トウキョウ租界にその権威と威容を誇るブリタニア政庁のとある一室の窓際に、一人の女性が立ち外の風景を見るともなく見つめている。
憂いの霧を纏っているかの様なその雰囲気、目の前の光景ではなく別の何かを見つめているアメジストの眼差し。
その心を己れの掌の内に収めたいと男共が欲する美女の心が、ここに無い事を誰が見ても分かるだろう。
その女性――コーネリア・リ・ブリタニアは、はあ、と彼女を知る者からすれば到底信じられない物憂げな吐息を、薔薇の花弁の様な唇から零す。
コーネリアがこの世で最も愛する者のひとりである実の妹ユーフェミアでさえ、この姉の姿を見たら、まあ、と彼女の騎士である枢木スザクが、桜の花びらの様だと例えた唇を開くだろう、
吐息の中には寂しさと不安と心細さと混ざり合い、普段のコーネリアの勇ましく凛々しい姿の内に秘めている女性の部分を露わにしていた。
そしてその吐息は、コーネリアの気持ちを、こう代弁していた――最近、二人の時間が無い、と。
神聖ブリタニア帝国の歴史上例を見ない新しい試みである行政特区日本の成立による余波は、このエリア11と呼ばれる旧日本国のありとあらゆる場所に波及している。
それは、もちろん、このトウキョウ租界に頑として聳えるブリタニア政庁にも言えることである。
行政特区日本成立によって、エリア11に赴任していたブリタニア帝国関係者の仕事量は大幅に増加していたが、殊にエリア11総督コーネリアに押し寄せてきたしわ寄せの量は生半なものではない。
ましてやコーネリアは『命を賭けるからこそ統治する資格がある』という考えの持ち主である。
行政特区構想に反対するブリタニア内部の人間や旧日本国の残党やテロリストが各地で行動を起こせば、自らナイトメアフレームを駆って親衛隊の先陣を切り戦う武断の烈女だ。
それでも武にのみ傾倒している人物であったなら、最大のブリタニア反対勢力である黒の騎士団が行政特区に組み込まれたことで、現在エリア11全体の治安は改善されているからむしろ暇という退屈な休息を得られもしただろう。
だがしかし、コーネリアは内政に関しても優秀といえるだけの能力を持ち、また志し高く他者に対する以上に自身に厳しい高潔の人である。
そのため、ナイトメアフレームに騎乗する機会は減っても、いっかな仕事量は減る事はなく、一昨日も昨日も今日も東に西に北に南に、と政庁の外でも中でも駆け回らなければならなかった。
それを考えればコーネリアが恋人と二人だけの甘い時間を作る余裕がなかったことも、仕方のないことに分類されるべきだろう。
たとえ当人同士がどれだけ二人だけの時間を作り、傍に在りたいと願っていたとしても、二人には立場がありそれに伴う義務と責任があり、そして二人ともその義務と責任に対して全力で全うしようという意識の持ち主であった。
コーネリアとその恋人であり同時にコーネリア親衛隊の隊員であるライの二人が、ようやく二人で会う機会に恵まれたのは、最後に二人きりになってから実に2週間ぶりのこと。
それまではコーネリアの専任騎士であるギルバート・G・P・ギルフォード卿や腹心中の腹心であるアンドレアス・ダールトン将軍ほか、親衛隊の同僚や侍従たちが同席していて三人以上でしか会うことができなかったのである。
すでに政庁での各部署の業務時間は終わりを迎えており、コーネリアの執務室に余計な雑音が届くことはなかった。
とっぷりと夜闇の帳が舞い降りたトウキョウ租界は、夜になってもなお眠らぬ人々の営みによって、宝石箱をひっくり返したような輝きに包まれており、見慣れた今もふとしたときに感嘆の念をおぼえる。
珍しくコーネリア手ずから淹れた紅茶のカップからは芳しい湯気が立ち上り、久しぶりに邪魔の入らない時間を過ごすことができると、ひそかに豊かな胸のうちを高ぶらせていた。
