は知ってる。京ちゃんが、影でどれだけ部のために働いてきたかを) 咲(そんな京ちゃんが、麻雀部を捨ててまで強くなるってことが間違ってるなんて、気付いてないとは思えない……) 咲(でも、もし気付いてたのなら……) 優希「咲ちゃん、行くじぇ」 咲「あ……うん」 咲(京ちゃんが、もしそのことに気付いてたのなら……) 咲(京ちゃんは、どうして……そこまでして、強くなりたかったの?) 咲(教えてよ……京ちゃん……) 咏「決勝でも相変わらず、トップ独走……か」 えり「こんなに強い選手が眠っていたなんて、驚きですね」 咏「……えりちゃん、私が彼に驚いたのは、その強さじゃないんだよ。いや勿論、強さもだけど」 えり「と、言いますと……?」 咏「麻雀ってのは元々、競技ではなく娯楽の一種さ。勝つことよりも、楽しむことが第一だ」 咏「だけど、こういう大会やプロの試合になると、その目的が勝つことにすり替わってしまう」 えり「ですが、それは仕方ないことなのでは……」 咏「その通りさ。変な言い方だけど、勝利のみ求めてるように見えても……みんなそれを含めて、麻雀を楽しんでるんだ」 咏「県大会を勝ち抜くほど、打ち込んできたんだ。この大会の参加者に、麻雀を好きじゃない奴なんか、一人もいないはずなんだよ」 咏「そう……彼一人を除いてね」 えり「彼が……麻雀を、好きではない?」 咏「元々は好きだったはずなんだろうけど……今はむしろ、憎んですらいるように見えるよ」 咏「麻雀とは本来、青少年に希望と光を与えるもの。彼の華々しい麻雀は、日本全国の視聴者を魅了しているだろう」 咏「でもその傍らで、彼が対局相手にもたらすものは、恐怖と闇。そこには、相手へのリスペクトなんかひとかけらも存在しない」 咏「ただ貪欲に、勝利のみ求める……そんな高校生、かつて一人でも存在しただろうかねぃ」 えり「ヘルカイザー京……と、言われるわけですね」 咏「なぜ彼が、そんな道を歩んだかは知る由もないけど、彼は間違った道を歩んでいるはずなんだ」 えり「……負ければ彼も、気付いてくれるんでしょうか?」 咏「かもしれないねぃ。だけど……」 『決勝戦もついにオーラス! 優勝候補筆頭の竜選手を抑え、トップは初出場の須賀選手!』 咏「彼に勝てる者は、この大会には……ただの一人も、いなかったみたいだ」 衣「む……お前たち、大勢でどこに行ってたのだ?」 透華「こっちのセリフですわ! 迷子のアナウンスを出そうかとすら思いましたわよ!」 衣「こ、衣は子供じゃないっ!」 優希「それより、決勝はどうなってるじぇ?」 衣「オーラスで、京太郎がダントツのトップだ。幸いに……とは、とても言えぬがな」 まこ「京太郎……ついに、ここまで……」 和「信じられません、あの須賀君が……」 咲「京ちゃん……」 京太郎(あと一局……それで優勝) 京太郎(清澄の雑用係でしかなかった時から二ヶ月……我ながら、よくここまで来たもんだ) 京太郎(誰にも勝てなかった俺が、最強の高校生だ……) 京太郎(これで、清澄麻雀部ともお別れだ。俺は、一人で戦い続ける) 竜「一年坊……その力、真っ当なもんじゃないな……」 京太郎「…………」 竜「あンた、背中が煤けてるぜ……」 京太郎(背中が煤けている……か、そうなのかもな。でも……) 京太郎(俺は、望んでこの道を選んだんだ) 京太郎「……カン」 ズォッ! 咲「…………」ゾクッ 咏「……!」 小蒔「……ん……」 巴「あら、お目覚めですか?」 小蒔「……今、何か強大な力を感じました。禍々しいほどの、何かを」 初美「わずかですが、私も感じ取れましたよー。方角的には……男子の会場の方ですか?」 霞「小蒔ちゃんのように、神を降ろせる殿方がいらっしゃるのかもしれませんね」 小蒔「……いえ、神の力とは異質のものだと思います。ですが、もし神の力であったならば……」 小蒔「それはきっと、悪鬼と呼ぶべきものなのでしょう」 洋榎「うわっ、靴紐が切れてもーた……」 恭子「なんや、不吉やなぁ」 絹恵「不幸な事故でも起こるんとちゃう、お姉ちゃん」 洋榎「……ん……」 洋榎(不幸な事故……か) 洋榎(これから起こるのか……もしかしたら今、どこかで起こっているんかもな……) シロ「……なんだろう、今の……」 胡桃「どうかしたの、シロ?」 シロ「男子会場の方から……物凄く、異常な感じがした……神代とか、ここで会った一部の打ち手のような」 塞「そんな遠くから? とんでもない化け物がいるのね、男子の部は」 エイスリン「…………」バッ ← 仏教地獄絵図みたいな絵 胡桃「豊音、サインでも貰いに行く?」 豊音「そうだねー、ついでにみんなでお手合わせをお願いしてみようか? せっかく東京まで来たんだし」 胡桃「でもどれだけ強くても相手が一人なら、塞がいればさすがに勝負にならないんじゃない?」 塞「私、すっごい疲れそうだけどね……」 シロ「……やめておいた方がいいと思う」 胡桃「何で?」 シロ「うーん……何となくだけど……」 シロ「今の人とは、打っちゃいけない気がする」 淡「ねぇねぇ、照。今の気付いた?」 照「……うん……」 淡「凄かったねぇ。なんて言うか……おどろおどろしいって感じ?」 照「…………」 淡「この大会で見た人たちとは、何か違うよね。一体誰なんだろ」 照「…………」 淡「照?」 照(今の感じ……) 照(…………) 照(どこか……懐かしいような……) 京太郎(見てるか……咲) 京太郎(これが、俺の力だ!) 衣「…………」 衣「須賀……京太郎……」 衣「地下より生まれし……怪物……」 京太郎「ツモ、嶺上開花。400・700」 京太郎(優勝……か) 京太郎(昔の俺みたいに、ほとんどの人は雲の上の話と思うも、欠片ほどの期待を胸に抱き) 京太郎(一部の人間は、本気でその座を目指し切磋琢磨している……) 京太郎(全国の頂点。高校生プレイヤーの、誰しもが憧れる場) 京太郎(これが、あの5人の……咲たちの、立った頂) 京太郎(でも……なぜだろうな) 京太郎(そこまで、感慨深くもないのは) スタッフ「須賀選手、そろそろ対局場を移動をお願いします」 京太郎「……わかりました」 京太郎(……きっと、現実のその地位が手に入ってしまったからなんだろう) 京太郎(ハッキリしていることは、この力を得なければ……ずっと、昔の弱い俺のままだった) 京太郎(みんなが全国の舞台で戦っている時も、指をくわえて眺めていることしかできないままだった) 京太郎(咲みたいに、俺も活躍したい。全国の場で、勝ち進みたい) 京太郎(あんなに強く思っていたことだ。嬉しくないわけがないはずだ) 京太郎(……いや、何も考える必要なんてない。今の俺にできることは、ただ上を目指す……それだけなのだから) 京太郎「もう入室して、いいんですか?」 スタッフ「はい。小鍛治プロと三尋木プロが到着し次第、開始致します」 京太郎「……女子の、チャンプは?」 スタッフ「もう入室済みです」 京太郎「……わかりました。では」 ギィッ 照「……さっき、感じた力。なんとなく覚えがあった」 京太郎「……お久しぶりです。照さん。俺のこと、覚えていてくれたんですか」 照「昔から……咲が、ずいぶん懐いていたから」 京太郎「…………」 照「驚いた。京ちゃんが、そんなに強くなってたなんて」 京太郎「俺がこの場に立っていられるのは、奇跡の産物ですよ。本来、そんな力は俺には無かった」 照「だとしたら……その力のために、一体何を犠牲にしてきたの?」 京太郎「……どういうことです?」 照「個人戦決勝……対局が終わった後、少しの時間だけだけど……咲と、何年かぶりに会話をした」 照「咲は、私と会うためにこの大会に参加したみたいだけど……その咲の第一声、わかる?」 京太郎「……いえ」 照「ずっと心待ちにしていた姉との会話で、最初に切り出したのは……自分のことでも、私のことでもなかった」 照「震えながら、か細い声で……『京ちゃんを、止めてあげて』って、言ったんだ」 照「これから、この場で京ちゃんと対局する、私に向かって」 京太郎「……咲が……」 照「色々と積もる想いがあったはず。負けた悔しさも、再会の感動も」 照「話したいことは山ほどあっただろうに、与えられたわずかな時間の中で、咲の言った言葉は……それだった」 照「自分の想いを押し殺し、京ちゃんの心配をしていた」 京太郎「…………」 照「京ちゃんがどういう経緯でここに立っているのかは分からないし、今更姉ぶる気もない」 照「でも、もし今の京ちゃんが、誰かを不当に悲しませた末の結果なのだとしたら」 照「私は……この勝負、負けるわけにはいかない。京ちゃんの、ためにも」 京太郎「……無理ですよ。俺も、もう止まれないんです」 照「だったら、止めてみせる。私が」 京太郎「…………」 京太郎(照さん……咲だけでなく、俺のことも心配してくれているのは有難く思います) 京太郎(でも……すいません。今回は……) ギイッ 健夜「お待たせしました」 咏「…………」 京太郎(あなたの相手をしている余裕は、なさそうなんですよね) 健夜(この子が、須賀京太郎……) 健夜(カメラを通してでも、思ったけど……やっぱり直に見ると、桁が違う) 健夜(こんな高校生、今まで見たことない。私や咏ちゃんでも、油断すると、やられかねないほどの力が既にある) 健夜(でも、その力は……本来、この場に似つかわしくない、黒きもの) 健夜(……どうして、こんな子が生まれてしまったのかなぁ……) 咏「須賀君……だね」 京太郎「はい。今日は、よろしくお願いします」 咏「あっはっは、非公式のおまけ試合だ、気楽にやりなよ……って言いたいところだけどさ」 咏「悪いけど、こんなに負けられないって感じているのは、初めてさ」 咏「この大会の、目的って知ってるかい?」 京太郎「誰が、どの学校が高校最強か決めること……ですか?」 咏「それも勿論あるねぃ。だけど、一番の目的はそういうことじゃない」 咏「この大会の参加者は、誰もが上を目指して努力してきた」 咏「努力を積み、仲間とも協力し……研磨を重ね、強い意志を持って戦ってきた」 咏「結果、敗れてしまった者も、それまで培った努力や、仲間と作った思い出は、一生モノの宝物になるだろう」 咏「そういう、青少年の健全な育成ってのが、一番大切なことなのさ。そっちの女の子は、そのことを体感しているはず」 照「…………」 咏「須賀君。君だって元々は、そういう類の人間だったはずだ」 咏「勝てば喜び、負ければ悲しみ……仲間と共に、目標へ向かって走り続けていたはずだ」 京太郎「目標……」 『タコス力、充填だじぇ!』 京太郎(そう、俺には目指すものがあった) 『ほいじゃあ、行ってくるかのー』 京太郎(でも、それはあまりに遠くて) 『悪い待ちにしても……いつも、勝っちゃうのよね』 京太郎(その時の俺では、まるで手が届かなくて) 『見えるとか見えないとか、そんなオカルトありえません』 京太郎(だからこそ、俺は……) 『ツモ。清一、対々、三暗刻、三槓子、赤1――――――嶺上開花』 『32000です』 京太郎(強くなりたいって、思ったんだ……) 京太郎「…………」 咏「おせっかいだと思うだろうが、その時の心を……この麻雀で、思い出してほしいね」 咏「せっかく、グランドマスターまでいるんだ。須賀君ほどの奴でも、相手としては申し分ないだろうから」 京太郎(首位打点王で、日本代表の先鋒、三尋木咏) 京太郎(そして……グランドマスター、小鍛治健夜) 京太郎(二人とも紛れもない、トッププロ……その強さは、間近で見ると対局せずとも何となくわかる) 京太郎(どのくらいの差があるのかは、分からないが……きっと、今の俺よりも少し上だろう) 京太郎(ならば、この勝負……やることは、一つだけだ) 京太郎(俺は……さらに、上を目指すって決めたんだから) 『それでは、対局を開始してください』 「「「「よろしくお願いします」」」」 【東1局 親:咏】 咏(東一局……確か宮永照は、最初の局は和了らず様子を見る傾向にある) 咏(須賀京太郎は、東一局だろうと何だろうと、関係なしにガンガン仕掛けてくる) 咏(何にせよ、争う相手が一人少ないのは助かるねぃ。この親番はぜひとも和了っておきたいところだ) 咏(配牌も……ツモも悪くない。いいスタートが切れそうだ) 健夜(……ちょっと微妙、かな) 健夜(咏ちゃんの親番は怖いから、さっと流したいところなんだけど……) 健夜(まぁ、この面子で怖くない人なんていないか) 咏(よしっ、張った!) 咏「リーチ!」 健夜(親リー……振るわけにはいかない) 健夜(脇の二人も、迷わずベタオリ……和了られちゃうかな) 3巡後 咏「ツモ。リーヅモ平和ドラ1、裏1。4000オール」 京太郎「はい」 健夜(リードされちゃったか。まぁ、仕方ないね) 照(……) 咏(さて、幸先良いスタートを切れたはいいけど、問題はここからだ) 咏(宮永照は次から動き出す。他の二人も当然、このまま黙ってやられるタマじゃない) 咏(いよいよ、試合開始ってところかな) 【東1局1本場 親:咏】 咏(今回も、いい手が入った。