043-432 蒼き悪夢 @パラレル"

新皇帝、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアにたてつく反乱分子として処刑されることとなったナナリー達を護送するパレード。
扇をはじめ、カレンや玉城、あまつさえナナリーまでもが見せしめとなっているこの状況下、静かに計画は進んでいた。


ルルーシュの、最後の計画が・・・・・・。


「・・・・な、なんだ?」
列の先頭を行っていたサザーランドが停止する、その視線の先に居たのは奇跡を起こす者。
「ゼ、ゼロ!?」
「ゼロが!?」
「ゼロだと!?」
そのパレードを見物していた人々誰もが驚愕する、まさかゼロがここに来るとは、と。
「まさか、ルルーシュ達がやろうとしてる事って!?」
計画の全てを悟ったカレン、その間にゼロ、スザクはマントを翻し駆け出す。
サザーランドが応戦するも、彼にかかっているギアス、元々の身体能力、それらすべての条件が弾丸をことごとくかわさせる。
「撃つな!!私がやる!!」
ジェレミアが打って出る、しかし彼もこの計画を知り賛同する1人、すんなりとスザクを通してしまう。
(行け、仮面の騎士)
かわしたスザクは、その勢いのままルルーシュの目の前に降り立ち剣の切っ先を突き付ける。
「・・・・・」
ニヤッと笑うルルーシュ、こうなる事も全て計画の内。
あとはこのまま、世界の全ての憎しみを背負い、命尽きるだけ・・・・そのはずだった。




「ふざけた茶番はもうたくさんだ!!いい加減にしろ!!」



「「っ!!」」
その場に声が響いたわけではない、だが、ルルーシュやスザクにナナリーまでその場にいた全ての人の脳裏にその声が響いた。
憎しみに満ちた、怒りの声が。
(今の声・・・・ま、まさか!?)
スザクは聞き覚えのある声を聞き剣を下す、自分が聞いたその声はもう聞けないと思っていた、その事に目を見開き絶句する。
(そんな・・・・だって、あの時確かに)
(戦死・・・・なされたのでは)
カレンも、ナナリーも同じだった。
かつて、いや、今でも想うその人の声だったから、しかし最も絶句しているのは、その声を必死に否定しようとしているのは、他でもないこの計画を打ち出した張本人だった。
「陛下!!南東より高速で接近する機体が。こ、この機体は!!」
「ば、馬鹿な・・・・そんな事が・・・・」
空を爆走するKMFが1機、それはかつてスザクが乗っていたランスロットに似ていた。
「ランスロット・クラブ・サイサリス!!」
そう、先の大戦でナイトオブゼロによって撃墜されたはずの機体、そのパイロット諸共撃ち落とされたはずの“蒼き死神”として恐れられた存在――――。
「「「ラ、ライ(さん)!!」」」
そこからは尋常ではない怒りのオーラが発せられている、その場に居る者すべてが動けない程の。


コックピットのライの額は血で黒く汚れ、スーツはボロボロで本来の役割を果たせない。
クラブすらもその怒りを醸し出しているかの様だった。
塗装は剥がれ落ち、黒く汚れ、左腕はサザーランドの物を代用している。
いかに傷つこうと、立ち上がる復讐人の様ないでたちだった。
「ライ、まだ生きていたのか!?」
「当たり前だルルーシュ!!あの時僕は言ったはずだ、必ずこの日本に帰ってくると、そしてユフィとダールトン将軍、散って逝った仲間の無念を晴らすと!!」

あの時の、守れなかった悔しさを胸に今までラウンズとして闘ってきた日々、多くの死にふれ、いくら心が擦り切れようとも、張り裂けようとも戦い続けた。


日本に帰る事を夢見て。


「貴様を信じてきた仲間を裏切り、数多くの人の命を無理やり奪った!!下劣な事しかしない貴様によって作られた平和なぞ、偽りの物でしかない!!」
「ライ!!ルルーシュは―――」
「貴様もだスザク!!」
ライの怒りの矛先は、反論しようとしたスザクにも及んでいた。
「貴様もまた仲間を裏切った!!親友を最悪な形で裏切り、僕をも裏切った!!あろうことか今、英雄として祭り上げようとされるだと?そんな事が許されるものか!!」
僕の言動は自分でも何を言っているのか、何をやっているのか判らなかった。
ただただ許せない、その想いが僕を突き動かしていた。
戦いの中で見つけた僕の大切な人も、居場所も、何もかも奪われた。
そう、僕は今復讐人なのだ!!そして、自らの復讐を果たす為に戻ってきた!!


