番外編 その3

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番外編
☆加賀とラーメン☆


またしても私と提督の話……というわけではない。
むしろ私と提督の話に見せかけた別の人達のがメインの話。


そして、いつものように提督が適当な人間であることが分かる話。
提督曰くこの話は私の意外な一面が分かる話だそうで。


愛宕「そういえば二人は私が来る前は二人で何してたの?」

加賀「私と提督ですか?」




天龍「あー、それ俺も気になってた。
   まさか永遠と二人でイチャイチャしてたとか」


加賀「それならばどんなに幸せだったことか」

加賀「あのお人好しのすることに振り回されてばかりでしたよ」



……こんな会話から思い出したのでこの話をしようと思う。



私と提督が横須賀鎮守府に勤務が決まり、
まだ愛宕も天龍も鈴谷も摩耶も電もいなかった頃。


仕事をしようとしない提督の横で仕事をしている私。
まあこれは今も変わらないのだけど。


そこに一人の来訪者が来ました。
その人はこの鎮守府の近辺に住む人で、
鎮守府の正門を掃き掃除している時によく挨拶をしてくれるおじさんでした。



提督「それで話とは……」


おじさんから聞いた話では、
何やらここ最近、近辺に勝手に商売をしている厄介な屋台があるとかで
それを辞めさせるのを手伝って欲しいとのことだった。


例によって外面だけは完璧な提督なので、
その近隣住宅からも信頼されている提督が言えば退くだろう、と
仕事を引き受けてしまうのだけど。


提督「参ったなぁ~。うちは何でも屋じゃないんだけどなぁ」

加賀「引き受けてから言わないでください」

提督「ふぇぇ……。面倒くさい」

加賀「仕方がありませんね。とにかく一度行ってみませんか?」

提督「んだな。行ってみるか」


ということで私と提督はその厄介な屋台とやらに行くことに。



夜。

鎮守府からは10分くらいの距離にある
商店街の中にそのお店はありました。


堂々と商店街の中に居を構えていたあたり
文句を言われても仕方ないだろうと納得する。


提督「……”北上ラーメン”」

加賀「ラーメン屋さんでしたか」

提督「ちわーっす」


物怖じしない提督はすぐにのれんをくぐる。
割烹着を着た女性が二人で経営しているらしかった。


大井「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりでしたらどうぞ?」

提督「えっ? えっと、じゃあこの北上ラーメンで」

加賀「私も同じのを」


大井「北上さん、北上さん2つ」

北上「あいよー」


提督「……狭いな」

加賀「提督、謹んでください。屋台なんだから当然です」

提督「まあとりあえず食べてみないと分かんないよね」

加賀「そうですね」


しばらくして。

北上「あいよー。北上ラーメン二つー」



ゴトン、と陶器の器に並々入ったラーメンが出てくる。
見た感じ、特別な具はない。

細麺にメンマ、海苔、なると。


提督・加賀「いただきます」


割り箸を割って食べだす二人。
黙々と食べ進め、完食。


提督「ふぅー、食った~」

加賀「どうでした?」

提督「……うん、普通。にてしてはこれで800円は高い」


屋台の中には私と提督の二人だけ。
ここからが本題。さっそく提督は店主である北上に話をすることに。


提督「あの、この店っていつからやってます?」

北上「んー? 半年くらい?」

提督「二人で?」

北上「そう。大井っちと二人でね」


提督「そうか、私は横須賀鎮守府に勤務する第一艦隊の提督なんだが」