メンタンピンドラ1、裏次第で跳満まである) 咏(発を鳴いた下家の宮永照に振る可能性もあるが、一気に突き放すチャンスだ。勝負するしかないな) 咏「リーチ!」 照「ロン。発のみ、1000点」 咏(あっちゃあ……ま、しょうがないか。それより……) 健夜(始まる、かな……宮永さんの、連荘) 照(……さっきの局) 照(私の鏡で、京ちゃんの力を覗いてみた。でも……何も、見えなかった。京ちゃんの、姿すらも) 照(見えたものは、ただの闇……こんなことは、今まで一度たりともなかった) 照(私の理解の及ばぬ力……京ちゃんの力であり、京ちゃんの力ではない何かがそこにあった) 照(でも……あれは何だったのかな) 照(闇の中に一瞬だけ煌めき、すぐに消えて行った……花びらのような、欠片は) 【東2局 親:照】 照「ロン、平和ドラ1。2000」 健夜(……やっぱり、点数が上がってる) 健夜(宮永照……和了るたびに点数が増えていく特徴がある。団体戦でも個人戦でも、その力は猛威をふるった) 咏(エンジンかかってきたねぃ、女子チャンプ) 【東2局1本場 親:照】 咏(……このへん、か?) 健夜「ポン」 咏(よしよし、鳴いてくれた) 健夜(この子に連荘させると、一気に持っていかれる。無理矢理にでも止めにいく) 咏(私も早和了りに徹したいんだけど……上家のこの少年、なかなか鳴かせてくれないんだよねぃ) 京太郎「……」 咏(かと言って攻めにも守りにも徹してるって感じでもないし、何考えてんだか) 咏(ま、しょうがない。すこやんと二人で、何とか止めに……) 照「……ツモ。2100オール」 咏(って思ったそばから、これだよ) 健夜(次はきっと、満貫級が来る。いいかげん何とかしないとね) 照(……京ちゃん) 照(ここまで全く動きがないどころか、戦う意思すら感じられない) 照(でも……このまま終わるつもりはないよね。どうやって止める? 私の親を) 【東2局2本場 親:照】 照「リーチ」 咏(くっ、また……) 健夜(ドラ3のいい手だけど、先制された……でも……) 京太郎「……」タンッ 咏(……まずいな。このままだと宮永照にまた和了られてしまう。なら……) 咏「チー」 咏(彼の切ったこの牌、一見鳴きにくいところだけど、ここで鳴いて……この牌を) 健夜「ポン」 健夜(よし、張った!) 照(……これは……) 健夜「ロン。タンヤオドラ3、7700」 照「……はい」 咏(何とか止まってくれたか) 健夜(さて……ここからだね。出遅れたぶん、巻き返させてもらうよ) 【東3局 親:健夜】 健夜「ロン、11600」 咏「ありゃあ、黙ピンピンロクかぁ。いたた」 咏「でも……」 【東3局1本場 親:健夜】 咏「ツモ。リーチ一発メンピンツモドラ1。3000・6000の1本場は、3100・6100」 咏(たとえ2万点取られても、3万点取れば勝てる。それが麻雀なのさ) 健夜(咏ちゃんも、調子づいてきた。そして……次は、いよいよ須賀君の親番) 健夜(ここまで、彼は全く動きがない……ずっと様子見しているって感じで来てる) 咏(この親番まで、様子見しているとは思えない。そろそろ動いてくるはずだ) 咏(さぁ。須賀京太郎……ヘルカイザーとまで謳われるその力、とくと見せてもらおうか) 京太郎(……さっきの連携も火力も、見事なもんだ) 京太郎(そして、直に感じてもわかる……予想通りこの二人には、まだ俺は届かない) 京太郎(それなら……やるべきことは一つだ) 【東4局 親:京太郎】 照(京ちゃん、今度こそ動いてくると思ったけど……) 照(今までと同じように、やっぱり戦いに来る気配がない……何を考えてるの、京ちゃん) 照(いいよ、それなら……戦いの場に引きずり込むまで) 照「リーチ」 健夜(宮永さんの、リーチ……) 咏(ラスの京太郎としては、そう簡単にはオリたくないはずだが……) 京太郎「……」タンッ 咏(……あっさりオリるもんだな。手牌、悪かったのか?) 京太郎「ノーテン」 咏「テンパイ」 照「テンパイ」 健夜「ノーテン」 健夜(南入、か……) 咏(しかし、どうなってるんだ? さすがに何か変だぞ) 咏(本当に何もしていない、っつーか戦う気すらなさそうだ……) 咏(これ本当に、私を戦慄させた……最強の高校生、須賀京太郎なのか?) 健夜(須賀君……きみは一体、何を企んでるの……?) 【南1局 親:咏】 咏(さて……下家の宮永照が、ダブ南をポン) 咏(ここで和了られると、またしんどいことになっちまうな) 健夜(しかし、須賀君はやっぱり何も……) 京太郎「……」タンッ 照(……二筒?) 咏(何かビミョーな牌だな。鳴くべきか、鳴かざるべきか……) 健夜(宮永さんに対しても安全と言い切れるほどではない……でも、手が進んでる様子もない……) 照(……京ちゃん、一体……) 咏(……!) 健夜(す、須賀君……!) 咏(京ちゃん、まさか……!) 咏(そ、そうか……わかった、須賀京太郎の狙いが……) 咏(こいつ……何てこと、考えやがるんだ……!) 健夜(須賀君、戦う気が感じられなかったんじゃない……最初から、まともに戦う気なんてなかったんだ) 照(京ちゃん……) 照(いくら非公式とはいえ、トッププロ二人と打ってるのに……こんな……) 照(何で……何で、そこまでするの……京ちゃん……) 健夜「ツモ、300・500……」 咏「……終局だねぃ」 照「……ありがとうございました」 京太郎「ありがとうございました」 健夜(こんな……) 健夜(こんな、勝った気のしない……後味の悪い麻雀は、初めてだよ……) 咏「……なぁ、須賀君」 京太郎「何ですか?」 咏「背中は、見えたかい?」 京太郎「……はい」 咏「……そうかい。おっそろしいねぇ」 恒子「すこやん、お疲れー!」 えり「お疲れ様です、三尋木プロ、小鍛治プロ」 恒子「いやぁ、さっすがグランドマスター。この面子相手でも、しっかりトップとはねー」 健夜「…………」 えり「お二人とも、さすがにお疲れのようですね」 咏「あぁ……とんでもないバケモンを、間近に見ちまったからねぃ」 恒子「え、そこまで? やっぱあの宮永照って凄いんだねー、咏ちゃんを抑えて2位だったんだから」 咏「いや……私が言ったのは、須賀京太郎の方さ」 咏「あいつの狙いに気付いてからは……もう私は、戦う意欲を完全に削がれてたよ」 えり「須賀京太郎? 男子チャンプの?」 恒子「彼、和了らず振らずの空気ラスだったじゃん。狙いって何?」 健夜「……ねぇ、こーこちゃん。もしこーこちゃんが、あの場に出て打てたら、どんな気持ちで打つ?」 恒子「え? そーだねぇ……やっぱりトッププロ二人が相手なんだし、胸を借りるつもりで全力で……」 健夜「そう、それが普通だよね」 咏「あぁ。現に宮永照もそうしてた……まぁ彼女の場合、全力だったのは別の理由もありそうだったけどね」 健夜「でも……須賀君は、最初から勝ちに行くつもりなんて全くなかった」 えり「え?」 咏「ずっと彼は、戦いの輪の外から、あることをしていた」 咏「それにハッキリ気付いたのは……あの南1局の、二筒切りさ」 恒子「? それがどうしたの?」 咏「あの二筒切りは……和了りに行くための一打ではない。でも、オリるため一打でもない」 咏「あれは……私たち、トッププロとの力量差……距離を、測るための一打だった」 咏「この半荘、彼は最初から勝負を捨て……ずっと、私たちの力を測っていたんだ」 恒子「なっ……!」 えり「そ、そんな……」 健夜「まともに打ってたら、きっと私たちには勝てないと思ったんだろうね」 健夜「だから、彼はあっさりとこの勝負をオリた。高校生の発想とは思えないよ」 咏「麻雀を楽しもうとか、そんな気持ちは微塵もない。完全に、勝利以外目に入ってないねぃ。アレは」 えり「どうして彼は、そこまで……」 咏「わっかんねー……全然わっかんねーよ……」 健夜「……これは私の予想だけど……きっと彼は、今までずっと負けてきた」 恒子「負けてきた? あんなに強いのに?」 健夜「負けてきたからこそ……誰よりも勝利に飢えている。渇いている」 健夜「それがどうして、あんな化け物になってしまったかは、知る由もないけどね……」 咏「…………」 健夜「圧倒的な力を持ちながらも、今回はまだ粗削りなところも多少あったから、まだ私たちには届かなかった」 健夜「でも……もう数年経って、より洗練されれば……もはや、手のつけられない存在になる」 健夜「その時こそ、真に叫ばれるだろうね」 健夜「ヘルカイザー京……と」 咏(今までずっと負けてきた……か) 咏(清澄高校……女子団体戦の、全国優勝校……) 咏(君だって、昔は楽しく麻雀を打っていたはず。君を変えてしまったのは、彼女たちなのかい?) 咏(もし、そうだとしたら……) 咏(きっと……彼を、戻せるのも……) 照「……京ちゃん」 京太郎「照さん、お疲れ様です」 照「何で、あんな打ち方をしたの?」 京太郎「……何のことですか?」 照「とぼけないで。勝ちに行く気、なかったでしょ」 京太郎「……今の俺じゃ、多分あの二人には勝てない。だから、今回は『見』に回った。それだけですよ」 照「……私は、相手にもしていなかったってことだね」 京太郎「…………」 照「私は、咲ほど京ちゃんと遊んだことはないけど……それでも、わかる」 照「最初から目の前の勝負を捨てて臨むような、相手へのリスペクトを欠くような人じゃなかった」 京太郎「何年も経てば、考えも変わります」 照「それで……ひたすらに勝利のみを求めるようになったってわけ……」 京太郎「……昔の俺じゃ、誰にも勝てませんから」 照「だったら、真っ当な方法で強くなればいい」 照「白糸台にはたくさん部員がいるけど、みんな一軍目指して、毎日努力を積み重ねている」 照「京ちゃんだって、それができるはず」 京太郎「……できないんです」 照「できない……?」 京太郎「確かに、普通に麻雀を打っているだけでも、強くなれるでしょう」 京太郎「実際、以前はそうしてました。麻雀を楽しみながら、強くなれればって思っていた」 京太郎「できればいつか、清澄のみんなよりも強くなれれば……そんな風に、思っていた」 照「だったら……」 京太郎「でも……気付いてしまったんです。あの、団体戦県予選の日に」 照「気付いて、しまった……?」 京太郎「えぇ」 ――――――――ツモ。清一、対々、三暗刻、三槓子、赤1―――――――― 京太郎「鬼にならねば……」 ――――――――――――32000です―――――――――――― 京太郎「見えぬ地平が、ある……」 久「長野も、半月ぶりね」 まこ「東京に比べれば寂しいところじゃが、やっぱり落ち着くのう」 和「いったん、部室に行くんですか?」 久「ええ。みんなでトロフィーを、飾りにだけ行きましょう」 久「……須賀君。悪いけど、それ持って付き合ってくれるかしら?」 京太郎「ええ、勿論です」 咲(京ちゃんは、今3つのトロフィーを抱えている) 咲(団体戦のものと、私のと……京ちゃんの、優勝トロフィー) 咲(重いだろうから自分で持つってみんなが言っても、雑用は自分の仕事だって言って……) 咲(まるで、これが最後だからって言ってるようだった) 咲「このへんに置けば、いいですか?」 久「ええ、いい感じよ」 まこ「……わしら、優勝したんじゃな」 優希「正直、まだ実感わかないじぇ」 久「……ありがとうね、みんな。いい仲間を持って幸せよ、私」 まこ「素晴らしい後輩たちに恵まれたのぅ」 和「そ、そんな……私なんて、大したこと……」 久「いえ、あなたたちがいなければ、ここまでは決して辿り着けなかったわ」 久「和も、優希も、咲も……それと須賀君も、ね」 京太郎「……ありがとうございます」 咲(……部長も……いや、部長だけじゃない) 咲(和ちゃんも、優希ちゃんも、染谷先輩も……みんな、わかってる) 咲(これが、京ちゃんの……清澄麻雀部としての、最後の仕事になるってことに) 京太郎「俺と咲のトロフィーはどうします?」 久「……それは、あなた達のものよ。好きにしていいわ」 京太郎「……じゃあ、持って帰らせていただきます」 京太郎「それじゃ、みんな」 咲「……京ちゃん……」 和「…………」 優希「…………」 まこ「…………」 久「…………」 京太郎「さような……」 咲「……嫌だよ」 咲「行かないでよ……京ちゃん」 咲「一緒に学校行って、同じ教室で授業受けて……」 咲「お昼も一緒に食べて、部活で麻雀打って……」 咲「最後はまた明日ねって……ずっと、ずっと、そうしてきたじゃん……」 京太郎「……咲……」 咲「もう、そんな風に京ちゃんと過ごせなくなるなんて……私、嫌だ」 咲「もっと、もっと」 咲「京ちゃんと……一緒に、いたいよ……」 和「さ、咲さん……」 優希「咲ちゃん……」 まこ「咲……」 久「…………」 京太郎「咲……」 咲「だから、お願い……行かないで、京ちゃん……」 京太郎「…………」 京太郎(咲……ありがとうな) 京太郎(最後の最後まで、ずっと俺のことを思ってくれて……) 京太郎(でも……) 京太郎「ごめんな。