用意した紅茶や薄紅色の絹を纏っているようにほんのりと赤らんだ頬と、コーネリアなりにこの一時を楽しみにしていたことの表れなのだが、ライは気に入らなかったようだ。
でなければ、この状況の説明がつかない。
いや、それでもこの状況の説明がつくとは思えないが、しかしそれ以外の理由が思い当たらない。
どん、とコーネリアの背が音を立てる。壁だ。もう下がれない所まで下がった結果である。ではなぜコーネリアが後ろに下がったのか? 答えはいたってシンプルであった。
押されたからだ。誰に? ライに。コーネリアの恋人である筈のライに、だ。押されたと言っても直接肩や胸を押されて突き飛ばされたわけではない。
ただにこにこと笑みを浮かべながら近づいてくるライに気圧されて、自然と後ろに下がってしまっただけだ。
普段なら脆弱者の一言と共に頬を張る位はするコーネリアであるが、いつもとあまりに様子の違うライを前に言葉が出なかった。
様子が違うとは言っても、寝ても覚めてもライを想う様になったコーネリアでなかったなら気付かないだろう、ささやかな違いである。
ライは入室するや否やコーネリアに向かってまっすぐに歩いて来て、コーネリアが何か口にするよりも早く詰め寄り、有無を言わさず笑みを押し付けてこうして壁まで追い詰められてしまった。
ライは傍目にはこれまで幾人もの女性を虜にしてきた微笑を浮かべている。
ライ自身に異性に対して何か訴えかけようという意思はないにも関わらず、微笑を向けられた者の胸に高鳴りを与える笑みだ。
コーネリア自身、向けられたこの微笑みに何度胸を高鳴らせてきたことか。この胸の高鳴りが恋であると認めるのには随分と時間がかかったものだが。
しかし、恋を実らせた女の勘が告げている。この微笑はいつものライの微笑ではない、と。
表面上に浮かび上がっている微笑は見慣れた形を模っているが、その薄皮一枚を剥いだ下には、何かの感情を隠している。
その感情は、少なからず自分にとって歓迎せざるものであることもわかる。
ただし、危険を告げるのは女としての勘ではなく、ブリタニアに反抗するいくつものエリアを制圧したブリタニアの魔女としての勘であった。
やや遅い初恋を迎えた乙女ではなく、荒々しく凛々しく気高い戦士としての直感が訴えている――それほどに危険な感情だというのだろうか?
自分に対してライが抱いている感情は?
「ライ?」
「はい、殿下」
思わず――おそるおそるとは思いたくはなかった――愛しい目の前の男の名前を呟けば、何の躊躇もなく返事が返ってきた。
にっこり、という言葉がふさわしいなんと愛らしい笑顔である事か。
しかし、だからこそ悩まずにはいられない。はたして自分はライにこのような仮面の笑顔の下に感情を隠させるような、初めて目にする行為をさせる事をしただろうか。
こと戦争に関してはブリタニアでも屈指の回転の速さを発揮するコーネリアの頭脳だが、このような男女の二人っきりの場面ではまるで働いてくれない。
戦争は百点、恋愛は零点、それがコーネリアという女性の人間成績表であった。
コーネリアは息が掛かるほど近い所にあるライの微笑に対して何を言うべきか、どのような行動をとるべきかの判断がつかない。
「殿下」
「なんだ」
「すでに業務の時刻は過ぎおります。ゆえにこれから僕が口にする事は、殿下を愛するライという男の言葉とお考えください」
「あ、う、うむ。よかろう」
氷の海の青を写し取った瞳にまっすぐ見つめられると、体の奥の方まで掴み取られたような、それこそ本当に心まで射抜かれたような気持ちになり、コーネリアはわずかに体が火照るのを感じる。
ましてや、面と向かって、“愛する”と囁かれるとは。
