夜
僕はクラブハウスの自室で合衆国日本の治安についての報告書を作成させる
本当はゼロから自分用の個室をアジトで分け与えられていたけど、合衆国日本の建国後はKMF関連以外の作業はここでするようにしている
姉離れ…いや、親になるのかな?
とにかく、ミレイさんから離れるのが怖いんじゃないか、とカレンに睨まれながら言われた事あるけど、そんな事はない…はずだ、多分
とにかく作業をしていると不意にドアが開けられた
「入るぞ」
それは入りながら言うセリフじゃないだろう、と後から早速チーズくんと共に僕の布団に寝転がる彼女を見ながら思うが、言っても無駄な事は分かってるので黙っておく
緑髪の彼女はフン、と機嫌悪そうに鼻を鳴らしながらゴロゴロしていた
「何だ、またルルーシュ関連か?」
「あの童貞坊やめ。またシャーリーと戯れていた。昼間はカレンやナターシャといて…随分、女に困らん奴だな」
「シャーリーとは仕方ないんじゃないか?あの二人は僕がここに来る前からずっと付き合っていただろう?それにカレンやナターシャとは、黒の騎士団や合衆国日本関連の事ばかりで個人的な関係になろうみたいな話はしてないじゃないか」
「ん?そうか…お前はシャーリーの事…いや、それはいいか。しかし、分からんぞ。あのヘタレは女を口説くぐらいの頭はあるしな」
この子は本当に面倒だな…
妬いているなら妬いているで素直に認めれば僕だって慰めの言葉くらい掛けてやれるのに…
「ルルーシュに素直に言ってみたらいいじゃないか。『少しぐらい私に構ってもいいだろ』とか」
「それは何の冗談だ。私が妬いてるとでも思ったか。童貞坊やめ」
フォローしたつもりだったが、悪口を返されてしまった
「帰るぞ。まぁ、少しは暇つぶしになった」
C.C.は出ていった
彼女の扱いは本当に難しい
しばらくして、今度はちゃんとノックがされた
「どうぞ」
僕が声をかけるとガチャリと扉を開けてナナリーが出てきた
「ナナリー」
「こんばんわ。ライさん。その…お邪魔でしたか?」
ナナリーが少し困った顔で尋ねてくる
僕は彼女を安心させるために、なるべく声を優しくして話しかける
「大丈夫だよ。それより、どうかしたかいナナリー」
するとナナリーは顔を笑顔に変えて、僕に話しかけてくる
やはり彼女の顔は笑顔が一番似合う
「はい。実は、最近また新しい折り紙を考えたんです。見てくれませんか?」
「また考えたのか。ナナリーの折り紙は楽しみだな」
本当に彼女の折り紙は楽しみだ
僕と初めて会った頃には、鶴を折ることでさえ、難しかったのに、今では猿とか兎など、昔日本にあったと言われるエトと呼ばれる動物は全て折れる
「今度はどんな折り紙を考えたんだい?」
「はい。ロケットです」
「ロケット…?ロケットって宇宙を飛ぶ、あのロケットかい?」
「はい。そのロケットです。この前、咲世子さんと一緒に折ったんですよ」
そんな折り紙があるのか
僕は彼女がゆっくりと丁寧に目の前で折り紙を折っていく姿を見守る
するとある程度、ロケットの上半分と思われる所ができた時点で、もう一枚紙が出てきた
「二枚使うのか」
「はい。見ててくださいね」
彼女の懸命な指裁きを見て、しばらくすると、彼女の手のひらに小さく、だが確かにロケットの形をした折り紙が出てきた
「すごいな。ナナリー」
「フフフ。練習した甲斐がありました。今からお兄様にも見せてきますね」
ナナリーがルルーシュのもとに向かおうとするのを止める
先ほどC.C.が言っていた証言が確かなら…
「今はシャーリーが部屋に来ているはずだ」
「え…こんな時間に…ですか…?え…えぇ…!?」
待て
なんで夜にシャーリーがいるってだけで顔を赤くするんだ
誰が君をそうさせるように吹き込んだんだ
「わ、分かりました!咲世子さんに精がつくものを夕食に摂らせるようにいいますね!」
咲世子さんが吹き込んだのか
ナナリーはそういうと車椅子が結構速い速度で移動し始めた
あれは普通に足が動いてても乗りたくなるな
僕がそう思ってるのも、束の間、また扉がノックされる
「…どうぞ」
ガチャリと開いた後には
「…見てたわよ」
僕の赤毛の彼女が恐ろしいほど睨みながら入ってきた
「…怖いから睨まないでくれ。あと、こんな時間に君みたいなお嬢様がクラブハウスにくるのは、色々と不味いんじゃないか?」
「あなた、学園で女子に人気があるのは知ってたけど、C.C.はともかく、ナナリーにまで手を出してたとは思わなかったわ」
僕の問いは一蹴され、彼女の睨みが厳しくなる
「いや…ただ折り紙を見てくれと頼まれただけだし…C.C.は愚痴を吐いただけじゃないか…」
「言い訳無用。話はタップリ聞かせてもらいます」
理不尽だ
これ、多分、報告書は遅れが出るな
ゴメンナサイ、ユーフィミア皇女
「何?ブリタニアのお荷物皇女にまで手を出してるの!?」
しまった声に出てたか
あと、その汚名はちゃんと日本設立の時に挽回したじゃないか
「うるさい!全部答えるまで許さないんだから!」
その時、扉がコンコンとノックされた
「…………どうぞ」
「失礼します。ライ様」
何故か咲世子さんが僕のところにやってくる
あ、そういえば
「晩餐をご一緒したいと(ルルーシュ様が)お約束しておりましたが……今夜は忙しい様子ですね。失礼しました」
「あ、ちょっと…」
弁解を求めようとしたが、咲世子さんは何を勘違いしたのか、そそくさと出て行ってしまった
「……そう。咲世子さんにまで手を出していたのね」
それは違う
上の文章を見れば分かるだろう?あれは誤解だよ
「………ラ~~~~~~イ~~~~~~~~!!!」
彼女の拳は鋼でできている
僕はそれを身を以て思い知った
最終更新:2011年01月14日 21:00