霞(会場で出会ってはや数日…) 霞(会う度、言葉を交わす度、溺れていっている自覚はありました) 京太郎「いやあ、ここのところ毎日会いますね、石戸さん」 霞「ふふ、そうね。お互い縁があるのね」 京太郎「いやあ、それは嬉しいなあ!」 霞「ええ、私も嬉しいわ」 霞(余裕ぶっているものの、内心はもうてんてこ舞いの様相で) 霞(嬉しいやら、恥ずかしいやら、照れくさいやら、楽しいやら) 霞(彼と話すただそれだけで、私はこの世で一番幸せだと言えるほどです) 京太郎「…あの、石戸さん」 霞「はい? どうしたかしら」 京太郎「その、よかったら、下の名前で呼んでくださいよ。京太郎で」 霞「え…あ、あら」 京太郎「いや、あの、せっかくですし、お近づきのしるしで! 他意は…その、ちょびっとだけ!」 霞「そ、そうなの…うふ、うふふ」 京太郎「…あの、石戸さん?」 霞(願ってもないことでした) 霞(私からではとても言えないお願いごと) 霞(胸が高鳴るのが、はっきり分かりました) 霞「…それじゃあ、私も」 京太郎「え?」 霞「霞って、呼んでください。…京太郎さん」 京太郎「え、あ、はい! …霞さん」 霞「!」 霞(…その瞬間に感じた幸福感を、きっと生涯忘れない) 霞(初めての想い…きっと、これは) 霞「ふふ、ふふ…これで仲良しさんですね、私たち」 京太郎「ええ。…あの、なんで敬語なんです?」 霞「あまり…ふふ、あまり、お気になさらないで? 京太郎さん」 京太郎「は、はあ…」 霞(認めてしまえば。受け入れてしまえば) 霞(何も怖いことがなくなったかのように、するりと) 霞「京太郎さん、お電話番号、交換しません? メールアドレスも」 京太郎「そりゃもちろん!」 霞「良かった…はしたない女だと思わないでくださいね? たとえ故郷が離れても…お話ししたいの…」 京太郎「か、霞さん…へへへ、まいっちゃうな、うれしいなあ…」 霞(この想いは、身を焦がすほどの情念に。執着に変わっていきました) 霞「末永く、よろしくお願いしますね、京太郎さん」 京太郎「はーい! …東京来て良かったー」 霞(…なにがあっても離しません。なにがあっても離れません) 霞(ああ…恋とはなんて素晴らしいのかしら!) カン!