もう、決めたことだ」 咲「……っ!」 京太郎「だから……」 久「……須賀君。一つだけ、お願いしてもいいかしら?」 京太郎「何ですか、部長」 久「最後に私たちと、一局だけ打ってほしいの」 京太郎「…………」 久「須賀君。あなたは確かに、この清澄高校麻雀部の部員だったわ」 久「短い間だけど、部活でも、合宿でも、大会でも……苦楽を共にした、私たちの仲間だった」 久「強くありたいというあなたを、止めることはできない。だけど……最後に一局だけ、麻雀を打ってほしいの」 久「もちろん、須賀君さえよければだけど……ダメかしら?」 京太郎「…………」 京太郎「わかりました。一局だけなら」 久「ありがとう。でも、今日はみんな移動で疲れてるでしょうから、また後日でいいかしら?」 京太郎「俺は構いません」 久「じゃあ後日、また連絡するわね」 久「……約束よ。私たちと、一局だけ麻雀を打つって」 京太郎「はい、わかりました。じゃあ……失礼します」 バタン 咲「部長……」 まこ「何か、考えでもあるんか?」 久「彼はもう、言葉では止まらないわ。私たちが何を言っても、彼の心には届かない」 和「それは、そうかもしれませんが……」 久「だったら、元の須賀君に戻せる手段は……もう、麻雀しかないわ」 久「麻雀を通して、麻雀を楽しんでいた頃の気持ちを取り戻してもらう……それしか、手はない」 優希「麻雀で、京太郎を……」 和「でも……そううまく行くんでしょうか? たった一局で……」 久「何言ってるの。一局じゃないわ、五局よ」 まこ「……へ?」 優希「部長、でもさっき一局だけって……」 久「彼と約束したの、聞いてたでしょ? 私たちと、一局だけ麻雀を打つって」 久「つまり、一人ずつ打てば計五局になるでしょ?」 和「あ、あの……それって、屁理屈では……」 まこ「京太郎が、そんなもん認めるとは……」 久「大丈夫よ、約束したんだもの。彼は約束を破るような人じゃないってこと、みんな知ってるでしょ?」 まこ「まぁ、それはそうじゃが……」 和「でも、私たちの誰か、須賀君……残りの対局者二人は、どうするんですか?」 久「他校から誰かを引っ張ってくるしかないわね。今は龍門渕はもちろん、風越や鶴賀も事情を知ってる。協力してくれるはずよ」 久「……咲」 咲「…………」 久「これが、最後のチャンスになるわ」 久「彼と、離れたくないんでしょ?」 咲「……はい」 久「きっと、この機会を逃したら、もう昔の須賀君には戻らない」 久「だから……この五局で、取り戻すわよ。麻雀は弱くても、部のために献身的に働いてくれた、優しかった頃の須賀君を」 咲「……わかりました。私、やります!」 和「私も、力になります。絶対に、やりましょう」 まこ「……うむ……」 優希「京太郎のタコス、また食べたいからな! 私もやるじぇ!」 久「……みんな、ありがとう」 和「ところで、順番はどうするんですか?」 まこ「大会と同じなら優希じゃが、同じにする必要は別にないからの……何か、案はあるんか?」 久「……特にないわ。私自身、どういうオーダーが最善なのかはわからない」 久「でも、先鋒は決まってる。こればかりは、他の人では駄目だって思ってる」 和「先鋒……ですか……」 咲「誰、なんですか?」 久「ええ。先鋒は――――――――――――」 久「……ということで、まず第一局目は三日後、清澄の部室で。詳しいことはまた連絡するわね」 京太郎『部長、一局だけってそういう……』 久「え? 何もおかしくないでしょ?」 京太郎『はぁ……部長は相変わらずですね。思えば、俺もいつも振り回されてましたし』 久「また振り回されたくなったら、いつでも言ってね」 京太郎『遠慮致します。ところで、相手は誰なんですか?』 久「それは三日後のお楽しみ」 京太郎『……わかりました。言っておきますが、手加減はしませんよ?』 久「勿論よ。それじゃ、またね」 ピッ 久「…………」 久「ありがと、須賀君。受けてくれて」 久「でも、受けてくれると思ってたわ。だって……」 久「あなたには、最後に戦いたいであろう人がいるのだから」 京太郎「まったく、あの人は……いくら何でも強引すぎだろ」 京太郎「と言っても、部長の強引は今に始まったことじゃないけど……」 京太郎「……まぁ、いいか」 京太郎「最後に、今の俺の力を見せておくのも悪くない」 京太郎「優希にも、染谷先輩にも、部長にも、和にも」 京太郎「そして……咲にも」 京太郎(それにしても……) 京太郎(あの五人、他校の面子集められるほど交友関係広いのかな?) 京太郎(特に染谷先輩とか、誰を呼ぶのか全く見当もつかねーぞ……) 三日後 京太郎「まだ、誰も来てないか……」 京太郎「あと五局だけど……四ヶ月、この雀卓ではずいぶん打ったな」 京太郎「お前には、世話になった。もっと一緒に遊んでたいが、俺は去らなきゃいけないんだ。悪いな」 京太郎「俺がいなくなった後も、みんなに大事にしてもらえよ……って、何言ってんだ俺は」 京太郎「しかし、インターハイ出発前からここ放置しっ放しだから、よくよく見ると汚れてるな」 京太郎「……こんなことが気になるあたり、すっかり雑用精神が身に付いちまってんな……」 京太郎「ま、立つ鳥跡を濁さずだ。掃除くらいはやっておくか」 京太郎「……こんなところでいいだろ」 京太郎「あとは、相手が来るのを待つばかりだが……」 京太郎「先鋒は、きっと……」 ガチャッ ゆみ「失礼します」 美穂子「こんにちは。今日はお招きいただき、ありがとうございました」 京太郎「……驚きましたよ」 京太郎「なんだかんだで、先鋒は斬り込み隊長らしく優希の奴かと思ってたんですが」 久「あははっ、本人はやりたがっていたんだけどね」 久「どうしても……譲れなかったのよ。この位置は」 京太郎「…………」 久「最初の相手は……私よ。須賀君」 ゆみ「須賀君、だったな。君の活躍はよく知っている」 美穂子「今日は、よろしくお願いします」 京太郎「……いえ、こちらこそ」 久「じゃあ、早速始めましょうか」 京太郎(部長……それと、風越の福路さん。鶴賀の加治木さん) 京太郎(みんな長野屈指の強豪だが……誰を誘おうが、今の俺の相手じゃない) 京太郎(そのことは、部長も理解しているはず。何か、目的でもあるのか……?) 【東1局 親:美穂子】 京太郎「ツモ。1300・2600」 美穂子(……予想はしていたけど、こうして対峙してみるとよくわかるわね) 美穂子(やっぱり、私たちよりも一段上の力がある) ゆみ(私も全国の猛者相手でも、そこそこ程度には渡り合える自信はあったが……さすがに、格が違う) ゆみ(その分、代償を考えると痛ましいものを感じるな。久にも、彼にも) 【東2局 親:久】 久(親番でいい手が入った……南切りで、258-47萬の五門張) 久(でも、私なら……やっぱり、こうよね) 久「リーチ!」 久(さぁて、どう出るかしら? 須賀君) 京太郎(7m切りリーチ……か) 京太郎(福路さんは現物、そして俺のツモは……南) 京太郎(リーチ者は部長、ということは……) 京太郎(…………) タンッ 久「ロン。リーチ一発ドラ1、裏1。12000」 京太郎「五門張を捨てての地獄単騎……ですか。和が見たらまた騒ぎそうですね」 久「須賀君も知っての通り、これが私のスタイルだから」 京太郎「……相変わらずですね、部長は」 久(ただ……) 久(須賀君相手に、どこまで通用するかしら) 【東2局1本場 親:久】 久(また張った……今度も、悪待ちで) 久「リーチ……」 京太郎「ロンです。平和ドラドラ、3900は4200」 久(……! 狙われた!?) 京太郎「部長、あなたの悪待ちは。もしかしたら、全国でも有数の能力かもしれない」 京太郎「ですが、それはあくまで和了率を高めるだけのもの」 久「…………」 京太郎「それ以上の力の相手には、通用しません」 久(予想はしてたけど……) 久(こんなに早く、破られるとはね……) 【東3局 親:ゆみ】 ゆみ(私の親番か……七対ドラドラの9600) ゆみ(リーチすれば倍満まで見えるが、ここは黙で確実に和了りたい) ゆみ(一枚切れの南単騎、掴めば出るような牌だが……) ゆみ「テンパイ」 京太郎「テンパイ」 美穂子「ノーテン」 久「ノーテン」 ゆみ(私と同じ南単騎の仮テン……ピッタリ止められている) ゆみ(好防共に全く隙がない。さすがは最強の高校生といったところか) ゆみ(だが、今のところは天江衣ほどの迫力は感じない) ゆみ(本気を出すまでもない……ということか……) 久(東4局も終わり、現在の点はほぼ並んでいる……) 久(須賀君は、まだ本気を出している風はない……) 久(…………) 久「須賀君。今更だけど、この二人のことは知ってるわよね」 京太郎「風越の福路さんと、鶴賀の加治木さん……長野でも有数の選手ですから」 久「……彼女たちは、あなたから見ても高い実力があるということね?」 京太郎「勿論です」 久「でも……知ってるかしら。美穂子はともかく、ゆみが麻雀を始めたのは高一。須賀君と、ほとんど同じ時期だって」 京太郎「……高一?」 ゆみ「ああ。昔から麻雀をしている二人とは違い、私が始めたのは高校生になってからだ」 ゆみ「決して、天江衣のように才に恵まれていたわけではない。だが二年かけて、ようやく県のトップが見える位置まで来れた」 美穂子「……私も、そう。観察眼は人より優れているかもしれないけど、それだけの話だったわ」 美穂子「それでも……今くらいの力なら、つけることができるのよ」 京太郎「…………」 ゆみ「須賀君のことは、聞かせてもらった。元々は、みんなと共に全国に行きたかった……そうだな」 京太郎「……はい」 ゆみ「だが君は、今や全国最強の高校生だ。これ以上、望むものはないはずだ」 ゆみ「久たちが、どんな思いで君のことを見ているか、知らないわけではないのだろう」 京太郎「……この力を捨てて、努力だけで強くなってほしいと。福路さんや部長も、同じ意見ですか?」 美穂子「……ええ」 久「……そうよ」 京太郎「……加治木さん。一つ聞いてもいいですか?」 ゆみ「何だ?」 京太郎「あなたは、天江衣に勝てますか?」 ゆみ「……!」 京太郎「福路さん、あなたは宮永照に勝てますか?」 美穂子「……それは……」 京太郎「部長、あなたは……小鍛治健夜に、勝てますか?」 久「須賀君、何を言って……」 京太郎「世の中には、牌に愛された者たちがいます。生まれ持って、天賦の才を身につけた者たちが」 京太郎「そうした人たちの世界には、努力だけでは決して到達できない」 京太郎「鬼にならねば、見えぬ地平がある」 久「……須賀君の、目標は」 京太郎「確かに、最初は全国出場でした。でも、それを決めてもいまだに満足できない自分がいた」 京太郎「もはや俺の目指す場所は、全国ではなくなっていた」 ゆみ「ならば、何処だと?」 京太郎「……わかりません。何か目指す場所はあったはずなのに、それが何かわからない」 京太郎「ならば、ひたすらに上に行く。そうすれば……いずれ辿り着くはずですから」 京太郎「部長……あなたは、まだ俺にこの力を捨てて戻ってきて欲しいと思ってますか?」 久「……勿論よ」 京太郎「そう思うのは、部長が強いからです。部長は、弱者の立場を知らない」 久「弱者の、立場……」 ゴッ! 久「なっ……!」 美穂子「!?」 ゆみ(これは……天江衣、いや、そんなレベルじゃない……!) 京太郎「教えてあげますよ、部長」 京太郎「力がないということが、どれほどまでに辛いことか」 【南1局 親:美穂子】 京太郎「ツモ。リーチ一発ツモ裏1、2000・4000」 美穂子「三門張を捨てて……単騎!?」 ゆみ「これは……久の……」 京太郎「多門張だとか悪待ちだとか、そんなことは関係ない」 京太郎「和了れる者は、和了れる……そういう人間というものが、存在するんです」 京太郎「たとえば、嶺上開花で必ず和了れる……みたいに」 久「…………」 【南2局 親:久】 京太郎「ツモ。白中ドラ1、1300・2600」 久「……また、多門張を捨てて……」 京太郎「初めて真似してみたんですけど、案外簡単ですね」 【南3局 親:ゆみ】 京太郎「ロン。8000です」 美穂子(駄目だわ……) ゆみ(次元が、違いすぎる……) 久(……須賀君) 【南4局 親:京太郎】 京太郎「……ツモ。2000オール」 美穂子「……はい」 ゆみ(これが、最強の高校生か……本物の、化け物だ) 久「……対局、ありがとうござい……」 京太郎「挨拶は、まだ早いですよ」 美穂子「……え?」 京太郎「確か……オーラストップ親の和了り止めは権利であって、義務ではないはずです」 美穂子「す、須賀君……何を言って……」 京太郎「続行です。オーラス一本場」 ゆみ「ちょ、ちょっと待ってくれ……点数を引き継ぐ団体戦ならともかく、この場で続ける意味は……」 京太郎「部長、さっき言いましたよね。力がないということが、どれほどまでに辛いことか教えてあげますって」 久「…………」 京太郎「まだまだ、終わらせるには早い」 京太郎「続けます。