(ライ、なぜ生きている・・・・なぜ!?)
皇帝側の中で最も厄介なライを俺は真っ先に倒したはずだ、始めはおされていたものの、スザクにかけたギアスで完璧に落としたはず!!何故!?
そこで俺は、フルスピードで迫って来るライの駆るクラブ、その右腕には巨大なバズーカを装備されていたのに気付く、今までの物とは比べ物にならない程巨大なもが。
「ライ、貴様・・・・一体・・・・何を」
「なにルルーシュ、Mk-82型の弾を叩きこむだけさ、ただ―――――」
次の言葉に誰もが凍りつく事になる、その地獄から聞こえてくる様な重い声から発せられるその言葉に。



核弾頭だけどね




「「「なっ!?」」」
「ら、ライさん!!待ってください、そんな事をしては―――」
ナナリーの必死の言葉、親衛隊に所属していた当初なら、この言葉も耳に入っていただろう。
「君も一緒のほうがいいかなナナリー、大好きなお兄様と共に行く事が出来るんだ。その方が幸せだろ?」
「ラ、ライさん・・・・」
しかし復讐人となっている今のライには届かない、さらに気が狂っているかのように自分の思考がめちゃくちゃで、ライは狂気に走っている。
そんな人間には言葉を聞く術など有りはしない。
ナナリーは絶句する、あまりのライの変貌に。
「ライやめて!!あなたは、罪も無い人まで巻き込む気なの!?」
「黙れカレン!!支配され、ただ惰眠をむさぼっていただけの輩に、生きている資格など有ってたまるものか!!」
毎日戦い続け、常に気を張り巡らし、いつ死ぬとも判らない日々を送ってきたライにはここに居る人間など“ただ生きている”としか最早思えなくなってしまった。
(そうだ、全てはこの日本が元凶、ここにいる意思が、ここのすべてが元凶なんだ!!こんなくだらない国の為に、皆は!!)
聞いたカレンも言葉が出なくなってしまった、ライのあまりの変わりように。
僕は奥歯を強くかみしめ、拳を爪痕が残る位強く握り、おもいっきり右のガラスに守られている赤いボタンを叩いた。
ガシャン!!とした音と共に手からは血が流れる、けど痛みはまったく感じなかった。
こんな痛み、今まで散って逝った英兵達の悔しさ、苦しみから比べればどうという事は無かったからだ。
数秒後、目の前のディスプレイにはオールグリーンを示す表示が点灯していた。


その合図は、核の安全装置が外され、射撃準備が出来た知らせだった。


ルルーシュのいる所まであとわずか、僕は力一杯踏んでいたペダルに更に力を込め、操縦かんを握りしめる。
その時の僕の心は高ぶっていた。
(長かった、今まで見ていた悪夢も、全ての呪縛からも解き放たれる、やっと仲間の無念を晴らす事が出来る!!)
護衛のサザーランドは一斉にアサルトライフルをクラブに撃つ、しかしことごとく弾丸はクラブに当たらない。

「この様な弾幕など!!」
ルルーシュ達の一団の真上に着くと、ライはクラブを天へと向けクラブを上昇させる、
ディスプレイに映るルルーシュ達は必死に僕に何かを言っている、でも聞こえないし聞く気も無い。
「ライ、頼む!!殺すなら俺だけでいい、だから、だからナナリーだけは!!」
(いい気味だなルルーシュ、良かったじゃないか?最愛の者といっしょに逝けて)
「お、俺は・・・・俺は、生きなきゃいけないんだ・・・・でも」
(苦しいだろうなスザク、ギアスに翻弄されている愚かな騎士、だが安心しろ、ギアスの力でも生きられはしないから)
「ライ、お願い、やめて!!」
「ダメですライさん!!こんな事はいけません!!」
(カレン、ナナリー、君達がもっとしっかり支えていればこんな事にはならなかっただろうに。でも大丈夫、大好きな人達も置いては逝かせないから)
心の中で冷たく笑い、其々の人へ最後の言葉をかける。
そしてターゲットスコープを作動させ、皆を代表してルルーシュにターゲットを絞らせる。
その時、僕の口は勝手に開いた。
「待ちに待った時が来たのだ、多くの英霊が無駄死にでなかった事の証の為に―――」
バズーカの銃口をルルーシュに向け、僕は発射のボタンに掛かっている指にゆっくりと力を込めていく。
「再び我らの栄光を取り戻す為に、己が信念の成就の為に―――」
そしてこの瞬間、僕は一気に指に力をかけ、最後の審判を下した。



「日本よ、私は帰って来たーーーーー!!!」



その瞬間、銃口からは強烈な光と轟音が鳴り響き、辺りを包みこみ焼き尽くしていく。
ルルーシュとスザク、カレンやナナリー、ここに居た人は全てが無に還ってしまった瞬間だった。
その後には
「ふふふふ、ひぃはははははは、ふははははははははは!!」
ライの狂気に満ちた高笑いしか残らなかった、と云う。


最終更新:2009年12月15日 00:43
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