コーネリア自身恋愛経験値0のレベル1の乙女であるが、ライ自身もアッシュフォード学園に保護されて以降は、コーネリアに対する慕情が初の恋心とあって、恋愛の経験ではコーネリアとさほど変わらない。
当事者たちの性格もあるだろうが、愛を囁き、恋を語る事に慣れていない二人の間で、互いに愛しているだとか、大好きだとか、異性に向ける好意を示す言葉が出てくるのはきわめて珍しい。
将来はともかく、まだ互いの気持ちを伝えあったばかりの二人は、自分達の意思を言葉にするのにも躊躇いを覚えるような段階だった。
火が着いたように熱い頬を意識しながら、コーネリアはついと目を伏せてライの視線から逃れた。
そうでもしなければまっすぐに見つめてくるライの視線に囚われて、何も言い返せなくなりそうだったからだ。
愛する者に身も心も委ねてしまいたい衝動と、他者――恋仲であろうと――に寄り縋る事を是としない苛烈で厳格なコーネリアの武人としての部分との妥協の結果である。
コーネリアという人間を構成する大きな要素である武人としての部分が、更なる動揺に襲われたのは、熱く耳朶を打つライの吐息と共に囁かれた新たな言葉が、鼓膜を妖しく震わせたとき。
「寂しかった」
「!」
「脆弱、惰弱とお怒りになられるかもしれませんが、これが僕の偽らざる本心です。殿下とお会いできず寂しかったです。許しは請いません。ですが、口にすることをお許しください」
ライもまた、自分と二人きりで会えない事を思い悩んでいた――その事が分かって、コーネリアの心の内に喜びという名の感情の花が一輪、新たに咲き誇る。
思う相手と同じ感情を共有するというのは嬉しいものだ。
飛び抜けたその能力のわりに子供っぽい事を言うライの事が微笑ましく、また愛おしく、コーネリアは逸らした視線を戻して、あやすように、からかう様に答えた。
ライの心情を吐露されたことで、コーネリアに少しばかり余裕が戻ってきたらしい。
「大げさだな。余人を交えた状況でなら、なんども会ったではないか」
「殿下とふたりだけで。これが大切なんです」
嬉しい事を言ってくれる。自分は今どうしようもなく頬を緩めている事だろう、とコーネリアは思う。ユフィには、今の自分の顔は見せられないな、とも。
自分とは異なり、エリア11の副総督として赴任するまでの間、愛妹ユーフェミアは皇族としては比較的年頃の少女らしい生活を送ってきた。
その為に、生まれた時から今に至るまで皇族としてみても、年頃の少女らしい感性を養う生活を送ってこなかったコーネリアに対して、なにくれとなく意見を口にして来る。
コーネリアの威圧的な雰囲気や軍服、皇族としての服装以外にはまるで必要性を感じていない事に対し、
華美に着飾ったドレスや二十代後半にさしかかった女性が着るにはどうも、と躊躇する可愛らしい衣服や装飾品を勧めてきて、あわよくば着せ替え人形にしようとしたりする。
とくにユーフェミアは最近では――スザクを専任騎士にしたころから――恋愛の事に着いて、時に遠まわしに、時に直接的にコーネリアに尋ねるようになってきている。
そのユーフェミアに、熱せられたチョコレートか飴のように甘い感情にとろけた自分の顔を見られたら、それこそ夜の間中、ライとの馴れ染めからなにから問い詰められるに違いない。
多忙な昨今、あまり睡眠が取れずかすかに疲労の澱が溜まっている今、ユーフェミアの止まらぬ口撃に晒されては溜まったものではない。
(とはいえ、いつかはきちんと話をせねばな)
ユーフェミアに、ライを夫にするつもりだ、と。その事を想像するだけで、コーネリアの頬はさらに赤みを増し、心臓が全身に送り出す血液は新たに熱を帯びて行く。
そんなコーネリアの様子が気になったのか、ライが小首を傾げる少女の仕草で問いかける。