大井「軍人が何の用事なの」

提督「え? ああいや、君達にっていうよりかは君達の店に」

大井「帰ってよ」

加賀「あの話だけでも聞かせて」

大井「帰ってよ!!!!」

大井「そうやって私からまた北上さんを奪っていこうとするのね!?」

大井「これだから軍人はこれだから軍人は……!」



しかし全く動じない提督。
それもそのはず、彼は学生時代、
もっとヒステリックな女性に付き纏われていたのですから。


提督「……この場所で勝手に商売をやられては困るって」

大井「うるさい!! 帰りなさいよ!!」

提督「近隣の人からも迷惑がられているんだって」

大井「あああああああああああ!!」

提督「熱ッッ! スープ!? こらお前食べ物を粗末にするんじゃ熱いっ!」

加賀「提督、ここは引きましょう」


提督と屋台から走って逃げ出す。


提督「全く、とんでもねえ店だな。二度と来るかよ」

提督「……とかってみんな思うから来ないのかね?」

加賀「さあ。お客さんみんなにあんな風にはならないと思いますけど、
    少なくとも第一印象は普通でしたし」


日を改めて……。


提督「ちわーっす」

北上「らっしゃー、ああ、提督か」

加賀「こんにちは」

北上「この前はごめんねー」

加賀「ストレス解消になるのでしたらいくらでも殴ってどうぞ」

提督「そうだね、頑丈な方だし、興奮しちゃうしってコラ!」

北上「あはは、二人は仲良しさんだねー。
   で、今日も立退きの件でお話?」


提督「まあな。商店街からお手上げが出てるんでさ」

北上「そっかー、でももうちょっとだけ待って欲しいんだ」

提督「なぜ?」

北上「追い出されるとかじゃなくて、
   きちんと自分達でお世話になった人達にお礼がしたいんだよ」

北上「うちらのラーメンって正直そんなに美味しくないでしょ?」

提督「まあね」


北上「うわー、傷つくな~。だから今一生懸命美味しく作れるように頑張ってるの」

提督「それで最後に色んな人に出してやろうってか」

北上「そうそう。迷惑かけちゃったのは本当だし」

北上「それに……私と大井っちの居場所を取らないで欲しいんだ」

提督「……」


大井「なんであんた達がまたここに来てんのよ」

提督「げっ!」

大井「……出禁よ出禁!! 帰れ帰れ帰れ!!!」


こうして話は途中にしてまたしても撤退。



またしても後日。
今度は大井だけがいる日にやってきた私と提督。


提督「……どうする。強行作戦で行こう」

加賀「了解」

提督「オラァー! 動くなぁ!手あげろ!」

加賀「それでは強盗みたいですよ。ここは素早く無効化するんです」


あっという間に大井を押さえつける私。
大井は抵抗もできずに提督を睨みつけるだけだった。



提督「まあ落ち着いて話を聞いてくれ」

大井「これで落ち着いていろって?」

提督「君達はなんでここで屋台をやってるんだい?」


大井が話した内容はこうだった。


元軍人同士の二人はバディだったために非常にコンビネーションもよく
最高のコンビとしてもそれなりに有名ではあった。



しかし、平和が訪れてしまったためにその活躍は
結局戦場の実戦であまり披露することもできず。

すごいすごいと口だけで言われても成果が出ていないので解散することに。

私のような戦場に出ることが出来た艦娘は軍属で残れることもあるが、
成果をあげてない場合首を切られることもあるようで。
数多の艦娘達の中でも最も不幸なコンビだと思われる。


(不幸戦艦姉妹がどうやって生き残ったのかは不明。
 おそらくだが呉さんが個人で拾ってきた可能性がある)


