140 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/09/01(土) 17:55:32.62 ID:mjocdMjP0 怜外伝外伝・~天衣無縫の仮面~ あれは数年前の『今日』 当時、急な事故で両親が亡くなり 心神喪失していた私は 近場にあった大きめの川の河川敷で 見るともなしに川を眺めながら ただただ、ぼーっと過ごしていた そんな頃 ???「おいお前!」 唐突に現れたのは ???「俺は月からの使者!サンダーマスク!」 いかにもお祭り帰りといった感じの 珍妙なお面を被った男の子だった つづく 142 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/09/01(土) 17:59:12.91 ID:mjocdMjP0 つづいた --------- 衣「」ポカーン 男の子「どうした?」 衣「お前はなんなんだ…?」 男の子「正義の味方だ!」ビシッ 衣「いや…」エート 男の子「月からの使者!サンダーマスク!」ビシッ 衣「ええと、なんで月からの使者なのにサンダーなんだ?」 男の子「カッコイイからだ!」 衣「」イミワカラナイ 衣「衣になんの用だ…?」 男の子「お前最近ずっとここにいるな」 衣「だからなんだ…?」 男の子「よっこいしょ」ドサッ 衣「なんで隣に座るんだ…」 男の子「知らなかったのか?ここは俺の指定席なんだ」 衣「そんなわけあるか!」 男の子「あるんだよ」ニヤリ 男の子「正義の味方だからな!」ビシッ 衣「」イミワカラナイ またつづく 143 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/09/01(土) 18:01:18.51 ID:mjocdMjP0 またつづいた --------- 衣「はぁ…」 男の子「…」 衣「…」 男の子「…」 衣「…」 男の子「なぁ…」 衣「…」 男の子「わたあめ食うか?」 衣「こども扱いするな」 男の子「お、おう」 衣「…」 男の子「いらないのか?」 衣「いる」 男の子「いるのかよ!」 またまたつづく 144 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/09/01(土) 18:12:22.36 ID:mjocdMjP0 またまたつづいた --------- 衣「…」モシャモシャ 男の子「…」 衣「…」モシャモシャ 男の子「最近なんかあったのか?」 衣「…」 男の子「いじめられたとか?」 衣「ちがう」 男の子「ふむむ」 衣「というか、お前はなんなんだ。なんで衣に構うんだ」 男の子「女こど…女の子には優しくしろって、とーちゃんが」 衣「とーちゃん…か…」 男の子「うん」 衣「…」グスッ 男の子「とーちゃんと何かあったのか?」 衣「…」ヒックヒック 男の子「お、おい」グイッ 衣「うるさい!」ドンッ 男の子「うおっ!」トット 衣「どっかいけ!衣に構うな!」 男の子「はぁ…」 ザッザッザ 衣(いつもそうだ…) 衣(こうやって自ら拒絶して…) 衣(周りからどんどん人が去って行く…) 衣(自業自得も甚だしい…) 衣(我ながら滑稽千万…) さらにつづく 145 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/09/01(土) 18:13:54.80 ID:mjocdMjP0 さらにつづいた …… ピトッ 衣「ふわああぁぁあ!?」 男の子「へへっ…アイス攻撃だ!」ニヤリ 衣「なにするんだ!寝耳に氷水!」 男の子「いまだ!」グイッ 衣「うわぁ!」パタッ --------- 仰向けに倒された私の目に映ったのは 夜空に輝く幾万の星と ひときわ大きく、強く輝く月だった --------- 男の子「泣く時は上を向いたほうがいい」 男の子「下には地面しかないのだから、目の前が塞がれてしまう」 男の子「でも上を向けば美しい空が広がっているって」 衣「それも『とーちゃん』か?」 男の子「…うん」 衣「良い父を持ったな」 --------- それからまたしばらく泣いた あんなに綺麗だった月は 私の目には不恰好にぼやけて見えた そして、月がまたぼやけなくなるまで 男の子はずっと隣に居てくれた さらにさらにつづく 146 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/09/01(土) 18:15:19.86 ID:mjocdMjP0 さらにさらにつづいた --------- 衣「はぁ…」 男の子「落ち着いたか?」 衣「うん」 男の子「そっか、じゃあ、さっきのアイス。パピコだけどさ。食おうぜ」 衣「パピコ?」 男の子「うん。ちょうど半分こ出来るし。ほら」 衣「ありがとう」 男の子「ちょっと融けちまったけどな。あ、でもこの位が丁度いいかも」 衣「では、いただくぞ」 男の子「あ、ちょっと待った!」 衣「ん?」 男の子「こうやって、俺とお前で手を交差させて」ガシッ 衣「えっ」 男の子「これで俺達は友達だ!」チューチュー 衣「なんか意味あるのかこれは?」チューチュー 男の子「分かんないけど、このあいだテレビでやってて」チューチュー 衣「カッコヨカッタ…から?」チューチュー 男の子「うん」チューチュー 衣「はは」チューチュー まだつづく 147 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/09/01(土) 18:16:53.48 ID:mjocdMjP0 まだつづいた --------- 衣「衣はきっと、悲しんでいるだけではいけないんだな」 衣「これから先の事を考えていかないといけないんだ」 衣「さっき、ようやくその考えに至った」 衣「感謝するぞ。えーっと…?」 男の子「ライトニングマスクだっけ?」 衣「かわってるぞ!って、それはもういい!」 男の子「へへっ、京太郎」 衣「ありがとう、きょーたろー」 京太郎「なんか良く分からんけど、元気になって良かったな!」 衣「ふふふ、なあ、きょーたろーはずっと衣の味方でいてくれるか?」 京太郎「おう!パピコを分け合った仲だからな」 衣「なんだそれは」クスッ 京太郎「そういうのがあるんだよ!…多分」 衣「それも『とーちゃん』が?」 京太郎「いや、さっき俺が考えた!」 衣「あはははは」 もすこしつづく 148 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/09/01(土) 18:17:43.97 ID:mjocdMjP0 もすこしつづいた --------- 衣「衣はお前が気に入った!いつか比翼の鳥とならぬか?」 京太郎「ひ、ひよどり?」 衣「はぁ…平たく言うと、夫婦にならないかということだ」 京太郎「結婚?」 衣「そーだ」 京太郎「うははは、おませさんだなぁ!」ポンポン 衣「こども扱いするな!」 京太郎「ま、大きくなったらな!」 衣「そうか、ではやくそk」 京太郎「おっぱいが」 衣「」ピキッ ドゲシッ 京太郎「ぐおおおおおお!石はやめろ石は!」ゴロゴロゴロ 衣「帰る」フンッ 京太郎「お、おい、一人で帰れるか?」 衣「こども扱いするな!すぐそこだから大丈夫」 京太郎「そっか、またなー!」 衣「また、いつか」 次で最後 149 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/09/01(土) 18:18:42.64 ID:mjocdMjP0 最後つづいた --------- その後、様々ないざこざがあり 私は龍門渕に拾われた 結局再会できなかったあの男の子は 今も元気でやっているだろうか 今の私は、かぐや姫のように 厳重に守られた部屋の中に閉じ込められて 自由に外に出る事すらままならない いつか あの時見た月のように 大きく 強く 気高くなれたなら 『月からの使者』がやってきて この閉ざされた部屋から私を連れ出してくれるのだろうか 今年の『今日』も 月は 見えない おわり