042-447 歌姫、舞う!! 第1話「ささやかな始まり」 @名無し

神聖ブリタニア帝国。
それは、世界ビッグ3の一角を占める巨大な芸能プロダクション。
アメリカ大陸だけでなく、世界中で活動し、その支配力を大きくしていく巨大勢力である。
そして、つにいその魔の手が日本にも上陸してきた。
あっという間に、支配されていく日本芸能界。
そして、日本芸能界の完全征服は時間の問題となっていた。
だが、そんな時、そんな巨大な勢力に立ち向かう弱小プロダクションがあった。
その名は、芸能プロダクション黒の騎士団有限会社。
これは、この戦いに巻き込まれたマネージャーと歌姫の恋物語である。

《OPスタート OP曲「彼と私の世界は……」TVサイズバージョン 歌/紅月カレン》


歌姫、舞う!! 第1話「ささやかな始まり」


《スポンサー紹介 メインスポンサー/万歳なみこー サブスポンサー/べくたー 》

僕の名前は、ライ。
芸能プロダクション黒の騎士団の一員だ。
マネージャーなんて仕事をやっている。
もちろん、弱小プロダクションゆえに大変な毎日だけど、それはそれで充実した日々を過ごしている。
それはなぜかって?
それは……。
「ねぇ~、ライっ。収録終わったよーっ」
赤毛の少女が、スタジオから出てきて、僕を見つけると手を振って駆け寄ってきた。
「お疲れ様っ。はいっ……」
僕はいつもどおり、水筒からよく冷えた麦茶を注いで手渡す。
「そうそう。これこれ~♪」
機嫌良さそうにそれを受け取り、一気飲みする赤毛の少女。
ぷはーっとか言っちゃってる。
その様子は普段の彼女で、僕にとっては見慣れたものなのだが、問題はここがTV局だという事。
だから、思わず注意してしまう。
「カレンっ……。一応、芸能人だから、あまりはしたない格好を見せちゃ駄目じゃないかっ」
僕がそう言うと、「ふふーんっ」と言いながら彼女がニタニタ笑う。
あ、なんか嫌な事考えてないか……。
そんな予感がしていると、僕の耳元に口を近づけ囁いた。
「二人で家にいるときは、何も言わないくせに……」
その言葉に、僕は真っ赤になる。
そう、僕と赤毛の少女、いや、カレンは付き合っているのだ。
普通、マネージャーがタレントに手を出す事は、禁止されているのだが、僕らの場合、順序が逆なのだ。
カレンと付き合い初めて半年後に、彼女が歌手としてデビューする事が決定。
芸能界という世界に彼女が入るのを心配して僕が反対していたら、ある男の一言で、彼女のマネージャーとして働く事が決まってしまったという流れなのである。
「そんなに心配なら、彼女をお前が守ればいい」
その男、芸能プロダクション黒の騎士団のゼロ社長はそう言った。
そして、僕は、彼女の夢を尊重し、彼女の傍にいる事にしたのだ。
苦労は多いが、それはとても楽しく充実した日々。
「い、いいじゃないかっ……。僕以外の人間に見せたくないんだよっ。リラックスしているカレンの姿をっ」
なんとかそう言い返す。
その言葉で、真っ赤になるカレン。
まさか、そう返してくるとは思っていなかったに違いない。
しばし無言で顔を真っ赤にして見詰め合う二人。
だが、僕はハッと我に帰ると彼女の手を引いてその場を離れることにした。
そう、ここはスタジオの出入口に近い廊下なのだ。
こんなところで、二人の世界に没頭するわけにはいかないのである。
「えーっと、次の収録に行くよっ……」
僕の言葉に、膨れっ面のカレン。
彼女にしてみれば、歌手としてビッグになりたいという夢もあるが、それと同じくらいに僕と一緒のときを過ごしたいという思いもあるらしい。
それが、彼氏としての僕の嬉しさであり、マネージャーとして頭を抱える事なのだ。
複雑だよなぁ……。
でも、僕は離れるつもりはない。
僕は、彼女と共に歩いていく。
そう決めたのだから……。