あなたに、絶望の淵が見えるまで」 京太郎「……ツモ、満貫です」 美穂子(また、須賀君の和了……) ゆみ(これで何連続だ……とても、止められる気がしない) 京太郎「連荘です。次、行きましょう」 久「……まだまだ、終わらせる気はないみたいね。でも、いいのかしら?」 京太郎「何がですか?」 久「連荘すればするほど、私の逆転の目も増えるのに」 京太郎「…………」 京太郎(部長……なぜですか) 京太郎(これほどの点差が開いて……これほどの力の差を見せつけられて……) 京太郎(それでもあなたは、士気が下がった様子はない) 京太郎(逆転の手段なんか、あるわけないのに……もうひと押し、してみるか) ゆみ(久はもう飛び寸前。私も美穂子も、一万点もない) 美穂子(トップが無理なら、せめて2確で終わらせなきゃいけないのに……) 久「…………」タンッ 京太郎「ロン。タンヤオのみです」 美穂子(……! それは、私が一巡前に切った牌!) ゆみ(美穂子から見逃して、久から直撃を取りに……) 久(……そういうことね。これで私の持ち点は0) 久(県大会の天江衣と同じ。心を折りに来た狙い撃ち……) 京太郎「続行です。次、行きましょう」 久「……須賀君。辛いものね、力がないって」 久「負けて悲しい思いは何度もしてきたけど……今日まで、本当にそのことをわかっていなかった」 久「わかって……あげられなかった」 京太郎「……さすがにそろそろ、終わりそうですけどね」 京太郎(そう……ツモでも部長からの直撃でも、部長は飛んで終局) 京太郎(福路さんや加治木さんも、さすがにこの期に及んで俺の当たり牌を切ったりはしないだろう) 京太郎(でも……なぜなんですか? 部長) 京太郎(0点にもなって、こんなにみじめな目に遭って……) 京太郎(なぜ部長は、心が折れないどころか、笑みまで浮かべて打てるんですか?) 京太郎(一体、なぜ……) 久「…………」タンッ 京太郎(なぜ、辛い思いをしているはずなのに、そんなに……) 京太郎(…………! まさか!) 京太郎(部長、あなたは……!) 美穂子(何回目の、連荘かしら) ゆみ(須賀京太郎……本当に、恐ろしい男だ。高校最強というのもうなずける) ゆみ(だが……真に恐ろしいのは、もしかしたら久なのかもしれないな) ゆみ(須賀君の、親番での大連荘で飛び寸前までじわじわ削られていく) 美穂子(最初に聞いた時は、耳を疑ったけど……) ゆみ(まさか、本当に……久の言った通りの展開に、なるなんてな) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 久「でも、先鋒は決まってる。こればかりは、他の人では駄目だって思ってる」 和「先鋒……ですか……」 咲「誰、なんですか?」 久「ええ。先鋒は――――――――――――私よ」 和「部長が……ですか?」 まこ「……他の人では駄目とまで言うくらいなら、何か理由があるんじゃろう?」 優希「まさか部長、必勝策が!?」 久「そんなのあるわけないでしょ。彼に勝てたら、個人戦全国優勝してるわよ」 咲「じゃあ、一体……」 久「……思えば、彼にはずいぶん重荷を背負わせてしまったわ」 久「部員の中で一人だけ弱い上に、ろくに麻雀も打てず雑用ばかりを押し付けてしまった」 咲「……それは、私たちに全国行きの可能性があったからです。京ちゃんもそのあたりは、理解してるはずです」 久「ええ、理屈の上でなら納得してると思う。でも、それはあくまで理屈。感情とは別物よ」 久「彼には、やっぱり私たちへの不満が心の底にはあるはず。力のない者の苦悩を、分かってもらえないってことも含めてね」 久「そんな彼と真っ先に打つ先鋒は、どうなると思う?」 まこ「……その不満が、爆発する可能性がある……ってことか?」 久「ええ。きっと開始早々あっという間に圧倒的な火力で飛ばされるか……」 久「もしくは、最後の最後まで連荘でじわじわ嬲られるか、どちらかよ」 和「部長は、それを自ら背負う気ですか!?」 久「当然よ、あなた達にそんなこと任せられないもの。むしろ、できるだけボコボコにやられる方が有難いわ」 優希「……そのぶん、私たちが楽になるから……」 久「それもあるし……力のなかった彼の苦悩も、少しは理解に近づけるかもしれないしね」 まこ「そ、それだったら、わしら全員が負うべきものじゃろ」 久「まぁ、そのへんは彼と打てば自然と入ってくるものでしょうね」 咲「部長……」 久「やっぱり私も、みんなと同じように……彼のこと、好きなのよ」 久「こんなこと言う資格があるのか分からないけど……」 久「部員の苦しみや悲しみを理解できれば、部長冥利に尽きるってもんじゃない?」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 京太郎(部長、あなたは……) 京太郎(最初から、負けることが目的だったんですね……) 京太郎(それも、できるだけ無残に……) 京太郎「テンパイ」 美穂子「ノーテンです」 久「ノーテン」 ゆみ「……テンパイ」 久「私の飛びで、終了ね。テンパイで連荘目指してたんだけどなぁ、残念」 京太郎(……強がりなんかじゃない) 京太郎(部長は……本当に、テンパイを目指していた……) ゆみ「……お疲れ様でした」 美穂子「対局、ありがとうございました」 京太郎「いえ、こちらこそ……」 久「やっぱり、勝てなかったわね。もしかしたらって、思ってたんだけど」 京太郎「部長……あなたがどうして最初に俺と打ったのか、何となくわかります」 京太郎「最後の最後まで、部長には振り回されっぱなしでしたね……俺は」 久「……私のこと、恨んでる?」 京太郎「……いえ」 京太郎「それでもやっぱり、俺は戻りません」 久「あら、それは残念。でも、きっと須賀君は戻ってくるわよ」 久「だって私には、頼りになる後輩たちがいるんだから」 京太郎「…………」 久「清澄の次鋒は、きっと……」 優希「京太郎……」 優希「待ってるじぇ!」 久「一筋縄じゃ、いかないわよ」 京太郎「……こんにちは」 優希「お、京太郎! 来たかー!」 純「よっ、久しぶり」 華菜「私は初めましてだな。風越二年の池田華菜だ」 京太郎(今日の相手は優希……) 京太郎(他の二人は井上さんと池田さんか。二人とも優希の奴とは仲良さそうだったし、想定はしていたけど) 優希「京太郎! いよいよ決着をつける時が来たな!」 華菜「チャンピオンと打てるなんて光栄だ。キャプテンのリベンジだし、今日はよろしくな」 京太郎「いえ、こちらこそ」 優希「無視するなー!」 優希「……リーチ!」 純「ったく、相変わらず東場だけは調子いいな」 優希「タコスもちゃんと持ってきたし、パワー全開だじぇ!」 京太郎「ロン。1300だ」 優希「ぐぐ、東場なのに」 京太郎「東場だろうが、どうしようもないくらいの実力差がある。もうお前は俺には勝てない」 優希「うー……京太郎のくせに腹立つじぇ」 華菜「まぁまぁ、勝負は最後までわからんよ」 京太郎「……ツモ。1300・2600」 華菜「うーむ、やっぱり隙がないな。さすがヘルカイザーだし」 優希「正直その呼び名ださいじょ、京太郎」 京太郎「俺がつけたわけじゃねえ!」 華菜「じわじわくるな、その名前」 純「……お前ら、楽しそうだな」 京太郎(……いかんいかん。以前のようなノリに戻っちゃ駄目だ) 京太郎(俺はもう、麻雀部は捨てたんだ。ただ目の前の対局をこなし、淡々と勝利する) 京太郎(それだけを考えろ、須賀京太郎) 京太郎「ロン、2600」 華菜「うぐっ……」 純「おい、タコスチビ! タコスパワーとやらでこいつ何とかするし!」 優希「む、無理だじぇ! タコスも全部食べ終わっちゃったし、東場ももう終わりだじぇ!」 華菜「いや、まだまだ! 華菜ちゃんはずーずーしいから、最後まで……」 ゴッ!! 優希「……っ!」 華菜「うひゃっ!」 純「きょ、京太郎……!」 京太郎「……もう、楽しい麻雀は終わりです。ここから先は、あなた達は減っていく自分の点を眺めることしかできない」」 京太郎「昔の俺が、そうだったように。勝利の芽なんか、もう残らない」 京太郎「ツモ。2000・4000」 純(こいつ……鳴いて流れを変えようにも、全く関係ねえ) 純(予想はしていたが、龍門渕に来ていた頃よりも、格段に強くなってやがる) 華菜(やっべぇ……やられっぱなしだし。つい最近まで初心者だったなんて、とても信じられんな) 優希(……今まで麻雀で負けたことなんて、山ほどあるけど……) 優希(こんなにも勝てる気がしないって感じたのは、初めてかもな。やっぱり、辛いものだじぇ) 優希(……京太郎は……) 優希(京太郎は、ずっとこんな思いをしながら、私たちと打ってた……) 優希(今の京太郎を作ったのは、やっぱり……) 京太郎「オーラスですね」 華菜「うひー、いいとこなしだし。でもこのオーラスで逆転してやるし」 京太郎「……池田さんは」 華菜「ん?」 京太郎「池田さんは、どれだけ負けてても……心が折れたりは、しないんですね」 華菜「んー、数か月前の私なら折れてたかもね。でも今は、まだ勝つ気満々さ」 京太郎「……天江さん、ですか」 華菜「そそ。あれは苦い思い出だけど、いい経験になったよ」 華菜「須賀君も、たまには負けるってのも悪くないもんだと思うし」 京太郎「負けなんて、死ぬほど経験してますんで」 華菜「あはは、そうだったな……ん、どうした? 清澄の」 優希「……いや……何でも、ないじぇ」 京太郎「……ツモ。終了です」 華菜「あーあ、和了られたか。やっぱ現実は甘くないな」 純「すっげぇな……衣と打った時よりも、プレッシャーあったぜ」 優希「……京太郎。その、最後に……言いたい、ことがあるじぇ」 京太郎「ん、何だ?」 優希「その……ごめんなさいっ!」 京太郎「……は!?」 優希「私は京太郎が悪いって言ってたけど、本当は薄々わかってたじぇ……」 優希「京太郎も辛い思いをした。そこまで追い込んだのは、さんざん弱いだの何だの言ってきた、私にも責任があるって」 京太郎「…………」 優希「だから、一言、謝りたかったじぇ……ごめん、京太郎」 京太郎「……優希は」 優希「ん……」 京太郎「優希は、俺に戻って欲しいのか?」 優希「…………」 優希「戻って、欲しいじょ……」 優希「また昔みたいに、馬鹿なこと言い合ったり……」 優希「京太郎の作ったタコスを食べたり……」 優希「そんな毎日を、また過ごしてみたいじょ……」 京太郎「……そうか……」 優希「でも、京太郎は私たちを恨んでる。だから……」 京太郎「……俺は麻雀部に戻る気はない。悪いな」 優希「…………」 優希「そっか……これで、お別れか……」 京太郎「……あぁ。それじゃ井上さん、池田さん。失礼します」 華菜「あ、須賀君」 京太郎「何ですか?」 華菜「楽しかったぞ。また、打とうな」 京太郎「……機会があれば」 純「……ふぅ。久しぶりに打ったけど、洒落にならねぇな、あの強さは」 優希「…………」 純「残念だったな、タコスチビ」 優希「……いや。最初から、わかってたじぇ」 純「ん……何がだ?」 優希「私じゃ、以前の京太郎を取り戻すことはできないってことに」 優希「私じゃ、ダメなんだじぇ……だって……」 優希「京太郎の目に、ずっとずっと前から映っているのは……私じゃ、なくて……」 京太郎(……優希。それに部長……) 京太郎(俺は、別に恨んでるわけじゃないんだよ……) まこ「……わかった。次はわしの番じゃな」 久『お願いね。面子の当てはある?』 まこ「まぁな……なぁ、久」 久『何?』 まこ「……京太郎との対局、好きにやらせてもらってもええんじゃな?」 久『もちろんよ。まこのやりたいようにやりなさい、あなたなら悪い結果にはならないと思うし』 まこ「……そうか。じゃあ、わしのやりたいようにやらせてもらうわ」 久『うん。それじゃあね』 ピッ まこ「……京太郎」 まこ「お前さんとも、沢山打ったのぅ。まさかこんな状況になるとは、思いもしなかったわい」 まこ「でも、次がお前さんとの、最後の対局になるのかもしれんな」 京太郎「今日は、染谷先輩ですか」 まこ「そうじゃ。まぁ、座れ」 京太郎「……はい」 まこ「なぁ、京太郎。打つ前にもう一回だけ聞いておく。やっぱり、麻雀部に戻る気はないんか?」 京太郎「ええ。俺はこのまま、一人で戦い続けます」 まこ「……そうか」 京太郎「あの、染谷先輩」 まこ「ん?」 京太郎「他の二人は? 俺たちだけでは、打てませんよ」 まこ「京太郎。十七歩って、知っとるか?」 京太郎「一応、ルールは。実際やったことはありませんけど」 まこ「そっか、それなら問題ない。わしら二人で、やるとしようか」 京太郎「他の二人が来るまでですか?」 まこ「……来んよ」 京太郎「え?」 まこ「今日は、誰も来ない。わしら二人だけじゃよ」 京太郎「……誰も、呼ばなかったんですか?」 まこ「あぁ」 京太郎「染谷先輩……やっぱり、他の学校に友達が……」 まこ「いるわい! 呼べなかったんじゃない、呼ばなかったんじゃ!」 