「しかしすごいよなぁ……」
整備をしていた一人の団員が何気なく呟く。
「本当だぜ……」
同じようにナイトメアを整備していた他の団員も答える。
そして、それはその場にいた団員にあっという間に広がっていき、全員が2機のナイトメアの肩に描かれたものに注目していた。
撃墜マーク、或いは撃破マークといった方がいいのかもしれない。
2機のナイトメア、紅蓮弐式と試作先行量産型月下。
黒の騎士団の双璧といわれるエースの機体。
数多くの激戦を生き抜き、戦い抜いた歴戦の勇士、その肩に書かれた撃墜数は、22と16。
そして、そういう話題になると、持ち上がるのはどちらが強いかという原始的な、それでいて本能的な興味。
「やっぱ、紅蓮の方が撃破数多いし、紅月隊長の方が強いんじゃないか」
「いやいや、ライ戦闘隊長は、最近参戦して16機だ。こっちの方がすごいぜ」
「確かに……。戦闘参加の時期を考えれば……」
「違うって。あの白兜がいなけりゃ、倍は撃破出来ていると思うぜ、紅月隊長は……」
こうなってしまうとただの水かけ論でしかない。
で、行き着く先は……
「僕とカレンのどちらかが強いかだって?」
「へぇ……。そんな事が話題になっているんだぁ……」
そう、結局は二人に話して、決着をつけてもらうことになるのである。
「うーん、どうなんだろう……。カレンは、どうする?」
困ったような反応を示すライに対して、カレンは面白いおもちゃを見つけた子供のように目をきらきらさせていた。
「いいじゃないのっ。面白そうだし……」
その様子を、ライは苦笑して見ている。
「まぁ、カレンがいいなら……」
「じゃあ、やってみましょうよ、ライ」
そう言って二人はその場を立ち去ったのだった。
――2時間後
結果を聞きに言った団員は、聞かなくても結果を知る事となる。
別にうわさを聞いたとか、戦っている様子を見たわけではない。
いや、そんな事をしなくても、二人の姿を見ただけで結果がはっきりとわかってしまった。
ライ戦闘隊長の勝利。
それは間違いないらしい。
なぜなら、ライの頬にカレンのものと思われる紅いキスマークと言う名の撃墜マークが新しく書き込まれていたから……。
だけど……、やはり、この場合は、紅月隊長の勝利なんではないだろうか……。
いろんな意味で……。
その団員は、そう思ったのだった。
<おわり>
最終更新:2009年11月20日 20:00