「えーと……」
私は困っていた。
自販機の前をうろちょろするものの、お財布はマネージャーが持っているので買えない。
でも、今日入った新商品のジュースがとてもとても気になって仕方ないのです。
自販機の上の方にテカテカのシールで飾られた商品見本が飾ってある。
今期期待の最新作!! これを飲まずにジュースを語るなっ!!とか派手なうたい文句まである。
あー……。
あーーー……。
こういう新商品、大好きなのよねぇ。
こう、買って、飲むときのわくわく感がいいのよ。
そんな事を思いつつ、回りを見渡す。
だが、肝心な人物は見当たらない。
こういうときに限って、ギルフォードさんったら傍にいないんだから……。
少し、愚痴ってみる。
そんな時だった。
ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん。
横から手が伸びてきて、お金を自販機に入れる人がいた。
あ、邪魔になってはいけないわ。
私は慌てて横にずれようとする。
その結果、自然とその人物を見てしまう。
そこには、銀髪の優しそうな笑顔の男性がいた。
「す、すみません……」
そう謝って、場を離れようとする私。
ガチャン。
商品が出る音が響き、それを手に取った彼が私に声をかけてくる。
「よかったら、どうぞ……」
「え?!」
その手には、私が飲みたがっていた新商品があった。
「えーーと……」
私が思わず躊躇していると「これじゃなかったの?」と言って彼が残念そうな顔をする。
「い、いいえっ。これです」
私は思わずそんな事を口走ってしまう。
「よかった。はいっ……」
その言葉にほっとして、その新商品を私の手に握らせる彼。
「で、でもぉ……」
「気にしないで。ここで仕事している人は、お財布、マネージャーさんに預けている人も多いからね」
彼はそう言うと微笑を残して去っていく。
私は、その後姿をうっとりと見詰め続けていた。
これって……もしかして……。
運命の出会いなのかも……。
私は、そんな予感に包まれていた。

「ねぇ……。ギルフォードさん」
帰宅途中の車の中で、ユーフェミア様が言いにくそうに聞いてくる。
そういえば、TV局ではぐれて、自販機前で見つけた時から様子が変だ。
何かあったのだろうか……。
気になるものの、ここは黙って見守る事にしょうと判断し、彼女が言葉を続けやすいように相槌をうつ。
「はい。なんでしょうか、ユーフェミア様」
「あのね……。今日、TV局でお世話になった人がいるの……」
その言葉に驚き、慌てて車を路肩に寄せる。
「な、なんとっ。私がいない間に……」
こくんと頷くユーフェミア様。
なるほど、それでだったのか。
私は、それで少しほっとした反面、自分の不甲斐なさに悔しく思ってしまう。
コーネリア様っ。申し訳ありません。
このギルフォード、まだまだ未熟でした。
そんな私をよそにユーフェミア様は、言葉を続ける。
「私ね、お返ししたいと思うの……」
「そうですね。それがよろしいかと思います」
その私の返事に、ユーフェミア様の表情が明るくなる。
でも誰か調べる事が先決だと判断し、私は、ユーフェミア様からいろいろ聞くことにした。
その人物の特徴を話しながら、実に楽しそうに笑われるユーフェミア様。
そんな様子がとても可愛らしいと感じてしまう。
さすがは、神聖ブリタニア帝国No.1アイドルだ。