京太郎「す、すいません……でも、なぜです?」 まこ「……ま、ちょっとした事情があっての。じゃ、始めるとするか」 京太郎(十七歩……二人で遊ぶための特殊ルール) 京太郎(自分の山から好きな13牌を選び、リーチ込みで満貫以上の手を作る) 京太郎(プレイヤーは残った山牌から交互に切っていき、相手のリーチをかわしつつロンを狙う) 京太郎(お互い17牌捨てるまで和了ることができなかったら流局……それゆえ、十七歩) 京太郎(漫画で見たことはあるけど、実際にやるのは初めてだな) 京太郎(でも、どうして染谷先輩はわざわざ普通の麻雀ではなく、これを……?) まこ「こっちはOKじゃ」 京太郎「俺も、終わりました」 まこ「よし、じゃあわしからじゃの。リーチ」 京太郎「……リーチ」 京太郎「……流局ですね」 まこ「うむ。テンパイじゃ」 京太郎「……ノーテンです」 まこ「おや、ノーテンじゃったか?」 京太郎「配牌で満貫が作れそうになかったので、とにかく安全そうな牌ばかりを集めて……」 まこ「なるほど、そういう手もある。どうじゃ、案外満貫縛りってきついものじゃろ?」 京太郎「はい、結構簡単に出来るものなのかと思ってたんですが……」 まこ「なかなか難しいんじゃよ。さ、次いくぞ」 京太郎(うーむ、今度は満貫自体は混一で作れそうなんだが……) 京太郎(そうなると必然的に、捨牌は他の色が並ぶ。これはそうそう出してくれないだろうな) 京太郎(かといって、さっきみたいに和了り放棄するのも……まぁ、これでいくしかないか) まこ「お、それロンじゃ。満貫じゃな」 京太郎「うぐっ……これでしたか」 まこ「普通の麻雀ならボコボコにされるんじゃろうが、こっちなら京太郎の力も少し弱まってるようじゃな」 京太郎「……みたいですね。あくまで俺は、普通の麻雀で勝ちたいと思ったわけですから」 まこ「意外と頭を使うもんじゃろ、これ」 京太郎「……そうですね」 まこ「テンパイ」 京太郎「……ノーテンです。いや、難しいですよ……満貫作るの」 まこ「作れても、相手が出してくれるかって問題もあるしのぅ」 京太郎「……染谷先輩」 まこ「なんじゃ?」 京太郎「何を、考えてるんですか?」 まこ「何を……というと?」 京太郎「確かに奥が深いゲームだということはわかりましたが、所詮はこんなもの遊びでしかない」 京太郎「どうして、誰か二人を呼んで普通の麻雀にしなかったんですか?」 まこ「……考えの相違ってやつじゃよ」 京太郎「考えの……相違」 まこ「風越も、鶴賀も、龍門渕も……みんなみんな、京太郎の事情を知っている」 まこ「そして久たちが、昔の京太郎に戻ってほしいと思っていることも知っている」 まこ「だから、それに協力するつもりなんじゃ。実際に、風越の福路たちがそうしたように」 京太郎「……染谷先輩も、そうじゃないんですか?」 まこ「正直に言うと、最初はわしもそう考えておった」 まこ「何かを犠牲にして、誰かを悲しませて……そうまでして強くなりたいなんて、間違っている」 まこ「そう、思っておった」 京太郎「…………」 まこ「だけど、大会で勝ち進んでいく京太郎を見ておったら……」 まこ「今のお前さんを、応援したくもなってきての。だから、他の誰かを呼ぶことはできんかった」 京太郎「……俺がこのまま、戻らないことを望むんですか?」 まこ「それは違う。本心ではわしも、久たちのように麻雀部に戻ってきてほしいと思っとるよ」 京太郎「じゃあ、なぜ……」 まこ「……京太郎は、十分に苦しんだからじゃよ」 京太郎「苦しんだ……?」 まこ「もし京太郎が、何も考えずただ強くなりたいって思い、今の道を歩んだら、一発ぶん殴っとったかもしれん」 まこ「でも、実際はお前さんは大いに悩み、大いに苦しみ……苦渋の選択の末、今の道を選んだはずじゃからの」 京太郎「……なぜ、そんなことがわかるんです?」 まこ「そうでもなきゃ、そこまで強い力は得られんじゃろ。それに、わしは昔の京太郎をよく知ってる」 まこ「いくら負けても、笑顔で過ごしていた……麻雀部を楽しんでいた頃の京太郎を、よく知ってる」 まこ「あの京太郎が、麻雀部を捨てるなんて、辛い思いをしたに違いない。そうじゃろ?」 京太郎「…………」 まこ「ん、それロンじゃ。跳満じゃの」 京太郎「……染谷先輩、強いですね」 まこ「結構打ったこともあるからの。経験だけなら、そうそう負けんぞ」 まこ「思えば、お前さんには雑用ばっかりさせて、ろくに指導もできんかった」 京太郎「……そのことについては、実力的には仕方なかったとは思いますけど」 まこ「うむ、不満もあったろうにちゃんと仕事をやってくれたことには、深く感謝しとる」 まこ「今、久たちは京太郎に麻雀部に戻ってもらおうと、色々頑張ってるようじゃがの」 まこ「もう、わしはいいと思うんじゃ。京太郎の好きなようにさせて」 京太郎「……このままの俺で、いいんですか?」 まこ「それが真剣に考えた末の結論なら……わしが何か言うことなぞ、できはせん」 まこ「京太郎。お前さんの望んだ道を歩むとええ」 京太郎「染谷先輩……ありがとう、ございます」 京太郎「思えば、一番俺に仲間として接してくれたのは、染谷先輩だったのかもしれませんね」 まこ「な、何言っとるんじゃ! 照れるわ!」 まこ「……ロン、満貫じゃ」 京太郎「はぁ……飛びですね。染谷先輩、強ぇっすよ……」 まこ「経験がものを言ったかもの。さすがに特殊ルールでも負けたら、心折れるわい」 京太郎「……それじゃ……」 まこ「うむ……そうだ、最後に一言だけいいか?」 京太郎「何ですか?」 まこ「せっかくなら、トップを目指してみぃ。日本一……いや、世界一じゃ。今のお前さんなら、夢物語ではないぞ」 まこ「なんたって、こんな美少女まで犠牲にしたんじゃからな。そのくらいはやってもらわんと、寂しいわい」 京太郎「……美少女?」 まこ「そこを疑問に思うんじゃない! 先輩の顔を立てんか!」 京太郎「……ははは、そうですね。すいませんでした」 まこ「……それじゃあの。覚えておいてくれ、京太郎」 まこ「麻雀部に戻ってこようとも、このまま修羅の道を歩もうとも……わしは常に、お前さんの味方じゃからな」 京太郎「……はい。それでは、さようなら……染谷先輩」 まこ「ああ……さようならじゃ、京太郎」 まこ(京太郎は、悩み抜いた末に今の道を選んだ。そんなこと、久や優希だってわかってる) まこ(それでもあいつらが、京太郎を麻雀部に戻したいと思うのは、京太郎のことが好きだからってだけじゃない) まこ(みんなみんな、気付いているからじゃよ。京太郎……お前さんが、本当に望んでいることに) まこ(強くなるってのは、その目的のための手段の一つに過ぎないってことに) まこ(結局、そのことを言えんかったのぅ……いや、わしが言っても意味ないんじゃがの) まこ(それは、京太郎が自分で気づかないと意味がない。そして……) まこ(それに気付かせられる者は……わしらでは、ないんじゃからな) 咲(……部長も、優希ちゃんも、染谷先輩も駄目だった……) 咲(京ちゃん……京ちゃんはもう、麻雀部に戻ってくる気はないの?) 咲(京ちゃんはもう……私と、麻雀を打ってくれないの?) 咲(どうして、京ちゃんは……) プルルルル 咲「ん……電話」 咲「はい、宮永です」 照『……咲?』 咲「え……お姉、ちゃん……?」 京太郎「…………」 ムロ「よろしくお願いします」 マホ「全国優勝者と打てるなんて嬉しいです! 今日はよろしくですー」 京太郎「……和?」 和「中学時代の後輩です。ほら、ご挨拶を」 ムロ「あ、すいません……室橋裕子、3年です……」 マホ「2年の夢乃マホです。えっと、須賀先輩ですね?」 京太郎「あ、あぁ……須賀京太郎だ。でも、驚いたな……まさか中学生を連れてくるとは」 和「私がお願いしたんです。ぜひ卓に入って下さいって」 京太郎「和が……てことは、二人とも相当な強さってわけか?」 ムロ「いっ、いえ全然! 全然大したことないです!」 和「マホちゃんにいたっては、レーティング1200台ですし」 京太郎(せ、1200……昔の俺と同レベルじゃないか……) マホ「えへへ、お手柔らかにー」 京太郎(他にも当てはあったはずなのに、中学生を引っ張ってきた) 京太郎(和が言うなら、本当に初心者なんだろう。だが、わざわざこの場に呼ぶくらいだ) 京太郎(何もないはずはない……それに、このマホって子からは何となく感じる) 京太郎(咲や天江さんと、同じ感覚を……) 京太郎(それで、俺が麻雀部に戻るとでも思っているのか……? 和は) マホ「では、私の親からですね……お、ダブルリーチです!」 ムロ「うわ、いきなり優希先輩か」 京太郎「優希……?」 ムロ「マホの奴、優希先輩や和先輩に憧れてて、真似した打ち方をしようとするんですよ」 京太郎「真似だって? そんなこと、しようと思ってもできるもんじゃ……」 和「私もそう思うんですが……なぜか一半荘に一局くらい、できてしまうことがあるんです」 マホ「ツモです! 6000オール!」 ムロ「あいたた、いきなり親っ跳ねかー」 京太郎(……模倣の能力、ってわけか……) マホ「ノーテン」 和「テンパイ」 ムロ「ノーテン」 京太郎「テンパイ」 京太郎(……今度は、まるで和みたいな綺麗な打ち筋だ) 京太郎(一手の無駄もなく手を進め、和のリーチを見て勝負は危険と見てすぐオリた) 京太郎(憧れが強くて模倣に走る……か……) 京太郎(…………) マホ「この局も和了りますよー」 ムロ「……マホ、それ取ったら多牌だよ」 マホ「わわっ! す、すいませんです!」 和「はぁ……マホちゃんは相変わらずですね」 京太郎「……本当に、初心者なのな」 マホ「うぅ、恥ずかしいところをお見せしてしまったのです……」 京太郎(まったく、調子狂うな……でも、間違いない。この子は魔物側に属する人間だ) 京太郎(今までは優希、和と模倣を続けてきた) 京太郎(……まさか……) 京太郎「……リーチだ」 ムロ「リーチですか……うーん、困ったな……」 マホ「……カンです」 ムロ「カン? リーチ相手に?」 マホ「はい。何となくですけど……」 京太郎(やっぱり……この子は、咲の麻雀を……!) マホ「マホ、嶺上で和了れるような気がします」 タンッ マホ「ツモ。嶺上開花ドラ3、2000・4000」 京太郎「……マホ、だったかな」 マホ「はい、何ですか?」 京太郎「咲の麻雀を、見たことがあるのか?」 和「この前の合同合宿に来ましたから、その時に打ってましたね」 マホ「県予選で見た、宮永先輩の打ち筋がものすごくて……」 マホ「マホもああいう風に打ちたいって思ってて、何回か真似してたら、時々成功するようになったんですよ」 京太郎「……咲の、ように……」 和「人の真似をするより、自分の底上げをしないと……」 マホ「でも……一人だけ、どうしても真似できなかった人がいるんです」 京太郎「真似できなかった人……?」 和「聞いてませんね……」 マホ「はい。テレビで見ただけなんですけど、宮永先輩以上に、凄くカッコいい麻雀だったんです」 京太郎「誰だ、それは?」 マホ「須賀先輩です」 京太郎「……俺?」 マホ「はい。豪快で、華々しくて、カッコよくて……マホ、釘づけになっちゃいました!」 マホ「だから私も、須賀先輩のような麻雀を打とうって、何度もチャレンジしたんですけど……」 ムロ「まだ一度も、成功したことないんだよね」 マホ「はい……なぜでしょうか……」 ムロ「そりゃー全国最強の人だもん。そうそう真似なんてできるわけないって何度も言ってるじゃん」 和「そもそも人の真似ができるなんて、そんなオカルトありえません」 京太郎(……違う……) 京太郎(俺の打ち方が、真似できないのは、きっと……周りを犠牲にして得た、力だから) 京太郎(本当の俺自身は、昔から何も変わってない……能力も何もない、初心者のままだから) マホ「うぅ、リーチ一発ならずです……今回も、失敗しました……」 和「今回も?」 マホ「須賀先輩でしたら一発でツモって裏3乗っただろうから、マホも真似してみたんですが……愚形だけが残ってしまいました」 ムロ「そういうことは言わなくていいの」 京太郎「…………」 マホ「でも、次こそ成功させますよー」 ムロ「諦めなよ、マホ」 京太郎(……これ以上見てるのは、辛いな……) 京太郎(終わらせに……いくか) マホ「」 和「ま、マホちゃん……大丈夫ですか?」 マホ「」 ムロ「ここまでボッコボコにされるとは……まぁ予想はしてたけど」 マホ「うぅ……須賀先輩、容赦ないのです……飛び寸前です」 京太郎「悪いな、これも勝負なんで。あと、俺の模倣はもう諦めたほうがいい、おそらく無理だろうから」 マホ「そ、そんなことないです! 信じていれば、必ずできます!」 京太郎「リーチだ」 マホ「ぴぃ……」 マホ「あ、ツモりました……ツモのみ、400・700……」 ムロ「首の皮一枚繋がったね」 マホ「……あれ?」 和「どうかしましたか?」 マホ「いや、そんなはずは……あれ? でも……え?」 京太郎「?」 ムロ「マホ?」 