「殿下?」
美貌という言葉を遣うのに全く躊躇を覚えぬライの顔立ちは、紛れもなく男のものであるが、ふとした時に見せる柔らかな仕草には、思わず同性でもドキリとさせられる。
いわんや、それを見た異性に対する効果たるや絶大である。
「……まったく、お前という奴は、大した男だよ。私に、このような態度を取らせるのだから」
「いつも殿下の事を想っていますから」
狙っているのではないだろうが、ライの言葉はコーネリアの心の琴線に触れて喜びの音色を奏でる事が多い。
無自覚な言葉と分かるからこそ、まっすぐで他意の無いライの言葉は耳に心地よい。
ふふ、と我知らず零れる鈴を鳴らしたような笑い声が、自分の耳に届いた時、不意に柔らかで湿った感触が左の頬に触れた。
ちゅ、と音ともいえぬ小さな音も聞こえた。
「……え?」
「ん」
今度は軽く啄ばまれるようなこそばゆい感触が左の耳にひとつ、ふたつ、と続く。
「な――ら、ライ!?」
「ご不快でしたら、拒んで下さい。それまで、止まりそうにありません」
思わず一オクターブ上がったコーネリアの声にもライは動揺を示さずに、休むことなく唇を動かして行く。
かすかに濡れたライの唇は飽きることなくコーネリアの肌を、硝子細工を扱う繊細さで触れては離れて行く。
繰り返される優しい感触に、数瞬の間コーネリアの思考は完全に熱に浮かされて働くことを止める。
年齢に比して初心もいいところの二人にとって、言葉で愛情を示すのに恥じらいを覚えるのと同様に、体と体を触れ合せて親愛の情を伝えあう事は非常に難しい。
互いを恋人であると認識している以上は、二人とも肉体的接触――手を繋ぐなり、ハグするなり、キスするなり、
さらにはそれ以上の行為も――を意識しないではなかったが、実行に移せていたかというと、これはノーだ。
唇と唇を触れ合せる程度の、ともすれば挨拶程度に過ぎないのでは、というキスでさえ二人の間では未実行である。
それが、いきなり、頬とはいえライは躊躇いなく唇を寄せ、行為を認識したコーネリアが対応に戸惑う間に、キスの雨を降らして行く。
頬に、軍服の襟から除く白い首筋に、そのまま唇を離さずに咽喉や、美しい顎のライン、右の頬、額、とライの唇はコーネリアの体の場所を問わない。
「・・・・・・・・・・・・っ!!!」
声にならない声を上げるコーネリアは、身を捩ろうとして自分の体がライの腕の中に抱きとめられていることにようやく気づく。
いつのまに動いていたものか、ライの右腕がコーネリアの左腕を巻き込んで悩ましいくびれを描くコーネリアの蜂腰に回されて、ぐいと力強くライの体へと押し付けている。
残る右腕は、というとこちらはライの左腕に手首をつかまれ、痛みに変わる寸前の力で抑え込まれている。
コーネリアの腕力なら十分に振り払える程度の力である。コーネリアの事を慮ったライの力加減であろう。
例え朝には消えるとしても、コーネリアの美しいに違いない(ライはまだコーネリアの裸身を目にしていない)肢体に、痣の一つもつけてはならないとライは心底思っていた。
そしてライの腕を振り払わないのは、コーネリアの体と心が動揺するその奥でライの唇をもっと、もっと、と欲しているからに違いない。
コーネリアの抵抗が無い事を確認し、ライは一定のリズムで唇の雨を降り注がせ続けた。
この世で最も愛する女の目元に。
流れ星の軌跡の様な弧を描く典雅な鼻梁に。
ゆるやかなウェーブを描く絹糸の手触りを伝える髪のひと房に。
熱い脈動を赤く染まった肌の下で打つ首筋に。
ライは肺の中をコーネリアの香りで満たした。女性としては大輪の花を咲かせてその魅力を熟成させる年頃に差しかかったコーネリアの、飾らずとも自然と身に纏っている色香。