《アイキャッチ ユーフェミアバージョン》

《万歳なみこー PS●ゲーム「歌姫舞う!」CM》
《べくたー OP、EDシングルCD CM》

《アイキャッチ カレンバージョン》

それは帰りの車の中での事だ。
後ろの席で、私とライが二人並んで座っていると、彼がバッグから何かを取り出した。
「はい。カレンもどーぞ」
そう言って、ライが2つのうちの片方のペットボトルを差し出してくる。
「うん? 新商品? 」
「うん。なんか、飲みたそうにしていた娘がいてね。だからついでに買ってみたんだ」
「ふーーーん」
そんな返事をしながら、ピンときた。
「また優しくしてないでしょうね……」
すこし語尾が震えているのは、わざとではない。
「も、もちろんだよ」
慌てて答えるライを苦笑しながら見つめる。
あー、これは優しくしたな……。
付き合いだしてわかったのだが、ライは優しすぎるのだ。
それも誰にでも優しさを振りまいてしまう。
それがいいところでもあり、彼女になった今はとても不安な要素の1つでもあったりする。
もう…、仕方ないなぁ……。
私は、そう思いつつもペットボトルを受け取って言った。
「誰それとあまり優しくしないでよ。ライは、私のものなんだからっ……」
それは、独占欲。
私の我が侭なのだと思う。
だが、こうやって釘を刺すくらいは許されるんじゃないだろうか。
だって、ライは私の彼氏だもの。
そんな私の気持ちを感じてくれているのだろう。
ライも私を見て微笑む。
「わかってるよ。僕はカレンのものだから。心配しないで……」
彼の甘い声がすごく心地いい。
もーっ、本当に女殺しなんだからっ。
そうは思うものの、これはこれでいいのかもしれないと思う。
「こんないい女、他にいないんだからね」
「うん。僕は、カレン一筋だから」
そう言って微笑むライの顔を見つめた。
「絶対だからね」
その言葉に頷く彼。
それだけなのに、すごく安心してしまう。
何でだろう。
そう思っっ考え込んだ事も一回や二回ではない。
で、結局行き着いたのは、ライだからという事だけ。
つまり、私、紅月カレンは、ライにベタ惚れしているのである。

「なにっ、ユフィーが世話になった者がいると?」
「はい。そうなのです、コーネリア様」
ギルフォードが報告書を提出しつつ、説明する。
「ふむー……」
しばらく、その説明を聞きながら報告書をチェックするコーネリア。
その表情は、きりりと引き締まったまま。
だが、口元が少し嬉しそうに見えるのは、間違いではないだろう。
ふふふっ。ユフィーのやつめ、お世話になったから、お返しがしたいとはな。
あの子もきちんと言うようになったという事か……。
姐としては嬉しい限りだが、部下の前ではそういうところは見せられない。
「で……、その人物の調べはついたのか?」
「はっ……ですが……」
その途端、ギルフォードの言葉が濁る。
「どうしたっ、きちんと報告しないかっ」
「はっ、失礼しましたっ」
ギルフォードがびしっと姿勢を正し、ある人物の名前を上げて、詳しく説明する。
その説明で、彼がなぜ躊躇したのかよくわかった。
「そうか。わかった。もう下がっていいぞ」
「はっ」
ギルフォードが退室し、コーネリアは窓際に立ち、外の風景を眺めた。
「どうすべきか……」
恩を返すのは、よい事だ。
だが……。
やつは……。
……。
決断できないでいる自分が不甲斐なかった。
そんな時だった。
机の上の受話器が鳴った。
ディスプレには、シュナイゼルという名前が浮かんでいる。
そうだ。
兄上なら……。
コーネリアは、受話器を取ると、このことについて相談する事に決めたのだった。

つ・づ・く


《EDスタート ED曲「貴方が好き好き~、大好きなの」TVサイズバージョン 歌/ユーフェミア・リ・ブリタニア》


次回予告
「なんか、ライにスカウトの話が来てるんだって~っ」
「そうなんだ。それで、すごく困っているんだ」
「ふーーん、で、どこから?」
「それが……」

「次回 歌姫、舞う!!第2話『僕にスカウト?!どうすりゃいいのさ』に、きりきり舞いさせちゃうからね(はーと♪)」
「えーっと……カレン、あんましかわい子ぶりっこは、似合わないって気がするんだけど……」
「仕方ないじゃないのっ。そうしろって脚本に書いてあるんだからっ……」
「そ、そんなに怒らなくても……」
「じゃあなによぉぉーっ」
(音声、画面フェードアウト……)


最終更新:2010年02月23日 00:36
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