マホ「い、いえ何でもないです……」 京太郎「ツモ。6000オール」 マホ「飛びましたです……」 ムロ「ありがとうございました……マホ、どんまい……」 和「ありがとうございました」 マホ「……今日は、ありがとうございました! ボコボコにされたけど、楽しかったです!」 ムロ「いい勉強になりました。ありがとうございました」 京太郎「二人とも、清澄を受けるのか?」 ムロ「はい、今のところはそのつもりです」 マホ「えへへー、再来年は同じ麻雀部ですね! よろしくお願いします」 ムロ「マホはもうちょっと勉強頑張らないと、入れるか怪しいんじゃないかな?」 マホ「あうっ……」 京太郎「……俺は、麻雀部には……」 和「そうですね。もし合格できたら、みんな一緒ですね」 京太郎「……和」 ムロ「それでは、失礼します」 マホ「またよろしくお願いしますー」 和「はい、お元気で」 京太郎「和」 和「はい」 京太郎「……言わなかったのか? 俺は、麻雀部にはいないって」 和「今はそうかもしれません。でも、確信していますよ。きっと戻ってくれるって」 京太郎「……なぜ、そう言えるんだ?」 京太郎「あの二人を呼んだのだって、何か考えがあってのことだろうけど……」 京太郎「少なくとも、和やあの二人と打って……麻雀部に戻ろうなんて考えは、強くなることはなかった」 和「考え、ですか……」 京太郎「どうして、わざわざ中学の後輩を呼んだんだ?」 和「強い人と打てるのは、いい経験になると思ったからです。それに、打ちたがっていましたしね」 京太郎「それだけじゃないだろう。何か、俺を麻雀部に戻らせるための……」 和「それだけですよ?」 京太郎「……それだけ?」 和「本当にそれ以外の意味はないです。彼女たちに、そんなことは期待していませんよ」 和「いえ……そもそも、そんなこと出来るわけがないんです。部長も、優希も、染谷先輩も、最初からわかってました」 和「須賀君を麻雀部に戻らせることができる人なんて……」 和「この世に、たった一人しかいないってことが」 京太郎「…………」 和「そういえば……須賀君は、大切なものを犠牲にして力を得る……でしたよね。にわかには信じ難い話ですけど」 京太郎「……それがどうかしたか?」 和「確か最初に犠牲にしたのは、私でしたよね?」 京太郎「……あ、そういえば水がかかった時……」 和「それは思い出さなくていいです! ま、まぁ、それだけ大切に想ってくれているというのは嬉しいです」 和「でも須賀君は、本当の本当に大切なものは、きっと最後まで捨てきれない人でしょう」 和「その人は……誰でしたか?」 京太郎「…………」 和「彼女ならば、きっと……って、私は思いますよ。ふふ」 和「だから……また、打ちましょうね。須賀君」 照『そう……そんなことが……』 咲「うん……」 照『……咲は、京ちゃんがことが好きなんだよね?』 咲「ふぇっ!? ななな、何言ってるの!?」 照『違うの?』 咲「う……えっと……その……」 照『……いや、もういい。大体わかったから……ねぇ、咲。まだ他の面子、席あるんだよね』 咲「え……うん、一応……一人はもう話ついてるんだけど、もう片方は空いてるよ」 照『……じゃあ、行く』 咲「お姉、ちゃん……」 照『力になれるかはわからない。でも……このまま京ちゃんとお別れなんて、したくない』 照『私も……京ちゃんと、戦うよ』 ムロ「さすがに強かったねー、須賀先輩。マホもさすがに真似できなかったか」 マホ「……そこ、どうしても気になることがあるんですよ」 ムロ「何?」 マホ「須賀先輩の真似……出来た感触があるんです」 ムロ「え、ホント? いつ?」 マホ「最後、須賀先輩のリーチをツモのみで流した時がありましたよね」 ムロ「……あのしょぼい手が、須賀先輩の真似!? そんなバカな……」 マホ「私もバカなって思うんですよ。須賀先輩なら、追っかけ一発裏3くらいはしそうですし」 マホ「でも……確かにあれは、須賀先輩の模倣をできた感触でした」 ムロ「……どういうこと? まさかあの人の真の能力は、リーチを安手で流す力とか……」 マホ「いえ、それはさすがにないと思うです」 ムロ「だよねぇ。じゃあ、一体……」 マホ「うーん……わかりません。ただ……」 ムロ「ただ?」 マホ「あの和了り……高い手でもないし、綺麗な手でもない、平凡極まりない手なんですけど……」 マホ「充実感溢れるというか、何というか……よくわかりませんが」 マホ「嬉しい、和了りでした」 ハギヨシ「衣様。宮永様から連絡がありました」 衣「何だ?」 ハギヨシ「須賀様との対戦の残りの一席、宮永照様が入ることになったそうです」 衣「……そうか。下がっていいぞ、ハギヨシ」 ハギヨシ「はい、失礼いたします」 衣「ふぅ……」 衣「お前と会ってからまだ数ヶ月というのに、幾星霜の時を経たようにも感じるよ」 衣「それほどまでに、お前のことが気になっていたようだ」 衣「京太郎……これで終わりになんか、させはしないぞ」 『ツモ、嶺上開花。70符2翻は、1200・2300です』 京太郎(思い返せば、あの日から……ずっと俺は、咲を追ってきた) 京太郎(あんな風に、強くありたいと思った。だから俺は、力を欲した) 京太郎(今の俺は、誰にだって勝てる。たとえ咲だろうと、負けはしない) 京太郎(それでも……いつもいつも、頭にチラつくのは……咲の麻雀。咲の声、咲の姿) 京太郎(……もう、終わりにする。俺は次の、清澄麻雀部員としての最後の麻雀で……完全に、断ち切る) 京太郎(決着をつけるぞ。咲) 京太郎(部長。優希。染谷先輩。和。そして……咲) 京太郎(みんなの想いは、よくわかった。まだ俺のことを、仲間として見てくれていることも) 京太郎(この力さえ捨てれば、昔に戻れる。またみんなと楽しく麻雀が打てる) 京太郎(でも……俺は、やっぱり) 京太郎(今の強い状態のままで、ありたいんだ) 京太郎「さて……」 京太郎「行くか、最後の戦いに」 ガチャッ 京太郎(まだ、誰も来ていないか) 京太郎(この部室とも……今日で、本当にお別れだ) 京太郎(数ヶ月前、咲を引っ張りこんで……今思えば、あれが人生の境目だった) 『ツモ、嶺上開花。70符2翻は、1200・2300です』 京太郎(咲の麻雀は凄かった。圧倒的な力と華麗な打ち回し、そして……あの嶺上開花) 京太郎(惹きつけられると同時に……自分と比べて、辛い気持ちになった) 京太郎(咲も、和も、優希も、部長も、染谷先輩も。みんなみんな、強かった) 京太郎(弱かったのは……俺だけだ。みんなが活躍しても、俺だけは雑魚のまま) 京太郎(俺も、輝きたかった。そしてみんなに……咲に、負けたくなかった) 京太郎(だけど、今の俺は力を得た。咲すらも、問題にならないほどの) 京太郎(だから……) 京太郎「今日でお別れだ。咲」 咲「負けないよ。京ちゃん」 咲「……こうしてお話するのも、久々だね」 京太郎「そうだな。でも、今日で終わりだ」 咲「…………」 京太郎「わかっているはずだ。今の俺は、お前よりもはるかに強い」 咲「……そうかもしれないね」 京太郎「お前には、俺の心を変えることはできない。ただ俺が和了り続け、そのまま終局だ」 京太郎「そして……今度こそ、さよならだ。咲」 咲「……一つだけ、不思議なことがあるんだ。京ちゃん」 京太郎「不思議なこと?」 咲「今の京ちゃんは、トッププロにも勝てるかもしれない。本来私なんかじゃ、勝負にならない」 咲「でもね、どういうわけか知らないけど」 咲「私……今の京ちゃんには、全く負ける気がしないんだ」 京太郎「……意味がわかんねぇよ。それじゃあお前は、トッププロレベルなのか」 咲「まさか、そんなわけないじゃん」 京太郎「じゃあ、俺に勝てるなんて……」 ガチャッ 照「勝てるよ。咲なら、きっと勝てる」 衣「うむ。衣もそう思うぞ」 京太郎「……照さん。天江さん」 照「また会ったね。京ちゃん」 京太郎「来てたんですね、長野に」 咲「お姉ちゃん……」 照「話は咲から聞いた。今までの、京ちゃんのことも、全部」 照「強くなるために、全てを犠牲にしてきたってことも」 京太郎「……それで自分なら、俺に勝てると?」 照「それは……わからない。でも、今の京ちゃんじゃ、咲には勝てない」 京太郎「…………」 衣「京太郎……衣はここ最近、ずっと考えていたことがある」 京太郎「……何ですか?」 衣「ふふ、それがあまりに突拍子もないことでな。言っても何を馬鹿なと笑い飛ばされるだけだろう」 衣「だが今は、衣は衣の仮説の自信を持っているよ」 京太郎「…………」 衣「一つだけ言っておこう。京太郎、お前は強くなんかなっていない」 衣「今の京太郎では、決して咲には勝てない」 京太郎「……天江さんも、そう言うんですか」 衣「……思えば、京太郎のことは、道を踏み外した弟子のように思ってたよ。実に刺激的な日々だった」 京太郎「だとしたら、今日は恩返しをしなければなりませんね。師匠を倒す、という形で」 照「それじゃあ……」 衣「うむ」 咲「…………」 京太郎「始めましょうか。最後の、戦いを」 【東1局 親:衣】 衣「そういえば……照だったか。こうして打つのは初めてだな」 照「……去年のインターハイでの活躍は、よく覚えている。龍門渕高校、天江衣」 衣「照ならば、衣の遊び相手としては申し分ない。一度全力で手合せ願いたいものだが……」 照「うん……ちょっと、そんな状況にないかな」 京太郎「ツモ。2000・4000」 衣「衣の親が、こうもあっさり流されるとはな」 京太郎「これでもまだ、俺が強くなんかなっていないとか言う気ですか?」 衣「言うさ」 京太郎「…………」 衣「京太郎。お前は全国優勝を遂げるまでになったが、お前は最初に衣を訪れたあの日から、何も変わっていない」 京太郎「…………」 京太郎「それなら……」 【東2局 親:照】 京太郎「卓上で、黙らせるまでです」 京太郎「ツモ。1300・2600」 【東3局 親:咲】 京太郎(やっぱり、何も変わってない……照さんや天江さんだろうと、相手にならない) 京太郎(このまま、いつものように和了り続けて、終わらせる) 京太郎(そして……) 京太郎「リーチ」 京太郎(咲、お別れだ) 京太郎(俺は一人のままで、戦い続ける) 衣(京太郎からリーチか……) 照(咲……どうする?) 咲「…………」 咲「リーチ」 京太郎(……追っかけ!?) 咲「……ロン。12000」 京太郎「……はい」 京太郎(くっ……まさか一発でツモれないどころか、掴まされるなんて) 京太郎(……偶然だ、気にするな。次こそ……) 【東3局1本場 親:咲】 咲「ロン。7700の一本場は、8000」 京太郎(ま、また……!?) 【東3局2本場 親:咲】 京太郎(おかしいぞ! こんなこと、力を得てからは一度もなかった!) 京太郎(間違いない、俺は最強の高校生だ! 咲よりも、絶対に強いはずだ!) 京太郎(負けるなんて……) 『今の京ちゃんには、全く負ける気がしないんだ』 京太郎(…………) 京太郎(そんな、はずは……) 咲「リーチ」 京太郎「……チー!」 京太郎「……ツモ、タンヤオのみ……」 京太郎(くそっ! タンピン三色イーペーコーまで見える手だったのに、安手で流さずにはいられなかった!) 京太郎(次の親番で、何とかしなくては……) 【東4局 親:京太郎】 京太郎(……よし! いい手だ、跳満……いや、倍満まで狙える!) 京太郎(今度こそ、叩きのめしてやる!) 京太郎「リーチ!」 咲「……ねえ、京ちゃん」 京太郎「……何だ、咲」 咲「さっきも言ったけど、今の京ちゃんはトッププロにも見劣りしないと思う」 咲「それでもね……やっぱり、思った通り」 パタリ 京太郎「!?」 咲「負ける気が、しないよ」 咲「カン……ツモ、嶺上開花。8000点、責任払いです」 京太郎(嘘……だろ……) 京太郎(俺は、全国優勝者のはずだ……) 京太郎(俺は、最強の力を手に入れたはずだ……) 京太郎(誰が相手だろうと、問題なく勝利してきた。俺に勝てる奴なんか、いなかった) 京太郎(なのに、なぜ咲に……こんなにも……) 京太郎(……咲に……) 京太郎(よりによって……咲に……) 京太郎「…………」ギリッ 照「…………」 咲「……京ちゃん……」 衣「…………」 衣「京太郎、次行くぞ」 京太郎「…………」 衣「……の、前にだ。京太郎、すまないがトイレの場所を教えてくれ」 京太郎「……トイレですか? そこの角を曲がって……」 衣「口で言ってもわからぬ! 案内してくれ!」 京太郎「は?」 衣「ほら、さっさと案内してくれ」 京太郎「いや、でも……」 咲「……京ちゃん、お願い。一旦中断しよ」 京太郎「え……」 衣「京太郎」 京太郎「わ、わかりました……じゃあ、行きましょうか」 衣「うむ、かたじけない」 衣「では、行ってくる」 照「……うん」 バタン 咲「……お姉ちゃん。京ちゃん、昔みたいに戻ってくれるのかな……」 照「咲……」 咲「全力でぶつかれば、きっと戻ってくれると思ってた。