ちなみに、横須賀鎮守府にいる者は
上層部が首を切ったあとに入ってきているので
比較的新しい人達が多い。



そんな訳で自らの職を失った二人は路頭に迷い、
軍属中に北上がこぼしたという、


北上「あたしラーメンって好きなんだよねえ~」


という他愛無い雑談を記憶していた大井が屋台を購入し、
二人で切り盛りしていこうと持ちかけ……今に至る。

しかしながらこの横須賀の近辺ではこのような無断の路上販売は
許可していないために住民から非難の声が出ている。



提督「なるほど。で、北上は北上で迷惑をかけたから最後に美味いのを
   みんなに食わせてやりたいと……そういうことか」

大井「そうよ……悪い!?」

提督「誰もそんなこと言ってないよ」

提督「仕方がない。俺たちでその美味いラーメン作るの
   手伝ってさっさと立ち退いてもらうしかないようだな」

加賀「あの、提督。お言葉ですが、我々には我々の執務がありまして」

提督「もちろんそいつをやったあとでだ」


……。提督が仕事をするのであればいいのだけど。
そうして私達は毎日の執務のあと、北上と大井の屋台に合流して
試作を開始するのだった。


大井「まずは私の作ってみた奴なんだけど」

提督「豚骨?」

大井「ううん、ホワイトクリームソース」

提督「なんで!?」

加賀「ごちそうさまでした」

提督「食べきったの!?」



加賀「出されたものくらい残さずに食べるのが流儀です」

提督「そ、そう。じゃあ次は加賀のね……。なんで黒いんだよ」

北上「醤油ラーメン……?」

大井「いただきます……ズルル、ブバビュゥ゛ーーッ!! ゲホッゲホッ!!」

提督「きったねえな。ちゃんと食えよ。出されたものは残さず食べるのが流儀だろ」



提督「ったく……ズルル、ブバホッ!! ゲホッゲホッ!!」

提督「ぶぇええ!! ぶぇぇええーー!」


この時、提督は(本人曰く)イャンクックのモノマネを突然するのでしたが、
あまりおもしろくありませんでした。
あとでこの時の感想を聞いたら


「お前にもこんなことがあるんだな。初めて知ったよ。
 ところであれ、何いれたんだよ」

と喜んでくれていました。


提督「えっと、加賀は試食係でいいよ。いっぱい食べたいでしょ?」

加賀「そんなにはしたない女ではありません。
   ですが、ご厚意に甘えさせていただきます」

結局、北上の作ったラーメンが一番ましだったので、
これを改良していくことに。


しかし、来る翌日。
提督は何やら町民に呼び出しを受けていたので私一人で屋台に合流することに。
本当は私も提督に付き添う予定でしたが提督が先に行ってくれと言うので仕方なく。

たぶん提督は仕事の以来がいつまでも遂行されないことに苛立つ町民に
呼び出されてお叱りを受けているに違いないのですが。


しかし事件はすでに起きていたのだった。
普段屋台のある場所に屋台はなかった。


正しく言えば屋台の形をしていたであろうバラバラになった木材があった。




その目の前で跪き泣きわめく大井と
それを抱きしめる北上がいた。

そしてそれを取り囲むように町民達がいて、
バラバラになった木材に火を放っていたところだった。



加賀「止めなさい」

加賀「これ以上の騒動は横須賀鎮守府第一艦隊隊長、一航戦の加賀が許しません」


堪らず止めに出た私だったが、
もちろん知らない人も中にはいる訳で
私にすら突っかかってくるのだった。



「誰だお前!」
「おいやめろ……こ、こいつ終戦にまで持ち込んだって噂の」
「チッ、この辺にしてやるか。行こうぜ」


大井と町民の間に割って入った私を見て町民達はようやく解散しバラけていく。
私は北上から事の経緯を聞くのだった。


私が到着する以前。
いつもの場所で用意をしていた大井と北上の所へ
町民がやってきて文句を言ってきた。


大井「うるさいわね!! さっさとあっち行きなさいよ!
   これから忙しくなるんだから!!」

北上「大井っちだめだよ。そんな乱暴に言ったら」


「いつもいつもお前らには迷惑してるんだよ!」
「そんな凶暴な奴がこんなところに要られたら困るんだよ!」
「お前らが出て行かないって言うんだったらこっちにだって考えがあるんだ!」