コーネリアもまたライの匂いを意識し始めていた。自分を腕の中に抱いている華奢な少年が、たしかに男なのだと意識させられる匂い。
自分が女で、ライが男なのだと、互いの体と心が欲しあっていると、はっきりと突きつけられた様な気がする。
だが、それでも、コーネリアの心のどこかはこのままこの心地良さに全てを委ねる事を拒んでいた。
「は、離せ、ライ。これ、以上は」
一語一語を区切る様にして、かろうじてコーネリアは言葉を紡ぎ出す事に成功する。コーネリアの体を疼かせる熱に比例して、唇から溢れた言葉も熱い。
「殿下は、嘘をついていらっしゃいます」
「な、に?」
「僕はもう殿下を離していますよ」
「――え?」
唇の動きを止め、穏やかな笑みを浮かべながらのライの言葉に、コーネリアは一瞬我を忘れ、ライの言葉が正しい事を理解する。
コーネリアの腰を抱いたライの腕は離れ、姫将軍の手首を拘束していた手も既に離れている。
それだけではなかった。コーネリアの心を動揺させたのは、自由を取り戻した自分の両腕がライを拒むどころか、求める様に、縋る様に薄い肉付きの胸板に添えられている事実だった。
恋い慕う男との久方ぶりの再会に喜び、離れることを恐れる一途な女にこそ似合う仕草であり、それは今のコーネリアにとって到底認めがたく、しかし間違いなくコーネリアに相応しい行動であった。
自分は堕落した――コーネリアはそれを強く意識する。かつてブリタニアと敵する国々に、その異名を誇ったコーネリア・リ・ブリタニアの面影は、いまの自分にはほんの一欠片もないだろう。
そう、自分は変わってしまったのだ。恋する女に。たった一人の男の為に。
それが堕落でなくてなんだろうか。かつての自分しか知らぬ者達には信じられないだろう。自分自身信じる事が出来ないのだから。
ああ、でも、この堕落は、なんと心地よく、甘い魅惑である事か。
コーネリアは自分自身の心を改めて認める。そうすれば、目の前の男にされるがままというのはいささか口惜しくなってきた。
それなりに反撃を試みねばなるまい。
「ライ、一度しか言わぬ、心して聞け」
「はい」
打てば響くように返ってくるライの言葉。この男も自分に恋をしているのだろうか。しているとは思う。しかし自分ほどに思いを募らせているのだろうか?
それを確かめる事への恐怖、望む答えが返ってくる事への期待、様々な感情が溶け合うなか、コーネリアの唇はかすかに震えながら動く。
「私は、お前に……恋を、している。お前が恋しく、愛おしい」
「……」
「だから、お前が私に会えず寂しいと言った時、私は嬉しかった。私も同じ事を考えていたからだ」
「殿下」
恥じらいに目を背けることもなく、自分の心をまっすぐに伝える為に、コーネリアはライの瞳を見つめていた。
コーネリアの言葉に感極まったライは、コーネリアの体を優しく包み込み、抱きしめる。
震える雛鳥を守ろうとする親鳥の様な、命に変えても守ると決めた姫君を守る御伽噺の騎士の様な。そんな抱擁であった。
「コーネリア」
殿下、とも総督、とも呼ばなかったライの言葉をコーネリアは噛み締める様に瞼を閉じて続きを待つ。名前で呼ばれたのは、これが初めての事だった。
「愛している」
深い深い愛情の伝わる言葉に、コーネリアは子猫のように甘えた吐息を零し、答えた。
「ふふ、私の方がお前を愛しているに決まっている。私を誰だと思っている? コーネリア・リ・ブリタニアだぞ?
この私が愛を告げるなど、世界で最も愛する相手にだけだ。私にそうさせた自分を誇りに思え」
ライは心の中に開いていた寂しさという名の空隙が、愛しさによって埋め尽くされるのを感じ、ごく自然にコーネリアの唇と自分の唇とを重ねた。拒絶は無く二つの影は長い事一つに溶け合っていた。
最終更新:2010年02月11日 23:01