以前の、ちょっと意地悪だけど優しかった頃の京ちゃんに」 咲「それでも、やっぱり……本当にそうなるのかって、不安は拭いきれなくて」 咲「あんなに辛そうな京ちゃんを見てたら……私も、辛いよ」 照「大丈夫だよ、咲。京ちゃんなら、きっと気付いてくれる」 照「なんたって、咲が好きになった男の子なんだもの」 咲「……お姉ちゃん……」 照「京ちゃんなら大丈夫。だから……信じて、待っていよう」 咲「……うん」 衣「……不可解か? 最強のはずの自分が、ここまでやられるのが」 京太郎「…………」 衣「言っただろう。今のお前では、咲には勝てぬと」 京太郎「……なぜですか……」 京太郎「俺は、全てを捨てて力を得た。誰にも負けないほどの、力を」 京太郎「なのに……なぜ! なぜ、咲には勝てないんだ!」 京太郎「俺の方が! 俺の方が、絶対に強いはずなのにっ!」 衣「……咲に、勝ちたいか?」 京太郎「…………」 京太郎「……勝ちたい、です」 京太郎「咲には……咲にだけは、負けたくないです」 衣「……ならば京太郎。一つ、教えておこう」 衣「咲の麻雀に、能力はあると思うか?」 京太郎「そりゃ……ありますよ。嶺上で必ず和了るじゃないですか」 衣「では照と衣は?」 京太郎「打点が順々に上がっていくのと、海底で和了る……ですよね?」 衣「ふむ。では京太郎、お前自身は?」 京太郎「……何かを犠牲にして、力を得る……」 衣「なるほどな……なぁ、京太郎」 京太郎「…………」 衣「全部ハズレだ」 京太郎「……は?」 京太郎「ど、どういう意味で……」 衣「言った通りだ。咲には嶺上で必ず和了る能力なんてない」 京太郎「あ、あの……」 衣「照に打点を順々に上げる能力なんてない。衣に海底で必ず和了る能力なんてない」 京太郎「えっと……」 衣「ましてや、何かを犠牲に力を得るだと? そんなオカルト、あるわけがないだろう」 京太郎「ちょ、ちょっと! 天江さん、意味がわかりませんよ!」 衣「ははは、だいぶ混乱しているようだな。無理もない、衣もそのことにハッキリ気付いたのはごく最近だ」 衣「大体、嶺上で和了るだの何だの、そんなのできるはずがない。超能力じゃあるまいし」 京太郎「いや、でも現にみんな……」 衣「……同じものだったのだ。全て」 京太郎「……同じもの?」 衣「咲も、照も、衣も、京太郎も」 衣「みんなみんな、ただ一つ……同じ力を持っている。それだけのことだ」 京太郎「同じ、力……」 衣「それは本来、誰もが持っているものだ。大人も、子供も、プロも、初心者も」 衣「麻雀を打つすべての人間が、その力を持っている。だがそのほとんどは、それに気づくことがないままなのだ」 衣「お前の言う能力者たちだけが、気付いてる。だからこそ、咲は嶺上で和了れるし……」 衣「今、京太郎を倒すことができるのだ」 京太郎「そ、それじゃあ俺が全てを犠牲にして得た力ってのは……」 衣「そうだ。そんな力、元からありはしない」 衣「ヘルカイザーなど、最初から存在していなかった」 京太郎「…………」 衣「言っただろう。お前は強くなんかなっていない、と」 京太郎「……はい……」 衣「確かに京太郎は、全国優勝を遂げた。だが、それは『強くなった』からではない」 衣「もし今の京太郎が『強い』としたら……お前は、衣を訪ねてきたあの日から……最初から、強かったのだ」 京太郎「俺が……強い……」 衣「今までよく頑張った。胸を張れ。他人を犠牲にして得た力なんかじゃない」 衣「京太郎は……自分自身の力で、全国の頂点に立ったのだ」 京太郎「……じゃあ、何なんですか! その誰もが持つ『力』ってのは!」 京太郎「咲が嶺上で和了ったり、俺が全国優勝できたりする『力』は!」 衣「……京太郎。今のお前なら気付くことができるはずだ。そして気付かなければ、咲には勝てない」 京太郎「…………」 衣「そろそろ戻ろうか……京太郎。お前なら、きっと気付けるはずだ。期待しているぞ」 京太郎(咲の嶺上開花……照さんの連続和了、天江さんの海底撈月……) 京太郎(そして、俺の力……) 京太郎(それらは全て共通した、ある一つの『力』だった……) 京太郎(…………) 京太郎(咲……今、お前はその『力』を使って、俺を圧倒しているんだろう) 京太郎(一体……どんな『力』なんだ……) 京太郎(全てを犠牲にして、俺も何かは確実に変わった……俺もその『力』とは、間違いなく接しているはずだ) 京太郎(一体……どんな『力』なんだ……) 京太郎(咲……) 咲「ツモ、嶺上開花」 照(……咲が止まらない) 照(本来ならば、この四人で勝つ力は京ちゃんにある。私や天江衣よりも、はるかに上なのだから) 照(でも今の咲は、その京ちゃんを完全に上回っている。だから、咲が勝つ) 照(……どうして京ちゃんが勝てないのか、何となくわかる) 照(きっと天江衣も気づいてる……そしておそらく、咲も) 照(……京ちゃん……) 京太郎「あと、2局か……」 咲「……うん」 京太郎(……無様なもんだ) 京太郎(全てを捨てて、最強の力を手に入れたはずだった。誰も、俺に敵う者はいなかった) 京太郎(でも、そんな俺が……咲には、全く歯が立たないなんてな) 『そんな力、元からありはしない』 『ヘルカイザーなど、最初から存在していなかった』 京太郎(昔の俺から変わってないまんまだったら……そりゃ、咲には勝てないだろう) 京太郎(だったら、何で今まで俺は勝てていたんだ?) 京太郎(どうして今、咲に勝てないんだ?) 京太郎(咲の力って……俺の力って、一体、何なんだ……?) 京太郎(くそっ、また違う牌……) 京太郎(リーチをかけても、和了れない……こんなこと、今まで……) 京太郎(どうして……) 京太郎(どうして、咲には……勝てないんだ……) 咲「……ねぇ、京ちゃん」 京太郎「……何だよ」 咲「私ね、今まで一人じゃ何もできなくて、自分に何も自信が持てなかった」 咲「だから京ちゃんに、ずっと頼ってきた。思い返せば、昔からそうだったよね」 咲「今だって……きっと一人じゃ、京ちゃんに勝てなかったと思うんだ」 京太郎「……いきなり何言い出すんだ。麻雀なのに、一人じゃ勝てないなんて意味がわからねぇよ」 咲「ううん、京ちゃんならわかるはずだよ。今の私が、一人じゃないってことに」 咲「全国優勝した時の京ちゃんは、本当に凄かった。堂々としてて、自信に溢れてて……」 咲「自分の力を、完全に信じていた。一人きりでも、誰よりも強かった」 京太郎「…………」 咲「でも今の私は……部長に、優希ちゃんに、染谷先輩に、和ちゃん」 咲「それに……お姉ちゃんに、衣ちゃん。みんなの想いを背負っている」 咲「だから、私は今の京ちゃんには負けない。京ちゃんの勝ちたいという想いより、私たちの想いの方が強いから」 京太郎「意味わからねぇよ。想いの強さが麻雀の強さになるなんて、あるわけ……」 咲『愛する麻雀を、牌を、信じる気持ちがあれば……』 咲『きっと、京ちゃんにも引けるよ。勝利への、和了り牌を』 京太郎(…………!) 京太郎(昔……確かに咲は、そんなことを言っていた……) 京太郎(俺を元気づけるための、適当なでっちあげじゃなくて……本気で、言ってたってのか) 京太郎(信じていれば、きっと牌は応えてくれるって……) 衣「ツモ、海底撈月。2000・4000」 照「オーラスだね」 咲「……うん……」 京太郎(昔の俺が、弱かったのは……自分を、信じてなかったから。弱い自分が勝てるだなんて、思ってなかったから) 京太郎(俺が勝てるようになったのは、全てを犠牲にして力を得たからではなく……力を得たと、思い込んでいたから) 京太郎(だから、自分が最強だと思い、自分のことを信じていた) 京太郎(そして、その気持ちに牌が応えてくれたから……勝ててたっていうのか) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 京太郎『なぁ、咲。前から気になってたんだけどさ』 咲『どうしたの、京ちゃん』 京太郎『なんでお前、いつも槓材が入ったり嶺上牌が分かったりするんだ?』 咲『え、えぇ……それは、何と言うか……自然にと言うか……何となく?』 京太郎『何となくで済むわけねーだろ……あんなに連発されりゃあ』 咲『と言われても……』 京太郎『はぁ……俺も咲みたいに、欲しい牌を都合よく引けたら少しは勝てるかもしれないのになぁ……』 咲『京ちゃんだって、欲しい牌を引けたことくらいあるでしょ』 京太郎『そりゃ何度もあるけどさ、ここぞって時に引けたことは一度もないんだよ』 咲『そうなんだ……』 京太郎『咲と何が違うのかなぁ、俺は……』 咲『うーん……ちょっと考えてみたんだけど、京ちゃんは『この牌で和了れる』って思って引いたことないんじゃない?』 京太郎『は?』 咲『私はいつも嶺上牌を引くときは『この牌が和了り牌だ』って信じてる。牌のことを信じてる』 咲『だから……その気持ちに、牌が応えてくれるんじゃないかなって、ふと思ったんだ』 京太郎『何だそりゃ。信じるだけで引けるわけないだろ』 咲『そんなことないよ。麻雀が好きなら、きっと引けるようになるよ』 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 京太郎「……咲が嶺上で和了れるのも、天江さんが海底で和了れるのも……」 京太郎「信じる気持ちに牌が応えてくれるからってのか……?」 衣「……海底は、衣の領域だ。絶対に、応えてくれる」 京太郎「そんなこと……そんなこと、出来るわけない!」 衣「出来るさ。現にお前は、ずっと信じ続け、それで勝ち続けてきたではないか」 衣「他人を犠牲に得た力ではなく、自分自身の力で」 京太郎「あれは……」 照「……よくわからないけど、想いの強さってことなら、京ちゃんは誰にも負けないよ」 京太郎「……照さん」 照「だって、全てを捨ててでも勝ちたいって思ってたんでしょ?」 照「それくらい、麻雀に入れ込んでたんだよね。麻雀が好きだったんだよね」 照「その想いの強さなら……誰にも負けないよ、京ちゃんは」 京太郎(逆転には、役満ツモが必要……) 京太郎(昔の俺なら、もう諦めてた。全国優勝した頃の俺なら、可能だった) 京太郎(今の、俺は……) 京太郎(…………) 京太郎(仮に、信じれば牌が応えてくれるなんて力があったとしたら……) マホ『そ、そんなことないです! 信じていれば、必ずできます!』 マホ『あ、ツモりました……ツモのみ、400・700……』 京太郎(マホ……お前が模倣したのは、俺の……信じる力、だっていうのか……) 京太郎(俺が自分を……牌を信じ、その気持ちを模倣したから、和了れた) 京太郎(俺にも、そんな力があるっていうのか……) 京太郎(……これで、二暗刻目) 京太郎(役満が見えてきたのは、なんでだろうな。ただの偶然か、俺の力の残骸か) 京太郎(それとも……) 咲「……リーチだよ。京ちゃん」 京太郎(ケリをつけろっていう、天からのおぼしめしか) 京太郎(ケリなんて……もう、とっくについてるのにな。俺じゃ、咲には勝てないって) 京太郎「……結局……」 京太郎「結局、俺は……咲には、勝てないままだったな」 咲「……京ちゃん」 京太郎「すべてを犠牲にしても、全国の頂点に立っても」 京太郎「俺は……咲には、一度も勝てないままだった」 咲「……勝てるよ。京ちゃんなら、きっと勝てる」 咲「自分を、牌を、信じてれば……必ず、応えてくれるよ。京ちゃんの、想いに」 京太郎「……本気で、言ってるのか」 咲「もちろんだよ。私、ずっと見てきたから」 咲「京ちゃんの、麻雀にかける想いを。京ちゃんの一番そばで、ずっと見てきたから」 京太郎「…………」 咲「だから……」 咲「お願い、京ちゃん」 ―――――――私を、信じて。 京太郎(…………) 京太郎(そっか……) 京太郎(そういうこと、だったんだな) 京太郎(俺には、目標があった) 京太郎(それが何かはハッキリとはわからなかったが、何となく、昔の俺には手が届かないものだって気がした) 京太郎(だから、俺は……強くなりたいって、思った) 京太郎(……やっと、わかったよ。俺が、本当に目指していたもの) 京太郎(それは、みんなと一緒に全国に行くことなんかじゃなかった) 京太郎(全国大会で、優勝することなんかじゃなかった) 京太郎(誰よりも、強くなることなんかじゃなかった) 京太郎(俺は―――――――) 京太郎(……四暗刻を張った次巡のツモが、これかよ) 京太郎(はは……決着をつける舞台まで、神様はしゃれた用意をしてくれたってわけか) 京太郎(……乗るしか、ねぇよな) 京太郎「カン」 照(暗槓……) 衣(……この嶺上牌が咲の当たり牌。もしくは……京太郎の和了り牌だろう) 衣(そして、どちらかというと、おそらくは……) 『ここまでやられたのは、完全に咲のことを捨て切れていなかったからじゃないのか?』 京太郎(まぁ……捨て切れてなかったってのは、認めるよ) 『今度こそ完全に咲のことを捨てきれば、きっとツモ和了れるだろう』 京太郎(その可能性は、確かにあるかもしれないな) 『前みたいに、誰よりも強くなることもできるだろうさ』 京太郎(いいんだよ。