何十人もの人間に暴言を吐き捨てた大井は
その数も分からず、とにかく疎まれていることに違いはなかった。


とうとう口だけの喧嘩だったが、大井が先に手を出すのだった。
温厚な中年男性が話し合いに近寄ってきたのを突き飛ばしたのだった。


尻もちをつく男性に対しそれでも罵声を浴びせる大井に対し
他の町民がとうとう大井の胸ぐらを掴もうとした。

その時、大井はあっという間にその人をひっくり返し地面に叩きつけた。

そこから乱闘にまで発展し、過激な集団により
屋台は破壊されてしまった。


加賀「……なるほど」

大井「あんた……終戦にまで持ち込んだって?」

加賀「……職を、居場所を失ったことで私達を恨みますか」

大井「……」

大井「……まさか。戦争なんてするもんじゃないよ。終わってよかった」

大井「それにあのまま戦い続けてたら
   北上さんも私も無事じゃなかったかもしれない」

加賀「もしよろしければ」

加賀「……もしよろしければ、私の所へ来ませんか?」


試作の時から奇妙な友情を感じている私達だったが、
何の考えもなしに誘ってしまった。


北上「ありがとう。でもごめんね」

北上「もし戦争がまた起きたとしても……。
   もう大井っちはあの場所には連れて行きたくないな」

大井「……北上さん」

加賀「そうですか。残念です」


それから沈黙が流れる。
しかしここにようやくあの男が現れるのだった。


提督「いやー、遅れてごめ……えぇぇええ!?」

加賀「遅いです。何してたんですか」

提督「あー、こういうことだったのか」

加賀「……?」


提督がこの時、何をしていたのか。


実はこの男、町民に呼び出されて何をしていたのかと言うと、
ラーメンとは全く関係のない町おこしの話を持ちかけられていたのだった。

しかし、その実態は私達をこの場所に
合流させないようにするための罠だった。


提督の勘ではあるけれど、この屋台の破壊は町の過激派達の計画的犯行。
しかし元をたどればルールを先に破っているのは大井と北上の方。
あまり強く反論できない。



提督「いや町おこしに新しく作ろうってなったお菓子の”横須賀ばなな”の
   試作品が美味いのなんのって」

加賀「……それで足止めされてたんですか」

提督「あ、一個もらってきたんだけど食べる?」


私が提督の顔面をグーで殴った二回目のことでした。
横須賀ばななは美味しかったです。


しかし、実際のところ、これだけで遅れきたわけではなかった。



提督「実はいい物件があってね」

提督「前は小さな食堂というか大手会社が経営していたチェーンだったんだけど、
   大手会社が丸々潰れて、店そのまんまの形で売り出されててさ」

提督「お前らそこで新しく店やればってー思ったんだけど」


壊されてパチパチと音を立てながら燃える屋台を一瞥する提督。


提督「どうやらすごいタイミングが良かったみたいだね」


なんとも偶然が偶然を呼ぶのであった。
大手会社は丸々潰れて社長一家は離散したとか噂を聞いた。


結局、実のところ大井と北上は町の一角でお店を開いているそう。
ただ……売れ行きはあまりよろしくなく、かなり苦しい生活をしているそう。


私と提督はたまに行くのだけど、
その度に提督は毎回出禁だと怒られるほどケチをつけるのだった。


今回の後日談。
龍驤が企画してくれた空母同士の対談というか懇親会のようなものの席で。



龍驤「なんや自分、舞鶴さんとこ拾われるまで大変だったらしいな?」

加賀「龍驤……あまりそういうことは」

隼鷹「ああ、いいよいいよー別に」

隼鷹「あたしもさー、昔は社長令嬢のお嬢様~なんて言われてちやほやされてさ」

隼鷹「執事までいたんだよ? お付の人っていうの?」

龍驤「ほんまかそれ~?」


隼鷹「でもそれが全部無くなっちゃった時は大変だったなぁー」

隼鷹「家に帰ってきたら家がないんだもんねー」

加賀「……ちなみに、どういった会社を経営していたんですか?」

隼鷹「あれ? 知らない? 数年前に潰れた大手チェーン店だけど」


まあそんな偶然もある訳だったのでした。
最終更新:2014年05月03日 16:42