俺の目標は、そんなことじゃないんだ) 京太郎(俺の、本当の目標は……) 『愛する麻雀を、牌を、信じる気持ちがあれば……』 『きっと、京ちゃんにも引けるよ。勝利への、和了り牌を』 京太郎(自分の力なんて、別に信じてない) 京太郎(だけど……) 京太郎(和了り牌を引けるって、咲が言ってくれるなら……) 京太郎(俺は……引けるはずだ!) カツッ! 京太郎「…………」 照「京ちゃん……」 衣「……はは、衣の予想が覆されるとはな」 咲「…………」 咲「その嶺上牌……本当は、私の当たり牌だったはずだった」 咲「でも、私が嶺上牌を信じる想いより……京ちゃんの信じる想いが、上回った」 咲「だから、牌はそれに応えてくれたんだと思う」 京太郎「……俺は、別に自分を信じちゃいなかった」 京太郎「やっぱり、咲には勝てないのかなって……ちょっと、思ったりもした」 京太郎「だけど……信じるものは、自分以外にもあった」 京太郎「俺は、咲を信じた。俺を強いって言ってくれた、咲を信じた」 京太郎「今、初めて知ったよ……麻雀って、一人でやるものとは、限らないんだな」 京太郎「ありがとう……咲」 咲「京ちゃん……こちらこそ、ありがとう」 咲「完敗だよ。やっぱり、京ちゃんと打つ麻雀は、楽しいな」 京太郎「これから先、山ほど打ってやるよ。何度も負かしてやるぜ、以前の俺とは違うからな」 衣「おっと、その時は衣も混ぜてくれ。この上なく、楽しい遊戯となりそうだ」 衣「それと……天江さんなんて他人行儀な呼び方は、もうやめてくれな」 照「京ちゃん……私はもう卒業しちゃうけど、今度はプロの立場に立つから……」 照「だから、来年も優勝して……また、あの舞台で戦おう。ね」 京太郎「……衣さん、照さん……」 照「それより、点数報告がまだだよ。ほら」 京太郎「あっ、すいません」 京太郎「ツモ、嶺上開花……四暗刻。俺の……逆転トップです」 久「もう一年経つのか、早いものね」 和「そうですね。またみんなで全国に来れたなんて、夢みたいです」 京太郎「部長もわざわざ東京まで、ありがとうございます。それに、マホも」 久「そりゃもう、可愛い後輩たちの全国の晴れ舞台だもの。OGとして応援に来るのは当然でしょ」 マホ「私も暇でしたのでー」 ムロ「本当は勉強しなきゃ駄目なんだけどね」 マホ「……ま、まぁそれは置いといて!」 まこ「そもそも、今の部長はわしなんじゃがの」 優希「でもやっぱり、部長は部長だじぇ!」 咲「あはは、そうだね」 久「でも……咲と和は流石としても……」 久「須賀君も、よく代表取れたじゃない? 激戦区の男子で」 京太郎「いやいや、俺は運がよかっただけですよ」 優希「去年の決勝で当たった三人が実はみんなその時三年で、今年はいなかったみたいだじぇ」 まこ「おかげで、今年は層スッカスカだったと評判じゃったの」 京太郎「そのスッカスカの層の中ですら、ギリギリの代表獲得だったんですよ」 京太郎「部内でもそこまで勝ててないし、俺、代表者の中で最弱なんじゃないかな……」 咲「そ、そんなことないよ……多分」 久「多分……ねぇ」 咲「ぶ、部長!」 京太郎「はは、ですよね。でも、そのぶん気楽に打てますよ。負けてもともと、勝てればラッキー程度のものですから」 京太郎「それじゃ、そろそろ時間ですので。行ってきます」 京太郎「…………」 衣「京太郎」 京太郎「……あ、衣さん」 衣「すまないな。最初から最後まで、衣はお前を振り回してばかりで、何もしてやれなかった」 京太郎「何言ってるんですか。衣さんには、感謝してもしきれませんよ」 京太郎「衣さんがいなければ、俺はずっと麻雀にコンプレックスを抱いたまま……自分の気持ちにも、気付けなかった」 京太郎「俺がこうして堂々とこの舞台に立てるのも、衣さんのおかげですよ」 衣「……惜しくは、ないのか? 去年の自分が」 京太郎「…………」 衣「あのまま衣たちが何もしなければ、京太郎は去年以上の力でいられただろう。全国制覇など、たやすいはずだ」 衣「そのことを……惜しくは、感じないのか?」 京太郎「……全然、惜しくなんかないですよ」 京太郎「だって、俺の目標は、全国制覇なんかじゃなかったんですから」 衣「……そうか。ならば、衣も気兼ねなく応援できるよ」 京太郎「見ていてください。勝てる可能性は限りなく低いかもしれないけど、全身全霊で戦ってきますんで」 衣「うむ、思いっきり暴れてこい、京太郎!」 京太郎「はい! では行ってきます、衣さん!」 衣「京太郎……」 衣「お前との付き合いは一年程度。決して長い期間とは言えぬ」 衣「だが衣にとっては、何よりも大切な一年間だった。京太郎にとっても、そうであれば嬉しいよ」 衣「……いいところを見せられるといいな。頑張れ、京太郎」 アナ「……しかし妙な組み合わせですね、宮永プロ。初戦から、去年の優勝者と準優勝者が当たるなんて」 照「京ちゃ……須賀選手は、今年はギリギリの予選突破でしたから。この対戦システムには一考の価値があるとは思いますが」 アナ「ええ。須賀選手ですが、去年とはまるで別人のようなヨレヨレの県大会突破だったようです」 照「……確かに去年みたいに、圧倒的な力で相手を叩き潰すような麻雀は鳴りを潜めています」 照「ですが、きっと須賀選手が打ちたかった麻雀は、今の須賀選手の打っている麻雀だと思います」 アナ「……去年は不本意な麻雀だった、ということですか?」 照「はい。ですが当時は、そのことに彼は気付いていませんでした」 照「ヘルカイザーと言われた去年も、かろうじてギリギリの県予選突破だった今年も。本質的には、同じ須賀京太郎だったんです」 アナ「……はぁ……」 照(……いけない、喋りすぎた。わけのわからない子だって思われてないかな……) 竜「…………」 京太郎「…………」 竜「……今年のあンたは、背中が煤けねぇな」 京太郎「……よろしくお願いします」 アナ「それでは、試合開始です!」 照(牌を、自分を、信じれば……きっと応えてくれるから) 照(だから……頑張って、京ちゃん) 京太郎(衣さんが言っていた。昔の自分は麻雀を打っていたんじゃない、打たされていたんだって) 京太郎(思えば俺も、そうだったのかもしれない。ただ強くなりたい、勝ちたいとだけ思っていた) 京太郎(今の俺は……本当に自分の望んでいる麻雀が、よくわかっている) 京太郎(それは……) 京太郎「カン」 京太郎「……ツモ! 嶺上開花、中ドラドラ、2000・4000!」 竜「……へぇ」 京太郎(見ててくれよ、みんな!) 優希「やったじぇ、京太郎の先制和了だじょ!」 和「……須賀君、楽しそうですね」 まこ「そりゃそうじゃ。あいつほど麻雀が好きな奴は、そうそうおらんよ」 ムロ「去年打った時とは、全然雰囲気違いますね」 マホ「んー……確かに去年の方が強そうだったんですけど、今の須賀先輩の方が何だか、生き生きとしてるって思います」 咲「そういえば……一つ気になることがあるんですけど」 まこ「何じゃ?」 咲「結局、京ちゃんの目標って何だったんですか?」 咲「全てを捨ててまで、強くなろうとして……でも、目指していたのは全国出場でも、全国制覇でもなかったみたいで」 久「……は?」 咲「本人に聞いても適当にはぐらかされるし……みんな、何か知りませんか?」 和「……宮永さん……」 優希「咲ちゃん、それ本気か?」 咲「え? え?」 マホ「部外者の私でも、とっくに気付いてますよ……」 久「わかってないわね……じゃあ、教えてあげる」 久「須賀君はね、他の誰でもない……あなたに、勝ちたかった。それこそ、彼の本当の目標だったのよ」 咲「わ、私に……?」 まこ「ずっと前から、咲以外みんなわかってたぞ」 咲「……やっぱり……」 咲「やっぱり、悔しかったんでしょうか? こんなどんくさい私なんかに、全然勝てないってことが」 久「まぁ……それもあるかもしれないけどね。本命の理由は、そんなんじゃないわよ」 咲「え、じゃあ一体……」 優希「……咲ちゃん、さすがに酷いじぇ」 和「須賀君、かわいそうです……」 ムロ「お気の毒です、先輩……」 咲「え? え?」 まこ「……本当にわからんのか?」 久「やれやれ……一年経ってもこれじゃあ、まだまだ時間かかりそうね」 咲「お、教えてくださいよぉー!」 久「だぁーめ。それは似た者同士、自分で考えなさい」 昔から、決まってるじゃない。 男の子っていうのは。 好きな子の前じゃ、強くありたい、いいところを見せたいって思うものだって。 咏「……ふーん、いい顔するようになったじゃん、彼」 えり「確かに去年とは、だいぶ印象が違いますね」 健夜「うん。去年はただ勝利だけを求め、相手へのリスペクトなんて全く感じなかったけど……」 恒子「何かあったのかな?」 咏「だろうねぃ。それも、きっといいことがね」 えり「……そういえば彼、妙なんですよね」 咏「妙?」 えり「はい。県大会のデータを見ると、去年みたいな圧倒的な火力はないのですが……」 えり「どういうわけか、嶺上開花の和了率が高いままなんですよ」 恒子「高いって、どのくらい?」 えり「えぇ。彼が嶺上を引く時は……大体、3回に1回くらいは和了っています」 咏「確かに高いけど低っ!」 健夜「嶺上か……何だか、宮永さんみたいだね」 恒子「あ、確かに。長野ってところも同じだね」 咏「……もしかしたら、彼女に対して何か思うところがあったのかもしれないねぃ」 えり「思うこと?」 咏「うん。それが対抗心か、憧れか、はたまた別の感情かはわからないけど……」 咏「あんな風に戦いたい。あんな麻雀を打ちたい。そんな思いを、ずっと持ってたのかも」 健夜「……それが去年は、ヘルカイザーとして昇華することになったと?」 咏「わかんねーけど、今の彼、ずいぶんいい顔してるよ」 咏「それだけでも、あちら側の世界に足を踏み入れた価値はあったんだろうさ」 咏「……頭ごなしに彼を否定しちゃった私は、後で謝らないとねぃ」 健夜「……やっぱり若い子って凄いね。どんな道に進んでも、色々な未来がさらに広がってる」 健夜「もし、自分が間違った道に進んだって彼が思ってたとしても……きっと、後悔はしてないだろうね」 恒子「ほうほう、アラフォーらしい若い子に嫉妬した発言だね」 健夜「アラサーだよ! あと別に嫉妬してるわけじゃないよ!」 京太郎「……ふぅ……」 咲「……京ちゃん、お疲れ様」 京太郎「咲か。わざわざありがとうな」 咲「……残念だったね」 京太郎「いやぁ、あそこまでフルボッコにされると、かえって気持ちいいさ」 京太郎「もともと、ここに来れたこと自体が不思議なくらいだからな。それに、楽しかったし」 京太郎「ところで、みんなは?」 咲「いや、その……せ、せっかくだし、私だけ先に行ってこいって……」 咲(……こんなことまで、気を回してくれなくてもいいのに……) 京太郎「しかし、やっぱりなかなかうまくいかないな。どうしても嶺上で和了れるとか、ありえないって思っちまうし」 咲「あはは、まだまだ信じ切れてないのかな。無理に私の真似なんかしなくても……」 京太郎「咲の真似してるわけじゃないさ。ただ、ここぞって場面だといつも咲を感じるんだよ」 京太郎「そういう時は……嶺上牌も、いつも応えてくれるんだ。何せ、咲と一緒に打っているんだからな」 咲「……京ちゃん……」 京太郎「でも……欲を言えばやっぱりもう少し、カッコいいところを見せたかったな」 咲「……カッコよかったよ、十分すぎるくらい」 京太郎「ん……咲にそう言ってもらえるなら、おおいに価値ある一戦だったな」 咲「来年、また来ようよ。今度は、もっと強くなって」 京太郎「……そうだな。見てろ咲、完全に負けたって言わせるくらい強くなってやるから」 咲「……私、いっつも京ちゃんには負けてるよ……」 京太郎「え?」 咲「ううん、何でもない。みんなが待ってる、戻ろう」 京太郎「あぁ、そうだな」 京太郎「……なぁ、咲」 咲「何? 京ちゃん」 京太郎「今思えば、最初に俺が麻雀部に連れてきてプラマイ0を連発してた時から……」 京太郎「ずっと、魅せられてたんだなって思うよ」 咲「……私の麻雀、そんなに凄かったの?」 京太郎「麻雀も確かにそうだけど……本当に魅せられたのは、きっと……」 京太郎「……やっぱ教えてやんねー!」 咲「ええっ、何それ! そこまで言っておいて!」 咲「部長たちも、何だか肝心なところは言わないし……私だけ、のけ者にされてる気分だよ」 京太郎「ま、そのうち言う日が来るさ。いや、そうしなきゃ駄目だろうな。男として」 咲「何言ってるの?」 京太郎「……ま、今はまだこれでいいかな。でも、そのうち……な」 久「おかえり、須賀君」 和「お疲れ様でした」 まこ「惜しかったのう、京太郎」 優希「優しい私が、頭なでなでしてやるぞ犬!」 マホ「うっへっへ、お二人さんいい雰囲気で~いたたっ!」 ムロ「こら、マホ!」 「「ただいまっ!」」 END

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